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03


「「「い―――――――――や―――――――――――っ!!」」」


前方からシロクマちゃん達が泣きながら走ってくる。

どうしたの?と問うまでもなく、ゾンビに追われてる。

え、ネズミの魔物じゃなかったの!?


「ヒールで倒せるんじゃなーい?」


この世界でもアンデッドには回復魔法が効いたり…?


「効かなかったー!」

「【ピュリフ(浄化・聖)】もー!」

「【ターンアンデッド(退魔)】もー!」


何それ!?魔法がダメなら物理?

でもみんな素手だよ!?

あ、私ナイフ持ってたわ。

でも、ロケットランチャーが欲しいね!

こんなところで撃ったらみんな生き埋めだけどね!


「「「司祭様ーっ!!」」」


もう、本職にお任せするしかない!と幼女+3匹は司祭様の後ろに隠れた。

でも、司祭様はただ突っ立ってる。

司祭様でも怖いのかな?と思ったら、「大丈夫ですか?」と手を差し伸べるようにゾンビに駆け寄った。


「たす…け、て…」


ゾンビがしゃべった!

じゃなくて、人間男性だった。

ピュリフのおかげで汚れは落ちているが服はボロボロ頭はボサボサだし、ヒールでは治らない飢えの所為でアンデッドに見えたのね。

っと、のんきに観察している場合じゃない!

一時撤退!




教会の治療院にゾンビさん(仮)を運び込み、治療ではなくおかゆを与えた。

おヒゲ生え放題で食べにくそう。


食べ終わったあたりで衛兵が来てそのまま尋問を始めた。

私達は第一発見者ということで同席している。


「で、なんで取り調べの必要が?」


司祭様にこそっと聞く。


「下水道に許可なく立ち入ることは不法侵入や器物破損に該当しますので」


そうね。鍵がかかっている他人の敷地に無断で入るのは、誰でも違法だってわかるよね。


ゾンビさん(仮)は故郷で古い屋敷を解体する仕事をしていたら、いつの間にか臭くて暗い場所で目が覚めたそうな。

出口がわらからず彷徨って、何日たったかもわからない。

魔物とも戦いボロボロに。

もう死ぬと思っていたところに人の声。

実際はクマだったが。

助けを求めようと近寄ったら、【ヒール(回復)】と【ピュリフ(浄化・聖)】は助かったが【ターンアンデッド(退魔)】までかけられた、と。


いきなり知らない場所で目が覚めたって聞いて『異世界転移!?』と思ったが、故郷は隣街らしい。

隣と言っても40kmは離れているというが。


「転移魔法のトラップだったりして」


ぽしょりと呟いたらゾンビさん(仮)は一瞬身を強張らせた。


なに今の反応?

トラップ踏んだら何かあるの?

あー、トラップが仕掛けられているような場所に侵入したって事か。

つまり、入っちゃいけない場所に入ろうとして引っ掛かったのね。

さては解体現場でもない場所に潜り込んで盗みを働こうとしたな?

いやしかし、トラップを設置した人は侵入者を苦しめて殺すつもりだったのか。

こっわーい…


衛兵はお説教と罰金を言い渡して帰って行った。

私達も今日は帰ろっか。


「じゃあね、ゾンビさん。お大事に」


「ゾルジだ」


ニアピンだった。


「クマ共のおかげで助かったぜ。サンキュな」


「気にすんなー」

「いいってことよー」

「おけー」


「でも、なんで【ターンアンデッド(退魔)】かけたんだ?」


「暗闇でー」

「出合い頭ー」

「這いずりゾンビー」


司祭様の【ライト(光)】の影響外にいたもんねぇ。

ヘルメットのライトだけじゃマジでホラー映画だっただろう。


バイバイして外に出る。




というワケで、依頼はまた後日仕切り直す事となった。

司祭様と一緒にギルドに戻る。

今日はそんなに進んでなかったのに、報酬は思ったよりかなり多かった。

誰もやりたがらないから、段々金額が上がったんだって。


「是非、残りも全てお願いしたいのですが…」と切実な眼差しを向けてくる司祭様。


まあ、この依頼、報酬は悪くない。

それに水質汚染は大問題だ。

建築物がバッキンガム宮殿並みとはいえ、衛生観念や医療技術は現代日本並ではないのだし。

けど…


「魔物がいるみたいだけど、どうする?」


清掃依頼、このまま私達だけで続けることができるだろうか?


