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無限のグリモワール  作者: 鏡紫朗
第三章 真夏の海の四重奏
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第十四話 ドキドキ真夏の海水浴旅行 出発編

ついにこの日がやってきた。

そう、今日は運命の土曜日。

これから俺にとっての地獄の2日間が始まる。

果たして俺は身体的にも、精神的にも、そして貞操的にも

生き残ることが出来るのだろうか……。

何?幸せな2日間の間違いじゃないかって?

彼女いるのに修羅場とか勘弁して欲しいわ。

一回体験してみろ、裸足で逃げ出したくなるぞ。

……やめよう、ディスリすぎると画面の前から読者が離れていく。

「……悠、準備出来た?」

「ん?ああ、大丈夫だ」

振り返ると、そこには自分の身長ほどのキャリーバッグを、重そうに支える静の姿があった。

戦闘時の姿を見ていると人間離れしているように感じるが、

こういった姿を見ると普通の女の子なんだなと改めて実感させられる。

「重いだろ?持ってやるよ」

「あ……大丈夫。頑張るから」

「良いって。このぐらいはやらせてくれよ。そうじゃないと彼氏としての面子が立たないだろ」

そう言って強引にキャリーバッグを持ってやると、静は頬を可愛く染めながら俯いてしまった。

「……ありがとう……。でも悠にはいつも助けてもらってるから……大丈夫」

いつも助けてもらってる、か。そう言ってもらえると素直に嬉しいな。

「そっか」

「……うん」

見つめ合うだけ、ただそれだけだけど、それでもこの瞬間がとても幸せだと感じられる。

静の鼓動が、吐息が

「なあ、今回の旅行の趣旨としていきなりのろけてるのはどうかと思うんだが?」

……久々のいい雰囲気を邪魔しないでくれませんかね。それに

「曲がりなりにもあなた、静の姉さんでしょうに」

「……姉さん……酷い」

ほら、静もご立腹でいらっしゃる。

「いやいや、一応私も朝霧争奪戦の数に入っているのだから、

 最初から目に見えた勝負というのも面白くない」

面白く無いって……。

それと朝霧争奪戦とか名前付けないでくださいな。鬱になるから。

俺と静が大きなため息をつくと同時に、タイミングよく玄関のチャイムが鳴り響いた。

「やっほーーーーゆうきーーーーーー」

藤村の外からでもはっきり聞こえる大きな声が室内にこだまする。

どうやら2人が来たらしい。というか、家の中で反響するとかどんだけ大きい声なんだよ。

しかも一応朝の6時なんだが……。

まったく近所迷惑だわ、恥ずかしいやらでやめて欲しいもんだ。

とは思うものの、あいつの元気な声が聞けるのは少し嬉しかったりもする。

す、少しだからな!

「ゆうきーーーーーー起きてるんでしょーーーーーーー流石にーーーーーー」

……早くいこう。止めないと俺の私生活に関わる。

玄関のドアを開けて第一声。

「近所迷惑だからやめろ」

と、やり遂げた感全開の笑みを浮かべている藤村に言ってやった。

「やっと出てきた。おはよう悠樹。というか近所迷惑って、私そんなに大きい声出してないよ~」

どうやら反省の色は無いらしい。

「十分でかいわドアホウ」

「ドアホウとは失敬な!アホウっていう方がアホウなんだからね」

むくれる藤村の横には苦笑いを浮かべる倉島。

まあそうだろうな、こいつのこれを見たらそういう反応を浮かべるしか無いよな。

というわけで、藤村は無視して倉島に声を掛けることにした。

「いらっしゃい。体調は大丈夫か?」

「おはようございます。はい、体調のほうはもうバッチリです。

 水着の方もバッチリ用意したので楽しみにしててくださいね」

地雷のキレの方もバッチリなご様子で何よりですわ……。

「何々?雪ちゃんにエッチな水着でも買わせたのか!許さんぞ悠樹」

予想通り地雷に噛み付いてきたな藤村。ということは次にお前が起こす行動も計算済みだ!

先手を打たせてもらう!

