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07


月が落ちてきそうなほど大きく見える。

月光が降り注ぎ、影がより濃く落ち森の闇が深まる。

霧も出てきて肌寒い。


「ねむい…敵…群れ…ねむい…200mきった…ねむい…」


「わはは、クマ共もゾンビみてぇだな。ほれ、眠気覚ましだ」


ウィルフリードはチョコをナナの口に突っ込んだ。


「んむ…ビター…チョコ……?」


「チョコー?」

「いいなー」

「わたしもー」


ウィルフリードの周囲でぴょんぴょん跳ねるシロクマちゃん達。


「へいへい。もうすっかり目ぇ覚めてるみてぇだがな」


冒険者用に開発されたカフェインなどを添加した眠気覚ましの錬金薬だが、クマ共もコーヒー飲んでたから大丈夫だろう。

ウィルフリードはシロクマちゃん達の口にもチョコを放り込んだ。


「この辺りは古戦場だったからなぁ。しかも今はスプーキー・シーズン。更にスーパームーンで月食でブラッドムーンときたら、大規模なゴースト・ナイトパレード待ったなし、だろ」


「なんでそんな場所で野営すんのよ!」


空を見上げると、赤黒い月が欠け始めていた……

わあぉ、雰囲気満点……ゾンビゲーみたいにホードが始まって大量のゾンビが襲ってきそう……


「商隊の者共はテントなど捨て置いて馬車を出せ!」


護衛側の責任者であるウィルフリードは『天空の箱庭』に商隊の護衛を任せ、自分達はここに残って囮と戦闘の役目を買って出た。


「私達は?」


「お前等、聖属性魔法使えんだろ?期待してるぜ」


お手本みたいに親指立てて白い歯キラリンしないで。


「……………………ウィルフリードってドSだよね」


「さっきみたいにウィルって呼んでくれていいんだぜ?」


森の中で何かが蠢く。

しかも、たくさん……うぅっ…


「……ばかウィル…もっとお菓子食べないとヤル気でないなぁ」


「そうだそうだー」

「お菓子くれなきゃー」

「悪戯するぞー」


シロクマちゃんったらこんな時にハロウィン気分なのかな…

下水道での様子からホラー苦手かと思ってたんだけど、全然そんなコトないな。


「生きて戻れたら山ほど買ってやんぜ!」


「やりー!」

「約束だかんねー」

「じゅるりー」


「死亡フラグ立てないでぇぇぇぇぇぇっ!」


叫びながらもトイレとお風呂をアイテムボックスに収納する。

シロクマちゃん達も気付いてログハウスやみんなのテントを収納した。

ギリ間に合った。


次の瞬間、あふれんばかりのアンデッドが森から飛び出してきた。

うわぁ、これ百鬼夜行じゃんっ!

やだ、顔怖い。

でもでも、このまま進んで行ったら近隣の村が襲われる!?


「ウィル!勝利条件は!?」


「月食が終わるまで狩りまくる!」


ウィルの叫びが合図となり、銀狼旅団も戦闘態勢に入った。

白魔導師のノーランがなにやら呪文を唱えると、パーティーメンバーの武器が薄っすら光り出す。

それらは聖属性のオーラを放っていた。

それだけじゃない、ノーランの持っていた長杖の先端に付いていた魔石から大きな三日月形の刃が出てきた。

デスサイズですねぇ…白魔導師なのに接近戦やるんだ……

そして斥候が得意な双剣使いのイーノックとアーチャーのティムも準備万端。

シロクマちゃん達も変身した。


こちとら銀狼旅団の4人と幼女+3匹。

対して数なんか数えてられない程のアンデッドの群れ…

ゾンビにスケルトン、グールにマミーなどなど、他にも名前がわからないのもいっぱい…


負けイベですか!?

でも、これゲームじゃないから負けたら即→死だよね!?


私が一番後ろでオロオロしている間に、先頭に立ったシロクマちゃん達が凄い勢いで討伐してゆく。

個別に名前を得たことで『ネームド』となり、ステータスが爆上がりしたのだ。


そして3匹が打ち漏らした敵を銀狼旅団が討ち取る。


やっぱり私お荷物!

