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無限のグリモワール  作者: 鏡紫朗
第三章 真夏の海の四重奏
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第三章 プロローグ

窓ガラスから差し込む強烈な陽の光を受けて俺は目を覚ます。

ベッドから抜け出し私服に着替えると、扉を開けて階段を降りる。するとそこには……。

「……おはよう悠。少し待ってて、もう出来上がるから」

そう、そこには俺の最愛の人、俺の大好きな静がいつものように朝食を用意しているのだ!

裸エプロン、ではないが、可愛らしいエプロンに身を包み、小さな体で一生懸命に作る姿は

それはもう可愛く、許していただけるのなら今すぐ抱きしめてナデナデしたいぐらだ!

っと、こんな煩悩全開の思考を巡らしていたら静に睨まれてしまった。

のでやめることにしておとなしく顔を洗いリビングに戻ると、テーブルの上には静の作った料理が

広がっていた。

静のつくる朝食はシンプルな和食が多いが、逆に言えばそこがまたよく、毎日のように幸せを噛み締めている。

俺の彼女が静で良かった!おっと心の汗が流れてきた。

静と2人食べる朝食、こんな日々が毎日続けばいい。そう俺は願うのだ。

「そしてお前のその妄想をぶち壊す」

虚像は音を立て壊され現実が姿を見せる。

……そう妄想なのだ、特に最後の、2人、のあたりの部分。

今この場にいるのは静と俺の2人だけではない。いるのだ、愛美姉が……。

「それはなんだ?私がいると不服なのか?」

「いや……不服とまでは言わないですけど……」

そう、決して不服とは言わない。だがしかし、だがしかしだ!

毎日なのだ、毎日必ず愛美姉が静に付いてくるのだ!

因みに今がいつかというと、ウェーバーが学校を襲撃してから約2週間が過ぎた頃。

要するに1学期が終わり、夏休み真っ只中なわけだ。

高校生の夏休みといえば彼女探し!そして彼女のいる俺は毎日のように2人の時を過ごし、

2人の絆を深めていく、はずなのだが……。

「……毎日会いに来てるんだけど……」

静よ、そういうことではないのだ、2人でと、2人でということに意味があるのだ!

2人きりでならあんな事やこんなことだって起きるかもしれないというのに!

「……悠がオオカミさんなのはわかった」

「……悠樹、いくら私が静の姉だからとはいえ、教師の前でそのセリフはまずくないか?」

言ってませんが!誰も口に出してませんが!あなた達2人が勝手に思考を読んでるでしょ!

流石に泣きたいわ。

「という茶番はいいから早く食べろ。冷めるし、何より時間がもったいない」

ついでにもう一つ愛美姉に来てほしくない理由がある。

先ほどの時間がもったいない、このセリフで感の言い方はお気づきだろう。

その通り、夏休みに入ってからの連日、俺は愛美姉の訓練という名の地獄のスパルタを受けているのだ。

ウェーバー戦でのアレを見ている以上当然俺に拒否権はなく、いや、見てなくても拒否権はないな……。

……まああの人なりに俺のことを、俺達のことを心配してくれてるのはわかるが、

正直体が持たんのだ。モチベーションも持たんのだ。

せめてなあ、終わった後に静のくちづけでもあればまた違うんだが……。

ちらっと静の方を見るが、恥ずかしそうにそっぽを向いてしまっている。

静がそういう性格なのもわかっているし、俺もむやみやたらとそういう行為をしたいなどとは思っていないから

それはそれでいいのだが、……だめだため息が漏れる。

ごちゃごちゃと悩んでても仕方ないか。とりあえず今は静の美味しい手料理を頂くとしよう。

と味噌汁に手を伸ばしたところで玄関のチャイムが鳴った。

……まったく、タイミングの悪いことで。

「ちょっと行ってくる」

こんな朝っぱらから一体誰だよ?

そこでふと藤村の顔が頭をよぎった。

ウェーバーの一件からあいつの俺に対する態度が妙によそよそしい。

まるで出会った頃の静のように声を掛けると逃げ、俺を避けるように動き、

上手く捕まえようものならぎこちない笑みを浮かべてきやがる。

俺ですらわかる明らかに何かを隠している態度に、俺は不安を覚えている。

……とまあ考えていてもしょうがない。それにあいつがこんな時間に俺の家に来るなんて……

というか俺の家教えた記憶が無かった……。

「どちら様ですか?」

玄関のドアを開けた先にいたのは見たことの無い少女だった。

日傘を差し、ワンピースから覗く肌は人形のように白く、儚さと美しさを感じさせ、

麦わら帽子の下からは綺麗な栗色の長い髪がなびいている。

これだけの美少女が目の前に立っているのだ、どきりとしないはずが無いのだが、

何故だろうか?そういった感情を一切覚えないのだ。

むしろ懐かしさを感じているぐらいで……。

「……私の事覚えていませんか?」

突如目の前の少女から発せられた問に俺はドキリとした。

何故って?そりゃ覚えてないし、思い出せないからだ。

「え……あ、いや、え~と」

どうしたものかと困り顔で思考を走らせていると少女は

クスっと笑みを漏らすし、日傘を手放すと突然俺に抱きついてきた。

「冗談ですよ、兄さん」

兄さん、その一言で俺の脳みそはある一つの答えに辿り着いた。

そう、俺には唯一人肉親と呼べ、兄と慕ってくれる少女がいるのだ。それは……

「まさか、奈穂なおか?」

「会いたかったです兄さん!」

あまりの嬉しさに勢い余った奈穂は、俺を抱きしめたまま下駄箱へと倒れこむ。

背中に軽い痛みを覚えながら大きな音を立てて倒れる俺と奈穂。

奈穂は嬉しそうに俺の胸に頬を擦り付け兄さん兄さんと俺のことを呼び続けているのだが、

俺は正直素直に喜んでもいられなかった。

今の音で動いただろう、特に静が……。

そしてこの状況、この状況を見て勘違いした静がどんな態度に出るか……だ、大丈夫と信じたいが、

万が一がある。

早く抜け出さないと。そう思い動き出した時にはすでに遅かった。

「……悠……何してるの?」

顔を上に上げた俺の目に映ったのは、死んだような目で俺を見つめる静と、

面白そうに俺のことを見つめる愛美姉の姿だった……。

第三章プロローグになります。今回は妹ちゃんがかき回してくれる……はずです。

あとがきのネタが無いわあw

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