3.自分の変化
3話目!
輝也はデウロという男に連れられ歩いている。手錠は外されているが首輪はつけられたままだ。
このデウロという男、とても無口らしい。自分が入っていた収容所の受付の人と一言二言単語を放って以降、一切口を開かない。口は一文字で怒っているか、考え事をしているのかも読み取ることができない
自分が収容されていた奴隷収容所は街の中にあり、そこからしばらく歩いて外れまで来ると古ぼけた平屋があった。ちらっと見るだけで結構な広さの敷地がある、日本ではなかなか見られないようなものだ。
そこがデウロという男の家らしい。
ここに連れてこられたときと同様に、気使いされるでもなく、無理して痛めつけるでも無く家に招かれ、服を渡され、男はどこかへ行ってしまった。元々用意してあったのかと思いながら、先ほどよりも子きれいな服を見て眉をひそめる。
「妙にでかい服だ・・・」
特に不満を言うこと無くその服に袖を通すことにする。ここでも逆らわないことが大事だ
そして奴隷として収容所から出てきた時に自分へ告げられた言葉を思い出し、考え、その言葉は嫌な予感を感じさせる。
服の名をかぶった、身につけている布切れを脱ぐ。
奴隷というだけあって下着はなく地肌が露わになる。
「……へ?」
思わず声が漏れる。
あるべきものがない、いつも当たり前のようにあり、様々な問題と苦楽をともにしてきた男性器がないのだ!
ドッと汗が吹き出るのを感じた、まさかと思って震えながら手を胸においた。
そこには微かな膨らみが……
急いで自分の体の状況を確認する、どうしても死角になってしまうところは手で触った。
はたから見れば裸でベタベタと自分の体を触りまくる変質者だ、しかしそんなこと気にしていられない。デウロという男は自分に興味がなさそうだから心配はなさそうだ
次々と衝撃の事実が浮かび上がってくるのだ。
手が小さい、爪も小さくまるで小さな子供のようで、いつもよりも乾燥肌でカサカサとしている手だ。
体も小さく幼い、それも異様に色白で体も華奢だ。
「うぅ……ああ?」
意味不明な言葉を呟いて、呆然とする。
それもつかの間、少ししたら自分が裸で突ったっていることに気づき急いで渡された服を着る。
ぶかぶかの男物の服を着終わると真っ先に自分の顔を見ることのできる物を探した。
それはすぐに見つかり、洗面所らしき場所に水がはられている桶があった。
水を反射させて自分の顔を見る、そこに目は充血しており今にも泣きそうなひどい顔が映る。
その顔はガリガリに痩せておりまるでガイコツのような少女の顔だった。
「これ・・・僕の姿・・・?」
それを見た瞬間、頭の許容量が限界に達し、ろくに体を動かしていなかったことも相まってその場にへたりこんだ。
頭を掻きあげる、髪は長く肩までかかっていたようで大きく揺れる
そこでテコの言葉を思い出し、その言葉に重みが増したことを感じた。
もう疑う余地はない、ここは自分の知っている世界ではない、異世界の自分の知らない世界だ。
異世界転生
その言葉が頭によぎる、こんなこと現代の科学ではできるはずもない。
自分の容姿の変異がそれを強く輝也に感じさせた。
奴隷だ?自分の世界ではもうかなり少数になっているが異世界ならばそんなことは限らない。
むしろかなりメジャーなものなのかもしれない。
こういう異世界転生類の小説を持っていたり読んだことがある、その中にも性別が入れ替わって転生する物はいくつかあった。
ある程度の興味と知識はあったりするため、それが一層自分の結論に拍車をかけるのだ。
内心はパニック状態だ、しかしこのままぼうっとしているわけにはいかない。
壁にもたれながらゆっくりと立ち上がり、自分の主人となるだろうデウロという男を探すことにした。
勝手に部屋を出入りしたり触れたりするのはまずいだろうが奴隷として連れられて身、どうせここがしばらく住む所になるはずだ、これぐらいのことはしても問題はないだろう。
ついでと言ってはなんだがこの家にはどんなモノがあるか大まかに把握する必要もある。
敷地の割に単純な作りの家だったためすぐにまわり終えてしまった。
何点かを除けば前の世界で結構あった平屋と大して変わらなかった。
しかし、書斎らしき部屋を見つけ中を覗いてみると個人として持つには過ぎる量の本があり、他には剣や槍などの武具らしきものが数多くしまわれている部屋もあった。
あと他に感じたことはベッドを見つけて、「そういえば俺、性奴隷として連れてこられたんだ……」と冷や汗をかいたりしたことだ。
結局デウロは外にいた。
デウロは竹刀のようなスポーツで使うものではなく光を反射させて鋭く光る金属でできた剣を振るっていた。
手に持つ剣は偽物ではないだろう、よく見ると周りの草木が斬られている。
何かと戦ったりするつもりなんですか?とちゃかすような質問したくなったが今はそれよりこれからのことを聞かなくてはならない。
「デウロさん、着替え終わりました。これから……」
「掃除」
質問を遮るようにぼそりとデウロからつぶやかれる。
・・・・仕方ない、それが終わったら話をしよう。ほかのことを命じられているうちは大丈夫であろう。再び玄関をくぐり家へ掃除するために戻った。