週末に同級生の女子と一緒に映画を観る
週末俺は川崎さんと待ち合わせしている噴水広場で川崎さんが来るのを待っていた。
そして数分後川崎さんが到着する。
「ごめん待たせちゃった」
川崎さんは謝って頭を下げてくる。待たせたと言っても数分だ、しかも待ち合わせの一時間前である。
「えっとまだ待ち合わせまで時間あったと思うんだけど」
こう言ったら失礼だが川崎さんはどちらかと言うと遅れてくるタイプの人間に見える。
「私好きな人を待たせるの苦手だから」
また好きな人と言ってくる。
この前も映画に誘ってくる時も好きな人と映画を観に行くのが嫌な訳ないと言っていた。それはやっぱり俺の事なんだろう。
「映画まで時間あるしどこか喫茶店でも入ろう」
川崎さんに言われて俺達は隣り合わせで歩いて映画館近くの喫茶店に入る。
この喫茶店にはよくきたりするので喫茶店の店長やバイトの人も顔馴染みである。なので俺が女子と一緒に入ってきた事で少し取り乱していた。
俺は喫茶店でいつも飲むカフェオレを注文して川崎さんはケーキセットでショートケーキと紅茶を注文する。
数分後注文した品が到着して俺はカフェオレを少し飲む。川崎さんはショートケーキをフォークで一口口に運び目を輝かせる。
「美味しい……」
どうやら店は間違っていなかったらしい、この喫茶店のケーキは食べた事ないが美味しいと評判だったのを聞いていた事があった。
「よくこんな喫茶店知ってたね、私知らなかった」
川崎さんが口にする。
「たまに本を買って読みたい時にくるんだ。ここは静かだし、カフェオレも美味しいしね」
川崎さんの質問に答える。そして俺は喫茶店の窓を横切ろうとする人を見つけた。
その人は窓に俺がいるのを見ると喫茶店に入ってきた。
「こんな所で会うなんて奇遇だね」
それはつくし先輩であった。つくし先輩は喫茶店に入ってくるやいなや俺達の席に一直線に向かってきた。
「えっと……」
川崎さんは困惑気味に声を出す。それはそうか川崎さんはつくし先輩の事など知らないから。
「この人は……」
「それで二人はデート……? 全くそれだったら川崎さんも部室に来たらいいのに」
先輩の説明をしようとした時俺は驚く、つくし先輩が川崎さんも部室に来たらいいのにって言ったからだ。
「いえ、その」
川崎さんはつくし先輩が喫茶店に入って来てからどこか様子が落ち着かない。
「先輩少しいいですか、なんで川崎さんの事知ってるんですか?」
俺は気になって先輩に聞いてしまう。
「言ってなかったけ? 川崎さんも読書部の部員なんだよ君が入部してきた一週間後くらいに突然入部届持ってきたんだよ」
全然知らなかった多分その日は何かの用事で読書部に顔を出していなかったのだろう。
「でも川崎さんあの入部届持ってきてくれて以来全然部室に顔出さないからさ」
「モデルの仕事とかで行けなくて」
そうだ川崎さんはモデルをやっているんだった。なのに何故読書部に入ったかは聞くまでもない。
「まぁ私はいいけどね、そうそうこの前君と話してた漫画の事なんだけどね今度アニメ化するらしいよ」
「え……まじですか」
俺は驚くつくし先輩が言ったのはあの時一緒に話していた漫画の事に違いない。
それから喫茶店でつくし先輩と一緒に談笑していると川崎さんが机の下から俺の足を蹴ってきた、少し怒っているように見える。
そして俺は気付いて喫茶店の壁時計に目線を送るもうすぐ映画が始まる時間だった。
「すみません先輩、その……この後川崎さんと一緒に映画を観る予定があって」
「そうだったの!? それじゃあ私めちゃくちゃ悪い事しちゃったね、ごめんね川崎さん」
つくし先輩は川崎さんに手を合わせて謝る。
「いえ、別にいいですけど」
少し怒気のこもった声で川崎さんは言う。
「ここは私が奢っておくから二人とも早く行って行って」
つくし先輩に背中を押されて俺は川崎さんと一緒に喫茶店を出る。
「ごめん川崎さん」
俺も謝るつくし先輩と話をするのに夢中で川崎さんの事を忘れてしまっていた。川崎さんは黙ったまま俺の手を握ってきたそれは恋人繋ぎである。
「このまま今日ずっと繋いでたら許す」
川崎さんの言う通り俺は映画館に着いても川崎さんの手を繋いでいる。映画が始まっても川崎さんと手を繋いでいた。
映画の途中、横に座っていたカップルらしき人間がいきなりキスをし始めた。
それは恋愛映画でいきなり主人公とヒロインがキスを始めたからだ。俺からは見えるが川崎さんから見えるかどうかは分からない。けど川崎さんの手を握る力が強くなった気がする。
そして映画が終わり俺と川崎さんは手を繋いだまま映画館の近くにあるショッピングモールに移動する。




