表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

05


湯上りホカホカで食堂に向かう途中でアデルに会った。

ずんずん近づいてきて、目の前でうんこ座りする。

もにっ………もにもにもにもにもにもにもにもに。


「んむ…あにすん…」


「お前のほっぺはモチモチだなぁ」


深ーいタメ息とともに、もにもにし倒された。


「…何で逃げねぇんだ?」


「だって、アデル顔がめっちゃ疲れてる」


もっぺんもにもにされた。


「アデルー」

「お疲れちゃんー」

「よしよしー」


シロクマちゃん達がアデルによじ登ってよしよしする。


「ううっ、胸が痛い」


「だいじょぶー?」

「いたいのいたいのー」

「とんでけー」


アデルのライフはゼロになった。


いきなり抱きしめられ、今度はぎゅむぎゅむされる。


「え、ちょ…っ!」


ビックリしてわたわたしているとアデルの「ぎゃんっ」という悲鳴が聞こえ、次の瞬間解放されレスターに抱っこされていた。


「初対面から構い過ぎだと思ってたんですよ。はぁ、とうとうやらかしてしまったんですね…」


拳を握りしめ、もう1発拳骨を落としそうなサイラス。


「何をだ!」


何事だと人が寄ってきた。

場所を変えようと言われ、アデルの執務室まで連れていかれた。

ごはん…



「…ちょっと罪悪感で居た堪れなくてな」


3人掛けのソファーなのに、サイラスとレスターとシロクマちゃん達に挟まれみっちりとつまっている私達に対し、1人所在なさげに向かい側に座るアデル。


「ちゃんと反省しているようですね」と腕組みサイラス。


「そっちじゃねぇ」


「反省してないと?」


「そうじゃねぇ」


「では、説明してもらいましょうか?」


「……オレはこんなにすり減ってんのに、そいつはホカホカで満たされててズリぃなって、その、八つ当たりをしたら、優しさで返されて…ヘコんだというか…」


八つ当たりで『もにもに』とか、かわいいなアデル。

抱きつかれたのは驚いたが、おこちゃまの癇癪かと許す事にした。

こっちはもう済んだことだったのだが、アデルの話はまだ終わっていなかった。


私が他国のスパイで、冒険者に身をやつして探っている、だと…!?


「なんでそんな妄想を…?」


「いやだって、おまえ、その歳でそんなに強くて今まで噂になってねぇんだぞ。遠くの国の者だと思うだろうが」


いや、他国というか、中身は異世界人ですが…


「そういえば私、最初っから親はいないし…何人なんだろうね?」


「ナナはー」

「森でー」

「拾ったー」


あ、そういう設定だったのか。

私も聞いていなかったシロクマちゃんの言葉に、アデル達は動揺した。

まあ、本当の事を知らない彼らには重い話だろうね。


やっと食堂に行けたら、幼女+3匹に詫びとともにココアを付けてくれたアデル。

大丈夫、ちゃんと許してるよ。


そして翌日からクランのみんなが妙に温かくなった。

たぶん赤ちゃんの頃に森に捨てられ、シロクマちゃん達と共に育ったのだと勘違いしてるのだろうが、私には都合がいいので訂正はしないでおこう。

そうしておけば、色々物を知らなくても変に思われることもないだろうしね。





ふっふっふー。

おニューの装備に身を包み、やって来ました冒険者ギルド。

そうなのよねぇ、思えばここはオンラインゲームのロビーと同じなのよ。

かわいい・かっこいいを追求したり、強敵を倒し素材を集めお金も貯めて伝説の鍛冶屋に作ってもらったと自慢したり、ネタ装備でウケを狙ったり、パロディ装備でキャラになりきったりと自分を表現する場所!

さすがにランクの高い依頼をネタ装備でこなそうとは思わないけど。

でもでも、オシャレしたいと思う冒険者の気持ちはよーくわかる。


ドヤァァァァァと受付に現れた幼女+3匹に、受付嬢はプロ根性で笑いを堪えにこやかに挨拶をした。


「こんにちは。みんな今日はとても素敵ね」


「うん!やっとみんなの仲間入りができた!」


今までの私達は初期装備どころかハダカ状態だったのだ。

恥ずかちぃ…


「でもねー」

「まだまだー」

「完成形じゃないのだー」


シロクマちゃん達はスチャっと魔石を取り出すと、ベルトの真ん中にはめた。

魔石が光り、なにかが始まりそうな曲が鳴る。

するとその曲に合わせ、頭に帽子、首にスカーフ、腰や背中に武器、そしてまた頭に戻ってゴーグルが出現した。


ナナももう躊躇わない。

ブローチからステッキを取り出すと、頭上に掲げ、スイッチオンした。

光るステッキ、そしてキラキラした曲。

ブーツの色がダークブラウンから白に変わり、スカートがショートパンツへ変わり、ケープに文様が浮かび上がり、首にゴーグルが出現し、最後にハーフツインにリボンが出現した。


