第一部 エピローグ
「あっ、ダンジョンが消える」
俺たちがダンジョンを出た瞬間、ダンジョンへと至るゲートが消失した。
たしかにダンジョンコアらしきものはエイシェトが持って帰っちゃったからな。って報酬が──ダンジョンドグマが手に入らないじゃん。
あ、やばっ。ダンジョンが消えたことに気づいた衛兵が近寄ってきたぞ。
「おや冒険士、ダンジョンを制覇したのかい?」
「あ、いや、その……」
「それがねー、ダンジョンに不具合があったみたいで消滅しちゃったんですよー。てへっ」
おおっ! プリテラさん、ナイスフォロー!
「ああエラーダンジョンだったのか、ついてないな。エントリー料は返金されるからこのカードを受付に渡してくるんだぞ」
「衛兵さんありがとー!」
可愛い子が説明したからか、ゲートを管理していた衛兵も深くは突っ込んでこなかった。
こういうときパーティにコミュニケーションお化けがいると心強いよなぁ。
「サンキュー、プリテラ」
「どういたしまして! ライもがんばってたからね」
ん? 俺、何かがんばったっけ?
「さっきのダンジョンでの対応は良かったよ。ボク、ライのこと見直したなぁ」
「そ、そう?」
よく分からないけど、プリテラみたいな美少女に褒められると悪い気はしないぜ。
「デストもそう思わない?」
『デストローイ』
デストも喜んでるみたいだ。拳を突き出すと、デストも合わせてくる。ふふふ、拳での会話──男同士のみが分かり合える合図だぜ。
「まあでもなによりソフィが無事で良かったよ」
「ソフィちゃん、ボクたちが助けに来て嬉しかった?」
「そうですね、嬉しかったですよ」
わお! ソフィがデレた!
「あははっ、素直なソフィちゃんかわいい!」
「私はいつでも素直ですよ」
「そんなー、ボクのこと大好きなくせに」
「好きかどうかはともかく、みなさんとパーティを組むのは……悪くないですね」
「うん、ボクも楽しいよ。デストは?」
『デストローイ』
もちろん俺もだ。
日常生活では恐ろしい上司や大変な仕事、わがままな妹にいつまでも達成されない依頼とか色々あるけど……。
毎週銀曜日の冒険は本当に楽しい。
願わくばこれからも──こいつらとパーティを組んでいたいな。
あ、そういえば──。
二人とも俺とほぼ同時にソフィのところにたどり着いたけど、あのエネミーボックスを突破してきたのかな。デストはともかくプリテラはどうやって?
それにエイシェトはどうしてあんなに態度を変えたんだ? ソフィが説得した? 説得に応じるような相手に見えなかったが……そもそもエイシェトはなんで下着姿で椅子になってたんだ?
んー、分からないことだらけだ。
謎が多い、我らがシルバリオンサーカスのパーティメンバー。
だけど──。
「まいっか」
そう、今日が楽しければ良いのだ。
細かいことは気にしない。そもそも俺自身がウソついてるしな。
うちのパーティメンバーに求められる条件はただ一つ。
『銀曜日だけ活動すること』
だから俺は、これからも──銀曜日はあいつらと冒険士ライフを楽しむとするかね。
俺たちは冒険士チーム【シルバリオンサーカス】。
何か用があるなら──銀曜日に限って協力するぜ。
── 第一部 『シルバリオンサーカスの愉快な仲間たち』 完 ──
ここにて第一部 完とさせていただきます!
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