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そのパーティメンバーは全員ウソをついている  作者: ばーど@ホーリーアンデッド3巻&コミックス2巻10月31日発売!
第二章 黒騎士はいつもデストローイ

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6/10

5.黒騎士は癒し系、かな

ここから第二章です。


 あー、仕事ってなんでこんなに憂鬱なんだろう。

 そりゃ無職になったら兄妹ともども路頭に迷うわけだから、働かざるを得ない。そもそも妹は生きていけないだろうし。

 冒険士? あんなのダメダメ。趣味ならいいけど、さすがに不安定すぎる。俺一人で生きてるわけじゃないしね。

 てなわけで、俺は今日も仕事を頑張る。


「ライヴァルト大導師、この回路はどうですか?」

「……いや、素晴らしいね。俺なんかよりよっぽど見事だよ」


 ドリューが描く魔法回路は見事だ。

 ここ王立魔法研究室でも彼女はトップクラスの実力の持ち主だと思う。


「ありがとうございます。指先は器用なんですよね」

「素晴らしい才能だと思うよ」

「だからですね、実はあたし……料理とかも得意なんです」

「ほー、ドリューは貴族なのに手料理もするんだ」


 俺の持つイメージだと、貴族令嬢なんてメイドや使用人に何でもやらせるもんだと思ってた。


「あたしは貧乏子爵家の三女ですからねー。何でも自分でやりますよ」

「でもドリューの作った手料理なら、なんでも美味しそうだよね」

「っ!? ですよね!? でしたら今度あたしが手りょ……」


 ドガン! 爆発音みたいな音を立てて研究室の扉が開かれる。

 こんな荒っぽいことをしながら入ってくるやつは一人しかいない。


「ライヴァルト大導師、研究の進捗はどうかね?」

「ぼちぼちですよ、ユースティティア所長」


 この恐ろしいおばさんこそ、我らが王立魔導研究所の頂点に君臨する所長であり、俺の直属の上司様であるユースティティア所長だ。


「ははっ、しっかりやってくれよ。そのためにオマエをこのアタシが引き上げてやったのだからな」


 しかもこの所長、なにげに先代国王の妹でもある。そりゃ公爵様だもんな、偉いんだよ。

 恩人? いや違うね、たぶんお互いの利害が一致しているだけだ。

 だけど俺もおかげで良い給料を頂けているわけだし、たとえ理不尽でも従わなきゃいけない部分もある。

 なにより──妹の命の恩人でもあるしな。


「それで、雷導銃の完成具合はどうだね?」

「俺が使う分には耐久面以外では実用的ではあります。ですが一般人が使う分には──」


 俺が試作品の銃を渡すと、ユースティティア所長は窓の外の木に向かって迷わず撃つ。

 ガウンッ! 落雷のような音がして、木はあっさりと吹き飛ぶ。同時にユースティティア所長の銃はバラバラに崩れていた。


「なるほど、耐久性か……よかろう、予算を積み増すとともに貴金属の使用許可を出す」

「ありがとうございます、ユースティティア所長」

「うむ。オマエが誰のおかげで今の地位にいるのか、しっかりと自覚した上で研究に励むが良い。この銃が実用化された折には……くくく、楽しみだな」


 俺は、魔導具を作るのが嫌いではない。戦争とかに繰り出されて直接人を傷つけるよりは遥かにマシだ。

 だけど、嫌いなものもある。

 それは、人に強制されて作りたく無いものを作らされることだ。


 あーつまらない。つまらない。

 不本意な研究なんてこりごりだ。

 はやく銀曜日シルバリオンデーにならないかな。

 ふいにデストたちの顔が浮かぶ。

 あいつらも今ごろ、色々な理不尽でも抱えてるのかな?


 ◆


 ってなわけで、やってきましたシルバリオンデー!

