千五百八十年 五月下旬
薩摩の地は、天に愛されているのか、それとも見放されているのか判然としない。
火山灰が堆積した痩せた大地に齧りつくようにして生きる民にとって、日々は生と死の境界を綱渡りするがごとき試練の連続であった。
そんな過酷な風土が、狂気と呼べるほどに強固で、そして歪な階級社会を生み出したのかもしれない。
この地には大きく分けて二種類の武士が存在した。
支配階級である上士、そして農に従事しながら刀を差す下級武士、郷士である。
同じ「士」の字を戴きながら、両社の間には決して埋まることのない断絶があった。
これが他国であったならば、戦乱の功により実力で成り上がれる可能性もあっただろう。
だが、薩摩は違う。ここは「鉄の規律」と「血の序列」が支配する国だ。
政務や要職は、島津本家や伊集院、樺山といった名門が独占しており、郷士がどれほど知略や武勇に優れようとも、現場の下士官にまで引き立てられれば御の字なのである。
それ以上の地位に就くことなど、太陽が西から昇るよりも有り得ぬこととされていた。
一人の使い番が馬を駆り、急な坂を下っていた。
彼が背にしたのは、瓦屋根が連なる豊かな上士の居住区。
向かう先はそこから大きく下った谷底、城下町の喧騒から隔絶された、静寂と貧困が支配する郷士集落であった。
馬の蹄が乾いた土を蹴り上げ、砂塵を舞い上げる。
その向こう、粗末な茅葺き屋根が身を寄せ合う一角に、樺山家の陪臣である郷士・五代家の、屋敷と呼ぶには余りに慎ましい小屋があった。
「兄さぁ、今日の飯も芋か?」
畑の土を掘り返しながら、小さな男の子が隣の青年に声をかけた。
男の子の手には身の丈に合わぬ重たい鍬が握られている。
その手は泥と灰で黒く汚れ、裂けて血を滲ませているあかぎれが痛々しい。
「ああ、母上が蔓をうまく煮付けてくれたそうだ。ありがたく食え」
五代才助は、額から流れる汗を汚れた手拭いで拭いながら答えた。
兄弟ともに、肋骨が浮き出るほどに痩せ細っており、身に纏う継ぎ接ぎだらけの着物は、もはや襤褸布とでも呼ぶのが相応しい有様。
彼らは武士の身分ではあったが、その暮らしぶりは百姓と大差ない。
いや、武士としての装具を維持せねばならぬ分、百姓よりも生活は逼迫していた。
それでも、才助はこの泥まみれの日常を愛していた。
猫の額よりは幾分かまし程度の限られた農地を耕し、わずかな収穫量を少しでも増やせるよう尽力する。
水持ちの悪い土壌に川底を浚って採取してきた粘土を混ぜ込み、天候を読み、せめて弟たちに腹一杯飯を食わせる方法を探る。
試行錯誤を繰り返し、ほんの少しの成果を皆で喜び合う。それが若き彼のささやかな楽しみであり、生き甲斐であった。
「黒南風(梅雨入り前頃にかけて吹く、湿った強い南風のこと)が吹いておる。明日は少し荒れるやもしれぬ」
才助が空を見上げた、その時であった。
静寂を切り裂くように、荒々しい蹄の音が響き渡った。
地面を揺らすその重い響きは、この貧しい集落には不釣り合いな、圧倒的な権力の音であった。
