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禁童録  作者: 雲符
最終章
32/44

奈落の底に

奈落の底に届く光は少なく薄暗く薄気味悪さを感じられる。

風通しが良いのが救いで空気は清んでいた。



奈落の風により、揺れる美しい桃の長髪を後ろで纏めたサンミャによる修行が開始する。

短髪となったキョクビの薄水色の髪も風で揺れるが邪魔にはならない。

可愛いらしい子から男前になったと、当人に惚気るサンミャだったがその甘い顔は今は見当たらなかった。


「まず、通常のキョクビの魔力が攻撃性か回復性か調べましょう」


魔力持ちは攻撃派と回復派が居る。

攻撃派は攻撃が主だが、回復は出来ない。

回復はその逆なのが基本的だ。

どちらも属さない場合は製造魔法を得意とする。

希に複数得意とする者もいるが、それは天性の天才のみだ。


という様に魔力持ちでも様々な分野に分かれており、まず何より得意分野を見いださないといけない。


はい!と意気込むキョクビは、渋られていた魔力の使い方について学べるとあって嬉しさと期待も持ち合わせていた。

本来の目的もしっかり分かっている。


「まずは私の手を握りなさい」


サンミャの指示の元で手を繋ぐ。

すると、サンミャは微弱な魔力を手からキョクビへと流し始めた。

流れてくる魔力は血の繋がる魔力だからか、心地よい暖かさを感じ安心感を得ていくキョクビ。

どう?と聞かれてたキョクビは今の状態をそのままサンミャへ伝えていく。


「じゃあ、今度はこっちね」


手を繋ぐ位置を変えたりしてないのだが、サンミャは何かを変えた。


少しの間を経て伝わってきた魔力はキョクビの手から全身へピリピリと刺激を与え、刺激が辛くなったキョクビは思わず飛び上がりながら手を離す。

離された手にサンミャは少し驚きながらも、息子の魔法得意分野を判明させた様だ。

ヒリヒリと痛む手を振りながら母を眺めるキョクビにサンミャは告げる。


「キョクビは支援魔法が得意分野だと思うわ」


支援魔法という言葉にキョクビはパッとしないようで呆然としていた。

攻撃特化型のサンミャの魔法を見て憧れを抱いていたのに、自分は支援魔法という事実に落胆もしている。

せめて回復魔法がよかったと呟けばサンミャはクスクスと笑っていた。


「私は支援型じゃないから詳しくわ分からないけど、支援魔法も使い方によっては攻撃にも回復にもなれるのよ?」


万能なのよ、と続けたサンミャにキョクビの瞳は輝きを見せる。

息子の輝きを放つ瞳の懐かしさに微笑むサンミャは更に続けた。


「覚醒を発動させれば、通常時の特化型は関係なしに攻撃特化型へ変化します」


だから気を付けてと念を押されたキョクビは頷く。

覚醒させれば、習得していても反動が必ず伴う。

現に反動で数日動けなかったキョクビは身を持って知っている。



それからはサンミャの修行が本格化した。

魔力の出し方や使い方の基礎や基礎知識を頭や体へ叩き込みながも、必死で食らい付いていく。

必死で厳しい修行を積むキョクビの姿にサンミャも心を鬼にして教え込む。


サンミャの教え方の上手さも加わり、キョクビ自身の頑張りで凄まじい勢いで覚えていく。



日が落ち始め、帰宅を催促する夕日になる頃にはキョクビは基本的な魔法の使い方を習得していた。

その分、激しい疲労と幾つかの傷が出来ており、呼吸を整えながらも体力魔力切れを起こして動けないでいたキョクビをサンミャが抱き抱えて帰宅する。


「頑張ったわね、キョクビ」


母の暖かい温もりに腕の中で眠った息子に微笑むサンミャ。


修行はこれから険しさを増す。



無理は禁物と今は、休ませる事を優先させるのは母の優しさだ。




キョクビを自室に寝かせたサンミャは窓から広がる夜空を眺めていた。



修行終始、奈落の向こう側を常に警戒していたサンミャ。


山猫族の生き残りである自分の存在がバレたかもしれないと、伝承魔鳥を伝いショーヒに送り届けていた。






「時は近いわね…」



呟く言葉に覚悟が望く。



























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