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山を越えた。

途端に景色が変わった。

最初に訪れた街が普通だったから、この世界に幻想タイプの街があるなんて思わなかった。

海かと見紛うほどの湖に、複数の島が密集している。

それらを橋で結び、街となす。

中心の巨大な城とその周りを囲む7つの小島がまるで睡蓮のよう。

これが王都『ヴィリロス』。

白亜の城が夕日色に染まっていた。


街へ辿り着く頃にはすっかり陽も落ちていたが、大通りは明るかった。

湖の方向の空がぼんやり光っている。

水中から青白い光が天に昇ってるのだそうだ。


「毎年この時期になると数日間にわたって見られる現象だ。今年は祭りと被ったのか」


ウィルはピークス商会の護衛を何度も受けているので詳しい。

湖の上の島々は全部特別な場所なので、一般市民は湖の外の街で暮らしている。

商隊は北側の街に入った。


「お疲れさまでした。宿はこちらになります。2日後の早朝に出発となります。それまでどうぞ祭りを楽しんでください」と商隊長。


部屋の鍵を貰い、解散となった。


「今日は祭り初日。三日三晩広場は眠らねぇ。お前ら、移動遊園地に連れてってやろうか?」


「何言ってんの、ウィル。大人はワインでも飲んでなよ」


「いや、チビ共だけで夜遊びするつもりか?」


ウィルはいい奴だな。

まだ誘拐を気にかけてくれてるのね。

盗賊をギルドに引き渡したが、背後関係はわからなかった。

何の為に、誰に雇われて私達を狙ったのだろう?


「みんなが私達を気にかけてくれているのはわかってるし感謝してる。でも、自分達の人生を他人に押し付けるワケにはいかないから」


「だがなぁ…」


「一生隠れて生きるなんて冗談じゃない。やりたい事をやんないと負けた気がするわ」


他人の人生を好き勝手しようなんてフザけてる。

また仕掛けてきても、返討ちにしてやる………シロクマちゃん達が!


「……………まあ、お前等ならそう簡単にやられねぇか」


「とうぜんー」

「わたし達はー」

「戦隊ヒーローだからねー」


「変身しないの」


「「「あーい」」」


ベルトにはめる魔石を頭上に掲げたまま、不服そうに返事をするシロクマちゃん達。

でも、ちゃんと魔石を仕舞う。

いいこいいこ。


向かうは湖の上、お城の正面にある2つの小島。

みんな同じ方向なので、途中まで一緒に行くことになった。


「一般人が上陸できるのは黄と緑の島だけだ。橋の前に門番がいるから間違いはないだろうが、くれぐれも迷い込むなよ」


「心配性だなぁ、ウィルは」


道すがら、ウィルやビアンカねぇさんが色々教えてくれた。

小島はお城の裏から始まって時計回りに赤・橙・黄・緑・青・藍・紫と名前が付けられている。

その内、黄と緑は対岸と橋で繋がっていて、一般人が通れるようになっている。

橋は幅が20メートルもあり、両側に建物がずらりと並んでいて、歩いていると橋だと気付かない。

この橋の上の店はブランド店ばかりが並ぶ高級店街。

あとでウィル連れて訪れよう。

黄と緑の島は広場として常に解放されており、度々催し物が開催されている。

東京ビッグサイトみたいなものかな?


「それにしても大きなお城だよねぇ」


私達がいた城塞都市のお城とは比べ物にならないほど複雑で巨大だ。


「湖も島も城も迷宮遺物で作られていると言われているわね」とビアンカねぇさん。


「迷宮遺物、万能すぎ…」


「迷宮都市と王都はだいたいそうだと言われているわ」


「マジですか…」


悪魔って、何がしたいんだろう…?

人間の役に立つ物ばかり与えてくれてるよね?


緑の島に着くと、出店がいっぱい。

屋台村だ!


「チビ共も飯は食ってくだろう?」


「「「「うん」」」」


夕飯はまだだし、こんないい匂いしてたら我慢できないよね!


