あまのじゃくのささやき
先生がカツカツとチョークを黒板に叩きつける。
余計な力が入り、それは瞬く間に短くなり新しいチョークを取り出してまた荒々しく白い粉を舞わせた。
僕はそんな事が気にならないほど彼女の背中に夢中になっていた。
小学生……いや、もっと前からの幼馴染。
ゆずは。物静かで派手じゃないのに、どこか目を奪われる端正な顔立ちをしていた。
もう最初に言っておこう。
僕は彼女のことが好きだ。ずっと前から。
見た目もどんぴしゃだし内面も世話焼きで面倒みが良くて、だけどちょっと抜けてる。
クラスだけじゃなくて学年でも人気があるのもうなずける。
聞いた話によると何人も告白して、全員ふってるらしい。
理由は「なんかよく分からないから。もう少し私が大人になったらね」と決まってそういうのだ。
もしかしたら僕の事を待ってるのかな? なんて事を考えるのは浅はかだろうね。
案の定とでも言っておこう。
僕には壮大な悩みがある。ここまで前置きをしたんだ、もちろん彼女のことだ。
でも普通の恋バナとは少し違って全く別の悩み。
命題
『僕は本当に彼女のことが好きなのか?』
なんてね。
容姿端麗、愛嬌もある学年の人気者。
そんな彼女が、クラスの端っこが特等席の僕が好きになるのはどこかおかしいとも思ってるんだ。
みんなが綺麗だって言うから綺麗に見えて
みんながかわいいって言うから可愛く見えて
そうやって流されてるだけじゃないかってね
だから僕は一つ、実験をしてみようと思う。
彼女のどこがいいかいくつも言えるけど、
嫌な所は言えない、考えたことがなかった。
だから、これから彼女のイヤなとこ、嫌いなところを探そうと思う。
盲目な僕の心を覚ますために、ね?