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08


私が城壁周辺の浄化作業を行っている間に商隊のお仕事もギルドへの盗賊の報告も終わり、夕方に街を発った。

昨日はめっちゃ濃い1日だった。


そういえば、なんでブラッドムーンの夜に野営なんてしたのか改めて聞いたら、なんと単なるうっかりミスだった。

日付を間違えていたのだという。

本当は、王都にいる時に月食が起こると思っていたらしい。

そんなこと有り得るのか!?と思ったが、皆がみんなして間違ってたら誰かが指摘するだろうという、球技でいうところの『お見合い』しちゃった状態だった。


別に文句は言わないよ。

私が何も調べずに依頼を受けてしまったのも悪いもんね。

どんな道を通るのか、どんなアクシデントが予想されるかなど何も調べず、何も考えずにどうして依頼人を守れるというのか。

実に不誠実だった。

初めてだから仕方ない、なんて甘えだ。

私だったら、そんな人は雇いたくない、のだが……


「ねぇウィル、どのポイントが危ないとか、どういうトコロに気を付けた方がいいとか聞いてもいいものかな?」


インターネットもないこの世界では、情報は前世以上に貴重な宝だ。

タダで教えろなんて言える訳ない…


「今はただ責任者おれの言うことを聞いとけ。冒険者を続け、責任者になれる歳になればいつの間にかわかるようになってるさ」


やっぱり、他のパーティーにノウハウは教えないよねぇ。



今日は村を1つ訪れることになっている。

被害が無いか心配だったが、村は無事だった。

アンデッドは人間が多い場所に集まる習性があるらしく、近くに街があるのでここいらは現れなかったそうだ。

予定よりも遅くなったが、事情が事情だけに誰も文句を言わなかった。


「時間が押してるから今夜は少し遅くまで移動して、朝は早めに発つぞ」


予想外の宿泊もあったし、仕方ないよねぇ…


19時になると、食事休憩の為に馬車を止めた。

もちろん食べたら再出発だ。


「みんな疲れてるでしょ?私、非常食持ってきたから配るよ。あ、食器だけ用意お願いしまーす」


そう言ってカレー入り寸胴をアイテムボックスから出した。

『エピタフ』の拠点の厨房を借りて作っておいたんだ。

勿論ホカホカだ。

白米もあるよ。


「非常食って何か知ってるか?」


ウィルに突っ込まれたが…


「ウィルはおかわりいらないようだね?」


「上手けりゃなんでもいいよなぁ!」と誤魔化してきた。


カレーはやっぱり人気だね。


そんなこんなでまた2時間ほど走って野営した。

こうして2日目は終わった。




3日目。

次の街までの移動は長かった。

漸く到着したと思ったら、北門が破壊されていた。

至る所でアンデッドが発生したんだなぁ。

街の一画もボロボロで、ゴースト・ナイトパレードの被害が大きい。

街によって戦力はまちまち。

そう簡単に誰もが引っ越しできる世界でもない。

残念だが、災厄に対して個人でできることはないのだ。


炊き出しが行われているが、スープだけ。

人々は具が少ないと愚痴っている。


「シロクマちゃん、イノシシの丸焼きってまだ残ってるよね?」


「あるよー」

「もしかしてー」

「あげるー?」


異世界のイノシシは大きい。

20人で寄ってたかって食べたけど、まだ60キロくらいあるだろう。

食べかけで申し訳ないけど、寄付すると歓声が上がった。

イノシシの丸焼き、大活躍!


商隊の方も、いつもより薬類が売れたようだ。

後は建築素材が注文されたが、帰りはこの街は通らないらしい。

そもそも数十軒分の石材や木材はキャラバンには無理だろう。

と思ったが、別動隊が近隣からかき集めてくるらしい。

さすが街一番の大商会、ネットワークが広いしフットワークが軽い。



少しだけスケジュールを取り戻して次の村に着いた。

村まるごとワイナリーらしい。

ここまでの道中で空に近くなった幌馬車に樽がどんどん積み込まれていく。


「凄い量だね?」


「あれでも王都のワイン祭りであっという間に消費されるわよ」


あっという間!?

