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ギュスタヴ・サーガ 幸福の村  作者: 山野陽平
1/8

1.墓標にて

 ベイクは自分で石を積み上げて作った墓を見ながら、悲しいというか寂しい気持ちになった。


 彼を引き取ってくれる身内はわからない(別れた奥さんと娘さんが居る)し、居ても引き取ってくれるかどうか分からない。彼は英雄でも何でも無く、ただ死んで、数日間一緒に居た自分に土に埋めて貰っただけだ。村を救った訳でも無いので、即ち皆の反感を買う訳でも無い。なんとも矛盾した話だ。矛盾し過ぎている。


 ベイクは村が見下ろせる丘の上の、目立たない森の中にお墓を作ってやった。ここからなら娘さんの成長が見守れる事だろう。


 一緒に村を見下ろした。人口千人くらいの小さな村だから、向こうの端は辛うじて見える。山に囲まれた盆地の長閑な村。土に帰った彼が命をかけて守りたかった村。ベイクには故郷は無かった。気がつけば王都の喧騒に満ちたアカデミーで木刀を振り回していた。特定の土地に愛着を持つなど考えられなかった。


 そろそろ行かなければ、とベイクは思った。誠に馬鹿馬鹿しい話だが、ベイクと彼が救った村の住民達は血眼で彼らを探していて、殺したくて仕方無くなっている。まあまあ離れたここにも、いつ追手がやって来るか分からない。


 本当に馬鹿馬鹿しい話だ。な?

 手向ける花も無かった。摘みに行く時間も。


 じゃあな。ベイクは立ち去った。

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