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そのパーティメンバーは全員ウソをついている  作者: ばーど@ホーリーアンデッド3巻&コミックス2巻10月31日発売!
第二章 黒騎士はいつもデストローイ

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7/10

6.運命的な出会い……そんなものはない

 ダンジョンアタックと、今回の野犬退治みたいな一般依頼は、メリデメが大きく異なる。

 ダンジョンアタックはドロップの当たり外れがあるから収入は安定しないものの、一発大当たりがある。もし攻略なんてしようものなら、ダンジョンドグマが手に入る。レアなドグマならそれこそ一攫千金だ。

 一方で、一般依頼は大当たりはないものの確実な収入が得られる。おまけに依頼人には感謝される。なにせ困ってる人がお金を出して解決を依頼しているわけだからな。

 他にも指名依頼なんてものもあるけど……まあうちらには関係ないかな。


 ゴウゥンッ!


 デストの大剣が唸り声を上げ、野犬たちが両断される。

 20匹近くいた野犬の群れはこれで全滅だ。きっと依頼を出した農家の方も大喜びだろう。

 さすがはデスト、相手がエネミーだろうが野犬だろうが関係ない。問答無用で一刀両断だ。


『デストローイ』


 血に染まる黒騎士……見た目ヤバすぎだろ。

 でも頼りになるよなー。まー毎度のごとく俺たちは一切何の役にも立ってないんだけどな。


「うわー、スプラッターで血まみれだぁ。デストちゃん、ボクが水魔法で流してあげるね」

『デストローイ』

「きゃっ、失敗してボクが濡れちゃったぁ。下着が透けてライにエッチな目で見られちゃうよぉ」


 無視だ無視。絶対視線をそっちに向けない。


「ちぇ、つまんないの」

「何もつまんなくねーよ!」

「でもさー、これだけの野犬が集まって逃げずにデストに襲いかかったってことは……リーダーに魔獣でもいたかな?」

「そこにいますよ」

「え?」


 ソフィが指差したのは、一匹の野犬……だったもの。既にデストにデストローイされている。

 確認してみると……おお、確かに魔石が確認できるわ。よく気付いたな。回収しとこっと。


「相変わらずソフィは勘が鋭いね」

「ライさんが役立たずなだけではありませんかね」

「おっしゃる通りで」


 返す言葉もございません。

 しかし魔獣だろうが野犬とおかまいなしに同等に瞬殺するデストは凄いよな。こいつ、たぶん魔法使ってたはずだぜ? 無関係に蹂躙してんだもんなぁ……。


 デストが鎧の上から水浴びしている間に、俺は野犬だったものたちを焼却処分する。こうしないと変な疫病の原因になったりするからね。


「あー、ライが仕事してるー」

「せめてこの程度は役に立って欲しいですよね」


 ぐっ……。


「……はいはい、がんばりますよー」

『デストローイ』


 しっかし、これだけの量を処分するのは生臭くて堪んねえわ。もちろん他の誰も手伝ってくれないしさ。雑用係のリーダー……しくしく。


「ところでライはさ、デストちゃんといつ出会ったの? ボクたちが合流したときにはもうパーティ組んでたでしょ?」

「たしかに、私たちは知りませんね」


 そうか、こいつら知らなかったっけ。

 じゃあ作業の片手間に話してやるとするかな。

 俺とデストの出会いを──。



 ◆◆



 デストとの付き合いは、実はパーティメンバーの中で1番長い。

 彼との出会いは運命的だった……というのはウソで、実に平凡でくだらない出会いだった。


 ──そいつは、ギルドの少し隅の方で圧倒的な存在感を放っていた。

 2メルトを超える巨体。

 黒光りする全身金属鎧フルプレートメイル

 背には巨大な両手剣。

 そんなやつが、ギルドの中で直立不動で立っていたんだ。


 あんな激ヤバなヤツにはまずお目にかかれない。実際、猛者揃いの冒険者たちが全員距離を置いて近づこうともしない。

 そりゃそうだろう、室内でフルプレートを着込む酔狂なやつはまず居ない。下手に声をかけたら問答無用で一刀両断されそうだ。


「おうおう、にいちゃん。すんげぇアーマー着てなにそんなところで突っ立って……ヒィィッ!?」

『デストローイ』


 酔った奴が調子に乗って声をかけてみたものの、地の底から響くような声で意味不明なことを呟かれ、腰砕けになりながら逃げる始末。

 なんだかとんでもないやつがギルドに来たもんだなぁ。

 だけどあいつ、なんで一人で立ってるんだ?

