魔王様は思春期
その城は 黒く そして高かった。
『魔王城』
天に向かって伸びる様にそびえ
そして、こちらを見下ろすように建つ。
正確に何階まであるのかは人間達の誰も知らない。
だが、各フロアには強豪たるモンスター達が侵入者を拒むかのように跋扈する。
その凶々しい名前の通り
主は 魔王。
魔族を率いる魔物の王である。
その城の上空を 羽ばたく竜が一頭。漆黒の鱗が太陽を鈍く反射させる。力強い角を尖らせた蜥蜴の顔は、その口を開き
「ギャオオオオ!!!」
大きく咆哮し、主の帰還を知らせる。
ドラゴンの背に立つは、黒いフードを深く被り、銀の仮面をつけた魔族の王。
ドラゴンは優雅にくるりと周り
城の天空バルコニーに着地する。
「おかえりなさいませ。魔王様。」
まさに絶世の美声で、魔王を迎える一人の女性がいた。…いや、人間ではない。彼女も 魔族である。
その美しい女の白いドレスの背には人間には有り得ぬ灰色の翼が生えている。
美しい声を持つ美しい灰色の天使の正体は
「変わりないかしら、セイレーン」
魔王はドラゴンから降りて従者に問う。
「何も問題はありません。魔王様。」
魔王は、まるで憤怒のような表情を象った銀の仮面を取り、フードを下げた。
金色の双髪を揺らし、年の頃10代半ばの少女が現われる。赤い強い瞳が大きく印象的である。
少し大きめのフードローブを翻し
「ふっ。我が魔王城はまさに難攻不落。もっとも、この城にたどり着くのも困難であろう。
先程も…ここに向かっていた騎士団を私直々に壊滅してやったわ……。
くく…この魔王アーティ・シルヴァ・アルカディアを襲撃しようなどど」
「おかえりぃぃぃぃああああwwwwあーてぃんwwwwwwww」
ドガァッッッ!!!
口上の途中で、走ってきた女が小さな魔王少女に思いっきりタックルする。
「ふんぐぅっ!」
魔王にも少女にもあるまじき呻き声を漏らして、二人は卒倒する。
「あーてぃんwwwあーてぃんwww見てくれ!ついに届いたネオジオ!クソでかい!クソ重い!!クッソ鈍器感!!この餓狼伝説スペシャルのカセットなんて体育会系弁当箱サイズ!!100メガショックで草はえるわwww」
魔王をあーてぃんとあだ名で呼び、その顔面をネオジオでぐりぐり押し付けるのは
この魔王城で囚われの(はずの)エリー王女。
「今すぐ、そのゲーム機のような鈍器を降ろさないと二度とレイジングストームが出せないように腕を折るわよ?」
「うひゃぁwww
↙→↘↓↙←↘+BCが出来なくなるwww(ただし、出来るとは言ってない)」
姫はしぶしぶ、ネオジオを降ろした。
魔王執務室。赤と金に彩られた魔族による魔王の為の王室である。
その中央で、漆黒の机上の上で
魔王は青筋を立てて、エリー姫を睨む。
「いい加減にしなさいよ!アンタ自分の立場わかってるの?」
「(魔王アーティと約二年ほど同棲している。つまり、結婚しているので魔王は嫁。ということは私は女でアーティも女のコなのでセックスはできるので毎晩セックスしているということはアーティの最近お腹が出てきているのは私の…!?)
囚われのお姫様」
「妄想で暴走してるじゃないの!どこが囚われてんのよ!!」
べシィっと、魔王のビンタが響いて姫は
「あわびゅ」と唸る。
「まぁまぁ、どうぞ落ち着いてくださいませ魔王様」
セイレーンがアーティとエリーの間に割って入る。
「や、だって…」
穏やかで、そして美しい声でセイレーンは諭す。
「姫様…。
魔王様のお腹の子は私の子です。」
「なんでだぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」
今日一番のツッコミの悲鳴をあげる魔王アーティ。
「なんで、私が貴方達クレイジーサイコレズの子を孕まなきゃいけないのよ!
ていうか、私、まだ 処じ……なんでもないっっ!!!」
「「今、心のおちんちんが勃起しました」」
「シンクロすんな!そういうとこだぞ!」
顔を真っ赤にして、涙をうっすら浮かべながらツッコミを入れ続ける。
「じゃあ、なんですか?最近、少し膨らみだしたそのお腹はまさか脂肪とでも?」
エリーがニヤニヤとつめよる。
「なっ……!?」
アーティは図星とばかりに分かりやすい反応をする。
「お止め下さい。姫様。魔王様が最近デスクワーク続きと休憩のお菓子の食べ過ぎでポヨポヨお腹が気になりだして、運動不足とダイエットを兼ね備えた今回の騎士団討伐に出かけたというような推測はお止めください!!」
「………っ////!?」
アーティは何も言い返さず、カァーッと顔を真っ赤にして涙目でうつむいている。
「そうだね。ワタシが間違ってたわ…。まさか、世界から恐れられる魔王がちょっとだけのダイエットした自分へのご褒美にドーナツを食べてさっき運動したから大丈夫、カロリー相殺するって思ってるアホの子なわけがないわ…」
「………………ぅぅぅ////」
ついに、うつむいて真っ赤な顔を両手で隠して震えだした魔王。もしかしたら、泣いてるかもしれない。
エリーは、そんなアーティの肩に手を置いた。
「大丈夫よ。アーティ。
思春期だから、色々思い悩むこともあるでしょう。恥ずかしがることないわよ。
でも、無理なダイエットは身体にも心にも負荷がかかるわ。
まず、自分を大事にすることが第一歩なのよ。」
まるで、姉のように優しく諭した。(しかし、さり気なくダイエットしてると決め込んで)
「エリー……」
アーティは、恥ずかしさでくしゃくしゃになった顔をあげると、そこには………
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ
「ポンデリングうめぇぇぇえええええ!!」
魔王執務室に隠されてたハズのドーナツをムシャムシャ食べるブサイクな姫がいた。
ドゴンッッッ!!!
魔王の最大級の魔法が魔王城に響き渡った。