レッドから始まり、ブルー、イエロー、パープルの変身は1.5秒ずつズレている。

そして4人目が変身し終わったと同時にみんなで決め台詞を言うのだ。


「「「「シロクマ戦隊モフるんジャー!」」」」


シーンとなったロビー。

ハズしたか、と羞恥でぷるぷる震える。

が、次の瞬間大喝采。

おひねりが飛んできそうな勢いだ。


いやー、シロクマちゃん達がどうしても変身したいっていうから、魔石に装備を収納しといてベルトに装着した時に出すことによって変身したように見せるようにしたんだけど、意外とそれっぽいんだよねぇ。

まあね、魔石と魔法の無駄遣いだってわかってるよ。

でも色んな野次が飛んだが、「今日も元気になれた、ありがとう」と聞こえてきてやってよかったと思った。

ちなみに、変身解除音もあるよ。

ミュートもできるけど。


「んじゃ、金欠なので実入りのいい依頼をお願いします」


受付嬢はケタケタと笑い出した。




「ナナちゃんはF級だけど、魔物盗伐の実績はあるのよねぇ。でも、樹海への立ち入りは危険だわ。となると…あ、これはどうかしら?さっき受け付けたばかりの王都までの護衛依頼。往復で7日ね。他のパーティーとの合同依頼だから上のランクのものも受けられるのよ。どうかしら?」


「ふむ。どうする、シロクマちゃん達?」


「護衛ー!」

「旅ー!」

「冒険ー!」


「嬉しそうなので、それ受けます」



2日後の早朝、商業地区の『ピークス商会』前集合。

持って行った方がいい物リストと地図をもらったので準備しなくちゃ。

道の確認の為にも商業地区へ向かう。


「野営必須のため、キャンプ用品全般必要。ただし、今回の商隊は食事が出る。でも、アクシデントなどで隊から逸れた場合に備えて非常食は必須。だって」


シロクマちゃん達はなんでも出せるから問題なさそうだけど…

いや、前みたいにこの世界になさそうな物をぽんぽんと出されたらヤバいわねぇ。


「前に電池とか出してたよね?物をなんでも出せるのは魔法なの?」


「違うよー」

「これはー」

「お取り寄せ機能ー」


んん?機能?


「あー」

「神様からー」

「呼び出しー」


えっ、神様!?ここにきて、とうとうご対面!?


「なんかー」

「呼ばれたからー」

「いってきますー」


そう言ってしゅぽんっと消えた。

えぇぇぇぇぇぇぇっ!?

道端で1人残されてしまった。





「ただいまー」

「戻ってきたよー」

「神様ー?」


「お帰り、お前達…じゃないわい、まったく半月も何やってたんじゃ」


「えー、だってー」

「ナナがー」

「よわよわだったからー」


「人間の人生に干渉したらいかんと言ったじゃろうが」


「えー」

「別にー」

「邪魔してないしー」


「まったく、『お取り寄せ機能』はこの空間でしか使ってはならんとも言ったよな?」


「えー」

「だってー」

「お菓子食べたいー」


「規則じゃ。もう人間界に行くのは禁止じゃ」


「えー」

「ナナがー」

「死んじゃうー」


「ならばお前達もナナと同じように『選択』して生まれ落ちるがよい。ただし『お取り寄せ機能』は没収じゃ」


「えー」

「横暴ー」

「けちー」


「なら、ここに残るか?」


「やだー」

「ナナとー」

「離れたくないー」


というワケで、シロクマちゃん達も5つの問いに答えていった。



【Q1】魔法が使えるようになりたいですか?


『Yes』

『はい』

『もち』



【Q2】では、得意な魔法は何がいいですか?