樽って何リットル入りだろう?

ビアンカねぇさんってば上機嫌。

さては飲兵衛だな?


「王都の祭りってワイン祭りだったの?」


お子様は楽しめないなぁ。

しょんもりしたのが伝わったのか、ビアンカねぇさんはニッと口角を上げた。


「あら、大丈夫よ。ワインだけじゃなく、おつまみもスイーツも食べきれないほど屋台が出るから。あと、移動遊園地も来るわよ」


「遊園地ー!」

「観覧車ー!」

「空中ブランコー!」


え、移動遊園地って映画でもゲームでもホラーの印象が強いのよねぇ…

殺人ピエロとか、キモイ着ぐるみに追いかけられたり…

いかんいかん、一昨日のアンデッド達見過ぎて思考が偏ってるな。


「よし。王都に着いたら遊びつくそうね!」


「うぇーい!」

「やっほー!」

「ひゃっはー!」


テンション高いなぁ。

あと、カリンちゃん、それは世紀末…私の頭の中を覗く能力は没収されなかったのかな…?



さて今日も野営。

またシロクマちゃんがひと狩り行っちゃった。

今度は巨鳥を引きずって帰ってきた。


「唐揚げが食べたいー」


カリンちゃんの一言で、みんなの口が唐揚げ一択になってしまった。


「こんなコトもー」

「あろうかとー!」


シロクマちゃんがアイテムボックスから取り出したのは業務用の液体唐揚げの素。

なんでそんな物持ってんのー!?

堂々と日本語が書かれているパッケージの物出しちゃダメでしょ!


「そ、それは…もしかして…………迷宮遺物ですか!?」


うそん!そんな物まで宝箱に入っているの!?

商隊長さん、目が血走ってますよ…?


「出現数激レアの食料品!確約された極上の味!それは唐揚げに関係があるのですか!?」


グイっと顔を近づけて、触りたいけど我慢しているのか指がワキワキしている。


「唐揚げの素ー」

「これに漬けてー」

「揚げるだけー」


「素晴らしい!私共もご相伴にあずからせていただいても…?」


「もちー」

「みんなでー」

「唐揚げパーティーだー!」


「「「「「「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」


暗い夜の森に男共の雄叫びが響き渡る。

今ので周辺の動物はみんな逃げて行ったんじゃなかろうか…

みんな、疲れすぎてハイテンションになってるな。

まあ、ムネ肉とニンニクで疲労回復・スタミナ増強できるし丁度いいね。


シロクマちゃん達がすぱぱぱぱーっと解体し、商隊のコックさんが揚げてゆく。

油と小麦粉は商隊が出してくれた。

揚げる傍からなくなってゆく唐揚げ。

また大人達はお酒飲んで騒いだ。




さて4日目。

今日も今日とて朝は来る。

昨日のから揚げが効いたのか、そこまで疲れは残っていない。

さあ、次の村へ向けて出発だ。

今日は山越えをする。

中腹まで上ると、横道に逸れて洞窟に入った。

とても大きく天井に穴が開いているので明るかった。

そして洞窟を抜けたら滝の裏側にいた。

滝をぐるりと回りこむように道があり、隙間から村が見える。

山間の小さな村。

これは秘境だ。

何だかワクワクする。


村の広場に馬車を止める。

馬車の上だから村がよく見渡せた。

うん、魔女の家だ。

絶対魔女が住んでるよってデザインの村だった。

住人はみんな猫の獣人さん。

モフモフ天国だ!