 だけどお楽しみより前にやることがある。

 俺はフード付きマントを着て、冒険者ライだとはばれない姿で集合時間よりは少し早く冒険者協会にやってきた。 

 向かった先は──冒険者協会の依頼受付窓口。


「こんにちわ。本日はどのようなご用件でいらっしゃいますでしょうか」

「常設依頼の内容更新をしたくて来ました。受付番号132984です」


 俺は依頼時に受け取った受付票を見せると、受付嬢は「少しお待ち下さい」と言って奥の棚にあるファイルを確認しに行く。


「えっと……ご依頼内容は『肉体再生薬』ですね。こちら現在……ひいっ、あ、すいません失礼しました。に、2000万ペルのご依頼ですが、どのように変更なさいますか?」

「依頼額をアップしたい。2500万で」

「か、承りました。それでは……金額アップに伴う掲載料の追加分として、500万ペルの10%の額を頂きますが、よろしいでしょうか?」


 俺は頷くと、50万ペルが入った金貨袋を渡す。


「確かに受け取りました。金額は変更され有効期限は1年延長されます」

「ありがとう、頼むよ」


 さぁ、事前の一仕事は終わった。『冒険者ライ』に戻って、冒険を楽しむとするかね。

 トイレで着替えて外に出ると、いつのまにやらデストが到着していた。


「いようデスト! 今日も一番乗りだな」

『デストローイ』

「あーわかるわかる。今日が楽しみで仕方なかったんだよな。俺も同じ気持ちだよ」


 他人が見たらギョッとする全身フルアーマーで2メルト超えの巨人であるデストだが、俺からするとなんかホッとする存在なんだよねぇ。


「いやーデスト、会いたかったよ。君は我がチームの癒しだな。俺は君がメンバーで良かったよ」

『……デストローイ』

「なーに二人で良い感じチェリッシュな雰囲気出してるのさ。ボクも混ぜてよねぇ」

「なんだプリテラ、いたのか」

「こんな美少女を前にしてその言い方はないんじゃないかなぁ! ねぇデスト、ライってば酷くなぁい?」

『デストローイ』


 ああ、この掛け合い。

 なんだか帰ってきたって感じがするよ。


「……あれ、今日はソフィ居ないのかな?」

「たしかに、今日は姿が見えないな。獅子時まで待って、来なかったら出発するぞ」

「はぁーい」

『デストローイ』


 俺たちは別に契約で結ばれた関係でも、毎日寝食を共にしているわけでもない。

 毎週銀曜日に、お互いの目的があって集まっているだけの仲だ。

 だから今日のように来ないときもある。俺も妹の病状が悪化したときなどは来なかったときもあるしな。


 何にも縛らない。何も聞かない。何も強制しない。

 ただ銀曜日シルバリオンデーに集まってチームを組むこと。

 それが俺たち【シルバリオンサーカス】の唯一のルールだから。


「皆で何をしているのですか」

「あっ、ソフィちゃんきてくれたんだぁ! これでいつものメンバーで今日はチャレンジできるね!」

『デストローイ』


 とはいえ、やっぱりフルメンバーで集まるとなんだか嬉しい。

 素性も普段何をしているかも知らないこいつらとの関係が、俺にとっては思っていたよりも心地良いものだったらしい。


「そんでライー、今日はどうするのぉ? さっさと決めてよぉ」

「前回のダンジョンはジメジメしていて不快でした。今回はもう少し考慮と配慮をお願いしますね、汚いので」

『デストローイ』


 ……前言撤回。

 やっぱりこいつらめんどくさいかも。


「じゃあなにするかね……」


 いつもの習慣で解放ダンジョンを確認すると──あれ、トラップアンドエネミーが攻略されてら。

 よくあんな面倒なダンジョンクリアしたよな。と思ったら定期メンテナンスで駆除対象として処理されたのか。

 ドロップもイマイチだったし稼働率が低かったもんな、仕方ないか。

 多分どこかの中堅チームがクリアしたんだろうけど、目新しいダンジョンドグマの情報も無かったから、たぶんクリア報酬もイマイチだったんだろうな。


「ライ、まだー?」

「いつまで待たせるんですかね」

『デストローイ』


 あーもう辛抱できない奴らだな。仕方ない、今回は他のメンバーの好みを考慮して案件を選んでみようかね。


「じゃあさ、近くの森に出現した野犬駆除の案件でもやってみるか」

「はぁーい、それで良いよ!」

「デストローイ」

「仕方ありませんね。それでいきましょう」


 よしよし、何とか決まったぞ。

 ダンジョンじゃないのは残念だけど、これはこれでストレス発散になるし楽しむとするかね。


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 ライさん、上司は元王女。
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