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1.理不尽の始まり

宜しくお願い致します。

良ければ見ていって下さい

 ある、月も昇らぬ静寂な夜のこと。


 とある物寂しい路地裏、人通りも少なく側面の壁もななり黒ずんで汚れている。

タバコの匂いが充満し、そこには見るからに醜悪な雰囲気を醸し出す輩が一人の女性を取り囲んでいた。


ッ……やめ……うるせえ!……


路地裏で虚しく響く声、ここは彼らのテリトリーであり、誰にも邪魔されることなく悪事を働ける所……だった。


「あそこ、おもしろそうなことが起きてるみたいだね」


それは軽口とともに現れた一人の青年により、そのテリトリーは消滅することになる。



----------------------------------------------------------




やってしまった、どうしてこんなことになったのか。

さっきまで店で一人で飲んでいただけなのに今、私は薄暗い路地裏で薄汚い男たちに囲まれている。

男たちは冗談で囲っているとか、TVの企画の一環だとかの様子ではなく、男たちは欲望と悪意を隠さない笑みを浮かべている。


身構えながら男たちを睨んでいたが、とうとうその中の一人が私の体へ手を伸ばして両腕を拘束する。

それを始まりとして、笑っているだけだった男たちが動き出した。


「今日も一人で歩く馬鹿な女を捕まえたぁ!」

「なかなか上玉じゃねえの」

「どうするよ? だれからいく??」


「や、やめ、離してください!」


そんな絶望的な状況で腕を頑張って動かしたり、男たちにやめて欲しいと声をかけ続けた。


もちろんそんなことなどしても無駄、結局男たちを怒らせ、体をつかむ力が強くなっていく。


「うるせえ!てめぇは黙って犯されるのを待ってればいいんだよ!」


その怒鳴り声はわたしの心に深く刺さった。


「う……うぅ……」


泣けてきた、どうすればいいの……?考えはどんどん悪い方へ進んでいきすでに心は折れそうだ。


「ああ、めんどくせえ!俺が最初に目をつけたんだ。俺からいくぜ!」

「ちっ、仕方ねぇ」

「くそ!早く替わってくれよ!」


一瞬、討論になりかけたが、すぐに話はまとまってしまったようで、男たちの中から鼻と耳にピアスをつけた金髪の男が出てきて私の服へ手をかけた。その手は乱暴で服を脱がすのではなく破るのつもりなのだろう。

手足は拘束されまともに動かない、状況は絶望的だ。


「あぁ……やめ……」


涙があふれ、声は震えてしまってはっきりと発音すら出来なくなっている。


ピアスの男が服を破り切ろうとした瞬間、私は目をつむり体を丸めようとする


「……」


荒々しい男たち手の感触が消えた。目をつむり何が起こったかわからず呆然としていると先ほどとは異なる清涼な声がかけられる


「大丈夫ですか?危ないところでしたね」


突然自分にかけられた言葉に驚き、ゆっくりと目を開ける。

すると目の前に身長170cmぐらいの青年が立っていた。


もうわけがわからない。


「……え?あの、どう……あれ?」


「怖かったでしょう、もう大丈夫……ではないですね、服がひどいことになってます。俺のジャンパーでも使ってください」


動揺しすぎてろれつの回らない私に青年は優しく声をかけジャンパーを羽織らせてくれた。


「私は……い、いやありがとうございます!」


「いえいえ、それよりも立てますか?警察に連絡します? よければお宅まで同行しますか」


「いや・・・、もう家まで離れていないので大丈夫です・・・。その、ありがとうございます!!!」



私はずっと頭を下げお礼をした

心のそこからのお礼はいつもの無愛想な私には考えられない行動だ。


青年は「そうですか、家まではタクシーで帰るといいですよ」と言ってどこかへ消えてしまった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 17歳、高校に通っている人が多い年頃であり、また受験も来年に控えとても大事な時期でもある。もちろんそんな大事な時期の学校は勉強でつらい、多くの者が学校へ行くのを拒む。


