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「では次に、アバターの設定を行います。プレイヤーの性別は、VRシステムの都合上、変更出来ませんので御了承下さい。それでは、本体のスキャンを開始します。」
そう言うや否や、頭の先から足の先っぽまで、赤い線が駆け巡った。
「……終了しました。キャラクターを表示します。設定パネルでキャラクターの外見を変更出来ます。」
レイミィがそう言うと、俺の目の前にはパネルが、レイミィの隣には立体の「オレ」が現れた。身長約180センチ、体重は75キロ。
細身だが筋肉質な身体。短く切られた髪に、鋭い目つき。刃物を扱うその身体には、所々に傷がついている。
(こんな所まで再現されるのか…。)
宗介は感心しながら、パネルを覗いた。
そこには髪型から、髪の色、目の色や身長、体重から手足の長さまで変更できる項目が表示されている。
これなら全くの別人になることも出来るが、VRではあまりにもかけ離れると不自然になると聞いたことがある。
取り敢えず髪の色と目の色を濃いグレーに変更した。すると立体に映し出されていたオレの髪と目の色が変わった。
面白かったし凄いと思ったが、どうも面倒臭くなる。別にあれこれ弄るつもりもないし、もうこれでいいや。
そう思った宗介は、出来たと一言声を上げた。
「アバターのチェックをしています。……完了しました。最後に、ボーナススキルを設定致します。……完了しました。
此方はランダムとなっておりますので、ログイン後、メニュー画面よりご確認下さい。
以上で、キャラクターメイキングを終了致します。お疲れ様でした。」
レイミィはにっこりと笑ってこちらを向いた。すぐに転送されないあたり、ログイン開始時間に間に合ったらしい。
「あと何分くらいなのかねえ。」
ふと独り言のように呟くと、レイミィが言った。
「あと5分後にログイン開始となります。」
「あ、話せるのか。凄いんだなあ。」
思わず思ったことをそのまま口に出してしまった。それもそうか、学習型プログラム、だったか?こういう場面でも力を発揮するんだろう。
「…リベルタファンタジーって、どんな感じなんだ?」
話し相手も出来たわけだし、相手は多分何でも答えてくれる。折角なのでゲームの中の話でも聞いてみることにした。
レイミィが若干誇らしげなのは気のせいじゃ無いだろうしな。
「リベルタファンタジーでは、剣を扱うナイト職、魔法を扱うマジシャン、斧を扱うウォリアー、弓を扱うハンターという職業があります。二次職も御座いますが、現在は解放されておりません。……稀に、レア職業に当たる方もいらっしゃいます。」
「レア職業?」
「…残念ながら詳細は申し上げられませんが、そういった職業も御座います。参考までに。」
レイミィはそう言うと、申し訳なさそうにうつむいてしまった。何だろう、本当に人間と話をしているようだ。どんな感情でもどんどん吸収していくのか?
だとしたら本当に凄いと思う。
レア職業の事は結局よく分からなかったが、取り敢えず進むべき方向は決まったのでよしとする。
何になるかって?
そりゃもちろんナイトだ。
ログインしたらすぐ、ナイトになろう。
宗介はそう決意をし、ログイン開始を待った。
そして、
「時間です。ログインを開始します。」
レイミィの澄んだ声にハッとする。
心臓の音がバクバクと聞こえた気がした。
「…まずは、職業NPCの所に行ってみて下さいね。街の中にいますので。では、どうぞ、いってらっしゃいませ!」
宗介のアバターと、自身の身体が霧のように散っていく。
「おう、ありがとう。行ってくる。」
花のように可愛らしく笑ったレイミィに見送られ、宗介は消えた。
「リベルタファンタジー」
ログイン、開始。