「やるよー」

「いけるいけるー」

「平気ー」


「おりょ?あんなに嫌がってたのに?」


「だってー」

「水圧洗浄ゲームみたいでー」

「たーのしー」


マジですか…

でもまあ、綺麗になったってハッキリわかるのは気持ちいいってのはわかる。


「ありがとうございます。では残りはいつ取り掛かります?」


「ちょっと武器とか揃えないとマズいと思うの。だから明日の午前中でいい?」


「もちろん。お待ちしております。では…」


帰ろうとしている司祭様を呼び止めた。


「聞きたいことがあったの。あのね、いくら書類持ってたからって幼女+3匹が下水道の掃除に来て、よくなんの疑問も持たなかったね?」


「ああ、それは白い従魔は聖属性魔法が使えることが多いのですよ。なので逆にあなた方だけで来られたので、相当な腕があるのだろうと判断しました。予想以上で大変助かります」


今度こそバイバイして一旦拠点に戻って来た。

だってご飯がタダなんだもん。


「あ、レスターだー」

「1人ー?」

「めずらしー」


「今日は非番だ」


ランチにはちょっと遅い時間。

一緒にプレートを受け取ってテーブルに着いた。


「ねーねー」

「武器売ってるお店ー」

「おススメあるー?」


「お前らが使うのか?」


「スーアー・ラットが出るかもしれないって」


「ふむ。なら、工業地区にある武器屋で買うか、鍛冶屋でオーダーメイドするかだな」


「手持ちが…」


「はは、そうだな。初めは誰でも装備は心許無いもんだ。工業地区のはずれに中古を扱っている一角がある。そこを訪れてみるといい。どの店も大差はないな。目利きは必要だが、掘り出し物があるかもしれない」


「おおぅ、ありがと」


情報の対価にナナはパスタに乗っているミートボールを1つレスターのお皿に乗せた。

シロクマちゃん達も真似したので、レスターのお皿はミートボールでいっぱいになった。

成人男性ですもの、レスターは笑顔でぺろりと平らげた。



お腹も落ち着いたので、武器を買いに行く。

冒険者向けの店なので、ギルドにほど近い。

けど迷子になった。

地図をもらっとくんだった。

方向音痴は死んでも治らなかったのね…くすん。


「武器屋どころかー」

「お店がー」

「一軒もないー」


おっかしいなぁ。

誰かに聞こうと思っても、通行人ゼロ。


「あっ。あっちー」

「おおぅ、看板ー」

「何屋さんー?」


アイアンに木の板が垂れ下がった袖看板が見える。

描いてあるのは『?』という記号。

…マジで何屋さん?


「ごめんくださいー」

「おじゃましますー」

「ちわー」


ショーウィンドウを覗こうとしたのに、シロクマちゃん達が突撃した。

中に入ると、本当に不思議な店だった。

綺麗だけど何がなんだかわからない置物?とか、ガラス瓶入りのカラフルな薬?などなど、ちょっとずつ並べられている。

先に入ったシロクマちゃん達が一ヵ所に群がっていた。


「何見てるの?」


え、これ日本の子供用のおもちゃじゃん。

プラスチックでできてるヤツ。

なんで?


「いらっしゃい。かわいらしい妖精さん達。ようこそ『幻想亭』へ」


わ。エルフのおにぃさん!

プラチナブロンドの艶やかなロングヘアーをまとめて左肩から前に垂らしてる。

エルフってやっぱり美人さんなんだぁ。

それにとても品がある。

てか、シロクマちゃんって妖精だったの!?