「どうするー?」

「みんなでー」

「振り分けないとねー」


あーでもないこーでもないと相談して決めた。


「わたしはあったら便利『火属性魔法』だねー」

「わたしは生きていく上で不可欠な『水属性魔法』かなー」

「わたしは無限の可能性『無属性魔法』がいいー」



【Q3】ステータスで底上げしたいモノを2つ選んでください。


「わたしはハンマーだから『ATK(攻撃力)』『STR(筋力)』だねー」

「わたしは日本刀だから『AGI(素早さ)』『TEC(器用さ)』かなー」

「わたしは光線銃だから『DEX(命中力)』『MAT(魔法攻撃力)』よねー?」



【Q4】ギフトスキルが3つ選べます。創作でも構いません。希望をどうぞ。


「これ、チートって書いたらダメなの?」

「おおぅ、頭いいー」

「それでいこー」


「駄目じゃ。チートはズルという意味じゃぞ。ズルはいかん」


「ヒゲじじぃー」

「ハゲじじぃー」

「クソじじぃー」


「1個減らそうかのぅ」


「じょ、じょーだんだよー」

「おちゃめだよー」

「ホントのコトじゃん(ぽしょり)」


「なんじゃと?」


「わ、わたしは『鎚術』『変身』『空間移動』にするー」

「えっと、わたしは『刀術』『隠密』『千里眼』かなー」

「んじゃ、わたしは『銃術』『創造』『付与』ねー」



【Q5】今世はどのような人生を望みますか?


『『『ナナとずーっといっしょ!』』』




「決まったようじゃの」


神様はシロクマちゃん達の足元に魔法陣を出現させた。


「じゃあね、神様ー」

「次に会う時はー」

「死んだ時だねー」


魔法陣が光り、シロクマちゃん達の体が透ける。


「さあ、行っておいで。今日中に名付けてテイムしてもらえんかったら強制送還じゃからのぅ」


「今日中ー!?」

「ギリギリにー!」

「言うなー!」


「ふぉっふぉっふぉ、アイテムボックスはおまけしといてやるからのぅ」


「「「ありがとー!」」」





とりあえず必要な物資を買い込んで拠点に帰ってきてもシロクマちゃん達は帰っていなかった。

疲れたぁ。とちょっとベッドに転がってたら眠っていたようだが、お腹にドフ×3をくらって目が覚めた。


「ナナー!」

「ナーフされたー!」

「名前付けてー!」


「………何もわからん」


しばらく、落ち着くまでナデナデして事の次第を聞き出した。

つまり、この世界に残る為にはシロクマちゃん達も5つの質問に答えて生まれ落ちなければならず、名前を決めると完了する、と。


「やっぱり名前を付けるとテイムしちゃうんだね」


シロクマちゃんが自分達を名前で呼ぶように言わなかったからあだ名すら付けないようにしていたんだけど、それで正解だったようだ。


「私、名付けは超苦手なんだけど…」


「でもー」

「付けてもらわないとー」

「帰りたくないよー」


「うーん、じゃあ…『モフ1』『モフ2』『モフ3』」


「「「却下!」」」


「却下ってアリなんだ…えー、じゃあ……『シロ1』『シロ2』『シロ3』」


「「「数字から離れて!」」」


それから何度もやり直しをくらってしまった。


「何か、リクエストない?花の名前とか、星の名前とか…」


「動物の名前ー」

「国の名前ー」

「食べ物の名前ー」


「シロクマちゃん達もちょっと残念かなぁ」


「食べ物の名前いいねー」

「うん、いいー」

「いいでしょー」


マジですか…?

キラキラした目で見られてるぅ…


えっと、じゃあ赤い食べ物ね?

えーっとリンゴ?イチゴ…うん、『イチゴ』がいいかな。


次は青…青い食べ物ってあったっけ?

………ブルーハワイはちょっと…

あ、『ラムネ』がいいんじゃない?


あとは黄色か…オレンジ…みかん、は黄色じゃない。

オレンジって言ってるし…

バナナ…レモン………かりん…うん、『カリン』がいい!


シロクマちゃんの頭にぽんと手を乗せ『イチゴちゃん』『ラムネちゃん』『カリンちゃん』と命名していった。


「ナナはー」

「わたし達のー」

「見分けついてるのー?」


ちゃんとパーソナルカラーを考えて付けたのに気づいてくれたのね。


「もちろん」


「やっぱー」

「ナナー」

「大好きー」


「私も大好きだよ」


みんなでぎゅうぎゅう抱きしめあっていると、体が光った。

シロクマちゃん達との繋がりを感じる。

テイムが完了したらしい。


「これからも、よろしくね」


「もちろんー」

「ナナはわたし達がー」

「育てるからねー」


どっちがテイムされたんだろうね…?





