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こんな事で諦めてたまるかよ!!

 それからひとりになったテオドールは、エアステンス地区の脇にある林で召喚魔法の練習を始めた。

「さて、と……『魔なる物、光子より形成かたちなして顕現せよ』!!」

 テオドールは魔導書とマナ瓶を手に持ち呪文を詠唱する。しかし、マナ瓶の中のマナ結晶が無駄に消費されるだけで何も呼び出すことが出来なかった。

「駄目……かぁ。はぁ……どうしちまったんだろ、俺ぇ……?」

 頭を掻き、思考を巡らせるテオドール。どうして突然、普段から使えていた召喚魔法が使えなくなってしまったのかを一生懸命考える。

(頭を打ったのがそもそもの原因なのは確かなんだけどなぁ……別に記憶を失くした訳でもないしなぁ。……そう言えば)

 もしかしたら何か分かるかもしれないと、あの日のことを思い返してみる。

 あの時、頭を打って気を失ったテオドール。その時彼は……奇妙な夢を見ていた。


 それは、とある男の記憶だった。

 その男は、目の前の光るガラスの板に一生懸命線を引いていた。

 曲線。曲線。曲線……その艶かしい曲線は、ひとつの絵となって女の裸体を創り上げる。

「ふう……」

 男は一息ついて、腰掛けていた椅子の背に深くもたれかかる。その時、横や後ろに本棚が並んでいる事に気がつく。

 その背表紙には、どれにも色っぽい女の表情が描かれていた。つまる所、春画を纏めた書物と言った所であろうか。

 そして、男自身も春画を描いて生計を立てているらしい。

 しかし、その絵を描く手は痩せ細り、生活の不摂生を感じさせる。

「……描かなきゃ、な。まだ描きたいエロが沢山あるんだ」

 そう言って男は、机の上に置いてあった金属の筒を手に取って中の飲料を接種した。

 ……その時、だった。

「う……っ!!く……っ……」

 男の心臓が、強い痛みと締め付けを訴え始める。そして、血に酸素を必死に送ろうと男の息が荒くなる。

「かっ……かはっ……」

 そして……男は志半ば、息を引き取ってしまった。


 と言う夢を、その時見たのだった。

「いや訳分からんて!!なんだその夢!?なんで死に物狂いでエロ漫画描いててマジに過労死してんだよ!?」

 混乱するテオドールだったが、不意に口をついて出た言葉に違和感を覚えた。

「……エロ、漫画?エロ漫画って……いや、分かる。なんでエロ漫画って概念が理解出来るんだ??」

 思い出して尚、謎が深まる。

 ただ、ひとつだけハッキリしたことがあった。

「……俺の召喚魔法知識が、殆どエロ知識に入れ替わってやがる……!?」

 顔から血の気が引いて、冷や汗が流れ始める。

 彼には夢があった。それは昔、幼馴染であり親友のアルフレッドと共に見た本に書かれていたユニコーンを、いつの日か召喚してみせる事であった。

 それから2人はお互いに鍛え、成長し、来る15歳の成人を迎える頃には共に旅に出る誓いを叶える事となったのだ。

 そして18歳を迎える3年後。あらゆるダンジョンを攻略し続けた2人はツェントラール・ノルデン地区のギルドで1、2を争う実力を認められる事となった今でもその夢を追い続けていたのだ。

 その夢が、エロ知識を得るのと引き換えに遠退いてしまったのだ。

「……いいや、こんな事で諦めてたまるかよ!!だってそうだよなぁ?俺は……」

 魔導書を再び開き、マナ瓶を構えて精神統一を始める。

「俺は……絶対にユニコーンを召喚してみせるんだッ!!『魔なる物、光子より形成かたちなして顕現せよ』ッ!!召喚ッ!!」

 すると、目の前に魔法陣が出現して眩い光を放ち始める。

「ぅくっ……!?」

 あまりの眩しさに目を伏せていると、その内光が弱くなっていき、目の前に何者かの気配を感じられる。

 そう、ここ最近では初めての、召喚成功であった。

(やった……成功したんだ、召喚に!!いったい何を呼び出せたんだろう……まさか、本当にユニコーン?)

 期待を胸に、閉じた目をゆっくりと開く。

 すると、そこに居たのは……。

「召喚に馳参じました、わたくしめは『サキュバス』のベロニカと申しますわ♡どうぞ何なりとお・申・し・付・け・を♡」

「な……っ……!!?」

宜しければご評価、ご感想いただけれは幸いです。

読んでいただきありがとうございました!

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