エルフさんはカウンターから出てきて傍にしゃがんだ。

シロクマちゃんにそっと手を伸ばす。

逃げられなくてホッとしたエルフさんはイイ笑顔でモフりだした。

あれ、急に残念さん。

最初の高貴なる者の印象は消え失せた。


「不思議なモノばかり置いてあるね?」


「これらは迷宮遺物です。壊れている物も多いですが、下手に修理してしまうと、折角の特別な機能が損なわれてしまうのです」


残念です、と言いながらシロクマちゃんを抱っこするエルフさん。

もう遠慮なく頬ずりしている。

モフらーは種族を越えるのね。


「ナナー、わたしコレ欲しー」

「わたしコレー」

「わたしアレー」


抱っこされているので届かないシロクマちゃん。

エルフさんが「コレ?」と確認して持たせてあげた。


シロクマちゃん達が選んだのは『ピコハン』と『日本刀』と『光線銃』。


「まぁ、武器ではあるけど…」


『ピコハン』はピンクの持ち手に赤いハンマーヘッド。

いつもレッドを名乗るシロクマちゃんらしいチョイスだ。

そして所詮ただのピコピコハンマー。

破れてて音が出ないね。


『日本刀』は青い鞘に青い柄糸。

いつもブルーを名乗るシロクマちゃんらしいチョイスだ。

でも抜いたら刃がただの白いプラスチックのヤツ。

何かを切ろうとしたのかな?

すんごいボロボロだね。


『光線銃』は黄色いレトロフューチャーデザイン。

いつもイエローを名乗るシロクマちゃんらしいチョイスだ。

電池入ってたら先端が光って音が鳴るだろうね。

弾は飛び出さないよ…?


そう言ったが、シロクマちゃん達は期待に満ちたキラキラした目で訴えてくる。

うぅぅぅぅぅ、断れないよぉぉぉぉぉぉ。


「えっと、おいくらですか?」


「4つで銀貨1枚でいいですよ」


「安っ!間違ってない?………4つ?」


見るとピコハン持ってるシロクマちゃんがもう1個持っていた。


「これはー」

「ナナのー」

「ステッキなのー」


ハートモチーフのスイッチオンで光って音が鳴る魔法少女のステッキが1つ増えていた。

抜け目なくカラーは紫系統。

もしかして、みんな武器の種類ではなくて色で選んだのでは…?


それにしても銀貨1枚は日本円で約1000円。

いくら中古でも、日本でだってそれじゃ買えないよ!


「ふふ。実は修理代が大金貨数枚分かかりますからね。それでいいんですよ」


「でも、それだとエルフさんの儲けがないよね!?ローンで払うよ?」


「ふふ、お優しいんですね。でもお金には困ってなくて、このお店はただの趣味なんです」


そう言われても、本当にいいのだろうか?と迷っていると、「似合っていますよ」と言われ、がっくりと項垂れたら「まいど」と言われてしまった。

この商売上手め。

銀貨を1枚支払った。


「ナナー」

「魔法でー」

「直してー」


「ふむ。おっけ」


「おや、かわいい妖精さん。あなたは錬金術師だったのですか?」


妖精って、シロクマちゃん達のことじゃなくて単なる呼びかけだったのか。

エルフの常識?

ちょっとわかんない。


「妖精違うし。【リペア(修復)】が使えるだけだよ」


「だとすると、エンチャントが消えてしまいますねぇ。迷宮産の物は一味違うんですが…」


「だいじょぶー」

「ナナはー」

「見えるからー」


見える?ってなに?

思わずエルフさんと一緒に首をかしげてしまった。

シロクマちゃん達が「やってやってー」と雛鳥みたいにピーピー鳴き止まないのでやってみるけど…


作業しやすいようにとテーブルに案内された。

お茶も出してくれて、シロクマちゃんがさっそく口にしている。

歩き回って疲れたので私も一息つかせてもらう。


さてゴーレムにやった時みたいに体中に魔力を流す。

すると見えるのだ、物体の周囲にまとわりつくように回っている文字が。

あ、見えるってコレ?

こういうの全部含めて【リペア(修復)】だと思ってた。

おっと、気が逸れた。

所々千切れている箇所を繋ぐ。

まるでパズルみたいにピタリとはまるまで。

一瞬キラッてするのが成功した証だ。


「【リペア(修復)】」


しゅるしゅるしゅるーっと破損個所が直っていく。

欠けすら閉じていくのは不思議よねー。

代わりの物質とか用意してないのに。

魔法って不思議。


「素晴らしい!エンチャントまで元通りです!」


「エルフさんはエンチャントが見えるの?」


「鑑定持ちですから」


あ、鑑定すればいいんだ。てへ。

前世になかった能力だから、咄嗟に使うことを失念するわ。


シロクマちゃんがアイテムボックスからボタン電池を取り出して、光線銃とステッキにはめる。

あ、人前でそんなの出していいのかな…


「それにしても、それら迷宮遺物の名称も使い方もご存じのようですね…?」


うっ、やっぱり不審がられた…


「あー、以前似た物を見たことがある、から…?」


「それにしゃべり方や雰囲気も、人間の大人のようですし?」


「ふぇ?そうなの?」


まあ、別に子供のフリをしたことはなかったけど、そんなコト言われたの初めて。


「不思議な生物を連れていたり、あなたは、一体何者なんでしょうねぇ…?」


やだぁ、満面の笑みで言わないでぇ。

どう反応したものか逡巡していると、シロクマちゃん達が椅子を降りて整列した。

アレをやるのね!

