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バイト先に後輩女子がやってくる

 

 昼休みいつも通り中庭のベンチで夜長さんから受け取った弁当を食べていた、昼前の休み時間クラスメイトである男子生徒達複数人から一緒に食べようぜと誘われたが断った。


「そろそろ来る頃だと思っていた」


 そしていつも通り友人と昼を食べ終えた神沢が中庭のベンチにやってくる。


「今日の話お前で持ちきりだったぞ。なんであいつが夜長さんの弁当なんか食べれるか、夜長さんとはどんな関係なのか、この前も夜長さんから何か小袋を手渡せれていたとかな」


「まぁだよな」


 俺は少しため息を吐く。


「卵焼き貰うぞ」


 神沢は一言だけ伝えると俺の意見も聞かず卵焼きを手で掴み口に運ぶ。


「うめぇなぁ、この前のクッキーも美味かったし夜長さん絶対いい奥さんになるよな」


 確かにこの弁当のおかずも一切冷凍食品を使っていない殆ど夜長さんの手作りだろう、しかもこの卵焼きは妹と味がそっくりだった。


「全くよお前なんで川崎さんと夜長さんの告白断ったんだよ」


「俺には好きな人がいるって知ってるだろ」


「だけどよぉそれもまだ告白もしてない先輩でお前も知ってるだろあの先輩には他に好きな人間がいるって」


 そう有名であるつくし先輩は川崎さん夜長さんと一緒で噂されるような人だ、だがそのつくし先輩には誰も告白しないそれは何故かつくし先輩にはこの学校のOBで今は大学で勉強しているその男子の事が好きだからである。


「けどまだ二人とも付き合っちゃいない」


「いやまぁそうなんだけどさぁ」


 神沢は頭を押さえてため息を吐く。


「まぁお前の好きにしな、けどお前が幸せになっても傷つく子が二人いるのは覚えとけよ」


 神沢お前本当いい奴だよな口は堅いし女子には優しいし、お前のそんな性格知ってれば付き合いたい女子はいるだろうに。


「お……水色」


 今風で後輩の女子生徒二人のうちの一人のスカートがふわりと捲れて神沢が呟いた。そして後輩の女子生徒二人が神沢を睨む。神沢はベンチの下に隠れる後輩の女子生徒はふんと怒った顔で別校舎に入っていく。


「ふぅまぁ応援はしてやるから頑張れよ」


 神沢は俺の背中をバシッと一発叩いて校舎へと入っていく。そして昼休みが終わる前にバレーボールで遊んでいたつくし先輩と友人達は校舎へと入っていくのを見て俺も校舎に入り教室に戻る。


 放課後、俺は今日バイトの為読書部の部室にはいかずバイト先である喫茶店に向かっていた。この前川崎さんと行ったから今日は何か言われそうな気がしていた。


 喫茶店の裏側に回り従業員入口から喫茶店に入る。


「おはようございます」


 大きな声で挨拶をして他のバイトと店長の奥さんがいる事に気付いた。


「おはようございます先輩」


 このバイトの男子は俺よりも後に入ったので俺の事を先輩と呼ぶ一応俺とは違う他校の生徒で、どうやら後輩らしいので一応は呼び方としては正しい。俺はロッカーで喫茶店の制服に着替えて店長の元に向かう。


