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プロローグ


 夜は静かで――――そして、冷たい。


 沿岸沿いに広がるネオン街は、まだ6時だと言うのに観光目的で来た人達で溢れかえっていた。その風景を背に、私はある儀式を行っていた。



「――――うぐっ!!なん……で……私……を…………」

 人気のない夜道に悲痛なうめき声が響くが、やがて抵抗する声は小さくなっていった。

 私は儀式を終えると、ついさっきまで意識があった相手の顔をまじまじと眺めた。


――――目の前に横たわって痙攣けいれんしている相手は、20代前半の女性だろうか?身にまとったスーツは私から逃げてきた時に引っかかってしまったのか、所々破れてしまっている。既にその女性の顔には生気は感じられず、眼は恐怖で見開き、私を見据みすえているようにも見えた。


 辺りに散乱した荷物からは、手鏡や日記帳など、いかにも女性らしい持ち物が散らばっている。


「……ちっ。この女も違うのか」

 先ほど行った儀式のときに口に含んだ液体を、乾ききった喉に流し込むと多少はうるおいを感じた。しかし、それも数分後には消えてしまうのだ。

 そして、またすぐに喉が乾いてしまう。その繰り返しだ。

 その度に私は幾度いくどとなく女性を狙っては、暗い夜道に誘い出し喰らってきた。

 その事は決して許されることではない。《ヒト》として。


 でも、この時期だけは違うのだ。何をやっても許されるのだ。


 私は目の前に横たわっている女性を帰り際に一瞥いちべつすると、次の獲物をるべく、また冷たい夜道を歩き出した。




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