今回ばかりはナイスだよ。


「ガーネット レッドー」

「ラピスラズリ ブルー」

「こはく イエロー」

「アメジスト パープルー」

「「「「シロクマ戦隊モフるんジャー!」」」」


さっそく武器を組み込んだポーズにグレードアップさせた。


「じゃ、お邪魔しましたー」


そそくさと店を出た。

が、私達、只今絶賛迷子中だった……

そーっと扉を開ける。


「あのー、実は迷子で…冒険者ギルドまでの道を教えて欲しいんですけど…」


扉の隙間から顔だけが下からシロクマ、シロクマ、シロクマ、ナナの順に並んでいて大変かわいらしい。

エルフさんはお腹を抱えて震えた。


「詮索して悪かったね。深い意味はないんです。また新しい品物を入荷しておきますので気が向いたら、いつでもいらしてくださいね」


手描きの地図をもらった。

線がちょっと震えている所がある(思い出し笑いしたな)のは目をつぶろうじゃないか。

店の外まで出てお見送りしてくれるエルフさん。

手を振り返す。

バイバイ、怪しいエルフのおにぃさん。

また来るかはわかんないよ。





無事、冒険者ギルドの傍まで戻って来られた。


「さっき買ったおもちゃのエンチャントの効果試してみよっか?」


ギルドの受付嬢に聞いたら、闘技場は冒険者カードを持っていれば誰でも使えるんだって。


訪れてみると、自己鍛錬をやっている人がパラパラといた。

闘技場は石舞台があるのではなく、グラウンドみたいに土の地面。

端っこには的がいくつか立っている。

普通の遠的用や、打撃を測るパンチングマシーンなど。


まずは『ピコハン』の打撃力。

エンチャントは【硬化自由】【重量自由】【規模自由】。

シロクマちゃんは巨大化したピコハンを大きく振りかぶって的を殴った。

『ぺきょっ』というかわいらしい音は木製の的とついでに巻き込んだ傍の石壁の破壊音にかき消された。

爆音に他の冒険者の注目を浴びる。


「何だ今の音は!?」


ギルマスが乗り込んできた。

お早い到着で…


「ごめんて…」


【リペア(修復)】するから許してちょ。

魔法のステッキを使ってみた。

魔法を使用するタイミングでスイッチをオンにしてみる。

すると先端のジェムが光り、ピロリロリーンと小気味いい音がした。

あ、これ【魔法強化】【魔力消費軽減】がついてた。

らくちん、らくちん。

その他に【魔法少女】というワケのわからないモノもついているが、試す気はない。

嫌な予感しかしないもん。

シロクマちゃん達にも内緒だ。



「またお前らか。まったく騒動ばかり起こしやがって」とギルマス。


「心外な」


「私達をー」

「問題児みたいなー」

「言い方しないでー」


シロクマちゃん達が両手を上げてぷんすかと抗議する。


「じゃあ、アレはなんなんだよ!?…っておい、お前らなんてモン持ってやがる!?」


ギルマスは驚愕の表情で私達を見た。


「これ?迷宮遺物なんだって」


ただのおもちゃに見えるのに、すごい性能だよね。

さすが異世界。


「どこでそんなもん…」


「迷子になってたらエルフの変なお店を見つけて」


「…もしや、『幻想亭』か…?」


「あー、確かそんなコト言ってた」


「場所、わかるか?」


「うん。地図貰った…アレ?なくしたみたい…」


ポケットをあちこち探るが、どこにもない。

あるぇ???