「こんにちわ、おチビちゃん達」


「こんにちわ」


反射で挨拶したけど、見れば人間の女性だった。

いや、魔女だった。

箒で空を飛ぶタイプの、ステレオタイプ(でも豪華でおしゃれ)の格好をしている美女。

持っているのは箒じゃなくて長杖だけど。


「こんー」

「ちー」

「わー」


「あら、かわいいわぁ」


魔女さんもモフらーだった。

モフモフ好きに悪い人はいない。

平和だ。


「…あなた達、迷宮遺物を持っているようね?」


あ、その流れは……

シロクマちゃん達がしゅたっと整列する。


「ガーネット レッドー」

「ラピスラズリ ブルー」

「こはく イエロー」

「アメジスト パープルー」

「「「「シロクマ戦隊モフるんジャー!」」」」


久しぶりにやりました。


「くくくっ、愉快だわ。ねぇ、私の家にいらっしゃいよ。お茶でもいかが?」


「行きたいけど、今、護衛中で…」


「ああ、いいぞ。1時間ほど休憩だ」


ウィル…まだ護衛しようとしてくれてたんだ…

そのウィルがいいっていう事は、この村は安全ってこと?


「甘いー」

「お菓子ー」

「あるー?」


「ケーキならあるわよ」


わーい、と歩き出した魔女について行くシロクマちゃん達。

私も後を追ってると、ふと気づいた。

道の脇にある畑の植物が見たことないものばかり。

一瞬ユリかと思ったけど、よく見ると小人にしか見えない花が咲いていたり。

タコみたいな茎の先にほんのり虹色に光る丸い実が生っていたり。

花弁がクリスタルで出来ているかのようなスズラン(ぽい)だったり。

葉っぱの塊が二足歩行で歩いていたり…

それに、民家の玄関先にはどこも盆栽があるけど、そのどれにも家が付いている。

ちっちゃいツリーハウス?

オーソドックスなログハウスから魔女の家をまんま小さくした感じの物まで色んなタイプの家が木に侵食されてて一体化しているのだ。


「あれは妖精の住処よ。大切な隣人。共存共栄ね」


妖精さん!

この世界に存在してるんだねぇ。

姿は見せてくれないみたい。

残念……


魔女さんのお家に着いた。

ちょっと大きい盆栽にはお城がくっ付いていた。

妖精王でもいるのかな…?


「お帰りなさいませ、緑の魔女様」


お出迎えはメイド服を着た猫獣人さん。

工房のウサギのおねぇさんみたいに人間の頭にお耳が付いているタイプではなくて、お顔は猫なのに等身や骨格が人間タイプ。

村にはお顔も人間の獣人もいたけど、どんな違いがあるんだろう?


「お客人にお茶とケーキを」


「かしこまりましたにゃ」


室内も物がいっぱいあって混沌としているのに汚くはない。

あれって魔女の大釜?

雰囲気ある~。

シロクマちゃんも興味あるようでチョロチョロしてる。


猫メイドさんが魔女の大釜をかき混ぜると、ティーポットとケーキが出てきた。

ナニソレ?食べられるの…?


シロクマちゃん達は拍手喝采してる。

ヒューヒューと口笛も鳴らしてノリノリだ。


「ふふっ、ただの演出よ。アイテムボックスから出しただけ」


私が不安そうな顔をしていたのだろう、魔女さんがフォローを入れた。


「だって、人間ってこういうの好きでしょ?」


猫メイドさん、おもてなし精神の塊だった。


「さあ、テーブルにどうぞ」


魔女さんに椅子を勧められたが、やはりシロクマちゃんは高さが合わない。

と思ったら、魔女さんが杖をひと振りすると椅子がニョキニョキと高くなった。

緑の魔女っていうくらいだから、植物に精通しているのだろう。

それにしても、私達が使う魔法とは体系が違う気がする……


「フルーツタルトおいしい」


よくこんな秘境で新鮮なフルーツが手に入るなぁ。


「それ、どこの迷宮の何階で手に入れたの?」


魔女さんは迷宮遺物に興味があるようだ。


「えっと、エルフさんがやっているお店で買ったよ」


「あら、迷宮に潜ったんじゃないの?」


「迷宮行ったことない」


「興味ないの?」


「いつかは行きたいかなぁ」


「アデル達とー」

「一緒にー」

「行くんじゃないのー?」


「シロクマちゃん達は行きたいの?」


3匹は口いっぱいにタルトを詰め込んでいるのでコクコクと頷いた。


そっかぁ、じゃあ、帰ったら正式に仲間になることを伝えないとね。



「迷宮遺物がどこから来るのか知ってる?」


えっ…それって地球のこと言ってるの!?


