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白紙の庭  作者: メメ
11/11

10

今回はここで終わりになります。

次回はまた時間が出来たときに、以前完結させたヴァージンロード(納得行けてないので)のリマメイクか、新しい小説を作ろうと思っています。

『続いてのニュースは今年文学賞を取った小説家なんですけど、なんとですね!!彼女は今年高校生になったばかりで、今年初めて小説家デビューをしたそうなんです!!』


テレビのコメンテーターが僕に直接語るように言葉を投げる。控えめにいってもうるさい。


今日もいつもとかわらず味噌汁とバナナと鮭の入ったおにぎりを朝食として食べる。


「そろそろこの味にも飽きてきたから、メニューの変更をお願いしたいんだけど。」


「私自身だいぶ前から飽きていたから全然いいけど、私が好きなようにしていい?」


「僕が食べれるものであればお任せで」


「あんたが朝同じものしか食べないからでしょうが」


毎月に一度か二度は行っている言葉の掛け合い。もはやこのやりとりも何度やっただろうかと数えることもないこれは、ある意味家族の伝統行事となっていた。


『このお父さんが現役の小説家で、彼女の小説の書き方はお父さんの書き方を見て覚えたようなんですよ。』


「あれ?この子ってたしかうちの小学校に通っていた小説家の女の子よね?お父さんと同じ小説家になったんだ。」


「そうだっけ?」

僕はあまり興味がなさそうにバナナの皮を剥こうと思ったが、母親はテレビから目を離さないので、母親のお皿にあるおにぎりを見て右手を延ばすと恐ろしく早い手つきで僕の右手を打ち払った。僕は気を取りなおしてバナナの皮を剥いて食べる。一口で半分くらいまで無くなってしまった。


「高校生でもう仕事に就くなんてすごいわね世の中ってすごい人がいるもんね」


「まぁ、世の中に一億は人が言わけだから、一人位そういうやつがいてもおかしくないんじゃない?」

朝ごはんを取り終え両手を合わせる。

ごちそうさまでした。


流し台にお皿を置いて自室に戻り、新品に近くまだ汚れの見えない制服に袖を通す。

四月ももうすぐ終わって近いうちに少し忙しかった高校生活もひと段落する時期になるだろう。

僕はカバンの中身と今日の用意を確認してから玄関に移動した。


「行ってきます。」


「いってらっしゃい」

リビングから水の流れる音と母の声が聞こえた。


いつもと変わらない道路。小学生が通学路を列になって歩いている。


「おい!走ると危ないからコケるなよ!」

高学年の男の子が強い言葉で低学年の子供たちに圧をかける。

あの少年も俺がいたときは、はしゃいでいたくせにと少し笑みがこぼれる。

自転車で小学生を追い抜き、駅につく。いつもと変わらず自転車から鍵を抜くときに上から電車が向かってくる音が聞こえる。

定期券を改札口に差し込み、変わらない時間の電車に乗り込んだ。



つい最近、赤池先生の結婚が決まったらしい。あの赤いジャージのパッとしないけど美人な先生だ。

まさか本当に結婚できるなんて、結婚式に僕達を招待するなんて夢にも思っていなかったから凄く驚いた記憶しかない。

不意に机の上に乱雑におかれた額縁に目が移った。

額縁の中に入った白と黒のよくわからない絵。未だにこの絵に価値を付けるにしても多分つける人は僕くらいだろうと思えてくるような小学生の落書きみたいな絵。

無意識に手に取っていたその絵を眺めて彼女はいったいどうしているのだろうかと考えていたが、今日それを知って衝撃を受けた。彼女は一般の不思議系小学生から小説家に様変わりしていた。

名前も有機明(ゆうきあきら)となんとなく僕にメッセージ性のありそうな名前にして小説家デビューをしていた。

対して僕は、いつもと変わらずそこそこの友人と一緒に学校内で平凡の生活をしていた。

平凡な小学生から平凡な高校生に平行移動しただけだった。

ただ単純に自分がどれくらい生き方に満足したかという自己採点みたいな感じで採点を行うと思っていたら、彼女の考え方と違いがあったのか第三者が見ても彼女の実績は素晴らしいものだと認めさせるような。そんなものを目指していたようだったのだ。


何という大きすぎた差異だろうか......

