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魔王様とお姫様   作者: ナカムラナヲ。
4/4

だいたい寝る時は裸です

……チュン、チュン。


いくら、魔王城といえ朝はくる。

それが、爽やかな朝だって多い。



いつ如何なる時も 空が暗天の訳ではない。



魔王の寝室。



ロココ調の家具に囲まれ



大窓の側に 天蓋付きのクィーンサイズのベッドがあった。




「……んっ。」


日差しがベッド内を照らす。



そこにいたのは クィーンサイズには


十分有り余る程に小さな体の魔王だった。




真っ白なシーツの海に

解いた金糸の髪が花咲くように拡がる。


おそらく、疲れもあってそのままベッドに飛び乗ったであろう。


大きめのシャツから細く張りのある生足がスラリと伸びる。




まさに天使の様な彼女こそ



この世界で最も強大な闇の魔力を持つ


魔王である。


「…んんっ。」



瞼の裏に光を透かされ


魔王 アーティは小さな吐息と共に覚醒した。


魔王が目覚めた。文脈通りなのにイメージはかけ離れている。




あぁ……もう、朝なのね。



アーティはまどろみながら、ゆっくりと


目を開けた時…







目の前に エリー姫の寝顔があった。






「……え?」



すぅすぅと息をたて、いつもの変顔がない貴重な美少女姫の寝顔シーン。


だが、



よく見ると 少なくとも上半身は何も着衣していない。


挿絵(By みてみん)


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」







魔王の寝室から 叫び声が響いた。




「どうしました!?魔王様っ!!賊ですかっ!?」


「まおうさまっ!」



悲鳴を聞いて セイレーンとゴブリンが部屋に飛び込んで来て



「ッ!!?」



その目を疑った。



「あわわわわわ。」



ベッドから転がり落ちた半裸の魔王



ベッドの上でシーツにその身体を隠しているが



全裸だと分かる姫。




もはや、言い逃れは出来ない状況。

というか、完璧なる


「………事後。」


セイレーンのつぶやきに



「ち、ち、ち、ち、違うわよっ!!」



アーティは 顔を真っ赤にして 涙目になり



首が取れるんじゃないかと思うほど左右に振る。


事後=事を為した後、何かをしでかした事柄。



「……まおうさまと


ひめさま…はだかでナニしてたの~?」


シャオが曇りなき瞳で問うが、


セイレーンは反対側を向かせて退室させようとする。



「さぁ。シャオはこんな汚れて、ふしだらな、それでいて下品で、ただれた光景を見てはいけませんよ。」


セイレーンは冷たい視線をベッドの二人に刺す。



「言い過ぎでしょ!!ご、誤解ですわ!



わ、私がこんな事をする訳ないでしょっ!!」



部下に必死に 誤解を主張する魔王。



しかし、この場を更に


引っ掻きまわす事を愉しむ者もいた。





「ガーン!


酷い!!酷いわっ!!」



エリーが目をうるうると 潤ませながら



ショックを演技する。



その手には、いつの間に目薬が。


「今コイツ自分でガーンって言ったわよっ!」



「あんな事やこんな事をして…



私をムチャクチャにしといて…


ぐすんぐすんwww」



「~~~~~ッッ!?


いい加減な事を言わないでっ!?」



「魔王様!!


あんな事やこんな事やそんな事も!!?」


「そんな事はしてないわよ!!!」


エリーとセイレーンの


演技くさい泣き真似と嘘くさい驚きに


朝から振り回されるアーティだった。



「で…?何で貴女は…私のベッドに潜りこんでいたの?全裸で。」



ようやく、落ち着き


メイドのサイクロプス ノーラが作った朝食が用意されたテーブルへとつく二人。




「……話せば…長くなるんだけど…。」



エリーが俯き 呟く。



「めちゃめちゃ厳しい人たちが不意に見せた優しさのせいだったりするんだろうね。」


バチィィィィン!!