「五代家の者に告げる!!」
有無を言わせぬ宣告が飛ぶ。現れたのは、主家である樺山家の家紋を背負った使い番であった。
馬上から浴びせられる居丈高な声に、才助の弟たちは恐怖で身を縮める。
才助は慌てて鍬を投げ出し、泥の中に平伏した。郷士にとって、上士の来訪が吉報であったためしなど万に一つもない。
大抵は過酷な労役を課されるか、理不尽な処罰の通告であった。
「はっ! 才助にございます!」
額を地面に擦り付け、泥水が顔に跳ねるのも構わず平伏した。
だが、使い番は才助に視線すら落とさない。その目は遥か虚空を見据えたままだ。
道端の雑草に挨拶する人間がいないように、彼にとって才助という存在は、視界に入れる価値すらない「風景」の一部に過ぎないのだ。
「直ちに出頭せよ」
誰の命か、何の用件かすら説明せぬまま、使い番は早くも手綱を引き、馬首を巡らせて去っていった。
上士が命じた以上、郷士は死ぬ覚悟で従う――それが薩摩の絶対律である。
才助は不安げな面持ちの弟と母へ精一杯の笑顔を向けた。
「大丈夫だ、すぐに戻る」
駆け寄ってきた父と共に、遠ざかりつつある舞い上がった砂塵をたよりに走り出す。
人の足で馬に追いつけるはずもない。それでも彼らは、泥だらけの服がさらに汚れるのも厭わず、必死に地を蹴った。
この理不尽な呼び出しが、彼らの、そして薩摩の運命を変える長い旅の始まりになるとも知らずに。
喉から血の味がした。胸腔が焼き爛れるように熱く、心の臓は今にも破裂せんばかりに踊り狂っている。
死に物狂いで山坂を駆け上がり、乾いた土を蹴り上げるたびに肺が悲鳴を上げた。
遠ざかる使い番の馬影は、まるで幻のように遥か彼方へと消えかかっていく。
息も絶え絶えとなり、意識が飛びそうになりながら、才助と父は城下の樺山家屋敷へとようやく辿り着いた。
威圧的な黒塗りの塀。だが、彼らが正門をくぐることは許されない。
郷士は目立たぬよう裏口から入り、使用人が通る勝手口から庭へと回される。
そこで五代親子は、濡れた土の上での待機を命じられた。
「ここで待て」
それだけ告げられ、放置された。才助親子は全身泥と汗にまみれ、肩を激しく上下させている。
屋敷を行き交う使用人たちですら、彼らを「汚らしいもの」と軽蔑の視線で見やり、鼻をつまんで通り過ぎた。
そんな屈辱の中でも、彼らは泥の地面に額をこすりつけたまま、石像のように動かなかった。
動けば不敬。声を上げても不敬。ただひたすらに主人の慈悲を待つしかなかった。
影が長く伸び始めた頃、障子の開く音が静寂を破った。
縁側に現れた人の気配だけで、才助の全身の毛穴が縮み上り総毛立つ。
現れたのは樺山家次期当主、樺山久高である。
才助親子は決して顔を上げない。泥の冷たさを額に感じながら、主人の言葉を待つ。
「此度の尾張行き、貴様ら『道具』を持参することが決定した」
頭上から降ってきた言葉に、才助は暫し己の耳を疑った。
(尾張……?)