「いや、『幻想亭』は文字通り幻の店でな。普通は目にすることもできねぇんだ。魔法がかかっててな」


「ん?じゃあ、私達はなんで入れたんだろう?」


ふとシロクマちゃん達に目を落とした。

ああ、エルフさん、モフらーだったね…



さて、続きをと思っていたら、ギルマスがお目付け役として残った。

壁も的も直したじゃん…


ま、気を取り直して次にいこう。

お次は『日本刀』ね。

エンチャントは【硬化自由】【伸縮自由】【切れ味自由】。

あー、もう結果は想像できるわ。

シロクマちゃんは居合の構えをとった。

目にも留まらぬ速さで抜刀し、木製の的を斬り、カチンと鍔鳴の音を立てて納刀すると的が斜めにずり落ちながら崩壊した。

一拍遅れて後ろの壁も崩壊した。

うん、5回斬りつけていたもんね…


ギルマスが喚く。

うん、ごめんて…ほい、【リペア(修復)】っと。

わはは、なんかステッキ使うの楽しくなってきた。


最後は『光線銃』ね。

エンチャントは【耐久力上昇】【魔法強化】【魔力消費軽減】。

銃なのに魔法特化?

どう使うんだろうと見守っていると、シロクマちゃんは遠的用の的を狙った。

そして、えいっと気軽に光線銃の引き金を引く。

ピロロロロロローっという軽快な音と共に、先端から青白い光線が走った。

的は凍り付いた。

ついでに辺り一帯も凍って寒い。

え、今の破壊光線!?

おもちゃから出ていいヤツ!?


シロクマちゃん達は氷の上で遊びだした。

ああ、正しいシロクマの姿だ。



「お前等はどこを目指してるんだ?」とギルマス。


「どこって?」


いきなり何の話ですか?


「その実力だ。こんな辺境の地でただ冒険者としてやっていく心算じゃねぇんだろ?上級冒険者になって国お抱えの冒険者になるとか、迷宮探索のプロになるとか、なんかあんだろ?」


ここ、辺境の地だったんだ…

あと、国お抱えとか探索のプロとか初めて聞いた。


「目指すはのんびりスローライフだけど?」


「スローライフねぇ…ま、とりあえず、氷をなんとかして帰ってくれよ」


「りょ、りょーかい…」


ノールックで手を振って去って行くギルマスの背に答えてはみたものの、コレどうするん?


「シロクマちゃん、氷を解かす魔法ってない?ギルマスが片付けて帰れって」


「ないー」

「叩き割ってー」

「回収ー」


有言実行。

ハンマーで叩き割ってはアイテムボックスに回収していった。

あとで川にでも捨てよう。

最後の仕上げに【ドライ(乾燥)】をかけておく。


「よし。明日の為に今日はもう帰ろう。ご飯の前にお風呂入ろっか。体が冷えた」


「いいねー」

「おっふろー」

「ごっはんー」


防具を1つも買っていないことをすっかり忘れて、幼女+3匹は浮かれながら帰って行った。





「ご報告があります」


アデルの執務室に『影』が現れた。


「なんだ、とうとうやらかしたかチビ共」


「いえ、関係が全くないとは言えませんが…」


『影』は下水道から救出された男の話をした。


「まあ、出身地や解体業の話は嘘でしょうが」


「転移陣で下水道行きか…」


「はい。もしかしなくても旧クロフォード城の地下トラップかと」


「150年経ってもあの城は攻略できねぇか。ざまぁねぇな」


アデルが言っているのは父から聞いた話。

150年前の戦争でここ『ノア王国』は国土の一部を失った。

失った土地の中にクロフォード辺境伯の領地が含まれており、勿論城も獲られた。

が、ご先祖様はただでは渡さなかった。

迷宮遺物に要塞化できる物があり、それを仕掛けたのだ。

つまり旧クロフォード城は言うなればカラクリ屋敷となっているのだ。

対になるオーブが今この城塞都市中央にある城にあるので、トラップを踏んだ者はこの街の地下に飛ばされる。

そんなワケで地下の宝物庫は手つかずで残っている。

ご先祖様、様様である。


「となると、チビ共に下水道の掃除をさせるのは危険か?」


「戦闘力で劣るようなことはないと思われますが…」


「ほう、根拠は?」


「先程、冒険者ギルドの闘技場で全員が迷宮遺物を所持しておりました」


「~~~ったく、何者なんだよ!?」


「かの国の者で下水道掃除は味方の救出の為、とも考えられますが…」


「あー、もう、いっそ尋問できたら楽なんだが」


「お戯れを。抵抗された場合の被害が恐ろしゅうございます」



段々身に覚えのない事で平穏が脅かされそうになっているのだが、何も知らない幼女+3匹は夕飯にデザートが出て小躍りしていた。


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