「そんなことねえから安心しろ。ついでにお前にもそんなもん

 頼んでないから、そういうネタは却下な」

「チッ」

つまらなそうな顔になったってことは、予想通り言うつもりだったんだな……。マジ勘弁。

ほら、静がすごい勢いで睨みつけてきてるぞ。

「ご、ごめんって静っち、冗談だから冗談」

静の視線にたじろぐ藤村。

しかし藤村はほんとに静の視線、特に睨みには弱いらしい。

理由はわからないのだが、何か弱みでも握られているのだろうか。

「真央さん、あれでも友達少ないらしいですよ」

突然の倉島の耳打ちの内容に、俺は正直びっくりした。

あの、あの藤村が友達が少ないとか信じられなかった。

どんな状況にもすぐ対応していきそうなあいつなら友達100人いても不思議に思わんのだが。

いや、むしろそんな感じだから特定の友達が少ないということも考えられるか。

ふむ……。

「まあとりあえず玄関先で待つっていうのも何だし、上がるか?」

「いいよいいよ~、どうせもうすぐ出発するんでしょ?」

「まあそうだけどさ」

「ならここで待ってるからお構いなく」

ズケズケしてるようでいがいと謙虚なんだよなこいつ。

「いいんですか真央さん!」

突然倉島が藤村へと詰め寄る。

「ゆ、雪ちゃん!?な、何が?」

あまりに唐突な出来事に、流石の藤村もたじろいだようだ。

正直俺も面食らっている。

「悠樹さんの部屋を覗くチャンスですよ!」

……何を言っておいでですかこの娘は……ほんとにもう。

そもそも、そんなもん藤村に興味があるわけ。

「……そうか、そう言われてみればチャンスかも……」

あるんかーーーーーい!!

というか静にすらまともに見せたこと無いのに、他の女性に見られるとか……は、恥ずかしい。

「朝霧、いきなり乙女になるな」

そういうツッコミはノーコメントで。

不意に静が俺たちの間に割り込んできた。

「し、静?」

「……悠樹の部屋は私だけのもの」

おもわず吐血しそうになった。

まさか静が、あの静が!こんなセリフを言ってくれるなどといったい誰が想像できたことだろうか。

「静がこんなに積極的に。私は嬉しいぞ朝霧」

愛美姉も同じ気持のようだ。俺の肩に手をおき涙を流している。

しかしその気持はわかりますが、いくらなんでも泣かんでも……。

「くっ、やはり立ちはだかりますか静さん!」

「ごめん静っち、私、私は悠樹の部屋が見たい!」

そして目の前ではよくわからん展開が繰り広げられていた。

なんだこの親友だったライバルと戦う勇者とヒロイン、みたいな光景は。

しかもズンズンと家の中に入ってきてるし。

さっきの謙虚さは何処へいったのかね藤村君。

静には悪いがもう正直好きにしてくれという感じである。

こんなとこから精神力を使っていたら、帰ってきた頃には本当に死んでいそうだ。

「お待たせしました兄さん」

ここで準備のために出かけていた救世主兼事件の発端者ほったんしゃが帰宅を果たし流れが変わる。

これによってとりあえず現場の危機は

「え、えっと、この娘が悠樹の妹さん?」

「ほほう、なるほどこれはなかなかに」

去ってないのかもしれない……。

とりあえず興味は持たれているので紹介して話をそらそう。

「ああ、紹介する。朝霧奈穂、俺の妹だ」

毒舌は混ぜるなよ、と奈穂に視線を送る。

わかりましたという返しとともに、そのかわりという視線が戻ってきたので

俺は視線を逸らした。

だって、何要求されるかわかんないし……。

奈穂からゴゴゴという擬音が聞こえてきそうだが徹底的に無視を決め込むことにした。

「はじめまして朝霧奈穂と申します。兄さんのご学友の方々ですよね。

 お話は伺っております。不出来な兄ですが今後とも宜しくお願いします」

「ふ、藤村真央だよ。悠樹とは中学の時からの、えっと、腐れ縁ってやつかな。

 よろしくね、え~と」

奈穂の優等生オーラに藤村がたじろいだようだ。

「奈穂、で構いませんよ」

「うんわかった。よろしくね奈穂ちゃん」

「倉島雪と申します。悠樹さんのクラスの学級委員長をさせてもらっています。

 よろしくお願いしますね奈穂さん」

「こちらこそよろしくお願いします倉島さん」

「私のことも雪、で構いませんよ」

「あ、私のことも真央で構わないからね」

「わかりました。それでは雪さん、真央さん、改めてよろしくお願いします」

と、会話だけ聞いていれば仲睦まじい雰囲気を感じるのだが、

実際は三人共目が笑っていないし、視線で火花が散っている状態である。

いったい俺の周りはいつから修羅場になったのだろうか……。

カムバック、ピースデイズ。

「だから言ってるだろう、お前は女子に優しくしすぎだ」

今回ばかりはタバコを吸いながらどこ吹く風の愛美姉の一言を否定することが出来なかった。

ため息をつく俺に対し、唐突にこっち来いという視線を奈穂が送ってきた。

「どうした?」

「お二人共、な・ま・えで兄さんのことお呼びになってるんですね」

俺の腕の肉を全力でつねりあげていることから、そうとうご立腹なご様子で。

というか痛い、マジ痛いから!

