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第21話

「3人の事を良く知りたいから、それぞれの年齢と性別を教えてね。じゃあ、先ずはシニアからどうぞ」由紀子はそう言うと手の平でシニアを示した。


「私の年齢は120歳、我々の星で性別を言う事はありませんが男です」シニアがすぐに反応して答えると、由紀子はその年齢に目を丸くする。


「120歳でそんなに元気だなんて、どれだけ長く生きられるの?」と由紀子は驚きながら返したが、栗原は性別を告げる時だけ恥じらうような口調に聞こえたことの方が気になっていた。


「病気にならなければ、200歳位まで生きます」シニアが淡々(たんたん)と答えると、

「私の年齢は50歳で性別は女性です」続いてスリムが口を開き、

「私は80歳で男性です」すぐにジュニアもそれに続いた。


 ジュニアが1番年下だと思い込んでいた栗原はスリムの方が若いことに少し驚いたが、何かを考えていた由紀子は

「じゃあ、次にあなた達が住む星の歴史や社会についてなど、なんでもイイので話してくれるかしら?」ねだるようにして()わる()わる3人の顔を見た。


 すると最初にスリムが口を開き、

「我々は別の銀河に存在する、『SE-10005-000335611-273516290』という星に住んでいます。大きさは地球の半分で太陽と同じものもありますが明るさが半分な為、昼間でも地球の夕日の色をしていて夕方は完全な赤になります。社会は合理性を最優先するように構築され、合理的な理由さえ示せば何でも支給されるので通貨はありません。学校のようなものはなく、訓練所で仕事の為の知識を学ぶことになっていますがそこへ行くかどうかや何を勉強するかは自由です。仕事は先日話した通りでやりたいことをするのでなく、発生した時点で最適な人がデータベースから選ばれて()()られます。特別な事情がない限り与えられた仕事に指示された期間従事します」と一気に話した。


「地球で感情について学ぶこと、それが我々3人に割り振られた仕事ということになります」ジュニアが具体的な例として自分たちの仕事を挙げると、その後をシニアが引き継いで話し始める。


「我々の起源については殆どが謎で、それを解明する為に800年程前から地球の研究が始まりました。なぜ起源の解明に地球の研究が必要とされたのかというと、『全てのものは地球に(なら)え、そして地球を(たも)て』という古くからの()(つた)えがあったからです」

「当初は『地球』という言葉が何を意味するのかすら解らず、数十年掛けてようやく天体だということを突き止めますが、太陽系の惑星だと判るまでにさらに700年掛かってしまいます。そして今から250年前、遂に我々の調査隊がここへ辿(たど)り着いたのです」

「その後様々な調査を重ねた結果、我々の星は3000年前の地球とほぼ同じ環境であることが判明したのです」そこで話は終わったのかシニアが黙った。


 核心から始めて最後まで一気に話すので数々の疑問が浮かんだ栗原の頭は混乱していたが、

「3000年前の地球と同じって、どういうことかしら?」一方の由紀子は自然な感じで訊く。


「地球の3000年前の地層から化石として掘り出される植物、動物や昆虫が我々の星には現存しています。理由はわかりませんがその頃の地球環境を再現したのではないかと考えられており、全てが解明されるまでは自分達の星と共に地球の環境も保存していくことになっています」とシニアが答えた。


「何故、地球の環境まで保存する必要があるの?」再び由紀子が疑問を投げ掛ける。


「言い伝えにある『地球を保て』という言葉には様々な解釈がありますが、我々の星の存続に関する秘密や重要なヒントが隠されているのだと推測(すいそく)されています。また、『地球』という言葉がこの地球を()すのか、それとも地球の環境を再現した我々の星なのかは不明で、それが判るまでは両方を保存していく必要があると考えているのです」すぐにその理由をシニアが説明した。


「その言い伝えは従うべき啓示(けいじ)であり、全てを知る為の重要な鍵でもある、ということになりますね」栗原がそのSF映画に出てきそうな話をなんとか理解して訊くと、

「その通りです。我々の星では皆が『地球を保て』という言葉に従って暮らしているので環境破壊は一切ありません。しかし、地球では保存の努力が追い付かず驚異的(きょういてき)なスピードで破壊が進んでしまい、結果的に我々の星とは3000年以上の違いが出来てしまいました。このままでは地球の環境は完全に破壊され、謎と共に消え去ってしまうのではと大変危惧(きぐ)しています」スリムが早口で話す。


「ここ地球では環境保存のためにどんな努力をしてきたんですか?」栗原が訊ねると、

「収集器を使って汚染物質を集め、装置を使って無害化(むがいか)の処理をします」再びスリムが答えた。


「収集器と装置ですか…。その作業はどこでするのですか?」再び栗原が訊くと

「無害化処理装置は島の中央にある天地山(あまちやま)の地下に埋められていて、収集器の方は深海を含めて地球上の至る所にあります」事務的な口調でスリムは話す。


 それを聞いた栗原は、山の広場で目撃した光景を思い出し、

「じゃあ、広場で宇宙船から持ち出した箱を焼却しているように見えたのは無害化の作業だったんですね」そう言うと、

「それが適任だと選ばれた人達が作業しています」ジュニアが答え、シニアとスリムがソファから立ち上がった。


 2人が何をするのか見ていると縁側へ向かい、そのままガラス戸を開けて家から出ていってしまった。


 ジュニアは2人が出ていった方を向いてソファに座っていたが由紀子の顔を見てゆっくりソファから滑り降りると縁側へ向かい、昨日と同じように何度も振り返りながら帰っていった。


「驚いちゃ、いけないのよね。突然、帰ってしまっても…」唖然(あぜん)としながら見送った由紀子は自分に言い聞かせるように呟いたが、別れが惜しいのかジュニアへ振っていた手を降ろさずに、しばらく3人が消えた藪を見つめていた。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 それから5日間、何故だか分からないが宇宙人達は姿を見せなかった。


「みんなどうしているのかしら? ジュニアは元気にしてるかしら?」と由紀子はことある(ごと)に3人のことが気になっているようだった。


 その由紀子は仕事の悩みを相談した時にスリムが導き出した結論によって島へ移住することを決心したらしく、それを知らされた栗原は引っ越しの段取(だんど)りに忙しかった。


 翌日、東京へ戻った2人は3日間掛けて全ての荷物をまとめると引っ越し業者にそれを運び出してもらい、借りていたマンションを引き払う手続きをして島に戻ってきた。

 ここは東京からは遠く、フェリーでしか渡れないから引っ越しのトラックが荷物を運んできたのは一昨日(おととい)の夕方で2人が島に戻ってから3日後だった。


 昨日は早朝から引っ越し荷物の片づけを始めたお陰で大物(おおもの)は殆ど終わっていて、今日は小物の整理だけだったので休憩がてら、由紀子を連れて区長の高橋やガソリンスタンドのヨシ坊、そして横井夫妻の所へ挨拶に行くことが出来た。


 島を留守にした4日間もあったが彼らに会う事なくあっという間に2週間が過ぎ、由紀子も3人の事を気にしていられない程荷物の整理で忙しかった。


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