ピザ、パエリア、カルパッチョなどのシーフード系。

ローストビーフ、ステーキ、ラムチョップなどの肉系。

唐揚げ、コロッケ、ポテトなどの揚げ物系。

サラミ、生ハム、ソーセージなどの加工肉系。

チーズ、ナッツ、ドライフルーツなどのおつまみ系。

チョコ、チュロス、ワッフルなどのスイーツ系。

アイス、ジェラート、プリンなどの冷菓系。


く~、迷う~!


「全部買ってー」

「アイテムボックスにー」

「ごちそう貯金ー」


「天才かっ!?」


というワケで、会計は約束通りウィル持ちで。

気になった物は片っ端から買った。

1個が銅貨1,2枚なので気兼ねなく買える。

もうちょっとで大銀貨2枚分に達するところで満足した。


「今日のところはこれくらいにしとくね。じゃあ、私達遊園地行ってくる」


既に酒が入っている大人組は陽気に送り出してくれた。



橋を渡り、黄の島へ。

こっちの橋はお店が一切ないのでカップル達がイチャイチャしながら黄昏てる。

青白い光がふよふよと夜空に昇っていく様は幻想的で美しい。

ふと上を見上げて絶句した。

満天の星空。

空はただの濃紺ではなく、ところどころピンクや水色がグラデーションを作っている。

月はほぼ満月で明るいのに、無数の星の光1つ1つが大きくてはっきり見える気がする。

星々がすごく近い……夜空が迫ってくる………


「壮観ー」

「壮麗ー」

「壮大ー」


「…………………………………」


「ナナー?」

「どしたー?」

「つかれたー?」


シロクマちゃん達に引っ張られて我に返った。


「ごめんごめん、大丈夫。早く行こっか」


写真撮りたかったなぁ。

スマホはないにしても、カメラはないのかなぁ…?



橋を渡り切る。

ずっと下流の方に観覧車が見えていた。

光がLEDとは違って柔らかく、イルミネーションがとても幻想的だ。


「あっちだー」

「いっそげー」

「れっつごー」



入口に到着。

細部にわたり飾りが繊細で豪華。

レトロっぽさにノスタルジーを感じるというより、幻想的で童話の世界に迷い込んだみたい。


入場料は子供料金で銅貨5枚だがフリーパスが欲しい。

シロクマちゃん達の分も合わせて銀貨8枚になった。

祭りの間の3日間ずっと使える。

ま、最終日は早朝に出発しないといけないけどね。


パスは毎年色が違って木の板にハンコが押されている。

今年はちょうど100周年なので豪華な虹色だ。

首からかけられるようになっているので便利。


最初は観覧車に乗った。

キレイなのはもちろんだし、次はどれに乗ろうかと見下ろしながらワクワク感が増してゆく。


次にコースターに乗った。

もちろん機械制御ではなく、炭鉱の鉱石用のトロッコに2人で乗る。

ただ、シロクマちゃん達は小さいので幼女+3匹で乗った。

映画などでよくある大脱走って感じで盛り上がった。


メリーゴーラウンドにも乗った。

シロクマちゃん達がユニコーンに乗ってるのかわいすぎる!

ああっ、マジでカメラ欲しい!


お次は回転空中ブランコ。

シロクマちゃん達は体が小さすぎて乗れないかと思ったけど、スタッフがササっと紐で縛ってくれた。

3匹が横に並んでピッタリ椅子に収まった。

シロクマちゃん達が乗れないなら私も降りようかと思ったけど、よかった。

これ、空を飛んでいるような感覚が好きなのよねぇ。


ここまで遊んで、21時を過ぎたので宿に帰ろうということになった。

まだまだ回れていないけど、輪投げや射的などのカーニバルゲームは明るい時間の方ががよく見えるし、明日も楽しみだ。


「あ、ウィル。私達先に帰るね」


「おう、なら、宿まで送るか」


「別にいいってば。私、お姫様じゃないんだし」


「ばーか、夜道を子供だけで歩かせねぇのは当たり前のことなんだよ」


「逆にこっちが酔っ払いの面倒を見る羽目になるんじゃ……」


「俺は酔ってねぇ。おら、いくぞ」


「まったく、酔っ払いは頑固だねぇ」


「だーから、酔ってねぇって」


「はいはい。あ、なら残りのお菓子、橋の上のお店で買って?」


高級そうなお店の数々。

デパ地下気分。

お祭りだから、22時前でも店は開いているし客もいる。

うわ、お城に納品しててもおかしくないくらいカラフルでキラキラしている。

素敵なスイーツばかりで迷っていたら、悩んでいる物全部買えと言われた。

ウィルの考える5倍盛りってそういうコトだったの!?

