告白
「どこまで行く気?」
ひと気のない廊下まで連れてこられて、何を言い出すかと思えば、林さんは無表情で口を開いた。
「私、鹿嶋さんのこと好きです」
「・・・ハイ?」
聞き間違いかな?
いや、誰か!そうだと言ってくださいっ!
どこの世界に好きな人の彼女から告白されるヒロインがいるんだっ!
私の頭の中では、ツッコミ役がフル稼働していたけれど、意外と彼女に対して冷静な対応をしていた。
「何言ってんの?」
「鹿嶋さんと、お友達になりたいと思ったんですがダメでしょうか?」
「・・・・」
(“友達として“好きって言いたかったのかーーー)
そこについてはホッとしたけど、答えに困る。
「だからさ・・・“何言ってんの?“」
声が震える。
こんな言い方、したくないのに。
沸々と怒りが込み上げてきてしまう。
「わ、私のこと‥馬鹿にしてるの?
“友達“って・・・何ソレ。
真田くんと付き合ってるのは自分だって見せつけたいだけでしょ?」
ツラいのはいつも私。
嬉しそうな笑顔を向けられてるのはアナタ。
「鹿嶋さんのそういうまっすぐな所が、素敵だと思ったんです。ーーー私には、無いから。」
残念そうに肩をすくめて、林さんが言った。
「真田くんと私、みんなからどう思われているかは知っています。私は真田くんとは“合ってない“ーー—“周りなんて関係ない“と彼はいつも言いますが、さすがに傷つきますよ、私も」
眼鏡を押さえるようにして、林さんが俯く。
「でも、別れたくないんです、私。」
「なんで私にそんなこと言ってんの?」
「なんででしょう?ーーー真田くんがいつもアナタのことを褒めるので私も勝手に親近感?」
「・・・・」
私のこと、褒めてくれてるんだ———ってこの期に及んでちょっと嬉しくなってしまうチョロい自分が憎い。
唯の「チョローい」ってニヤニヤした顔が浮かんでしまう。
「真田くんとだけでなく、私とも仲良くしてもらえませんか?」
「しません。できません。」
そんな器でかくないです。
自分の心が乱されるだけだし、そんなの。
これ以上、傷つきたく無いし。
「・・・そうですか、残念です。では、ライバルとして一つ言わせてください」
冷酷な表情に戻った林さんが、私に言った。
「真田くんが私をフることは、100%無いですよ」