「そもそも迷宮って何なのか、なぜ誰も突き止めようとしないのかしらね?」


「魔女さんは調べてるの?」


「ふふっ、どうかしらね?」


あれ、濁された…


「それにしても『幻想亭』ね…あんな奴のお手付きなんて…っ」


え?…魔女とエルフって仲悪いのかな?


「迷宮の事、何か聞いてないかしら?」


「ううん、特に何も。知ってるのはエルフさんがモフらーってコトくらいかな」


「あいつがねぇ…」


魔女さんは一口紅茶を飲んで気分を変えた。


「あいつは知っているハズなのよ。迷宮の根源を」


「どういうコト?」


「あいつは神代の時代から生きている、もしくは記憶を受け継いだハイエルフなのよ。世界の始まりすら知っているのに何も語らず、何も残そうとしやしない」


魔女さん、とっても悔しそう。

誰にだって言いたくない事はある。

内容は人によって様々。

でも、それが自分が知りたい事だった場合、聞きたいけど聞けないってもどかしいよねぇ。


「迷宮が大昔の悪魔のお城だったって言っている人がいるんだってね?」


アデルが確かそんなコト言ってた。


「その本書いたの私よ」


「ほぇぇぇぇぇぇ。魔女さんは学者さんだったの?」


「魔女なんて、何かしら研究してるもんよ」


「緑の魔女っていうくらいだから、植物関係かと思った」


「まあ、それはハズレではないわ。でも、何を研究テーマにしても、行きつくところは魔法の起源なのよねぇ。あなただって、魔法は使えるけど仕組みや原理はわからないでしょ?」


「確かに。使い方はわかっても、作り方はわかんない。せめて改変くらいしか」


「魔女には新しい魔法が生み出せるわ。でも、それですらルールの範囲内なの。私が知りたいのはそういった全ての根源なのよ。迷宮ならばダンジョン・コアね。コアの使用方法はわかっているけど原理は不明のまま。研究しようにも実物が手に入らない」


「それをエルフさんが知っていると?」


「ただのエルフじゃない。ハイエルフだけね」


エルフとハイエルフの違いは何なのだろう?

今度会えたら聞いてみようかな。


「なんでー」

「迷宮がー」

「悪魔の物なのー?」


シロクマちゃん達の疑問はそっちなのか。


「私達魔女はね、大昔に悪魔と契約して『魔女』という生き物になったのよ。だから感じるのよ、悪魔の気配を、迷宮にね」


「悪魔って、いるんだ…」


人間が敵うワケないよね?

もし出会ってしまったらどうしよう!?


「怖がらなくてもいいわよ。あいつ等はこっちの世界に来ることはないから」


「えー?」

「なんでー?」

「どしてー?」


「それを話すには長くなるわね。聞く?」


「聞きたいー」

「知りたいー」

「教えてー」


私も頷いた。

魔女さんは一旦紅茶でノドを潤して語ってくれた。


つまりはこういう事だった。


実は迷宮は本当に悪魔の遺産である。

神話の時代、悪魔はこの大陸を13に分割して支配していた。

その時、ダンジョン・コアを使ってそれぞれ自分の城を建てた。

悪魔は自分の支配領域で死んだ者の魂を喰らい、自身の力を上げることが出来る。

ある時、悪魔は神々と戦って負けた。

その時に受けた『祟り』の所為で生命力の消費が激しく実体を保つことも難しい。

他者からより一層奪わなければすぐに死んでしまうようになってしまった。

よって、別次元へと住処を変えたが、地上に残していったダンジョン・コアは未だに保有者だった悪魔に力を送り続けている。


悪魔に勝った神々って、シロクマちゃん達の知ってる神様なのかな?