シロクマちゃん達がいてくれるからって、私まだ結界や回復とかの補助系しかできない……

………ん?アンデッドには回復魔法じゃない?

下水道では効かなかったけど、それはゾンビじゃなくて実は人間だったからというオチだったんだし。


あ、イーノックの双剣切れ味落ちてる、というか最早殴ってる?

せめて【クリーン(清掃)】を…


「うお、切れ味が戻ったぜ!?ナナがやってくれたのか!?サンキュな!」


ウィルの大剣とノーランのデスサイズにもちょくちょく【クリーン(清掃)】をかけることにした。



ボスモンスターがいないのが救いだが多勢に無勢、すぐに均衡は崩れてきた。

銀狼旅団もボロボロになってきたが、ヒーラーのノーランも迎撃に忙しい上に仲間に聖属性魔法をかけ続けているので魔力にも余裕がない。

シロクマちゃん達の真っ白い毛にも赤い物が…

うそっ!ヤダ!怪我したの!?


初めて使う魔法だから遠くまで届け!と祈りを込めてステッキを高く掲げる。

私を中心に魔法陣が現れた。

それは一番遠くにいるシロクマちゃん達に余裕で届くくらい広範囲に及んだ。


「【エリアヒール(範囲回復)】」


眩い光が辺りを包む。

アンデッド達の動きがぴたりと止まり、まるで苦痛が取り除かれていくかの如く静かに消滅してゆく。

みんなの傍にたくさん積み重なった亡骸も一緒に塵になる程の威力だ。

当然みんなの怪我も治っていた。


「ナナー」

「ありがとー」

「元気になったよー」


えうぅ、よかったよぉぉぉ…


「助かったぜ。すげぇ魔力だな。後、何回撃てる?」


さっきのヒールで少し余裕ができ、ウィルが話しかけてきた。


「わかんないけど……10回くらいなら余裕かも?」


「マジか…んじゃ、ヤバそうになったらまた頼むぜ!」


「お菓子倍にして!」


「ああ、3倍でもいいぞ!」


シロクマちゃん達も聞こえたようで、わーいと特大の攻撃を放っていた。


そんなことを繰り返し、気がつけば月がかなり欠けていた。

暗い。

これでは敵の攻撃もよく見えないだろう。


「【ライト(光)】」


光源を複数出す。


「助かる!」


全員リズムを掴んできたようで調子を崩す事もなく、だんだん作業ゲーになってきた。


それは違和感だった。

嫌な予感、てヤツ?

ハッキリとはわからないが、背後が気になったのだ。

なんとなく振り返る。


ゴブリンだった。

数日前の討伐から逃れた個体だろうか?

顔怖い。

物語によってはマスコットみたいにかわいいタイプもあるけど、コヤツはあかん。

お友達どころか隣人にすらなれないタイプです!


「い……やあ…っ!」


怖くて縮こまる。

もちろん、条件反射でバリアも張った。

焦って直径1メートルもないちっちゃいヤツしかできなかったけど。

ゴブリンが4匹、棍棒でバリアを殴ってくる。

殴る、殴る、殴る。

が、ビクともしないので手を止めたゴブリン達。

諦めたかと思ったが、ムキになって攻撃してきた。


いぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!


心の中で叫んだら、バリアを叩く衝撃が収まった。

薄目を開けて確認する。

あるぇ?ゴブリンが全滅してる…


「大丈夫ですか!?」


遠くから声が掛けられた。

アーチャーのティムだ。

弓に魔石を装着し魔力で作り出した属性矢を撃てるから、ゴブリンに矢は刺さってなくて穴だけ開いていたのか。


「ありがとーっ!」


泣きながら手を振ると、隙をみて合図してくれた。

ホッと一息。

が、ゴブリンの死体が怖くてちょっと前に出た。

前は前で死体の山があるけど。

後の方が気になる。

だって、もしアンデッドになって起き上がったら怖いじゃない!

他にも仲間がいるかもしれないじゃない!