これでは結婚式で彼女と出会った特に彼女はどんな顔をするだろうか想像する。


......想像するけど、成長した彼女の顔を見たことがないからどんな顔をしているか分からなかった。

仕方ないのでどんな感情を持つかを考えると、「え、私こんなに頑張ったのに何もしなかったの?」か、「やっぱり私の解答が正解だったみたい!」のどっちかだろうというのは容易に想像できた。


勝てるわけがないのだがすごく悔しい気持ちがあった。

いったいどんな顔して結婚式に行けばいいのだろう。

僕の心には久しぶりに薄い雲がかかり始めていた。


「ユーキおはよー」

学校にたどり着くと後ろからヨッちゃんが挨拶をしてきた。

小学生の時にいたガキ大将的なポジションを気取っていた彼だったが、高校でも相変わらずクラスを仕切るリーダー的な存在になっていた。


「ヨッちゃんか、おはよ」

いつもの気が抜けたような声をだす。


「赤池先生結婚するらしいよ」


「まじか!俺、先生のドレス姿と旦那の顔見てみたいな」


「俺も見てみたかったなー」

どうやら先生の結婚式の招待状を渡されたのは俺だけみたいだった。

ここで俺は結婚式招待されてるとか言ってしまうのはあまりよくない気がしたので、あえて言わないことにした。


「あ、アオイ、ユーキ君おはよー」


「おはよ」

バレー部の女子たちは朝練で早い到着のようで、教室で集団のグループで話していたときに教室に入ってきたのを確認して挨拶をしてきた。

彼女たちといつも通り意味のないような会話をしながら時間は過ぎていく、きっと彼女はこの時間にでも小説を書いているんだろうなと考えると明らかに住んでいる世界が違うのではないかと思えてくる。

そうやって教室にいつも通りのメンバーが入ってきて、皆でバカみたいなことして遊んで勉強して騒いで部活をする。先輩に勧誘されて入れられたバドミントン部だったけど、まぁまぁやれてそうだ。体に筋肉がついてきて最近少し重たくなったかなとは感じるけれどうまくやっている。


部活を終えると暗くなった夜道を歩いて駅に向かう。

少し涼しい風を体で感じて、俺は久しぶりに帰り道を一人で歩いている。

長い間誰かと帰っていたせいか、俺は一人の時間を久しぶりに感じてなんとなく寂しさを感じる。前を歩く会話を続け、横に並ぶ学生を邪魔そうに見るスーツ姿の男性。

駅前で立ち止まって話し続ける女子生徒たち。普段見ない景色を見ている気分だった。

不意に彼女の事が脳裏に浮かんだ。少女ちゃんのことだ。彼女は今頃どんな生活を送っているのだろうか、小説家になったことは分かったけれど私生活面ではどんなことをしているのか気になった。





結婚式当日。

僕は高校での制服を着て会場に向かった。たどり着くまでの電車と道で迷いそうだったが、スマートフォンを片手に見てナビの予定時間の十分遅れてたどり着くことが出来た。

大きな白いお城の会場のようで歩道の両脇にガーデニングされている木が赤い花を咲いていた。恐らく関係者の男女がスマホで写真を撮ってはしゃいでいる。

彼らが撮っている写真はよく遊園地の近くのホテルなどでよくみるような造園で白い噴水の周りに作られた同じ種類だけど違う三つの色のバラが囲んでいた。

たしかに結婚式なんてものを来た経験は一度もないかもしれない。そのためこの会場はすごくきれいに飾られていてとてもきれいな会場だった。

緑に囲まれた道を歩いて進むと会場にたどり着いた。たどり着くと一人の三十代位女性が僕を見てから色紙とペンを持ってこっちに向かってきた。

なんでも、サプライズとして先生とお相手の二人にメッセージを送ろうと考えているそうだ。僕も先生のほうの色紙を手にしてペンを握る。先生の色紙には色々な人のメッセージと名前が書かれていて、僕もそれに沿ったような言葉と名前を書いておく。

男性の方にも全くの初対面なのに僕の思う応援のメッセージと自分の名前を書いた。

彼女の名前は何処にもなかった。




「新郎新婦の入場です!」

司会の合図とともに扉は開かれる。周りから割れんばかりの拍手と同時にヴァージンロードを歩く二人の男女にスポットライトが集中する。

明らかに緊張の色を見せる黒いタキシードを来た男性と柔らかな笑顔を見せるウェディングドレスを着た女性が今日の主役であることを再確認する。

二人が席に着くと次に開宴の辞に移った。

結局僕の目の前に彼女の姿を認識することは無かった。

全てが白く装飾された箱のなかで、これだけ多い人たちがいる中でたった一人の少女を探すこと自体が難しいのかもしれないけれど......