「ありがとうございますっ!!」


アーティの無言のフルビンタ。


ゴ ゴゴ ゴゴゴ


わりとマジの魔力を込めながらのアーティはさながら


微笑みの爆弾。



「いやwwそれは冗談だけどwww



でも、覚えてないのよね。


私も起きたら全裸であの状態だったし。」



「…じゃあ…覚えてないくせに


さっき、あんなに引っ掻き回したの?」



「…………。」



そう言われてエリーは明後日の方角を向いて口を閉ざす。


「あ。でも、一つ思い出した。



ん~。でもこれ言ったらアーティ怒るかな~~。」



エリーは腕を組んで唸りながら悩みだす。


「……今さら朝以上のショックなんてないわよ。」



若干、諦めながらにアーティは


その話を促す。



「じゃあ、言うね。


『パラノーマル・アクティビティ』って映画知ってる?


ちょっと古い映画なんだけど



とあるカップルが、心霊現象に悩まされて、家の生活風景とかをカメラで収め


現象を撮ろうとするって映画なのよ。」



「…まさか、心霊現象だ とか言うんじゃないでしょうね。」



エリーは頭を振って否定する。


「いいえ。





私も、一ヶ月前から

隠しカメラでアーティの寝室を盗撮していた事を思い出したの。」


「ほぎゃああああああああっ!!ショックここに極めるッッ!!」






エリー姫の自室。



エリーとアーティ。更にセイレーンが


姫のPCの前に集まる。



「とりあえず、昨日の映像を確かめたらいいのよね?」



とりあえず、ボコボコに顔を腫らした姫が


PCを起動する。


「…そうですね。


それで、白黒ハッキリするでしょう。



そして、確認が終わったら


その映像をDVDに焼いて私に頂けますか?」



「おK。」



「すんなっ!貴女も何を言ってるのっ!!」


セイレーンと姫の サラっととんでもないやり取りを止めるアーティ。



「待たせたなwwwここからはR18タイムだwwwパンツ脱いでティッシュ小脇に抱えて待ってろwww」



エリーがカチッとマウスをクリックすると


フォルダーが開き


魔王の寝室が映し出される。



このカメラはベッドを中心にした位置取りである。



今のところ無人だった。


「…うわぁ。ガチじゃない…。」



明らかに引いているアーティを余所に



エリーはマウスを操って説明を始める。


カチカチッ


「これが1カメね。




んで、ベッド脇に取り付いた2カメであーてぃんの寝顔をハァハァできるの。



3カメは鏡の後ろに穴開けて、カメラ設置して鏡をマジックミラーに変えたの。これで毎朝、笑顔の練習しているあーてぃんでハァハァできるの。



それから、4カメがフィッティングルーム。お気に入りの下着を選ぶあーてぃんにハァハァできるアングル。




5カメが自室トイ」


挿絵(By みてみん)


「わきゃあああああああああああああっ!!!」



ビシッ!!



アーティは、奇声を発して


魔力を込めた腕でモニターを貫く。



「ぶぇえwww!?何をするのよwww!?あーてぃんwww」


「こっちのセリフよっ!


もう私、あの部屋に帰れないじゃない!?


ていうか、盗撮が玄人過ぎるでしょ!!」



「姫様っ!!


そのAVは おいくらですかっ!?」



セイレーンが鼻血を出しながら札束を握りしめている。


「AV言うなっ!!貴女は黙ってなさいっ!!」



燃えてるんじゃないかというほど真っ赤な顔は泣き顔に近い。



「あ~あ。モニターが…。予備を出すかwww」


次の新しいモニターを準備するエリーにアーティは睨みつけながら言った。



「絶対に後で通報してやる…。」


「魔王が警察頼んなwww」





仕切り直して


新しいモニターに 先程の映像の続きが流れている。





「ん~~~。まだ部屋にはアーティは帰ってきてないわね。」


「…昨夜の王務は深夜まで続きましたからね。多分12時前後にお戻りになるハズですわ。」



「………。」

恥ずかしく悔しいがアーティは


今度は モニターを破壊しないように


自分を抑えた。



しかし、思い返してみても昨夜の晩の事が


思い出せない。



正確に言うと、エリーと何があったかを思い出せないのだ。


ただ セイレーンの言う通り


仕事とエリーに振り回されて



疲れて、すぐにベッドに入った気がする。



なら、答は一つ。




「……まさか、疲れて眠ったところに



私が…お、襲われ」

「そしてっ!輝くっ!ウルトラッッ!!