明日の護衛依頼の為に打ち合わせをする。

まずは持ち物の確認。

昨日買ったテントを部屋に広げる。


「これをベッドみたいに足を付けて浮かせたいのよねぇ」


「テントー」

「寝心地ー」

「悪かったよねー」


「そう、だから地面から浮かせたいの。このまんまアイテムボックスに収納しちゃえば1秒で設置できるから、重くなってもいいんだけど…」


「お取り寄せ機能ー」

「没収されちゃったからー」

「便利グッズ出せないよー」


「そうなんだ…」


ナーフされたって言ってたな。

残念ではあるけれど、うっかり騒動を起こすことがなくなったのは安心かも。


「あれー?カリンってー」

「『創造』のスキル持ってなかったー?」

「あー、そうだったー」


カリンちゃんにイメージするの難しいから絵をかいて欲しいと言われたのでチャレンジしてみる。

足はベッドみたいに四隅と、中央にも足して6本。

結局寝るだけなのだから、床は靴を脱ぐスペースを残してあとは全部お布団にしちゃおう。

入口には階段を付けて。

むむむ、我ながらいい物ができた。

でもこれ、テントじゃなくてログハウスでもいいんじゃ…


『創造』というスキルは同系統の『錬金術』より凄かった。

だって材料がなくても想像するだけで創造できるのだ。

……ダジャレじゃないからね!


それにしても魔法を遥かに超えた超常の能力だ。

神様からもらったスキルってことはこの世界に存在するモノということであり、つまりは同じスキルを持っている人がどこかにいるってことよね?