みんなに【クリーン(清掃)】かけてまわって、時には【エリアヒール(範囲回復)】も使って、合間に振り返って背後を確認して、めっちゃ忙しなく立ち回っていた。





一方、商隊サイドは次の街が見える所までやって来た。

城壁の中に入ることが唯一の救いだが、当然時間外ゆえに門は閉まっている。

一応、救難信号を打ち上げた。

頼む、開けてくれ…!

誰もが祈った。

だが、誰しも知っていた。

時間外に城門が開くことはない。

だから、時間内に入れなかった者達の為に壁の外に宿があるのだ。

客の足元を見て高い宿が。

しかし、奇跡は起こった。

門が開き始めたのだ。


「そのまま走れ!」


最初の馬車が街の中に入るか入らないかのタイミングで閉門作業に取り掛かる。

とてつもなく重い扉は閉めるのに時間がかかる。

更に、跳ね橋を上げなければならない。

橋はゴッホの『アルルの跳ね橋』みたいに真ん中から半分に折れるタイプだ。


打ち合わせをしたワケではない。

だが、『天空の箱庭』のメンバーは城門前の堀にかかる橋の上で馬車から飛び降りた。

門が閉まり切るまで警戒する為に。

敵は魔物だけではない。

混乱に乗じる人間も厄介なのだ。

潜伏ポイントである宿に人の気配はないようだが。

ブラッドムーンを警戒して今夜ばかりは壁の中に移動したか。


「急げ!」


門兵の合図で『天空の箱庭』のメンバーは斜めになり始めた橋を駆け上り、ジャンプして対岸に渡った。


「アルバの森でゴースト・ナイトパレードが発生!警戒されたし!」


ビアンカが叫ぶと、門兵が警鐘を鳴らした。

城門の上に兵が集合する。

西門からも警鐘が鳴った。

至る所で発生したらしい。


「スーパームーンの所為か?」


ここまで大規模なものは自分が生きている間にはなかった。

月の引力に魔も引っ張られるとでもいうのか?

ビアンカは恨めしい視線を月に送った。

キレイな金環月食だった。

ということは折り返し地点。

あと半分…

『天空の箱庭』も戦闘に参加することにした。


月が隠れた事で悪くなった視界の先、蠢く無数の魔物の気配。

魔法使いが火属性魔法を放った。

浮かび上がる敵の姿。

あまりの多さに兵士達は尻込みした。


「城壁から離れた場所で仕留めろ!」


指揮官が命令する。

あんな数の死体が摘み上がれば、あっという間に堀が埋まってしまう。

しかしながら矢にも限りがある。

魔法使いの魔力にも限りがある。

敵は後ろから押されるように次々と堀に落ちていく為、とうとう足場ができた。

城壁に張りつかれる。

仲間が圧死するのも構わず、天辺を目指してくる。

もう押さえきれない。

通路にまで侵入されてしまった。

陣形が崩れ、乱戦になった。

もう駄目だ。

街に侵入された。

一般市民にも被害が出てしまう。

兵士達の気力が尽きかけた時、アンデッド達が消えた。

すうっと、まるで転移するように。

気付けば、東の空が赤い。

待望の朝。

悪夢の夜が明けたのだった。





急に消えたアンデッド達に驚いた。

でも、終わったんだ…っ!