セックスッッ!!」




「なんで、そんなに躊躇いとかないわけ?」




姫の野次に冷静に返す。



「あ!誰か入ってきましたわよ。」



「「ッッ!!」」



セイレーンの言葉に


モニターに視線を戻す。


ガチャリと 寝室のノブが回って入ってきたのは


エリー姫だった。



「あり?私?」



モニター内のエリーの右手には 酒瓶みたいな物が握りしめられている。



『ヒック…。


ウヒヒwwwらいじょうぶwwらいじょうぶww酔ってないズラwww』



「………」


モニターの中の姫が持つ魔界日本酒は未成年でも飲めるノンアルコール飲料だが、なんやかんやな魔力的なアレで、酔えちゃうのだ。


というか、


これで 酔ってないというのは


立派な虚言癖である。



『ぶわぁあああwww


あーてぃんwwあーてぃんwww




あーてぃんのベッドだぁwww』



アーティのベッドを見つけた彼女は


突如 服を脱ぎ全裸になり


ベッドに潜り込む。



『くんかくんかwwすーはーwwすーはーww



何だwwこのいい臭いはwwwけしからんwwwけしからんぜよwwww



うぁあああwwあーてぃんwwそんなトコ…らめぇえええああああおおえゲェログェゥグェァオェ




ZZZ…』




と、ひとしきりシーツ内で一人で暴れ


身もだえして


そのまま、吐いて




勝手に寝た。




挿絵(By みてみん)






…………それを 見ていた三人は固まっていた。


人として、やっちゃいけない事を連発した


そういえば程度の設定上『お姫様』に



冷たい視線が刺さる。


シィーーン…



静寂が部屋を支配する。



エリーは青ざめた顔で汗を垂らしながら恐怖を見たような表情で


「………お分かり頂けたろうか?」





「エリィイイイイイーーーーーーッッッ!!」




アーティが怒りに任せて、エリーを襲いかかり、これから折檻という時



「おや?魔王様が来られましたよ?」



また、セイレーンが画面の変化に気付いた。




『あー今日も疲れたー。』



そう言って画面のアーティは部屋に入ってくる。




ベッドの隣の鏡台の前に立ちクルッと回ると


ニコッと、見た事のない笑顔をするアーティ。



『大丈夫!今日も可愛かったわアーティ。』



その後 鏡台に置いてある小さな ウサギのぬいぐるみに


『今日も頑張ったょーーウサティーー。



うん、今日も魔王として

とっても怖かったよアーティ(裏声)




ありがとうー。ウサティ。




悪の魔王で人間達も震え上がるネッ☆(裏声)




そうかなー。私自信ないよーウサティ。




そんな事ないョ。キミはとっても恐ろしくて可愛いもの(裏声)




えへへー。ありがとうー。


じゃあ、もう寝るね。おやすみウサティ。



うん。おやすみアーティ(裏声)』



と、ひとしきり一人二役で演技した後


ベッドにもそもそと入るアーティ。




クィーンサイズのベッドの端の


全裸で寝ているエリーには気付かない。





これが 魔族の王、絶対恐怖の王、闇の王の



寝る前のいつも光景だった。




ズドンッ!!



突然、本日 二台目のモニターが魔法によって焼失する。



「………。」


「………。」



エリーとセイレーンは


ポカンとして



その燃えカスになったモニターを見ている。



「何 も 見 て な い わ ね ?」




魔王の その顔は茹でた様に赤くして


涙目でこちらを睨む。


口元は必死に取り繕った笑み。





「………グフッwwww」



そのうち、エリーが吹き出すのを堪え始める。




「~~~~////ッッッ!!笑うなぁあああああっ///!!」


「ぷぎゃああああああwww」


グワッシャーン!!



それが引き金のように 魔王がいきなり暴れ始めた。











いつもの 魔王と姫の追っかけっこを眺めて


セイレーンは 鼻血を出しながら呟いた。


「………まぁ。誰もが


一人きりと思ったら素が出るというお話ですわね。」




後日談―



魔王城。宝物庫に かなり厳重な警備が施された。



あまりに厚いその警備体制に




宝物庫に とんでもない『お宝』があると



噂になったのだった…


挿絵(By みてみん)


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