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01_プロローグ:こんなリオンは知らない。

 


「姉さま!良かった、怪我はない?」


 いつものように泣きそうな顔で、私の可愛い義弟、リオンが蹲った私に駆け寄る。


「リオン……?」

「本当にびっくりした!姉さまが死んじゃったらどうしようって」

「リオン」

「もう2度と僕をこんなふうに怖くさせないで?姉さまがいなくなったら僕は生きていけない」

「リオン!」


「なあに?フィオナ姉さま」


 なあに、じゃない。

 何って聞きたいのは、どう考えても私の方で……。


 リオンに支えられながら体を起こして、目の前の光景が本当に現実なのか直視する。

 目の前には私を襲おうとした賊の男たち数人がぼろぼろの状態で気を失って倒れ、その男たちが連れていた狼型の大きな魔獣が、血まみれの、見るも無残な状態で転がっている。


 あんな魔獣、私は倒せない。

 男たちだって、手練れで、こんなに人数が居れば相手に出来ない。


 だから……だから、私はもう、ここで死ぬんだと、諦めて……。


「な、にが……何が起こったの……?」


 何が起こったも何も、私はこの目で全部見ていた。リオンがやった。それだけだ。

 でも、だって、そんなはずない。


 だって、リオンは、私の可愛い義弟は、泣き虫で、弱っちくて、学園での魔法の成績もなかなかよくならなくて、すぐにいじめられて、私がいないと何もできなくて──。


 リオンは私の口をついて出た言葉に、一瞬キョトンと不思議そうな顔をした後。何かを思いついたように「そうか、そうだよ」なんて呟いて、すごく嬉しそうにはにかんだ。


「ねえ、姉さま。今、姉さまは僕が助けなきゃ絶対に死んでたよね?」


 どうしてそんなに幸せそうな顔で笑って、そんな話をしているの?


「僕が助けたから、まだ姉さまは生きているけど、そうじゃなかったら死んでたよね?」

「そ、うね、」


 掠れた声でなんとか答えると、リオンはますます笑みを深める。まあ僕がいるから、絶対にそんなことにはならないけど、と呟いて。


「つまり、今からの姉さまは全部僕のものってことでいいよね?」


 これは、誰だろう。

 こんなリオンは、知らない。


 そんな私の気持ちなどお構いなしに、リオンは突然ハッと息を飲み、サッと顔色を真っ青にさせる。


「あ、あ、姉さま、手から血が出てる……」


 途端に眉根を下げて、瞳一杯にウルウルと涙が溜まっていく。見慣れた、泣き虫なリオンの顔。

 この顔が、好きだった。私がいなければ生きていけないんじゃないかとすら思える、弱いリオン。


「ごめんね、姉さま、傷つけてごめんね……」


 悲しそうに何度もごめんねと繰り返しながら、リオンは私のほんの少し擦りむいた手のひらを掬い上げ、自分の口元を寄せた。

 そして、あろうことかその傷をぺろりと舌で舐めあげる。


「ひゃっ……!?」


 思わず声を上げた瞬間、何かが私の周りを光って、パチンと音を立ててはじけて消えた。


「これで大丈夫!もう2度と、誰にも姉さまには触れさせないから。……全部、全部、やっと僕のものだ」



 ……今の、光。今の魔法は、まさか。


「姉さま、約束してくれたよね。──ずっと、僕と一緒にいてくれるって」



 私は今まで、リオンのことをほんの少ししか知らなかったのかもしれない。

 湧きあがってくる得体の知らない感覚に、体がぶるぶる震えるのを、止めることができない。



「姉さま、大好きだよ」


 リオンはそんな私の反応に嬉しそうに目を細めて、うっとりと愛を囁いた。



※あらすじにも書いてますが、もう1つの企画参加作とどちらも「死んじゃうくらいなら全部もらっていいよね」というコンセプトで書いてます。全然テイストの違う作品ではありますが、似ていると感じる部分があるかもしれませんのでご了承ください。

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[良い点] 年下のあざとかわいい(自覚あり)ヤンデレの気配…!しかもなにかやりましたね?!やりましたよね?!?!?!?!!?!やりましたよね?!?!?!?!!?!しょっぱなから「あっやっぱり好きです(…
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