「店長おはようございます」


「ああおはよう、そうそう君にも伝えておくけど明日から新しいバイトの子雇う事にしたから」


「また急ですね、でも人数足りてるんじゃ」


「その子私がこの店を出す前に修行してたレストランの料理長の娘なんだ、だから頭が上がらなくてね、まぁ別にバイトの子が増えるのはいい事だしね」


「まぁ俺はいいですけど」


 明日は俺は休みだったので会う機会があるかまでは分からないが会ったらちゃんと挨拶しておこう。


 そして俺はホールに出て先程まで座っていたお客の机を片付ける。裏に回って少し休憩しているとバイトの男子と店長の奥さんが詰め寄ってくる。


「な、なんですか急に」


「先輩この前一緒に来た女性とはどういった関係ですか」


 そういえば誰も聞いてこないと思ったら、どうやら俺が一人になるのを待っていたらしい。


「あの人とはたまたま遊んだだけです、この話は終わり、俺仕事に戻るんで」


 二人とも残念そうな顔をしてホールとキッチンに戻っていく。


「いらっしゃいませ……」


 カランカランと喫茶店の扉のベルがなったので俺がそこにいくと後輩の夜長さんが立っていた。


「先輩……こんにちは」


 少し照れて夜長さんは挨拶してくる。俺は困惑しながらも夜長さんを席へと案内する。


「ご注文が決まりましたらお呼びください」


 メニュー表を夜長さんに渡して俺はホールから従業員室に駆け込む。


「先輩慌てちゃってどうかしたんですか」


 慌てて駆け込んできた俺に驚いて声をかけてくるバイトの後輩男子。俺はロッカーを開けて鞄に入れていた水筒のお茶を少し飲んでから退室してホールに戻る。


「あの……」


 手を上げて小さい声で呼ばれるどうやら夜長の注文が決まったらしい。


「ご注文はお決まりですか?」


 できるだけいつもの営業スマイルで声をかけると夜長さんは指で注文する。


「カフェオレのケーキセットですね、ケーキはどれに致しましょう」


 夜長さんはそのまま指を動かす。


「チョコケーキですね、かしこまりましたそれでは少々お待ちください」


 俺は夜長さんに伝えて店長に注文用紙を手渡す。


「お待たせしましたこちらカフェオレとチョコケーキになります」


「あ、ありがとうございます」


 別に夜長さんがお礼を言う筋合いはないと思うが夜長さんらしい。


「先輩あの子可愛いですね」


 すると休憩が終わってホールに出ていたバイトの後輩男子が俺に言ってきた。


「うん、まぁそうだな」


「てかあの子の制服先輩と同じ学校ですよね」


「二人とも仕事中」


 少し会話していたらキッチンにいるはずの店長の奥さんがホールに出て俺達に注意する。俺とバイトの後輩男子は会話を止めて仕事に戻る。


 そして夜長さんは俺がバイトを終える夜遅くまでいてオレンジジュースとカルボナーラを食べていた。


「それじゃあお疲れ様です」


 バイトの時間を終えた俺は店長の奥さんに挨拶して一度ホールを覗き込んでから従業員入口から出る。バイトの後輩男子は一時間ほど前に終えて喫茶店でまかないをもらって食べてから帰っていくのを見た俺は家で妹が作ってくれているのでまかないはもらっていない。


「せ、先輩お疲れ様です」


 そして何故か喫茶店の入口横で佇んでいた夜長さんを見つける。


「まぁ多分待ってるんだとは思ってたけど、もう夜も遅いから送っていくよ」


「心配してくれて嬉しいですが、もうすぐ父が車で迎えにくるので大丈夫です」


 夜長さんはそう答える。


「先輩今朝川崎先輩と手を繋いでませんでしたか……?」


 まさか見られていたのか、これはどう答えたら正解なんだ。


「そうだ今日夜長さんにもらった弁当美味しかったよこの前のクッキーもだけど夜長さんっていい奥さんになるだろうね」


 俺は神沢が言って事を思い出して夜長さんに伝える。


「先輩誤魔化すならもっと上手い言い訳した方がいいですよ」


 夜長さんにそう言われてしまう。俺にとっては言い訳ではあるが褒めたのは本心である。


「確かに今朝川崎さんと一緒に手を繋いでいたけど俺達付き合ってないから」


「なのに恋人繋ぎのように手を繋いでいた訳ですか」


 少し夜長さんの様子がおかしい今朝とはうって代わり邪悪な。


「ねぇ先輩今度私と一緒にお出かけしましょう」


 夜長さんは


「え……?夜長さんと一緒にお出かけ?」


「そうです。最近父から遊園地の無料チケットもらって、私行く相手がいなかったので先輩と一緒に行きたいと思いました」


「夜長さんなら女子の友達がいるんじゃ」


「何か言いました?」


 夜長さんは微笑んで言う、それは川崎さんのあの反対などさせないと似た感じが起こっている。


「それじゃあ先輩また明日学校でそれと連絡先交換しておきましょう、じゃないと待ち合わせ時間とかも決めれないですから」


 そして俺は夜長さんと連絡先を交換する。連絡先を交換した時夜長さんはいつも会った時みたいに取り乱し始めた。


「それじゃあ先輩バイトお疲れ様でした」


 夜長さんは頭を下げ今喫茶店の駐車場に停まった車に乗り込んで行く。俺は一応車の運転手の方に会釈をすると窓から年配の男性が優しげに手を振ってくる。


「お父さんやめて恥ずかしい」


 車から大声で聞こえてきた。夜長さんが言ったらしい年配の男性は窓を閉めて車は喫茶店の駐車場を出て道路を走っていく。


 俺も早く家に帰らないと妹が心配しそうなので今日はバスで帰る事にした。

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