尾張と言えば薩摩中の至る処で話題に挙がっている、織田への留学生派遣のことだろう。
伊集院家をはじめとする名門の子弟のみが選ばれる誉れ高い役目のはずだ。
明日食う飯にも困る、泥まみれの食い詰め郷士たる自分が選ばれるなど、あり得ようはずがない。
「はっ……!?」
驚愕のあまり、才助は禁忌を犯した。
思わず、顔を上げてしまったのだ。
逆光の中に立つ若武者の鋭い眼光が、才助を射抜いた。
「誰が面を上げてよいと申した?」
絶対零度の声が、才助の心臓を貫いた。
「郷士が上士の顔を直視するなど……身の程を知れ」
「ッ……!! も、申し訳ございませぬ!!」
才助は弾かれたように再び泥の中へ顔を叩きつけた。
薩摩に於いて目下の者が主人に対し無遠慮な視線を向けるなど、それだけで無礼討ちが認められるほどの不敬にあたる。
樺山が才助を即座に斬り捨てなかったのは、単に気まぐれな幸運に過ぎない。
「尾張では計算や記録など、武士の本分ではない雑務が多いと聞く。そのような卑しき雑事をなすのは、我ら上士の役目ではない」
樺山は吐き捨てるように続けた。才助の能力を買ったのではない。
自分がやりたくない雑多な用事を押し付ける「使い勝手の良い道具」として選んだに過ぎないのだ。
「尾張でも我ら上士の『手足』となり、雑役をこなす『道具』となれ。不満などなかろうな?」
彼の声には五代親子に対する配慮など欠片もない。
郷士は上士の役に立つことこそが本懐であり、それが当然の理と言わんばかりであった。
才助が言葉を失っていると、隣で父が叫んだ。
「滅相もございません!」
その声は、歓喜に震えていた。父は泥に顔を埋めたまま、大粒の涙を流している。
「ありがたき幸せにございます! 我が子が若旦那様(樺山の呼び名)の『道具』としてお役に立てるなど、五代家末代までの誉れ! どうぞ、此奴をお使いください! 壊れるまで、すり潰れるまで、遠慮なくお使い潰しくだされ!!」
狂気にも似た感謝の叫び。才助は泥越しに父の熱狂を感じ、凍りついた。武士としての誇りを根底から否定されたというのに、父は泣いて喜んでいる。
だが、これが薩摩の現実だ。これこそが郷士の生きる世界なのだ。
上士に使い潰されることこそが郷士の至上の喜び。
たとえ我が子が「道具」と蔑まれようとも、その役目を与えられたことに咽び泣くのが、彼らの生き様であった。
「……殊勝な心がけだ」
樺山は短く言い捨て、踵を返した。出発の日取りも、準備すべきものも告げない。
道具に対して説明は不要。必要な情報は自ら調べろ――それができぬなら、連れて行く価値もないということだ。
ただ一つだけ、彼は己の背中越しに要求を投げかけた。
「誰よりも早く参れ。上士を出迎えるのが、郷士の役目だ」
障子が閉まる音が響いた。主が去ってもなお、父は泥の中で感謝を唱え続けていた。
才助はただ、己の運命の重さに押し潰されぬよう、じっと泥の味を噛み締めていた。
泥にまみれ、引きずる足で五代親子が陋屋(狭く見窄らしい家)へ辿り着いたのは、夜も更けた頃であった。
板の間に腰を下ろすと、闇の中に母と幼い弟たちが待っていた。彼らの前には、湯気を立てる古びた木椀が置かれている。
「祝い膳ですよ」
母が慈しむように微笑んだ。だが、その中身を見た瞬間、才助の胸は締め付けられるような痛みに襲われた。
囲炉裏の鍋で煮立っているのは、魚でもなければ、肉でもない。雑穀がまばらに浮いた、薄い、薄い粥であった。
ほとんど白湯のようなそれを、母は「今日は兄さぁの門出だから」と、神棚に供えるために秘蔵していた僅かな米を混ぜて作ってくれたのだ。
