プロローグ
LINEノベルの令和大賞のために書いた作品なのですが、大賞の為だけに出すのはもったいないので元々活動していたこちらでも小説を出していきたいと思います。(向こうの規約違反ではないと思いますがまずければ消します。)今回のこの小説はもう書き終わっているので、次回に昔から書きたかった小説を書こうと思っています。
この世界がいつから作られたかは、僕には想像できない。
ただ、あの女の子はこの世界は善と悪を主題に作られてると言っていた記憶を思い出す。
周りを見渡す限り飽きるほどの白の街。
色という概念そのものが抜け落ちたのか、空までもが青を見せず太陽と思われる少しばかり存在感を見せるような空に浮かぶ丸形は、死んでしまったのか温かさを見せる色すらない。
街の人の肌も僕の知っている肌そのものの色を失い、ただただ白く不健康さを感じる。
白い目、白い髪、白い肌をした人間を見ていると、昔見た人の死を送り届ける映画で亡くなった人の送別式を思い出して、それでも動いているこの人間たちに少しばかりのの恐怖心を感じる。
ここを一言で表すなら《《限りなく白に近い街》》と付けるのが相応しいだろう。
ほぼ全ての人物、建物は白いし恐らく寝るときも暗くなることはない。
ただ、完璧な白の街になれないのは、この街にいる黒い人、建物と僕がいるからだろう。
まず、この世界の彩りはほぼ白色で塗りつぶされている。
だが白だけであれば、そもそもこの世界を認識することは出来ないと思った。影や輪郭も白であれば見えないと僕は思う。
その輪郭や影を出すためなのか、白だけでなく黒も世界に足されたようで、この世界は白と黒の2種類しか存在していないようだ。
元々、白と黒は色ではなく、明度でしか表せないため、色とは言えないのかもしれない。
そしてその黒のエネルギーを強く体に受けたのか、白い人だけでなく黒い人もいる。
彼女曰く、白い人と黒い人に違いは無く、ただ体に塗られた色と容器(恐らく輪郭のこと)の色が違うだけだと言っていた。
だけど、白い人と黒い人がいると、どちらが優れているかという差別が生まれた。
恐らく白と黒の色がなかったとしても、人は優劣をつけたがるから何かしら別の差別対象が生まれて、このようになっていただろうけど……
ある時、1人の黒い人間が問題を起こした。
たまたま白い人が大勢いる道路の真ん中で酔っ払って寝ていたとかそういう小さくてくだらない問題だったのだろうと彼女は言っていた。
しかし、それを見た白い人々は、黒は不真面目で犯罪や人の困ることをやる生物と、「黒=悪」と見るようになった。
黒い人間は迫害をされ、白の表社会から姿を消し、黒の街を作ってひっそりと過ごしているようだ。
白の人間が誰一人いない場所を見つけて彼らは黒く塗りつぶし、黒の街を作った。
それ以来、白の人間は白の街にしか住まない風潮があるし、黒の人間のほとんどは黒の街にしか住まない。
しかし、白の人は誰一人として黒の街には行こうとしないが黒の人はごく稀に白の街に住もうとする人がいる。
だから白の街が完璧に白になれない理由。
その一つめがこれで、もう1つは僕の存在だ。
僕の色は白くないようだ。
しかし、ここで僕と黒の人を区別しているのは理由がある。
僕は黒の人でも無いようだ。
黒でも白でもない灰色。それも綺麗とは言えず、限りなく汚らしいある意味芸術的な色合いのグレーを容器に満たしている僕は、いつまでも希望を持てないような濁った瞳を宿して今日も味の無い白紙の空を眺めていた。
いつからこんな世界に生まれていたのかすら覚えていない。
長いようで短い。気づいた時には既にここに存在していたような気分でいた。
ため息がもれる。
白い人達は皆、僕という道の存在に嫌悪のようなものを見せていた。
あれはいつから始まったのだろうか、あれは……そうこの街と同じで白が降り積もる季節だった。