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「さてと、犯人を連行しないとね」
事前にイチゴちゃんに作ってもらっていたリヤカーに暗黒団を乗せる。
暴れると面倒なので、解毒だけして他の状態異常はそのままにした。
あ、女性達に真っ先に【ディスペル(解呪)】をかけたよ。
いっぱい感謝された。
その後、麻痺っている暗黒団に蹴りを入れてた。
全員、見なかったコトにした。
転移陣は12人までなので2組に別れて0階へ。
シロクマちゃん達が3匹でリヤカーを引いて、0階の一画にある衛兵の詰所に移動した。
牢獄のある城壁から迎えが来るまで、ここで尋問する為だ。
幼女+3匹にも別室で事情聴取が行われた。
アデルとサイラスもついて来た。
レスターは暗黒団の方に行った。
ボス部屋の扉が閉まって、再び開くまでの出来事を聞かれた。
「え~っと、まずボスが現れたでしょ…?」
順番に思い返していく。
暗黒団が戦っている隙にラムネちゃんの首輪に【ディスペル(解呪)】をかけた。
で、背後から急襲。
まずは【パラライズ(麻痺)】で動きを止めた。
罵声が煩いので【サイレンス(沈黙)】で黙らせた。
視線が鬱陶しいので【ブラインド(暗闇)】をかけた。
ノリで【ポイズン(毒)】も追加した。
で、シロクマちゃん達がボスを倒して宝箱ゲット!
アデル達が来てくれるのを信じて転移陣の部屋でお茶して待ってた。
そう言ったら天を仰がれた。
「ラムネちゃん、もしかしてワザと誘拐された?」
「そだよー。こないだの盗賊の仲間かと思ってー」
ずっとつけ狙われるのは面倒だからサッサと解決したかったのでアジトの場所を探ろうとした、と。
ただ、隷属の首輪を付けられたのは焦ったと頭を搔くラムネちゃん。
「隷属魔法とはけしからん。我が国でそのような物が使用されたとは真に遺憾である」
グレアムが憤っている。
そして言葉遣いが少年っぽくないんですけど…
この世界では奴隷にまつわる全てのモノは大罪らしい。
隷属魔法そのものはもちろん、隷属の魔道具を作るのも、所持するのも、使用するのも一切法律で禁止されている。
法律といっても、世界共通ではない。
最小の単位で言えば『都市法』だが、どれだけ数があろうとも、すべての都市で隷属魔法は禁止されている。
そもそも隷属魔法は古代魔法で現代ではほとんど誰も知らない筈で、これはバックに大きな組織があるようだと、随分おおごとになったっぽい。
「私の領内でふざけた事をっ」
あれれ?随分お怒りで。
「てゆうか、グレアムってもしかして領主様?」
「あっ、いえいえ、まさかそんな…」
あはははは、とワザとらしい笑いで誤魔化そうとしてるけど失敗しているよ。
貴族は感情を表に出すと足元をすくわれるみたいなお話を読んだことあるよ。
子供だからまだ出来ないのかな?