そんな人、周りがほっとかないと思うんだけど…

隠しているのかもしれないな。

シロクマちゃん達にも自重を………できる気がしない……





翌朝、ねむねむしながらもちょっと早めに着くように集合場所に行ってみると、もう自分達以外の冒険者は揃っているようだった。


「おはようございます」


「ホントー」

「みんなー」

「早いー」


「おう、遅刻じゃねぇぞ」


一番に声を掛けてくれたのは、いかにもリーダーっぽい、ワイルドさと知的さを合わせ持つ中年男性。

銀髪でロングウルフ、前髪は全部上げたハーフアップ。

イケオジだ。


「俺は『銀狼旅団』の団長、ウィルフリードだ」


「私は『天空の箱庭』のリーダー、ビアンカよ」


ビアンカは暗めの赤い髪をゆったりと流すナイスバディのゴージャスおねぇさん。

腰に鞭を装備している。

似合いすぎます。

ビアンカねぇさんと呼ばせていただきます。


「全員の自己紹介は後々な。いきなりは全員覚えらんねぇだろ」


「助かるぅ」


「わたし達はー」

「まとめてー」

「シロクマでいいよー」


「あ、私はナナです。よろしく」


「あー」

「ナナだけー」

「ズルいー」


シロクマちゃん達がまた名乗り出そうとしたので止めた。

いくら住宅街ではないとはいえ、早朝に騒ぎ過ぎだ。


しーっとしたら、「「「しーっ」」」と返してくる。

お利口さん。




護衛の商隊は結構規模が大きい。

行きは色々な村や町を訪れ売買はもちろん注文も聞く。

王都に着いたら商品を納め、予定の品や注文を受けた品々を仕入れる。

帰りも村や町を訪れ注文の品を届けるという行程らしい。

つまり、荷物がとても多い。

それなのに、馬車の造りがなんとうか、厳ついのだ。

布の幌もあるのだが、板を打ち付けてあって屋根もあり、もはや家みたいなのもある。


「すごく重そうだけど、お馬さん2頭だけで大丈夫なのかなぁ?」


「浮遊の魔石で随分軽くなっているんですよ」


独り言に背後から返事があった。


「これはピークス会長。直々に見送りですか?」


銀狼旅団のウィルフリードが真っ先に応対に出た。

商会長と知り合いらしい。


この人がピークス商会の会長さんかぁ。

恰幅のいい中高年のおじさん。

好々爺風だけど、商売の世界がそんなに甘いとは思えない。

余裕を見せられるのは強いからか…


「噂の『モフるんジャー』に会いたくてね」


大人の口から『モフるんジャー』ってシュールだな…


シロクマちゃん達が敏感に反応したが、先程注意したので整列して各々ポーズをとるにとどまった。

いいこ。


「下水道の清掃、感謝する。街の空気が浄化されたようで気分が良くなったよ」


「いやいやー」

「ぜんぜんー」

「どいたまー」


シロクマちゃんの変身が見たいのかと思ったけど…下水道の掃除ってそんなに噂になってたのね。


「やっぱり、キレイな方が気持ちいいよね」


商会長さんはシロクマちゃん達をモフって帰って行った。



「さて、お前等は索敵は出来るか?」


「わたし『千里眼』もってるー」とラムネちゃん。


「おお、そりゃぁいい。んじゃ、お前らは中央の馬車に乗ってくれ」


天空の箱庭が先頭を、銀狼旅団が殿を警護することになった。

馬車は前から『家』『幌』『家』『幌』『家』の順に並んでいる。

家っぽい馬車には屋根の上や後方にバルコニーみたいな物が付いていて、そこに見張りが立つようになっているらしい。


こう言っては何だが、真ん中が一番楽だよね…

侮られたとかは思わない。

優しさだとも思わない。

私達は初めての護衛依頼だもん、プロの判断として当然の処置だ。


「そうだ、魔物が出たらどうするの?シロクマちゃん達、速攻で突っ込んでいくと思うんだけど…」


「うーむ、お前達の強さを知らんからなぁ……最初は馬車を守ることを優先して欲しいんだが」


「わかった。私バリア張れるからそれは大丈夫」


「へぇ、どのくらいの範囲をカバーできるんだい?」とビアンカねぇさん。


試しにやってみた。

境目に人がいたら危ないから、人間は通れるようにして、と…


「【バリア(障壁)】」


キンっと透明なキューブが馬車を1台ずつ囲んだ。

透明といっても、シャボン玉みたいに光を反射して虹色に揺らぐからちゃんと視認できる。


「ほう、全部いけるか。しかも…」


ウィルフリードはバリアを通り抜けた。


「俺達は出入り自由か!」


今度はビアンカねぇさんが強度を確かめにかかった。

鞭で打つ。

打つ、打つ、打つ。

バリアに変化はない。


「これならゴブリンの矢も槍も通らないね」


合格が貰えたらしい。


「んじゃ、最後に、盗賊は侵入できるのか?」とウィルフリード。


おおう、条件が人間だってわかったんだね。


「えっと、みんなに一度マーキングしたら、その人達限定に出来る」


ハズ、と心の中で付け加える。

魔法は少しお勉強したのよ。

でも、本に書いてあるのは馴染めなかったからオリジナルにアレンジしたの。

私にはスキル『言語習得』があるから魔法陣に描かれている内容が見えるのだ。

だからそれを自分好みに書き換えるだけで改変できる。

そこまで考えていたワケじゃないけど、とても有用なスキルを選んだと思う。

グッジョブ、自分。


試しにウィルフリードの手の甲に鍵をイメージして魔法陣を刻印する。

いつ効力が切れたかわかるようにタトゥーみたいに見えるようにした。

そしてパスを持つ者だけが出入り自由のバリアに描き変える。

すると、今度は中にいる人は出られず、外にいる人は入れない。

どっちもできるのはウィルフリードだけだった。


やった!成功!

シロクマちゃん達とハイタッチしていると、急に頭を撫でられた。


「わははっ、スゲーなお前!俺のパーティーに入らねぇか?」とウィルフリード。


「ちょっと、抜け駆けしないでよ。ナナはあたしが貰うわ」とビアンカねぇさん。


「いや、私達は4人でやってくから。それに一応『エピタフ』だし」


「そうだー」

「ナナは誰にもー」

「やんないからねー」


シロクマちゃん達が『とうせんぼう』のポーズで私の周りを囲む。

小動物にキシャーっと敵意を向けられるのは存外心を抉られるようで、2人は大人しく引いた。


パーティー名を名乗っても、勧誘あるじゃん…

まあ、実質1人だしねぇ。


そろそろ打ち合わせも終わり。

出発時間も迫っているので、私達は馬車に乗り込んだ。

というより、乗り上げた?

真ん中の馬車は屋根に見張り台があった。

サイドにベンチがある。

座り心地はダメダメだった。

ちょっと砂っぽいので【クリーン(清掃)】も掛けておく。


「カリンちゃん、低反発クッション出せないかな?」


「いいよー」


カリンは人数分のクッションを創造した。


馬車が走り出すと、風が結構冷たかったのでバリアを張って風よけにした。

さあ、これから長い護衛依頼が始まる。

何事もなく無事に帰って来られるといいなぁ…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