 そしてこの"相澤輝也あいざわてるや"という青年も例外ではない。


学校の長い階段を重い足取りでゆっくりと登っていく。

途中すれ違う生徒や追い越していく学生に肩をぶつけられるが大して気にはしない。

それよりも眠気と戦うのに必死なのだ。

昨夜、夜遅くまで街をほっつき歩いてたのがダメだったな。

そんなことを思いながら自分の教室のある4階まで行き、さらに少し歩いて自分の教室のドアを開けた。


 すると教室のなかの雰囲気がだらだらとしているものからじとっととした不快感を覚えるようなものに変わる。

しかしそんなことは気にしてはいられない、周りの目を無視して自分の席に座った。


 机の中に手をいれるとクシャクシャに丸められた紙や消しゴムのカスが雪崩のように出てくる。


これをどう受け止めるか、大半は嫌な気分になりこれの犯人は誰なのかと疑心暗鬼になったりするだろう。


しかし輝也は違った。


「暇な奴もいるんだな、朝眠たいのにご苦労なことだ」


特に気にせず、ゴミ箱へ捨てに行き、何もなかったかのように平然と椅子に再び腰掛ける。


それからというもの、朝会が始まるまでの時間をのんびりと過ごしていたのだがいろいろなことを発見した。


ロッカーがへこんでいる、そのせいでうまく閉まりきらずガタガタとうるさい。


「これ、壊したやつ弁償になるんだぞ・・・」


慣れたように、特に気にする素振りを見せない。

そのあとも置き勉していた教科書が隠されていたが先生に言って別のクラスの人のを借りて、授業を受けた。


しかし輝也も馬鹿ではない、誰かが自分に意図的に嫌がらせをしているのは気づいている。

でもだからといって相手にするのも馬鹿馬鹿しいと思っているし、そもそもの原因は自分にあると自覚していたからだ


原因、それは輝也が持つ異端な力" 超能力" 、詳しくいえば触れた物を変化させる能力を有していることだ。

一見行き過ぎた厨二病患者に思われるかもしれないが事実である。


 しかし、これは生まれつき持っていた物で、決してスポーツや勉強などでは使わないようにしているし、使ってもしょうがないようなもの代物だ。

それに勉強もスポーツも見えないようにしているだけで裏ではちゃんと努力はしているつもりだ、少なくとも自分が他の人に言っても恥ずかしくないほどには。

それでも超能力というのは周りから受け入れてもらえず孤立してしまうのだ。


「おい相澤ぁ! 」


 なにも大した反応を見せない輝也にしびれを切らしたのかある男が怒鳴りかけてきた。


郷田 賢治、学校で一番でかい部活で活躍をしている活発なやつだ。髪型は部活の関係か坊主でごつい体つきをしている、眉毛は太く、顔もでかい、一言で言えばゴリラのような威圧感のある男だ。



 そしてもちろん輝也は郷田の言葉には適当に相槌をうつだけだが女子の集団から一人、郷田へ話しかけるやつがいた。


「郷田くん。弱いものいじめはだめじゃない? 見ていて痛々しいわ~」


輝也を蔑みたいのか郷田の行為を非難しているのか、あるいはその両方なのか、話しかけたのは女子グループのリーダー的な存在"須藤 冥"だ。


 黒の長髪とキリッとつり上がった目、高い鼻で整った顔の美少女、なおかつ運動も勉強も学校トップクラスの美形である。

簡単に言ってしまえば性格以外完璧超人の悪女だ。


 また男子は郷田を中心として、女子は須藤を中心としてなんとなくグループが分かれていた。


それに属さない、輝也からみたらアホなんじゃないかと思っている。

同じ年の同じクラスのやつが大人のお偉いさん集まりごっこをして何が面白いのか全くわからなかったからだ。


「ちっ ……」


 不意に須藤に諭されて突っかかる勢いをなくした郷田はひとつの舌打ちを残して去っていってしまった。最近須藤側が勢力的に強いのか、あっさり退散する


そのあとは面倒事と須藤が片付けてくれたことに少し感謝して机に突っ伏したまま時間が立つのを待っていた。




 それから数分たつと授業の予鈴が教室中に鳴り響く。

まだ用を済ましていなかった輝也は急いでトイレヘ行くため教室を出てチャイムがなり終わる。


 その瞬間だった。


 カッ、と一瞬教室から光があふれ、輝也は本能的に危険だと判断しその場から飛び退いた。


 光によりすこし視界を奪われた輝也だったがすぐに光が発せられた教室の中へ視線を戻す

思考が止まる。

 そこには先ほどまで30名ほどいたはずのクラスメートたちの姿が消えていたのだ。


さっき輝也たちが立っていた場所には人がすっぽりと落ちてしまうほどの底なしの穴が空いている。


 背中に冷や汗が流れ、頭が危険信号を鳴らし始めた時には輝也はもう一度窓へ向かって飛び退いていた。

その危険信号は正解だったようでさっきまで輝也が立っていたところに、底なしの穴から真っ黒な触手がのびていた。


 ガラスが割れる音が響き、別の棟のほかの生徒や教師が騒ぎ始めるがそんなことは気にしてはいられない。


 飛び出したのは4階からだ、まともに落ちたら特異な能力を持つ自分でもけっこうやばい。

そう見立て急いで空中で体勢を立て直し能力を発動し、逃走を図る。


しかし、振り返ると甘くない現実が目に入る。


触手が落下中の輝也に追いつき足に巻きついたのだ。


 咄嗟に着地のことから触手へ思考を切り替え思考を回す、すると1テンポ遅れて触手は塵へと変化し虚空へ消えていった。


 ふぅ、と息を吐き落ち着いた瞬間、輝也の手の届く目の前の空間に亀裂が入り、底なしの歪みの穴が現れる。

しかし今度の穴から出現したのは触手ではなく人型をした" 何か" だった。


 地面に衝突するまであと少しと迫るがこの" 何か"をどうにかしないといけないと瞬間的に判断し、その人型の"何か"の顔に当たるであろう箇所を掴み、先の触手のように塵へと変えようとした。


 しかし"何か"は塵へと変わることはなく、逆に輝也の首をつかみ口らしき箇所が動く。


「力を抜け」


 その言葉を発せられた瞬間、超能力者の輝也の意識は一欠片残さず吹き飛んだ。

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