表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

清水涼子



年齢十九歳。身長153cm。体重42kg。

顔の顔に黒髪のショートカット流行りのボブに近い。目は少し大きめで、パッと見では大人しそうな、愛らしい雰囲気である。しかし、口を開くとなかなかの毒舌で、学はいつも被害にあっている。

その女の名前は、清水涼子である。




最近……、もう二ヶ月も経つのか。そんなことを考えてしまったのも毎度毎度同じ夢を見てしまうからだ。それはそれは本当に幸せな夢で、涼子の願いでもあった。

「なくしてから改めて気が付く」なんて、そんな中学生みたいなことは考えるつもりはなかった。いつも後悔だけはしないように、いつもいつも大切にしてきた。ただ一つ誤算だったことはどれだけ大切にしても、失うことが分かってて手放す準備をしていても、それは失ってからも相変わらず大切だったということだ。


「バカだなぁ……。いつまでたっても」

寝癖でボサボサになったショートヘアを寝癖直しのスプレーでとかす。朝ごはんは普段食べないから、科書とノートを詰め込んだカバンを持って家を出る。

電車とバスに揺られ大学にたどり着く。最近めっきり寒くなって学生たちはずいぶん温かそうな服装をしている。目の前を横切るカップルは幸せそうだ。自分もあんな顔をしていたのかなぁと考えると、少しマヌケっぽく感じた。



あいつまた一人だ……。

そう思った視線の先にはガクがいた。本人曰く友達はいるそうだが友達と歩いているところをまだ見たことがない。強がりでそんなことをいう人間でもないので、たぶん本当にいることはいるのだろうが。とりあえずこの授業が終わったら声をかけてみよう。

「よっ。あんたまた一人じゃん」

「いいだろ別に。オレは誰かとつるまなくてもやっていけるタイプなんだよ」

ガクはなんというかそういうところがあった。普通の大学生なら、多少は人の目を気にするというか誰かということもステータスの一つなのにガクはそういうことは全く気にしない。

「今日も暇なんでしょ?このあと遊ぼうよ」

「わるい。今日はバイトなんだ」

あーあ。ガクなんかにふられる日がくるとは。まぁ別にいいけどさ。

「あんたほんとにバイトばっかりしてるよね」

「あーでも、もうちょっと減らそうかなって考えてるよ」

「なんで?」

「最近仲良くなった奴が、そんな大学生活はもったいないってずっとオレに力説してくるから、オレももうちょっと遊びに時間さいたほうがいいかなって」

あら。珍しいこともあるもんだ。所謂バイトの鬼だったガクも、誰かの言葉に影響されて、その通り名を捨てることもあるんだ。


「ふーん。そんな人がいるんだね」

ガクははぁーっと息を吐き出す。屋外だったらもう真っ白になるくらい。暖房の効いた大教室では透明のままだが。

「涼子のことだよ」

「あ、え、そ…そう」

そういえば、そんなことも言ってた気がする。実は結構軽い気持ちで言ってたなんで言えない。まぁでも、あまりにもバイトに時間をつぎ込んでるから、もったいない時間の使い方してるなぁと思ってたのは確かだ。これから卒業したら嫌でも働かないといけなくなるのだから。遊べるときは遊んだほうが絶対いいのだ。

「なんで動揺してんだよ」

「してないわよ。全然」

恥ずかしくなってシラを切る。あーあー、今日は暇だなぁ。サークルとかにも入ってないしなぁ。仲のいい友達はみんななにかしら部活やサークルに参加しているから、放課後は結構暇なときが多い。バイトもない日はやることもない。



あぁ、こんなんじゃガクと同じだ。

なにか趣味でも見つけようか。でも趣味って見つけようとして見つけるものでもないんだよなぁ。もういいや。今日は寒いから家に帰ろう。寒い日はこたつでみかんを食べるのに限る。そういえばガクの家で食べたみかんは美味しかったな。

あれはどこのみかんなんだろう。今度聞いてみよう。



***



お世辞にも広いと言えない部屋。物は少ない。

まだ温まっていないこたつの中に入り、さっそくみかんに手を伸ばす。

「ここのみかんっておいしいよね」

「お前が食べまくるから、また送ってもらうように頼んどいたぞ」

なんとなくつけたテレビはやはり興味は沸かない。それでも無言になるよりかはマシだから、多少うるさくとも我慢をする。こたつに入りながらガクは壁にもたれる。ガクの部屋はなんとなく寒かった。 気がつけばこいつの家に入り浸るようになった。大学から近いから授業の合間などに訪れる。



今日は雪が降っている。帰るのはめんどくさい。

「あーあー。最近なんでこんなに寒いの?あんたなんとかしなさいよ」

「はいはい。お茶飲む?」

「飲む」

こんな無茶ぶりもなんとなく流し方が分かってくれたガクは、一緒にいて楽だった。いつのまにか番組は変わっていたが、そんなことにすら気づけないほど、やっぱりテレビには興味がわかない。


「あー温かいなぁ」

「そろそろ帰らなくていいのか?家の人心配するぞ?」

「ん、別にそういう親じゃないから大丈夫」

「そっか」

こたつで温かいお茶を飲みながら、おいしいみかんを食べる。

案外幸せってのは自分が思っているよりも単純で、簡単に手に入るものなのかも知れないなぁ。


「なに笑ってんだよ」

「えっ?私笑ってた?」

「にやけてたぞ。気をつけろよ」

危ない危ない気をつけよう。

こんな奴にニヤケ面を見られるなんて一生の不覚だわ。

………。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