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禁童録  作者: 雲符
最終章
39/44

交戦


悪の組織 という言葉に憧れを抱いた少年は大きくなり親の跡を継いで社長となった。

彼は若いながらも商売の才能に恵まれていて、会社にはどんどんお金が入っていく。


ふと、幼少期に抱いた夢を思い出し友に相談した。

友達は青年への恩を返そうと必死に考え抜き案を掲示する。

商売の才はあれど、人付き合いでは頭の弱かった青年は素晴らしいと絶賛して行動に移した。

人は欲望を満たせば更なる欲望を生む。

青年だったディラティーノは欲望に飲まれて友という幹部達の提案を手当たり次第に実行していく。


小さな思いついから始まった悪の組織はやがて大きくなり過ぎていた。



ショーヒと共に建物内へ侵入していたサンミャは途中の別れ道から単独で動いている。

山猫の俊敏性を生かした方法を思い付き、実行しているのだ。

壁の高台に設置された火点しや、扉上の僅かな凸凹を利用して飛び移りながら移動し、敵の死角に入っては気配を消して背後から襲っていく。

自身の身が安全な内では殺しは厳禁と約束している。

キョクビもサンミャも約束を守りながら任務遂行していく。



気絶していた大蛇が目を覚ますと目の前に広がる光景に驚愕していた。

鼻と鼻がくっつきそうな位置に、自身と同じくらいであろう蛇族の女性の顔があるのだ。


「えっ!? あの、離れて…」


自らも離れようと痺れの残る体を動かそうとしたが、手首に手錠を掛けられぶら下がっている状態では前後に揺れるだけだった。

前後に揺れる、つまり顔は更に近づいたり離れたりする。

間一髪で接吻は免れた大蛇に、女性コリリアは不服そうにしていた。


「しちゃっても良かったんねに」


コリリアの発言に疑問符を思いっ切り浮かべる大蛇は、慌てていて状況が理解出来ていない。

確実に分かるのは大蛇を見つめる瞳は恋する相手を見つめる乙女の瞳だ。

まさか自分に想いを寄せられているとも思わない大蛇は、背後やら左右を見渡す。

彼女以外は誰も居なかった。



大蛇が目覚める少し前に、スイハとディラティーノは退室していたのだ。

監視役として名乗り出たコリリアの思惑に気付きながらも、その歳まで独り身であるコリリアへの同情を含めて二人っきりにさせている。


「知らない場所といい、この体制だと私は誘拐されたはずでは……」


一生懸命に状況整理している大蛇は、未だに鼻と鼻がくっつきそうな位置に顔を置いているコリリアに思わず問いていた。

慌てる大蛇にうっとりとした表情で眺めるコリリアの瞳は桃色で、大蛇はサンミャを思い浮かべてしまう。


「今、あっちの事見て別の女を思い浮かべたんね」


ムスーと脹れっ面になったコリリアはようやく顔を離して会話に応えてくれた。

問い通りで、大蛇は誘拐もとい拉致され、山猫をおびき寄せる罠の餌として捕まっている。

山猫を捕まえ処分したら大蛇はコリリアの自由に出来るという、余計な情報と自己紹介までして貰えてしまった。


「コリリアさん、私をどうする気で………あ、やっぱり答えは遠慮しときます」


名前を呼んで貰えたコリリアは、嬉しいのか行動からして大蛇と結婚する気でいるのが丸わかりで、大蛇は答えを求めるのを放棄する。

私には妻子が、と伝えてはみたが効果は無い。

厄介な女性に目を付けられたと大蛇な精神的に弱り果ててしまう。



それぞれが思考を巡らしや行動起こす中、ショーヒは幹部の一人と戦闘に入っていた。

組織は3名の幹部がいる。

蛇族の女であるコリリア、馬族の男であるディン、熊族の男である太一朗。

ショーヒと戦闘を繰り広げているのはディンだ。


ディンの戦闘方法は馬族の力強い脚力を生かした足技での蹴り攻撃である。

膨ら(ふくらはぎ)周りには武器として刃物が並ぶ防護服の様なものを装着していた。


交戦の中で繰り出されているディンの蹴りは、一撃一撃が凄まじい破壊力で、蛇族の体では蹴りに当たってしまえば一発で粉砕骨折は免れないだろう。

それに留まらず、蹴りが外れても足に装着されている刃物で切り傷を与えられるディンの武器に、考え込まれたられたものだと感心する。


ショーヒは愛用している背丈の高い斧で、ディンの蹴りを弾き飛ばしては斧を振り回して攻撃を仕掛けていく。

ディンの体力は底が無いのか、逞しく太い足から繰り出される蹴りは一向に威力も素早さも衰えを知らない。

ショーヒからの斧攻撃も易々と避けて続けていた。

このままでは自身が先に体力切れを起こして敗北してしまうと考え、ショーヒは作戦変更に行動を移す。


蹴りは凄まじい破壊力を誇り、力強い走りは素早く体力切れを知らない馬族。

興奮すると煩い雄叫びをあげる事もしばしばあるが、基本的には穏やかで優しい気質を持つ一族である。


馬族の弱点は最大の武器でもある足だ。

切り傷程度の怪我なら問題無いが、一度でも骨折してしまうと二度と歩けない。

逞しくも大き過ぎる筋肉が邪魔して骨の自然修復に影響を及ぼし、骨がくっついても変形した状態となる。

変形した骨では歩行困難に陥り、無理矢理でも歩けば再び骨折して更に悲惨な目に合う。

その弱点を補うように骨自体が鉄の如く硬かったりもするが、ショーヒはディンの足目掛けて攻撃を開始する。


防戦一方でたまにの反撃であったショーヒの攻撃だったが、蹴りは避けても切り攻撃に気を向けず、切り傷多数負いながらも反撃連打するスタイルへ変化した攻撃にディンは動揺の色を見せていた。


(この男、馬の弱点知ってやがる…!)


最大の武器にして最大の弱点である足への集中攻撃にディンも防戦へと変化していく。


敵を畳み掛ける勢いで攻撃を炸裂するショーヒから繰り出される斧攻撃は、幾つかの型を取りながら敵に次の攻撃位置を予測させ、敵の予測とは違う位置からの攻撃を放つ。

予測が外れたディンは瞬時に防御体制へ入ろうとしたが、つかさずショーヒが斧を回転させ竿の棒部位をディンの鳩尾(みぞおち)へ押し付ける。


鳩尾のど真ん中に棒の先をねじ込まれたディンは白目を向けて床へ倒れ込んだ。


「やったか……」


汗だくで息を切らせたショーヒは息を整えながら、ディンの手足を縄で拘束して壁に体をかけてやる。


休む暇無くショーヒは進んでいく。



































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