いや、今はそんなことより先生のお祝いを優先しよう。結婚式で悲しそうな感情を見せるようなことは絶対にあってはいけない。司会のウェルカムスピーチを終わらせると全く面識のない人の主賓のメッセージを聞くことになった。

ケーキを入刀した後、僕達はテーブルに出されたごはんを口にする。フライドポテトなどの知っているものから、全く見たことのないものまで並べられているお皿を吟味しながら食べられそうなものだけを選んで自分のお皿に盛りつけてテーブルに着く。全く知らない人たちに先生の教え子だと自己紹介をしながら、彼らの口から先生の若かったころの話を聞いて盛り上がっていると先生の親が挨拶周りで僕の席に来た。


「あれ、貴方って生徒さん?」

顔の整った小奇麗な六十代ほどの女性が俺に尋ねた。

僕はそうですと答えると、先生も喜ぶと思うから次のお酒注ぎ行ってみない?と聞かれ、そのまま場の流れで注ぎに行くことになる。


「あー!悠稀くんじゃん!」

先生は僕を見るなりいきなりテンションを上げて僕の名前を呼んだ。

隣にいる男性はすでにお酒のせいかダウンを決めている。先生はこれを見て仕方のないと言いたげな顔で僕を見る。


「この人入場から緊張しちゃってお酒を飲んで緊張ほぐそうとしたら逆に呑まれちゃったのよね」


「え、じゃあこれは......」


「大丈夫、私が飲むから!」

僕は先生のワイングラスにシャンパンを注ぐ、綺麗な透き通った黄色の液体が空のグラスを満たした。

ありがとねと先生は僕にお礼をする。

僕は会釈をしてから席を離れようとすると先生は僕を呼び止めた。


「ねぇ、あの子は見つかった?」

きっとここであの子ということは少なくとも僕だけでなく彼女もこの式に呼んだことは確かなのだろう。


「いえ、まだ見てないですね」


「そっか、残念だな......わざわざあの時の解答をするために二人だけを呼んだのに......」


「だから僕だけ知ってて吉田君には招待状が来てなかったんですね......まぁ、彼女は今やニュースになるくらいの大物ですからスケジュールに合わなかったとかなんですかね......」

そういって僕は席から離れる。

まぁ、彼女と会えなかったのは残念ではあるが、同時に彼女の超人さを見せつけられることにはならなくて済んだ。そうほっとする自分がいた。あの時約束した僕を置いてとてつもない速さで先に進んでしまった彼女を見る事に僕はまだ覚悟が決めれてないようだった。


そのあと、先生と男性はこっそりと会場から抜け出すところが見えた。

何をしに行くのか近くの男性に聞くとお色直しと言って衣装を着替えるらしい。

その間に今日来れなかった招待客のメッセージを司会が読んでいたが、その並べられた人の名前の中に彼女の名前、東白雪の名前は存在しなかった。


彼らが戻ってきたのは二十分後で、戻ってくると同時に司会が口を開いた。


「それでは、新郎新婦も戻ってきましたので本日新婦さまが特別にお呼びしてほしいと呼ばれた特別ゲストを紹介したいと思います!」

その言葉を聞いた瞬間。部屋の照明が全て唐突に落ちた。


「それではスペシャルゲストの登場です!今回登場していただくのは最近小説界を揺るがした期待の高校生ライター『有機通』さんです!!」

その言葉と共に暗闇に包まれた世界は一瞬にして白く染まった。

急に明るくなったため、目がくらむ。

新郎新婦のモニターには誰もいないし、ステージらしきところにもいなかった。

会場全員が動揺をする中、一人の女性が「あぁ!!」と声をあげみんなの視線が一転して俺に集まる。


いや、この集まった視線は俺ではなく俺の奥の人物を指しているんだろう。

ゆっくりと俺は後ろを振り向く。


.........