凄い人、じゃない、凄い神様なんだなぁ。


シロクマちゃん達もそれぞれ感想を小声で呟いた。


『あのヒゲじじぃ、スゴい神様だったのかー』

『あのハゲじじぃ、強い神様だったのかー』

『あのクソじじぃ、よくやった。グッジョブー』


聞かなかったことにしよう……


さて、続きを。

迷宮は悪魔の生命力の貯蔵庫なので、迷宮内で死んだ魔物の魂は循環されて再び誕生する。

その際、魔石が取れるが、実はそれは魔物にとっては不純物。

体内でろ過されて溜まっていくものだった。

魔石が大きいのは長く生きている証拠。

魔物にとっての不純物とは、つまり神の祟り。

人間にとっては神の力の欠片だから魔石は重宝されている。

ちなみに迷宮以外で出る魔物は瘴気溜まりから発生すると言われていて、それらも神の祟りの影響を受けているので魔石が出る。


迷宮の宝箱は、外から生命を呼び込む餌である。

その時代に合った餌が自動的に選ばれる。

迷宮内の魔物を殺させ循環させる為に、人間が欲しがる宝石などの財産の他に武器防具も手に入ることがある。

たくさん魔物を殺させ、命のサイクルを回し、早く祟りを薄める為に。

そして他の世界からアイテムが引き寄せられることもあるという。


それが地球産の迷宮遺物なのね。

そうすると、宝箱には色々な異世界のアイテムが入っているということだ。

わぁ、見てみたいなぁ。


また、別の世界にある迷宮で大量に生命が失われたり、ダンジョン・コアが破壊されたりして命が飽和してしまった時は別のダンジョンに放出することでバランスをとっている。

つまり命が溢れると、大量の魔物が創造されスタンピードが起こるのだった。


「つまりー」

「悪魔はー」

「もう帰ってこないー?」


「んー、ざっくり言えばそうね。この世界で死ぬと、人間は死体が残るでしょ?でも、天国や地獄に行ってもちゃんとモノを掴める肉体がある。それは物質を構成する仕組みが違うから。だから悪魔はこの世界に顕現するには力を使い過ぎて弱体化してしまう。そんなリスクを冒してまでわざわざこの世界に戻る理由はない、ということよ」


昔だったら天国や地獄があることに疑念を抱いたかもしれないけど、今は自分自身が生まれ変わったし、シロクマちゃん達が神様に呼ばれて消えたりしたから信じるよ。

だから、魔女さんが言っていることは嘘ではないんだろう。


「魔女さんはどうやってそこまで調べられたの?」


「ああ、こういった話は迷宮に残されていたりするのよ。まあ、文字を解読するのは大変だけど、私達には時間があるからね」


文字が残されているのなら、私にも読めるかもしれない。

悪魔の文字がスキルの影響範囲内ならだけどね。


「迷宮で魔物をガンガン狩るの止めたほうがいいんじゃない?悪魔の復活を早めるだけかと…」


「あー、それは逆に止めた方がいいわ。何か異変があったと思って行動を起こされたらヤバいから。それに悪魔が復活するのは1億年後くらいだから、全然気にしなくていいわよ」


1億年…ちょっとよくわからない年数ですね。



不意に天窓からフクロウが入って来た。

魔女さんの肩に止まってホーホーと鳴く。


「あら、商隊が出発するみたいよ」


「えっ、もう!?お話に夢中になってたらあっという間!」


慌てて立ち上がるが、気になることがある。


「凄いお話を聞かせてもらったお礼に何か…」


ポンっと自分の体から煙が上がった。

な、ナニゴト~っ!?


「ナナがー!」

「シロクマにー!」

「なっちゃったー!?」


――――――――うそん!?

えっ!?ナニコレ、魔女の呪い!?

魔女ってやっぱり危険な存在なの!?