「うわぁ! 米だ! 米が入ってる!」
幼い弟が無邪気に叫び、手を叩いて喜ぶ。その光景が、才助の胸を鋭利な刃物となって抉る。
米といっても、白く輝く銀シャリではない。赤黒く形の崩れた赤米。
上士ならば家畜の餌として与える程度の下等な品だ。
だが、普段は芋の蔓や木の根、時には泥を混ぜて嵩増しした飯ばかり食っている弟たちにとって、米粒が数えるほど浮いているだけで、それは時ならぬ御馳走であったのだ。
「……すまんな、才助」
父が、申し訳なさそうに椀を受け取った。
先ほど屋敷の庭先で、狂ったように忠義を叫んでいた男の姿は、そこにはない。
あるのは、己の無力さと貧しさに心を痛める、ただの一人の父親の顔であった。
「俺が不甲斐ないばかりに……お前を『道具』として差し出さねばならん……」
父の声が震えていた。本心から息子を道具だと思っている親など、この世にいはしない。
だが、あの場ではああ叫ぶしかなかった。「使い潰せ」と狂気を演じなければ、才助が選ばれることはなかった。
この困窮から抜け出す唯一の糸口――「口減らし」と「出世の機会」を掴むための、それは血の涙を流しながらの必死の芝居であったのだ。
「父上、何を仰いますか」
才助は首を振った。その瞳には、かつてない強い光が宿っていた。
「俺は嬉しいのです。これで、父上や母上、弟たちに……いつか、腹一杯の飯を食わせてやれるかもしれないのですから」
才助は粥を啜る。薄い塩味と、僅かな米の甘み。それが酷使された五臓六腑に染み渡る。
どれほど豪華で山と積まれた料理よりも、才助を喜ばせようと、なけなしの食材を叩いたこの一杯の薄い粥の方が、今の彼にとっては遥かに価値のあるものであった。
「兄さぁ、尾張ってどんなとこ?」
「飯がいっぱいあるって本当?」
弟たちの問いかけに、才助は力強く頷いた。
「ああ、本当だ。若旦那様のお話では、向こうには俺たちの知らない知恵と、技術が溢れているそうだ。俺はそれを、余さず盗んでくる。道具として扱われようが、泥水を啜ろうが構わない」
才助は椀を置くと、家族を一人ずつ見渡して誓った。
「必ず、偉くなって戻ってくる。そして、みんなで腹がはち切れるほど、白い米を食おう」
「ああ……頼んだぞ、才助」
「体には気をつけてね。無理をするんじゃないよ」
母の優しい眼差し、父の頼もしげな顔、弟たちの無邪気な笑い声。この温かな光景こそが、才助の全てであった。
誰よりも、何よりも守り抜きたい景色。
だが、彼はまだ知らない。この「家族を想う慈しみ」こそが、後に彼を最も苦しめる鉄の鎖となり、この温かな食卓すらも、無慈悲な歴史の激流に飲み込まれてゆくことを。
才助は、椀に残った最後の一滴まで粥を飲み干した。その味を、舌に、喉に、心に刻み込むように。いつか来る「その日」まで、決して忘れぬように。
それから才助は、不眠不休で「出発の刻」を調べ上げた。
情報を集めるための伝手すらない為、ひたすらに己の足を酷使する。
城下の噂を拾い集め、最短の山道を駆けて当日、誰よりも早く現れる方法を算出した。
出発の朝。才助は樺山の言いつけ通り、夜が明けるよりも早く港へと走った。
波止場に一番乗りすると、冷たい石畳の上に平伏して主の到着を待つ。
やがて他の郷士たちも集まり始め、才助と同じように土下座の列を作った。
最後に、伊集院を筆頭とする上士たちの一行が到着する。その最後尾に、主たる樺山久高の姿があった。
(一番に来た。言いつけ通り、誰よりも早く……!)
