番外編:キャプテンの厳選
久々の更新になります(小声)
番外編っぽいです、すいますん(小声)
身も心もぼろぼろな男がいた。その男は目に映る全てを憎んでいるかのような目つきだった。低く唸るような声で男は呟く。
「殺してやる…殺す、殺す、死んじまえ」
「指なんか噛んで、自傷癖でもあんのか?」
派手な赤いコートを風でなびかせながら、男の前に現れた。男は睨みつけるように、目の前にいる男に視線をやる。男の後ろには、長身の男が付き従うように控えている。
「よぉ、元傭兵さん。威厳なんか微少も残ってねーな」
赤いコートの男はせせら笑う。後ろの男は苦笑している。男は憎悪を込めた目で男たちを睨みつける。赤いコートの男はその視線を受け、にんまりと笑う。
「なんなんだ、てめーら…。俺になんか用かよ!?」
噛み付く勢いで男は叫ぶ。コートを羽織った男は不気味に笑うだけだった。
「用ならある。それも重要なことだ」
路地に座り込んでいる男に、赤いコートの男は手を差し出す。
「オレの名前はアーティー・オーデン。オレはお前を気に入った。だから仲間になれ」
男は驚愕に目を見張る。アーティーと名乗った男は断れると思ってないのか、自信満々な顔で返事を待っている。
「アーティー・オーデンって最近、名を馳せてる海賊だったか…?」
「へぇー。有名なんだ、オレって。聞いたか? ロニー!」
アーティーがそう叫ぶと、後ろからいいから続けろ、と怒声が飛んでくる。アーティーは拗ねた顔をする。
「祖国のために戦った俺が裏切り者の海賊なんかなれるか!!」
男は激昂して、アーティーの胸倉を掴む。男は激怒しているが、胸倉を掴まれているアーティーは無表情だ。
「お前を見捨てたのはその祖国じゃねぇか」
「…っ!」
男は言葉を詰まらせる。それは彼が目を逸らし続けてきた事実。戦場から帰国した男には何も残ってはいなかった。家も打ち壊されていて、男に帰る場所はなくなっていた。
「なんだよ…てめぇも復讐しようって思ってんのかよ…」
アーティーの胸倉を掴む力が弱まり、男は頭を項垂れる。
「いや、そんな大それたことは思ってない」
アーティーは真顔で断言する。男はアーティーの思い掛けない言葉に目を丸くする。アーティーは力が抜けた男の手首を掴む。
「お前、元々は大砲作ってたんだろ?」
「あ、ああ…」
狼狽えたように男は答える。アーティーは満足そうに笑う。
「オレは復讐とかそんな心念なんて持ち合わせてねぇ。ただ自分のしたいことをしてるだけだ。勝手だろ? それに自由だ。選ぶこともな。オレは気に入った者しか団に入れない。お前のことは気に入ったんだ。だから、勧誘してる。それに、オレの海賊団には大砲を手入れできるやつがいねぇ。お前が必要だ、オレと来い」
アーティーは再び、男に手を差し出す。男は手を取ることを戸惑ってしまう。
「選ぶのはお前の自由だ」
アーティーがそう言うと、男はアーティーの腕をいきなり掴む。アーティーは一瞬、その勢いに面食らう。
「…自由ってのは俺が一番欲しかったものだ。てめぇといることでそれが手に入るなら…俺はてめぇに着いて行く…。よろしくな、キャプテン」
男は歯を見せながら笑った。アーティーはいつものように不敵に笑う。
これがアーティー・オーデンの仲間の作り方だ。いつの間にか、皆アーティーを船長と慕うようになる。どこか不思議な雰囲気を持つアーティーは、今日もまた自分の欲求を満たすため航海する。
End.
誤字、脱字?なにそれ食べれるの??