「効きが悪いわね。本当は紅茶を飲んだ途端に変身するハズだったのに」


「なんでーっ!?」


「かわいいからよ」


「理由になってない!でも、かわいいならいいっか」


「「いいんかい!」」


魔女さんと猫メイドさんにもツッコミくらった。


「わーい」

「ナナもー」

「私達と一緒ー」


「一緒だねぇ」


きゃいきゃいと跳ねる4匹。


「まったく、肩透かしだわぁ。あなた魔女の妙薬が効きにくいみたいだから1時間もしない内に元に戻るわよ」


「そっか…」


「残念そうにされると複雑な気分だわ…」


「私、ケープしか着てないけど、しかも体にピッタリになってる…他の服はどこ?元に戻った時すっぽんぽんだったらどうしよう!?」


「変に実用的な心配をするのね。まあ、服もちゃんと元に戻るわよ」


「なら安心だね!」


「元に戻れない心配はしないんかい!」


「その時はシロクマちゃん達と4姉妹になるね」


「そういうコトじゃないと思うわ…」


「ナナー」

「そろそろー」

「急げー」


「あ、そうだった。でもお礼の手土産的な物、何かないかな?」


「んーとー」

「えーとー」

「じゃーん!」


シロクマちゃんがアイテムボックスから取り出したのはあの知育菓子。

粉と水をまぜまぜねりねりするヤツ。

うん、魔女と言えばそれだよね!

やっぱり私の頭の中見てるよね!?

そして『お取り寄せ機能』ないんでしょ!?

どうして出せるの!?


「お菓子だよー」

「よく読んでー」

「ちゃんと作ってねー」


時間が無いので色々見ないコトにして、私達は急いで集合場所に戻った。




「おい、毛玉が1匹増えてんぞ」


ウィルが仁王立ちで見下ろしてくる。


「うわ、踏まれそうで怖い」


「んなっ!?その声、ナナか!?」


「そだよー」


「お前、実はシロクマだったのか…」


「ツッコミ待ち?それとも天然?」


「ばーか。ノリだろノリ。俺が初めてここに来た時はカエルにされたもんぜ」


「はぁ!?もしかして悪戯されるって知ってて魔女さんのところに行けって言ったの!?」


「通過儀礼だ。まあ、シロクマでよかったじゃねぇか」


「うん。今だけ4姉妹ー」


4匹は腕を組んでスキップした。

その後、皆にシロクマ姿をお披露目してかわいいと褒めてもらい、馬車は出発した。

名残惜しい事に、本当に1時間で元に戻ってしまった。


「そういえば、よくあんなお菓子持ってたね?」


「神様からの餞別でー」

「アイテムボックスの中にー」

「お菓子の詰め合わせが入ってたー」


あー、神様ってシロクマちゃん達に甘いんだ…

それから、気付いたら何かしら増えているらしい。

本当は手放したくなかったんじゃないかな?

私のところに送ってくれてありがとうございます。





一方、魔女さんは貰った知育菓子を当然のように迷宮遺物と勘違いしていた。

お菓子と聞いては腐る前に是非とも食べなければならない。

魔女さんも食べ物の迷宮遺物は激レアで高級品だと知っていますから。

が、シロクマちゃんに言われたとおり、よく読んでちゃんと作らないと美味しくないかもしれない。

だが日本語はさっぱりわからない。

よって裏面の作り方の写真を見てなんとか真似して作ってみた。

ドキドキしながら口に運ぶ。

が、膝から崩れ落ちてしまった。


「……………………………失敗だわ……っ!」


いいえ、お菓子はちゃんと成功しています。

だが、何が正解か知らない魔女さんはたいそう悔しがった。


「そんなに不味いのにゃ?」


「残念だけど、無理。食べたいならあげるわよ」


ペロリと舐めてみた猫メイドさん。

「………クセになるにゃ」と全部平らげてしまいました。





「あれは感想がー」

「真っ二つにー」

「分かれるよねー」


ニシシっと悪い顔をする3匹。

実はナナに悪戯を仕掛けたのをちょっぴり怒っていたのだった。


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