ではお言葉に甘えて、と5店舗も回ってチョコや焼き菓子やケーキを買いまくった。

ウィルのお財布代わりの革袋がみるみるしぼんでいったけど、笑って支払いしてくれた。

やっぱりこれは酔ってるよねぇ……顔に出ないタイプなんだろうなぁ。

全部使っちゃう前にこっちから切り上げた。


「ありがとね、ウィル。もう宿も見えてるからここでいいよ。みんなのところに戻るんでしょ?」


「おう、歯磨いて寝ろよ」


「お風呂も入るよ」


「おう、じゃ、おやすみ」


「「「「おやすみー」」」」





はっ、寝過ごした……もう正午近い。

珍しく、シロクマちゃん達はまだ夢の中。

起こすのは忍びないなぁ。

二度寝しようと再びお布団をかぶる。


「はっ……」

「今何時ー?」

「寝過ごしたーっ!?」


早く遊びに行こうと、ゆさゆさと3匹がかりで揺すってくる。


「………………起きまふ」



ブランチは緑の島の屋台でとった。

すでにウィル達がいたけど、まさかオール?

体力あるなぁ。


さあ、今日も目いっぱい遊ぶぞ!

昨日は乗れなかった気球のアトラクションで明るい陽の光の中、街を見下ろす。

観覧車よりも断然高く上がった。

地上とロープで繋いであるから風に流されることもないので安心だ。

昨夜とは全然違う眺め。

下から見上げるより、お城が近く感じる。

シンデレラ城の塔が無限増殖した見た目で圧迫感がある。

けど、どんな石材を使っているのか、薄っすら透けてて光の加減で表情を変える。

それがとても美しい。


「あれ?なんだか、あの人と目が合ってる気がする…」


お城の、中腹辺りのバルコニーの手すりに男の人がもたれている。


「どこー?」

「だれー?」

「ほんとー?」


シロクマちゃん達はわからないのにとりあえず手を振った。

うそん、手を振り返してきたよ……


程なくして気球は降りて行った。

助かった。

お城にいるってことは、お貴族様でしょ?

難癖つけられたらめんどい……


気を取り直してカーニバルゲーム・コーナーで豪遊しよう。

まあ、わかっていたけど、フリーパスじゃ遊べないよね。

でも1回銅貨3枚だから良心的だね。


ダーツに輪投げに射的(銃ではなくて弓)、ボールを投げてタワーを崩すゲームや玉入れ、モグラ叩きや思いっきり叩いておもりを跳ね上げて鐘を鳴らすハンマーゲームなどなど成功させまくって景品ゲットしまくった。


小腹が空いてきたので、ジュースとチュロスを買っておやつタイム。

次はどこに行こうかと眺めていると、声を掛けられた。


「ごきげんよう」


知らない人だけど、目の前に立ちこちらを見てニコニコしているので私達に言ったのだろう、が……

歳は20くらいの気品あふれる男性。

めっちゃ美形。

銀色のミディアムヘア、かと思いきや、襟足にエクステを付けたかのような尻尾がついている。

ふんわりとした襟元と袖口。

夜空をそのまま纏っているような外套。

一目でわかる仕立ての良さ………


どう見てもお貴族様です!さっきお城で手を振ってきた人ですよね!?

なんでこんなトコロにいるんですかね!?


「ごきー」

「げんー」

「よー」


お貴族様はふわりと微笑み1匹抱っこした。

うん、シロクマちゃんってモフらーホイホイだもんね!


「珍しい従魔ですね。どこでテイムされたのですか?」


これは、シロクマちゃんの住処を教えろってコトだろうね?