「やたー」

「終わたー」

「へとへとー」


その場にへたり込むシロクマちゃん達。

いや、誰もが地面にお尻を付けた。

ナナだけは倒れたと同時に眠ってしまった。

幼女に徹夜は難しい。




「ナナー」

「起きてー」

「起きろー」


「………あい」


目がしょぼしょぼする。


「疲れてるのに悪いな。クマ達からお前なら死体の処理ができるからって…」


白魔導師のノーランにヒールをかけられて強制的に起こされたようだ。


「どゆこと…?」


「ナナのー」

「ピュリフでー」

「いちころー」


「………あい」


死体を放っておくのは衛生的にも道徳的にもよろしくない。

だから倒した盗賊だって獣や魔物に食い散らかされないように、餌場だと思わせないようにその場でちゃんと埋めるものだ。

けど、今回はキナ臭いからということで背後関係を調べる為、ついでに討伐証明の為にシロクマちゃんのアイテムボックスの中に収納されてるんだけど……

今回のアンデッド達の死体の山だって放置していくワケにはいかない。

それに魔物は魔石を取り出さないともったいないけど、今回ばかりは数的に現実的じゃない。

私がエリアヒールかけた時に魔石だけ残して死体が消えたから期待されたのね…


しょぼしょぼしながら【ピュリフ(浄化・聖)】をかけまくる。

ヒールじゃなくていいの?とシロクマちゃんに聞いたら、ナナのピュリフは普通より強力だから魔石の質が良くなると言われた。

色々期待されてた。


地面には大量の魔石が残った。

それをシロクマちゃん達がアイテムボックスに収納していく。

あまりに多すぎて、値崩れ起こしそう。


「もう、ゴールしてもいいですか…」


やりきったわ…

数千もの死体を浄化し終えて、私は意識を手放した。




次に目を覚ました時、街の中にいた。

まさか、おんぶで運んでもらったのか……?


「ご迷惑をおかけしました」


宿の食堂に全員集合した時に深々と頭を下げる。

シロクマちゃん達もノリで一緒にお辞儀する。


「何言ってんだ。お前等はよく頑張った」


実はちゃんと馬車で迎えに来てもらっていたそうだ。

頭をわしゃわしゃするウィルの手は優しかった。

他の銀狼旅団のメンバーも、天空の箱庭のみんなも、商隊のみんなも優しい顔してる…


「えへへ」


あったかいわぁ。

私も頬がゆるむ。


「ほら、座れ。食ったら一仕事な」


ウィルの所為で笑顔が引きつった。

ウィルが笑顔の時は鬼畜作業が待っている。

お菓子5倍請求してやる…


連れてこられたのは城門の外。

ここもアンデッドの死体で大惨事だった。

目が覚めても死体の浄化作業か……

そりゃね、街の外に死体の山。

しかも水辺だと腐敗も早いだろうし、わかるよ?

でも、なんで私だけしかできないの!?


「普通、【ピュリフ(浄化・聖)】はアンデッドを倒しはするが、ゴースト系以外の肉体が消える程の威力はねぇんだよなぁ」


アイテムボックスに収納すると私物と混ざってしまう為、街から支給されたザルに魔石を集めていく人達。

そう、ザル。

すぐに洗えるから便利だよねぇ。

ウィルは私の周りをウロチョロして話しかけてくる。

ボディガードの心算だろうけど、シロクマちゃん達がいるから平気だもん!

そのシロクマちゃん達はさすがにゾンビと同じ水に浸かろうとしないで、ちゃんと長靴とゴム手袋し、きゃっきゃとはしゃぎながら虫取り網でドブさらいしてる。

宝探し感覚なのかな?

いつも楽しそうでなにより。


「魔力は大丈夫か?」


錬金術師のおにぃさんが心配して魔力ポーションをくれた。

城壁の周りぐるっと浄化しないといけないから助かる~。


「ありがと」


丁度ノド乾いていたし、腰に手を当てグビっと一気に煽る。

が、お口かぱーしてダラダラと零してしまった。


「ど、どうした!?」


「まじゅい…」


「………………ぶふっ」


クール系のおにぃさんが吹き出した。

そんなに面白い顔をしてたかしら……いやん、恥ずかちぃ…


「いや、悪い。そうか、不味いか。お子様の味覚は考慮していなかったな」


お口、によによしてますよ。

案外笑い上戸だったのかな?


「ごめんなさい。弁償する」


「いや、貴重な情報を貰えた。もう1本あげるから、必要になったら飲むといい」


錬金術師のおにぃさんは「そうか、不味いのか…」とブツブツ呟きながら去って行った。


汚した服は【クリーン(清掃)】でキレイキレイして、お口直しに水筒の水を飲んだ。

ああ、シロクマちゃんが魔法で出してくれたお水おいしい。


そのまま4時間ほどかけて一気に城壁の周りを浄化した。

あとちょっとで1周完走できるところだったのに、残念ながら魔力ポーションのお世話にならざるを得なくて……

ポーションは量も多いし、ここ数日で一番キツい体験だった。


いつかきっとおいしいポーションを自力で作ってやる!