認めてもらえるかもしれない――そんな淡い期待は、頭上から降ってきた冷ややかな一言で粉砕された。
「……そこで何をしておる」
「はっ! お出迎えにございます! お言いつけ通り、誰よりも早く……」
「痴れ者が」
言い終えるより早く、樺山の鞘が才助の肩を突き飛ばした。
「あぐっ……!」
「貴様は樺山家の『道具』であろう。ならば『ここで』待つのではなく、我が屋敷へ誰よりも先に参り、荷の一つでも多く担いでここまで供をするのが『道具』の役目であろうが。上士に人足の真似事をさせるとは何事だ」
「あ……っ!」
才助は絶句する。確かに「屋敷に来い」とは言われていなかった。
だが、そのような理屈は薩摩では通用しない。
樺山は周囲の上士たち、特に先頭を歩く伊集院らに聞こえるよう、わざとらしく大きな溜息を吐き捨てた。
「言わねば分からぬか。これだから郷士は……。上士が動く前に動き、上士が止まる前に場を整える。それが樺山家の道具としての分際だ。……次はないぞ」
「は、ははっ!! 申し訳ございません!!」
才助は震えながら平伏した。伊集院たちは鼻で笑い、興味を失った。
「フン、樺山の家の者は出来が悪いな」
「あんな気の利かぬ道具を連れて行くとは、樺山も苦労する」
彼らの目から才助への関心が消えた。才助は誰の目にも留まらない、ただの「無能な道具」として定義されたのだ。
「乗れ。荷物の番をさせてやる……船酔いなどして上士の面に泥を塗るなよ」
才助は逃げるように荷物を担ぎ、船へ上がった。
ふと周りを見渡すと、他家の郷士たちはそれなりに整った衣服を纏っている。
対する自分は、継ぎ接ぎだらけのボロ布。恥ずかしさで顔が熱くなり、穴があれば入りたかった。
郷士の自分には、上等の衣類を手に入れる金も、当てもなく、これが精一杯の恰好だったのだ。
そんな才助の見窄ぼらしい姿を見て、樺山は深いため息をついた。
「来い。こちらの荷を改める」
有無を言わせぬ態度で、才助を船の甲板の隅、荷物の陰へと連れ出した。
人目が完全に遮断された場所まで来ると、樺山は脇に抱えていた風呂敷包みを解き、中から厚手の木綿着を放り投げる。
「わ、若旦那様、これは……?」
「着ろ。今すぐだ」
「め、滅相もございません! このような上等な品……!」
「黙れ」
樺山は、近くを通りがかった上士たちに聞こえるよう、再び冷酷な声を張り上げた。
「薩摩の樺山は道具の手入れにも不自由しているのか、と尾張の者どもに笑われよと言うのか。道具が見窄らしければ、恥をかくのは道具ではなく主たる上士なのだ。しかと自覚せよ」
「はっ、はい!」
「よいか。貴様は樺山家の道具だ。道具の不備で樺山家の面子を汚すことは許さぬ。早く着替えろ」
「ありがとうございます!」
「本来ならば打ち捨てる古着だが……『道具』が纏うには十分であろう」
慌ててその場でボロを脱ぎ捨てる才助を見て、樺山は舌打ちをし、背を向けた。
「愚か者が。何処を見ている。郷士が見るべきは、常に上士の背だ。それを忘れるな」
「は、はい! 申し訳ございません!」
樺山の広い背中を見つめながら、才助は素早く帯を締めた。
才助が着替え終えたのを確認すると、樺山は冷たく告げた。
「まだそこにいる気か。道具の役割を果たせ」
「はい!」
きちんとした身なりになった才助は、今までのボロを抱え、主の荷の元へ走った。
入れ替わるように、伊集院が樺山に近づいてきた。口元には嗜虐的な笑みが浮かんでいる。
「樺山。出来の悪い道具を持つと苦労するな」
「はは……お見苦しいところを。殿が是非にと仰ったが故、分際もわきまえず調子に乗っているのでしょう」
「殿(島津義久のこと)」の名が出ると、伊集院は露骨に顔をしかめた。
「ふん、殿も随分と酔狂な。あのような薄汚い道具を連れて行けなどと。……まあよい。尾張で上士の面面に泥を塗らぬよう、しかと『教育』いたせ」
樺山は恭しく頭を下げ、伊集院の背中が見えなくなるまでその姿勢を保った。
伊集院が上機嫌で船室へ去ると、樺山はゆっくりと顔を上げた。
瞳からは先ほどの卑屈な色は消え失せ、冷徹な光が宿っていた。
「ほどよく使える『道具』に仕立て上げますよ。決して壊れぬように」
船が岸壁を離れる。薩摩の山々が遠ざかり、一路未知なる国・尾張へ。
それは、五代才助にとっても、樺山久高にとっても、二度と引き返すことのできぬ修羅の道の始まりであった。