「とりあえず皆さん一筋縄ではいかないのはわかりました」

私はあなたの言ってることが全くわかりません……。

まったく、名前で呼んでるからってそれがどのくらいの好意なのかわからんだろうに。

まあ確かに、静は付き合うまで名前で呼ばせてくれなかったけどな……。

「準備が終わったのならそろそろ出発しないか?」

準備万端と静と同じサイズのキャリーバックを両手にもち、待ちくたびれてる様子の愛美姉。

ここにきて一番ウキウキしてるのは愛美姉説浮上。

「そうですね、それでは参りましょうか。車は玄関に用意してありますので」

ん?そういえば車でいくのか。学生ばっかりだしてっきり電車でいくのかと思っていたが。

準備がどうのこうのずっと言ってたし、バスでもチャーターしたのかもしれんな。

……というか旅費はどっから出てるのだろうか……。

外に出た俺達を待っていたのは予想外のものだった。

黒きボディに常用車の2倍以上の車体をしたそいつはまごうことなき本物の

「……ベンツ……だと!?」

「はい」

はいって、なんでそんなに平然とした表情でいられるんですか奈穂さん!

そりゃまあ呼んできたのはあなたなんでしょうが……。

「こちらが運転手の」

「セバスチャン、ではございませんが御堂才蔵みどうさいぞうと申します。

 以後お見知り置きを」

車の外に立っていた年老いた執事は、セバ、ではなく御堂さんと言うらしい。

というか、まてまてまて。なんだこれは?どういうことだ?

いつの間に俺の家はこんな大財閥になった?

「ねえねえ悠樹、これどういうこと?」

庶民代表の藤村も驚きのあまりパニックを起こしている。

だがな、だがな藤村よ。

「俺が聞きたいぐらいだ」

ほんと奈穂が帰ってきて以来というもの驚かされることばかりだ。

「朝霧……なるほど、どこかで聞いた苗字だとずっと思っていたが、そういうことか」

「……どういうことです?」

「朝霧家という、代々ある神社を守護している大きな家系があってだな。たぶんお前の妹はそこの娘だ」

うちらの関係筋でもある。最後に耳打ちでそう俺に付け足してきた。

初耳だった。確かに奈穂と一緒に叔母の神社に遊びに行ったことは何度かあったが、

まさかお金持ちだったとは……。

いや、それよりも愛美姉がうちらの関係って言うってことは、もしかして奈穂も魔法使い(・・・・)。

やばい、あまりに衝撃的な情報が多すぎて、頭がパンクしそうだ。

左手で頭を抱えていると、そっと右手に小さなぬくもりが。静の手だった。

「……大丈夫?」

心配そうに俺の顔を覗き込む静の表情に冷静さを取り戻す。

これから楽しくなるはず、の旅行に水を差すなんてナンセンスだ。

「大丈夫だよ。ありがとな」

俺の笑顔を見て安堵する静の表情。

それと、周りの皆さんの非難ゴーゴーの視線が突き刺さった。

「と、とりあえずいくか。セバ、ごほん、御堂さんよろしくお願いします」

そんな皆さんの視線は強引に振りきることにした。

「かしこまりました。それではおぼっちゃま、お嬢様方、お乗りくださいませ」

俺たちを乗せるとベンツは目的地へと向かって走りだした。

皆は初めてのベンツに様々な反応を示している。

藤村ははしゃぎ、静は落ち着かなさげにモジモジし、愛美姉と倉島は落ち着いている。

そんな中俺は、愛美姉が言ったことが、奈穂のことが気になって楽しんでいる余裕など無かったのだ……。

現状、書けば書くほど増えていく日常パート会話に四苦八苦しております(おいw)。この辺り修正しないと読みにくいな、キャラクター達「任せろb」、文章量増える。って感じです。長く書いてるとキャラクターが勝手に動いてく、っていうのを結構実感できますね。拙い文章ですがこの子たちの物語にまったりお付き合いしていただけると幸いです。次回期待せずに待て。水着回(ボソッ

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