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白紙の庭  作者: メメ
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3.

バス停に着いた途端、僕の意識はすぐさま夢から引き離された。

大分と走ったからだろうか、身体中汗でビタビタになっていて、布団が嫌になるほど熱い。

とりあえず時計を見ると時刻は7時で、のそのそと布団から外に出てリビングへ向かう。

リビングに入るなり、母親に汗をかいたからシャワーを浴びると言って、その間に朝食の準備をしてもらう。

結局あれはなんだったのだろうかと思うが、考えたところで答えなど出ないのでいい加減ご飯を食べることにした。

カットされたトマトの入ったサラダを小皿に分けて箸で摘む。弾力のある食パンにプレートに置かれてるエッグベーコンを挟んで、口の中に入れる。頭の中は夢の考察ばかりでまともに味を感じる事が出来なかった。

いつもの時間になったので学校に行くために準備をする。いつもよりのそのそと動いていると自覚するが、特に問題は無いと思い外に出た。







結局のところ学校に着くなり様態が急変し、全身の寒気と猛烈な身体内部への嫌悪感が僕を襲い、その異変を感じた担任の先生は、すぐさま保健室へ移し親が迎えに来てそのまま病院へ、診断結果でインフルエンザが自分の身に住み着いている事を知った。

家に帰るなり、僕は学校に連絡をいれる。季節が季節なだけ事もあり、全く驚かれることは無かった。最後に先生は「無理はしないようにね」と言って受話器を下ろした。

さて、マスクをつけ十二単のように重ね着をさせられている僕は、ゆったりと家の廊下を歩いて自室に入る。



小学校低学年の時は、インフルエンザにかかったら遊べるとか考えていたけど、実際かかってみると遊べる元気なんてこれっぽちも出ないもんだなと考えながら片付け終えていない布団に体を潜らせる。


柔らかい感触が背中から包み込み、僕の体が少しずつ下に吸い込まれていく感覚がした。


呑まれている感覚はあったが、それに抵抗する気もなかったので眠りにつこうとすると、包み込んでいた何かが破れたかのように僕の体は自由落下した。


実際には落下したのは体ではなく意識なのだろうが、強い重力を感じながら僕は仰向けの姿勢で落ちていた。


目を開くと眩しくて目が開けられないような感覚に陥った。


落ちている方面を見ると、ただただ白い世界に黒い絵の具が斑点模様のように所々付着しているような場所に落ちている事が分かる。


そして僕が落ちているその真下にはバス停と、数メートル先にゆっくりとしたスピードでそのバス停へ走らせているバスが見える。このまま行くと僕の体はバスの目の前に落ちて轢かれるか、バスの真上に体をぶつけてしまうだろう。




多少の痛みは伴われるだろうが特に気にする事は無いだろうと考え、そのまま垂直落下する。


空気抵抗のせいで全身に強い風が纏い、今の自分に感覚がある事を切に感じた。




恐らくこのまま落ちてしまえば確実に死んでしまうだろう。近くに落下のスピードを落とせる障害物は無い。



この場合にすることは1つ、諦める事で目を瞑った。そうすれば落ちるまでの恐怖も何も焦ることも無くなると思ったからだ。


不思議と風圧も感じることはなく、恐怖も失ってしまった。


体感40秒。普通であれば僕の体は、地面に初めてのキスを奪われ頭から骨を砕かれているだろう。


既に死んだことを予想してようやく閉じた瞼を開けることにした。




目の前の鉄の板が接近してきて、僕の顔面が衝突すると同時に僕の体はバスの座席に座らされた。


「……????」


頭部にじんわりと感じる痛みを堪えながら、僕は席の周りを見渡した。


いまさっき走り始めたと思えるほどノロノロとした動きのバスがガタガタと音を立てて耐久性への不安を感じさせる。少しばかり薄暗い照明なのか、今までここまで黒っぽさのある所を見たためか、窓の外に浮かぶ白が余計に白く、まぶしく光って見える。

バスの中には僕以外の乗客は見当たらないのは、このバスが暗くなっているからだろうか。


「そんなに必死になって人の温もりを探そうだなんて、そんなに君は人間が大好きなのかい?」


僕の前の席から声が聞こえる。姿が全く見えないけれど、沢山空いているシートの中でわざわざ僕の前に座る人なんて彼女しかいないだろう。




「そんなことはないけど、ていうか君は喋れたんだね。いままで口を開いたことがなかったから」




僕はなるべく慎重に言葉を選びながらそこにいる彼女に質問する。


今まで彼女が口を開くことなんてなかったので、聞かなければいけないことがあるように思えた。


「もともとしゃべれないと思ったのはそっちなだけで私は悪くないと思うんだけど」

少女の口から出た言葉は少しばかり攻撃的で、僕の事を世界の異物のように扱いで話しているような感じがした。


「ごもっともです……ところで君はこの世界が何なのか分かる?僕が聞こうと思った人たちはみんな聞いてくれないんだ。」


「それはそうだろう。君はこの世界にとってイレギュラーみたいなものだ。君の肌はどう考えても不思議じゃない。」


「それを言うなら君も人の事は言えないんじゃないか?」

透明な少女のとげとげしい言い方に少しばかり腹を立て、言い返すように疑問をぶつけると彼女はいたって正常だと答えた。


「君のその体はこの世界の二色しかない世界にとってある意味新しく参戦してきた新たな色なんだよ」

自分の両手を見つめ、その混ざり切っていない灰色を見つめてから少女の話を清聴する。


「君のその灰色で白も黒も扱い方が分からず相手にすらしないのだろうと思う。仕方がないので説明をしておくよ」

上からものをいう形で、少女は僕の知らないこの世界について教えてくれた。

内容として、白と黒には優劣があって白の人たちはいい気になって黒の人たちを卑下しているということくらいだった。


「君が白でも黒でも無くて透明な事の説明がされていないんだけど、君が透明なのはどうしてなんだい?」


「……何を言ってるの?」

少女の冷静に見える言葉は僕の言っていることに疑問を持つ形で言っていたことに少し驚いた。だが彼女が今まで過ごしてきた白の街で、ほぼすべてが白の街で透明な彼女が自分が透明であると自覚するのは難しいということを理解した。あの時僕が黒く変色してしまった石の色が彼女の足から透けて見えなければ普通に白いだけの人だと思っていただろう。