「...久しぶり。」


「お、お久しぶりです。」


瞬間、白い箱の世界に一瞬の色が包んだ気がした。

その色はかつて僕が創造性の青と称した色に染まったきがした。


箱に一瞬の青を伝い。僕の周りに沢山の色が世界にあふれ出た。

スポットライトとパーティークラッカーのちり紙が僕達を囲んだ。


「えー、この二人は新婦様が教師として初めて小学生の卒業式を迎えた一期生だそうです!それでは二人ともステージへどうぞ!!」

彼女は”僕”の手を引いて強引にステージへと歩いていく。

僕はあまりの出来事に未だ状況の整理がつかないままステージに立たされた。





「ごめんね、本当は私たちが主役のはずだったんだけどね」

先生は男性に何かを話しているのが分かるが、何を話しているかここからでは聞き取れなかった。


「でもあの子たちの卒業したときの答えをしっかりと見届けないと教師としての仕事だからね」


先生が何を言っているのか気になっていると、いきなり少女ちゃんはスピーチを始めた。

それは僕と彼女と先生の話で、彼女が初めて書いた小説の話だった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。


今回のこの作品は僕の人生の決別のようなものを書きたくて書きました。

皆さんはこの物語をどれくらいまで読んだかは分からないですが、作り手としては八割満足のいく作品にはなれました。


さて、僕は小説にはメッセージ性があるものが大好きで僕が書くときもそのようなものを作りたいと思っています。


この作品の少年少女たちは思春期ということもあり、親や異性。沢山の物に悩み憑かれる時期に入ると思います。最近の人たちは知らないですけど、中学の頃の僕にとってはどうしようもないほどに傷ついたり問題を起こしたりして、最終的には自信も自分の生きる理由も、何もかもを捨ててしまった高校生でした。


高校生ではこれといった問題を起こしたりはしなかったのですが、自分にとっての反省点は多く心に残りましたし、なにより自分の根本的な間違いに気づきました。

そうして今の僕はあるわけですが、嫌な事だけではありませんでした。

僕の人生においてはいくつもの助けになった先生がいて、彼ら彼女らがいなければ僕はひどい人間だったでしょう。


その先生の中でとある臨時の先生が僕の事を大変気に入ってくれて、その先生は最後にあなたの人生の成功を信じています。そういう趣旨の手紙をくれたとき僕の心は一つの分岐点に到達したような気分でした。


それまで僕は中学で何もかも失ってから、人間ではないと思っていたし人との深い関係までいたろうとは思っていなかった。人とかかわるのが怖くて仕方なかったんでしょうね。

その結果、誰かに気に入ってもらうことはほとんどなく、あったとしても拒絶していたり距離を取っていましたが、その先生との出会いで僕は少しずつ人という物を信じて行こうと思いました。


つい最近僕の前に一人の悩みを持つ同級生と出会いました。

彼は今を生きるのが苦しくて苦しくて仕方がないと嘆いていました。


その時の彼の話を聞いて自然と涙が頬に流れたとき、僕は初めて人間になれた気分でいました。


今まで深く人とかかわっていなかった僕にとって、他の人の苦痛に感情移入できるほど僕の心は優しくない酷く荒廃した存在だったでしょう。

そんな僕にとってこの出来事は初めて人間と真正面から向き合っているような気がしました。


現在大学で自分の事を久しぶりに好きになった気分でいますが、これは僕だけでなく世界中の人たちにも自分を好きになってほしいと思っています。


さて、ここでこの話を続けてしまうと話をまとめることが出来ないほどのレポートか論文を書いてしまいそうなので、僕は人生の出来事と、この小説を混ぜて作ったことを今読んでる人は何となく感じてくれると助かります。


少年少女は先ほども言った通り悩んでいましたが、とある分岐点に到達したときその悩みは消えたように解決して恐らく成長をしたと思います。

こうやって何かしらの分岐点に立つことは小説とかマンガだけではなく、現実でもこういうことは可能です。もし今何かに悩んでいる人がいるとすればそれは新たな自分を作り上げる一歩になりうると思っています。

もしそのことで悩んでいるのであればその悩みは誰かにぶつけて一緒に分け合ってほしい。悩み続けて以前の僕みたいに自分の事を嫌いにならないでほしいし、生まれ変わってほしいです。ひとりで変わるのはとても難しいですし、人に頼ることはこういった人たちには難しい人がほとんどでしょう。僕がそうでしたから……


でも、そこでいつまでも足止めを食らっていたらそこで終わってしまいます。誰でもいい。僕でもいい。誰かに悩みを打ち明けてみてください。こういうのは人を選ぶと思うのですが、言うだけで心は楽になりますし、もしかしたら僕みたいな悩みを真剣に聞いてくれる人もいるかもしれないです。


それではこの辺であとがきは終えるとします。

また僕がつくりたいメッセージが出来たら小説活動をしてみたいなと思っています。

最後に、今現在で人生に何か大きな壁に直面している人がいたとしたらこの言葉を送りたいと思います。


あなたの人生の成功を信じています。

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