苦い経験とささやかな目標を深く胸に刻んだのだった。



私達、掃除ばっかりしてるねぇ……

そして貰ったお駄賃は金貨180枚。

盗賊の討伐と、魔物退治の功績と、買い取ってもらった魔石の分配金と死体処理作業の分である。

文句言えません。

短時間に稼ぎ過ぎでしょ…

異世界しゅごい…


「おいおい、細かい内訳を聞かなくていいのか?」


中身も確認せずに金貨の入った袋をアイテムボックスに収納した私に、ウィルは呆れたように言った。


「別にいい」


「俺等が中抜きしてるとか…」


「ウィルはしないよ。それに、ウィルからはお菓子貰えるからね」


「ああ、3倍盛りだっけか?」


「5倍だね」


「5倍ー!」

「いっぱいー!」

「山盛りー!」


「ああ、いいぜ」


たかがお菓子と甘く見て軽く返事をしてしまったウィルの財布から、金貨が2枚飛んでいくことになるのだった。





少し前、『エピタフ』の拠点の食堂にて。

アデルはキョロキョロしていた。


「なあ、最近チビ共見てねぇんだが?」


「そりゃ……そういえば、そうだな」


レスターは何か言いかけて、急に方向転換して違う言葉を口にした。


「部屋にいるんじゃないのか?」


サイラスも何かしらの気配を察知してレスターに乗った。


「いなかったんだ」


部屋まで行ったのか…


「今日は月食だぞ。何で帰って来ねぇんだ!?」


「まあ、クマ達も一緒だろうし?」とサイラス。


「ブラッドムーンの夜に何が起こるか知ってんだろ!?」


「まあ、俺達もこうして待機してるくらいだし?」とレスター。


冒険者ギルドから、今夜はいつでも城壁の防衛に駆け付けられるよう城塞都市にいる全ての冒険者に待機の要請があった。


「もしかして…オレ、避けられてんのかな…?」


ついうっかり抱きついたもんな!

ガキ相手だと思って気安く触りすぎたかな!?


「嫌われてたらどうしよー…」とベソベソしだしたアデルに、漸くレスターがネタばらしした。


「護衛依頼で王都に行ってるだけだぞ」


「…………へ?」


「あと6日は帰って来ねぇがな」


サイラスもニヤつく。

揶揄われたことに気づいたアデルは大きく息を吸い込んだ。

文句を言おうと口を開こうとした途端、タイミングよく警鐘が鳴った。


「はあぁぁぁぁぁぁ……丁度いい。八つ当たりしてやる………っ!」


一番大変だと予想される西門を担当した『エピタフ』。

アデルは単身群れに突っ込んで行き剣を振るった。

十数匹をあっという間に切り伏せ、今度は大魔法を連発。

明るくなったら地形が変わっていることだろう。

アンデッド達はアデルを警戒したのか、左右に流れ出した。

が、そんなことは許さない。

アデルは追いかけ回して切り伏せ、逆サイドは魔法で蹴散らした。

まあ、そんな戦い方がいつまでも続くはずがない。


「さあ、そろそろ一旦引いてください」


サイラスに小脇に抱えられて帰って来たガス欠のアデルと入れ替わりで『エピタフ』メンバーが出陣した。


「いい八つ当たりだったぞ」

「スッキリしたか?」

「相変わらずのキレっぷりだな」

「ちょっとは強くなったんじゃねぇか?」


などと、すれ違いざま口々に揶揄いと労いを述べ、アデルの頭をぽんと撫でていく。

やはりまだ成人前なのでクランマスターの威厳はないが、みんなに愛されているのがわかる。


アデルは冒険者ランクはC級だが、クランメンバーにはA級パーティーもいる。

この数が相手だろうが城壁の上から迎撃するのではなく、冒険者はみんな地上に降りて武器を振るった。


後日、アデル達『白刃の残光』は功績を認められB級へと昇級した。

それから数日の間、ナナに祝って欲しくてソワソワするアデルが見られたとか。


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