 誰にも声をかけずに……何か目的でもあるのか?

 俺とデストとの最初の出会いは──そんな感じの奇妙なもんだった。


「あいつ、今日もいるのかい?」

「ああ、そうなんだよ。誰ともパーティを組むこともなく、一人でずっとあそこに突っ立ってるんだ。商売の邪魔ったらありゃしない」


 馴染みのギルド職員が、愚痴ともつかぬことを返してくる。

 翌週も、翌々週も、全身金属鎧の男はギルドに立っていた。

 その頃には『黒騎士』などという異名を与えられながらも、皆から無視されるという奇特なポジションを得ていた。


 一方、当時の俺は俺で、前のパーティに追放されてから完全に手詰まり状態になっていた。

 だって単独じゃダンジョンへの入宮エントリーが許可されないんだもん。

 あーあ、仲間が欲しいなぁ。

 できれば前衛と、魔法士と、治癒士が欲しい。

 まあ贅沢なんて言ってられない。俺が活動する銀曜日シルバリオンデーだけでも一緒に活動してくれる奴が。

 日替わりでもいい。

 善悪は問わない。

 どんな奴でも……。


「なんでかあいつ、毎週銀曜日シルバリオンデーだけ来るんだよな」

「へー、そうなんだ……って、え?」


 マジ?

 居るじゃないか、俺のニーズにピッタリと合う奴がよ。

 俺は迷うことなく黒騎士に歩み寄ると声をかける。


「なあ、あんた。もしかしてパーティメンバーを探してるのか?」

『デストローイ』


 反応を見て、声をかけたことを後悔しなかったかというと嘘になる。

 だけど彼の瞳──暗闇の中に光る輝点に、肯定の意思を感じた俺は、そのまま言葉を続ける。


「俺はライって言うんだ。あんたの名前は?」

『デストローイ』

「それしか言えないのかよ。じゃあ──デストでいいか?」

『デストローイ』


 頷く鎧男ことデスト。

 こいつ、見た目は怖いけど意外に素直な奴だな。


「デストはもしかしてうまく喋れないのか?」

『デストローイ』

「まあいいや、そしたら俺とパーティ組んでみるか? 俺もあんたと同じで毎週銀曜日にしか参加できないが──」

『デストローイ』

「そうか、それでいいか。じゃあさっそくだけど、試しに一緒にダンジョンにでも潜ってみるか」

『デストローイ』

「ところでデスト、冒険者証ライセンスは?」

『……デストローイ?』

「おいおい、ライセンスも持ってないのかよ。ちょっとこっちこい。おーい、受付のおねえさーん。こいつのライセンス登録頼んますわぁ!」


 ビビりまくる受付嬢の代わりに記入場所などを説明し、無事登録が終わったあとで手頃なダンジョンへとお試しで入宮エントリーしてみる。


 んで、戦闘になったら……こいつがとんでもなく強かった。

 たぶん常人の10倍近い力を持っている。

 しかもこいつ、肉体強化の魔法を使わない状態で、だ。

 たぶん肉体強化を使えば城壁でも破壊できるかもしれない。とんでもない戦闘力だ。


 こうして俺とデストはパーティを組むことになった。

 いやまさかこの関係が、こんなにも長く続くとは思わなかったけどね。



 ◆◆


「……てな感じだったかな」

『デストローイ』

「えー、なんかつまんなーい。もっとドラマティックな展開とかなかったの?」

「ドラマティックな展開って、どんなんだよ」

「たとえば、悪党に拉致されたライをデストちゃんが救いに来たとか」


 俺は深窓の姫君かよ。


「私は悪行をしているライさんを、デストさんが捕まえて出会ったのかと思ってました」


 だから何で俺が悪役なんだよ。


「俺たちは普通に出会ってるよなぁ、デスト?」

『デストローイ』


 プリテラの水魔法を浴びて虹を作りながら、頷くデスト。

 やっぱ君は、我らが『シルバリオンサーカス』の癒し系だよな!

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