ここは言うべきだろうか……


「いや、君の体が透明に見えただけなんだ。最初にあった時、黒く染まった石が君の白だと思っていた足から色が透けて見えたから……透明なのかなと思っただけなんだ。」

考えた結果、言う事にはした。ただ、彼女の先ほどまでの上からの様に見えるものいいから、彼女にはなるべく彼女の意見を直接否定しないように考えて言った方が良いと考えた。考えて話した結果、どことなくぎこちなく自身がなさそうな弱弱しい発言だと自分で感じた。


少女はその発言を聞いてしばらく黙り込んだ。座席の向こうの彼女の顔など除くことなどできるはずもなく、そのままかなりの時間を過ごした気がした。


「」

少女が何かを言おうと口呼吸をする音が聞こえて、少し時間が経った後改めて言葉を投げかけてきた。


「なるほど、それじゃあ私はこの世界で一番良い人っていうことでいいよね?」


「ちょっと何言ってるか分かんないんだけど」

少しためらって出てきた言葉があまりにもおかしなことを言い始めたので、慎重に言葉を選ぼうと決めた矢先、つい考えなしな言葉をしてしまった。


「私たちが乗ってるバスがどこに向かって、これからどこへ行こうとしているか知ってる?」


「今度は話を急に変えてきたね、知らないけど」


「いや、これが変わってないんだよ。これから私たちが向かう場所は、私が考えた中で世界の中で一番の善とされる場所に行こうと思っているんだ。」

いたってまじめな、冗談などこれっぽちも籠ってなさそうな声色をしていた。僕は彼女が何を言っているか正直理解できていなかったし、彼女の言っていた白い人はいい人で黒い人は悪い人という考え自体も納得しかねるものだろうと考えていた。


だけど、彼女のいう《《この世で一番の善》》とされるものという物には少なからず興味をそそられる物はあるように感じた。


「全然そんな事聞いた覚えもないし、口なんて聞いてくれなかった気がするけどそれは確かに面白そうだ」

僕は心の中で暴れだす好奇心を抑え込み、そこまで興味のなさそうに言った。


「そういえば、どうして自分の事をこの世界で一番いい人だと思ったの?」


「なぜって、この世界が白が善で黒が悪だけど、君のようないい人でも悪い人にもなり切れない中途半端な存在が出てきたってことは今までは善か悪かの二種類しかいなかったと思っていたけど、実際はそうじゃなくて悪い人にも階級のような区別がされていることになると思ったんだよ。つまり、白にもとんでもなく凄いいい人がいるかもしれないじゃない?」

嘘も冗談もなしにいたって普通の事のように話す彼女の言葉を聞いて、呆れのあまり嘆息が漏れた。しかしそれと同時にひどく安心感を持つことにもなった。彼女は多分すごく変わっているけど悪い人では無いのだろうという信用していいと感じる類の安心感だった。


「どうして最初の時は話しかけても返事も何もなかったの?」


「もともと君みたいな人間に話すつもりは無かったんだ。というか自分の思いついた計画に頭が優先されてて、そこから追ってくる君という存在がすごい目障りというか......あれ?なんか起こりそうな気配してるけど?」


前言撤回、彼女は人間の常識を一ミリも持っていなくて、その代わりに考えなしの人を傷つけてしまう言葉と、頭がよさそうに見えるのに全く考えていない無計画さと、自分が公と決めたらそうなるという頑固さを混ぜ合わせた人間だ。こういう人は社会で馴染むことに関しては絶望的に欠けていて、幸福なことに彼女は全く気付いていないのだろう。


僕は心の中で彼女への回答に、嫌悪感を感じてそれならこっちも言ってやろうと思った。

だが、ここで口に一つでも外に出てしまえばまだほぼ初対面の彼女とのでき始めた信頼関係のようなものは一気に崩れ落ちてしまい、僕はまたこの世界で誰にもかまってくれない一人ぼっちの存在になってしまうだろう。そう考え心の中に押し込んだ。


「ところでさ、君とかは良くないよね?名前か何か教えてくれる?」

とりあえず話を変えようと思った。このまま先ほどの話を続けると、僕は絶えることが出来なくなって、いつか心の中に押し込んだものが全て雪崩れるだろう。


「そうだな、じゃあ少年と呼ぶよ。」

即答、しかもいい加減にみえる名称で僕の事を呼ぶことにしたようだ。


「じゃあ僕は《《少女ちゃん》》と呼ぶよ」

僕は心のなかで反発する言葉を鎮圧させながら、彼女を少女ちゃんと呼ぶことにした。少年と言われたからには少女と呼んだ方がよさそうだと思ったけど、少年と違って少女と口に出すのは若干の抵抗を感じた。なので、まだ呼びやすそうだと考えた少女ちゃんと呼ぶことになった。


「それは嫌がらせで言っているのか《《少年くん》》?」


「いやいや、僕はいたってまじめに少女ちゃんと呼ぼうと思っているよ。」

実際の話ぼくは確かに真面目に考えて少女ちゃんと呼ぶことに決めた。

真面目に少女ちゃんが嫌がるであろう呼び名を考えてそ

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