でも天国出身で神様のお気に入りです、とは言えないよねぇ。


「えっとね、気づいたら傍にいたからよくわかんないの」


「気づいたら?」


「ナナはー」

「森でー」

「拾ったー」


ええ、私の方が拾われ養育されてますもんねぇ。


「ナナはー」

「誰にもー」

「あげないからねー」


「うんうん、そうだねぇ」


おっとりした人だなぁ。

貴族なんて足の引っ張り合い、出し抜き蹴落とすのが日常の腹黒タヌキかと思ってたんだけど。

てか、なんでこんな目立つ人、誰も振り返らないのかな?

もしや、他の人に見えてないとか?

鏡に映らなかったらどうしよう……っ!?


「ボートにでも乗りませんか?」


えっ?ナンパ?と警戒したが、シロクマちゃん達がOKしちゃった。

胡散臭いだけで悪い人じゃないのかなぁ?


ボートは1艘30分、銀貨1枚。

お貴族様が払ってくれた。

あ、ちゃんと見える人だった。

よかった……


スタッフが船尾にある砂時計を回転させた。

これが全部落ちる前に帰って来いってことね。


「下流には滝がありますので、島の周りだけで遊んでくださいね」


「らじゃー」

「おけー」

「わかたー」


カリンちゃんは抱っこされたままなので、イチゴちゃんとラムネちゃんがオールを漕ぐ。

イノシシの丸焼きで慣れているのか、息が合っている。


「あの青白い光は今日は飛んでないのね」


「あの光は、地上に遊びに降りてきた妖精が月に帰っていく姿だと言われてますねぇ。だから、月が出ていないと見られないのですよ」


なんてロマンチックな表現なのだろう。


「で?そろそろ教えてくれません?」


「何をです?」


「どんなご用で声を掛けてきたの?」


「ああ、それは、気球に乗っている時に手を振ってくれたでしょう?楽しそうだなぁと思って見ていたので、誘われました」


「いや、『おいで』じゃなくて『バイバイ』だったかと…」


「おや、そうでしたか?」


やっぱりタヌキだ!


「冒険者、続けるんですか?」


なんで初対面の相手の個人情報を知ってるんでしょうねぇ……?


「うわぁ、もしかして誘拐犯の親玉?」


カリンちゃんが私の膝の上に飛び移ってきた。


「違いますよ」


「じゃあ、なんで私達が冒険者だって知ってるの?」


「ふふふ、それは秘密です」


「帰ろうか、シロクマちゃん達」


「「「あいあい!」」」


「ふふふ、冗談ですよ。私、アデルと文通をしているんです。あいつの手紙に最近あなたの話題が上るようになったので気になっていたのです」


「手紙じゃ私達の外見はわからないんじゃ…?」


「3匹のシロクマを連れた幼女はそうそういませんねぇ」


そうでした。

『幼女+3匹』なんて異世界でも珍しいよね……


「アデルのお友達が……貴族?」


「私が貴族に見えますか?」


「見えない方がおかしい」


「おかしいですねぇ」


「だからおかしいって」


「いえ、そうではなく、魔道具で『どこにでもいる人』に見えるようにしているんですけど」


「……星を散りばめたような素敵な外套だね?」


「おや、これ、壊れているのでしょうか?」


お貴族様がクラバットの下から取り出したのはペンダント。

いや、それ日本の幼女が遊んでいるおもちゃの変身ペンダントじゃない!?

迷宮遺物か……

それにしても見目麗しいおにぃさんが魔法少女だなんて……!(語弊)


「そうでもないんじゃない?あなたみたいに目立つ人が誰にも騒がれずにいたから最初幽霊かと思ったもん」


「ふふふ、幽霊ですか」


「で?私達が冒険者だと、何かあるの?」


「いえ、私が運営している迷宮調査団にスカウトしたいなと思いまして」


前にギルマスが言ってた『迷宮探索のプロ』ってやつかな?


