残酷な褒め言葉
「チョコー」
次の休み時間、真田くんが私の前にひょっこり現れた。
ああ好きだなぁ────そんな気持ちが勝手に溢れて嫌になる。
「もう熱、大丈夫なのか?」
「うん、だから大丈夫だって言ったじゃん」
心配してくれる優しい人。
そういうとこも好きだよ。・・・・好きなんだよ、ばか。
林さんの存在が頭の中でちらつくから、私は目をそらしてそう答えた。
「ありがとな」
ポンとやさしい手のひらが私の頭上に降りてきた。キュンと心臓が甘く痺れる。
「な、・・・なにが?」
「麗のこと、気遣ってくれて」
「え・・・・?」
「あいつ、誤解されやすくて女子の友達居ないらしいんだよ」
「・・・・」
────林さんを気遣った訳じゃない。
私は・・・・彼女に八つ当たりしただけだ。
だけど真田くんが目を細めて嬉しそうに彼女の話をするから・・・なにも言えなくなってしまった。
「でもチョコとなら、仲良くなれそう」
「そう・・・かな?」
あ、ヤバい。
なんかすごいツラい。
胸が─────・・・・。
「うん!だってお前最高にいい奴だし!」
胸が痛い─────。
・・・・褒め言葉なんだよね?
これ、喜ぶべきトコロだよね?
笑顔に─────ならないと・・・・・。
「なんだよ、どうした?」
大好きな真田くんの無邪気な笑い顔。
そんな表情で覗き込まないで。
ああダメだ、だって今わたし・・・・。
「あっ!次移動教室だから急がないと!」
堪らなくなって、私は大袈裟に席を立つ。
ツラくて悲しくて、心の中で悲鳴をあげてる。
─────この、どうしようもない気持ち。
「ほら、真田くんも急がないと遅刻するよ?」
「あ、チョコ待てよー」
ねぇ。
“最高にいい奴”と“彼女”の違いは何?
私と林さんの違いは何?
“友達なら”最高の褒め言葉だけどね?
私にその褒め言葉は────残酷なんだよ真田くん・・・・。