第一章 エピローグ
頭の後ろの柔らかい感触で目を覚ました。
俺の目の前には嬉しそうに微笑む静の顔。
そうか、俺は。
人形使いとの激闘の後、俺はすぐに気絶してしまったんだった。
どうやら静が介抱してくれたらしい。
「……おはよう」
「ああ……おはよう」
なんだかとても体がだるい。気を抜いたらすぐにでもまた寝てしまいそうだ。
「……一応体力のほうは回復させたけど、魔力の回復ができてないみたい」
なるほど。魔力が尽きるっていうのはこういう感覚なのか。
近い表現でいうなら強烈な怠惰感といったところか。
まるで何もしたくない、できそうにないといった感覚が俺の体を駆け巡っている。
「……無理しないほうがいい。悠ならその……このままでもかまわないから」
そうか、ありがたいな。
そう思いながら目を閉じようとしたところで、一つの疑問にでくわした。
俺は今どこで寝ている?
目の前には静の顔。しかもよく見たら正面からでなく、寝転がって下から見上げているみたいだ。
ということは静の顎の辺りを隠しているのは胸か。
……意外とあるな。
と、それはどうでもいい。……決して悪い意味ではないぞ。
この位置ということは、この頭の下の柔らかい感触は……。
伝説の膝枕。
それを意識した瞬間俺の顔は真っ赤になり、勢いよく体を起き上がらせようとするが、
思うように体は動かず、頭は再び柔らかな膝の上へと沈む。
「……大丈夫。誰も見てないから」
そういう問題でも無いと思うが。
……まあいいか。静が嫌じゃないって言うんなら、お言葉に甘えさせてもらうかな。
静の温もりに包まれてゆっくりと瞳を閉じる。
「……ありがとう」
それはこっちの台詞だろ。
「……悠に出会えてよかった」
俺もだよ。
俺の体が回復したら、静といろいろと話し合わないといけないかな。
でも今は……。
そうして完全に瞳を閉じる。
そうだ、忘れてた。
眠ってしまう前にいつものおまじないを。
俺たちのこれからが幸せになることを祈って、
彼女への感謝をこめて。
「明日もいい日でありますように」
第一章、通称第一巻完結です。これを書いてる時点では序盤の修正もしているので、第二章はさらにゆっくりとなる予定です。オープニングは早いかもしれないですけど。まだまだ続きますよ~。