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フォント・この侮るべからざるもの

 まず、「小説」は言語によって創造される作品である。ここは「小説家になろう」という創作専門の掲示板で、狭義の小説だけでなくエッセイや詩なども投稿されており、そのほとんどは日本語で書かれている。外国語は、ごくまれに英語の作品を見かける程度である。そういう意味では、事実上日本語作品の専門のサイトとみなして支障はないと思う。

 そして個々の作品は、複数の単語を連結した集合体すなわち「文章」として構築されている。読者はそれを「読み」、意味を解釈することで鑑賞という行為に入るわけだが、この作業を行う前に、日本語の文字が並んでいる画面上の映像を視覚によって捉えることが前提となる(聴覚によって聞き取る場合はあえて除外する)。

 視覚を用いた読書という行為には必然的に、「その文章がどのような『形』で書かれているか」という問題が介在してくる。主な視覚上の要件としては「文字の形」「色」「縦書きか横書きか」「一行の文字数・文字サイズ」──などが挙げられる。「読む」という行為に際して、そこに書かれた内容を厳密に客観的に解釈しようとするならば、これら視覚上の要件は全面的に捨象する必要がある。しかし、人間も動物である以上、視覚上の印象が意味の解釈にまったく影響を及ぼさないとも言い切れない。

 そして私見では、最も大きく印象を左右する要件は文字の形、すなわちフォントであろうと思うのだ。

 私は近ごろ、個々のフォントにはそれぞれに合致した表現ないし思想というものがあるのではないかと考えるようになった。多くの会員も同様と思うが、私の端末で「小説家になろう」のフォントは「メイリオ」で表示されている。

 詳しく調べたわけではないが、「小説家になろう」の表示フォントがメイリオ一本に統一されていて、それ以外の選択ができないならば、ここはメイリオによって構築されるメイリオ固有の世界と言うこともできるだろう。

 視覚上の要件が比較的大きな影響力を持つ例として、官能小説の表現を考えてみよう。

A(鷹沢は、真莉奈の中に自分の逸物を出し入れするピッチを上げた。
「あっ、だめっ! そんなに早く動いたら、私、おかしくなっちゃう!」)

 どうであろう。今一つ物足りないのではなかろうか。

B(鷹沢は、真莉奈の中に自分の逸物を出し入れするピッチを上げた。
「あっらめぇぇ! そんなに早く動いたら、私、おかしくなっちゃうぅぅ♡」)


 個人的な感じ方の差異はあろうが、メイリオに支配されている世界では、Bの方が「そそる」とされているようだ。「だめっ」より「らめぇぇ」が選ばれ、文末には♡が付けられるようになるのは、フォントによる影響が大きいように感じられる。このように、ネット小説ではフォントによって表現方法が左右され、文体も変化し、さらには叙述される内容自体も変動してきているのではないだろうか。

 活字文化において、紙媒体はいまだ厳然たる権威を維持している。そこは、明朝体の支配する帝国である。だが、想像してみてほしい。書店で売られる縦書きの単行本、新聞、雑誌、いや裁判の判決文に至るまで、すべてメイリオの横書きで書かれるようになったらどうなるか。

 メイリオが明朝体に取って代わろうとすれば、当然抵抗が起こるだろう。その違和感はあまりに大きい。メイリオで書かれた横書きの判決文など誰も信じないかもしれない。「形が変わるだけで、内容が劣化するわけではない! だから問題ない!」と強引に押し切ったとしても、本当に書かれる内容が明朝体時代から100%変化しないと言い切れるかどうか?

 変化するのではないだろうか。文字の形が変われば文章のスタイルも変わり、意味の変化へと続く。言葉の「正確さ」「厳密さ」は、こうした「形態」の地盤の上に乗っていて、それによって変化をこうむるものだとしたら? いずれにせよ最終的に行き着くところは、メイリオによるメイリオ固有の意味が支配する王国ではないだろうか。

 おわり
画像で例文を図示できればと思ったのですが難しいようなのであきらめました。

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