「探索者として?私達まったくの未経験者なのに?」


「将来有望な人材ですので」


駆け出しのF級冒険者に何言ってんだか。

シロクマちゃん目当てでしょ。


「うーん、でも、そっち系の組織に所属するつもりはないかなぁ」


「どうしても?」


「どうしても」


「あいつばかりズルいです」


「まあ、シロクマちゃん達の希望で、今度アデル達と迷宮踏破を目指す事になると思うよ」


「やっぱりズルいです」


とりあえず、時間なのでボートを戻した。

なんか、全然ボート遊びを楽しんでない……

陸に上がり、お貴族様とバイバイする。




「いや、なんでついてくるの?」


「もう少し遊びたいです」


今度はイチゴちゃんを抱っこするお貴族様。


「お貴族様ならもふもふペット集めたい放題だろうに」


「だったら、1匹…」


「絶対ダメ」


「ムリー」

「却下ー」

「お断りー」


「残念です」


こうなったら、何かぬいぐるみをゲットして渡して帰ってもらおう。


「あ、あの紐のくじのヤツやろっか」


「「「やるー!」」」




「………何やってるの?」


紐くじのスタッフが『幻想亭』のエルフさんだった。


「おや、お久しぶりですね、かわいらしい妖精さん。出稼ぎですよ」


「やっぱ、あんな商売の仕方してたら生活に困るよねぇ」


「困ってないですってば」


「今度はちゃんと適正価格で買ってあげるよ」


臨時収入もあったしね。


「と言われましても、くじは1回銅貨3枚です」


「く~、この商売下手め」


まさか、紐の先に迷宮遺物をくっ付けてないでしょうねぇ?


まずはイチゴちゃんが引いた。

巨大キャラメルだった。

ふうっ、さすがにそこまでアホじゃなかったか。


次にラムネちゃんが引いた。

巨大キャンディだった。

まあ、順当かな。


そしてカリンちゃんが引いた。

巨大グミだった。

嚙み千切れるかな?


「お貴族様もやる?」


「その呼び方はちょっと……セディと呼んでください」


「私はナナです。で、セディはやんないの?」


「手持ちはなくなってしまいました」


もしかしてボート代の銀貨1枚が最後の1枚?

1人でフラフラしているのに、お金も持たないなんて。

大丈夫か?この人……


「んじゃ、はい」


銅貨を3枚手の平に乗せて差し出す。


「えーっと、さすがに子供にお金を貰うのは…」


セディは首を横に振った。


「ボート代奢ってもらったし」


「でも…」


もしかして、お会計は男が払うものだと思ってる人?


「じゃ、投資。いつか何かで返して?」


「投資、ですか……わかりました。いつか何倍にも増やしてお返ししましょう」


「期待してるよ」


そしてセディが引いた。

でっかいシロクマのぬいぐるみだった。

引きいいな!


「このご恩は一生忘れません。数倍返し期待していてくださいね」


ご機嫌で帰って行った。

ふう、これで一安心。


「んじゃ、私も引こうっと」


ど・れ・に・し・よ・う・か・な!

コレだ!と1本引く。


「……………ナニコレ?」


いや、何かは見たらわかるよ?

パステルカラーのまるっこくてちゃちぃ見た目の、いわゆる『キッズカメラ』だよね。

わーい、これでシロクマちゃん達撮り放題!

いやいやいや、そういうコトじゃなくて!


「なんで迷宮遺物を混ぜてんの!?」


「だって、在り来たりだと夢が無いでしょう?」


「アホなの!?アホなんでしょ!?」


「酷いですねぇ、そんなにアホを連呼しないで欲しいです。……で、それが何かわかるんですか?」


言いたい事は山程あったが、口から出たのはタメ息だった。

ラムネちゃんが電池をくれる。


「シロクマちゃん達、エルフさんの横に並んで?」


「よっしゃー」

「がってんー」

「しょうちー」


エルフさんは何もわかってなかったが、シロクマちゃん達がテーブルの上に乗ってきたので全員をいっぺんに抱きしめた。


「はい、チーズ」


カシャ、とシャッター音が鳴る。

そして3秒くらいで写真が出てきた。

早いな。

そしてやけに写りがいい。

これも何かしら特別なエンチャントがかけられているのだろう。


「はい、あげる。直射日光と熱と湿気に弱いから気を付けてね」


写真を見た時のエルフさんの顔が面白かったので、もう1枚撮った。


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