「で?さっきチビが持っていたのは何だ?」とアデル。
「これー?」
イチゴちゃんがトランシーバーを取り出すと、ラムネちゃんも真似した。
「これに向かってしゃべるとー」
「こっちから聞こえるー」
「通信機の類いか…迷宮遺物の中でも特級じゃないか」とサイラス。
「2階のボス部屋で出たよ」
「「「「はあ!?」」」」
アデル達は素っ頓狂な声を出した。
浅い階層では『異界品』の遺物は普通出ないからだ。
出るのはたいてい低級ポーションやどうでもいいアクセくらい。
例えば、力が0.1上がる指輪とか。
この世界にはステータス画面がないので自分の能力を数値で認知するのは不可能だ。
だから0.1上昇するとか言われると、10%か?と思うのだが、それほど上がった感じは全くしない。
でも、RPGのゲームなどを知っている私にはピンときた。
【STR(力)】が30の人がその指輪をつけると、数値は30.1になる。
正直いらない…
そんなワケで、ナナ達が持っているような見るからに『異界品』なんて、深層でも出現する可能性は1%以下の幻の逸品のハズである。
「そういえば、ボスは5のつく階層と10の倍数の階に出るんじゃなかったの?」
「いや、その他のボスなんて倒しても良いモンくれねぇし、何より弱ぇ。雑魚だ」
それこそ『異界品』は5や10の階層でしか出ないのだとか。
ボス扱いされないボス部屋の敵…
ちょっと同情するわぁ。
でも、せっかく訪れたのに、クリア報酬がないのも寂しいから雑魚でもボスがいてくれて嬉しいよ。
「あ、4階で『鍋セット』が出たの。皆で食べる?夕飯にはちょっと早いかな?」
「ちょっと待て。特級の次は『異界食品』かよ。激レアじゃねぇか!」
「そうそう、ちょうどボスがカニみたいだったでしょ?シロクマちゃん達が食べようとしてまいったよ」
「ああ、美味いらしいな」とアデル。
「え……」
「高級食材らしいぜ」とサイラス。
「うそん。私、1匹まるまる持ってるんだけど…」
「そりゃいい。『エピタフ』が高値で買い取ろう」
「いいよ、タダで。私達も食べられればね」
「よっしゃ。今日はカニ鍋だ!」
アデルの鶴の一声で、エピタフの今日の晩御飯が激決定した。
迷宮を去る時にグレアムが寂しそうにしていたけど、彼もカニ食べたかったのかな?
拠点の庭で巨大鍋で煮られるカニ風エイリアン。
味はまんまカニでたいへん美味である。
食べながら、暗黒団の事情聴取に同席していたレスターが教えてくれた。
暗黒団はこの迷宮都市を根城とし、時々とある闇組織に人や魔物を売っていたという。
今回はシロクマちゃん達が魔物避けに反応せず普通にしていたから魔物ではない珍しい生き物だと思い、高値で売れるとふんだらしい。
つまり、以前襲ってきた盗賊とは無関係だった。
「それとな、あいつ、グレアムはオーランド帝国の第4皇子でここの領主だ。気をつけろよ」
えー………皇子が迷宮で何やってんの?
「変わった奴でなぁ、温和なんだが何考えてるかわかんねぇし、気味悪いんだよ」
そんな感じはしなかったんだけどなぁ。
私が子供だから気を使ってくれたのかな?
でも、皇子がそんなことする?
ずいぶんフランクな皇子様だったけど。
「12歳くらい?領主だなんて、子供なのに働かないといけないんだね?」
「神童らしいぜ」
「誘拐犯の黒幕だったりして?」
「それな。オレもそう思ってたんだが、実際会ってみるとどうもな…」
ふむ、と顎に手を当てて考え込むアデル。
それをカニを頬張りながら木の上から見ていた『影』は後で部屋を訪れなきゃとタメ息をついた。
だって25階なんだよ。
姿を見せられない自分にはエレベーターは使えないんだよ。
この後、あの壁を登るのか…とカニをやけ食いした『影』だった。
さて、1日お休みして翌々日。
「今日はまだ埋めていない地図を完成させよう」
「特にー」
「隠し部屋をー」
「見つけないとねー」
自販機とコインが目下の目標だ。
ち――――――ん………
コインが1枚もない…
ボスを倒しても宝箱からも出ない…
トボトボと5階のボス部屋前の列に並ぶ。
「あら、あなた達、噂の『モフるんジャー』ね。かわいいわぁ」
あい、何故か今日は私も撫でられます…
1日経って幼女+3匹が悪をくじき冒険者を助けた、という噂が広まっていたらしい。
そして貢物をすると幸運が訪れるという謎の噂、いや、都市伝説がまことしやかに語られているという。
なので、撫でたら別れ際に必ずお菓子を渡される。
喜んで受け取るシロクマちゃん達。
いいのかなぁ……
まあ、事実無根だとわかったら噂も落ち着くだろう。
さて、やっとセーブクリスタルを貰えるボスさんとご対面です!
うん、ちょっと強そう?
人間要素が濃く出ているマッチョ型エイリアン。
はい、シロクマちゃん達が瞬殺しました!
バイオでゾンビなゲームでめっさ追っかけてくるマッチョに似ていたけど、さよならバイバイでした。
早速、宝箱を開ける。
ふむふむ、これがセーブクリスタル………
初めてじっくり見たけど、これって、スイッチのソフトみたい…
クリスタルだから透明だけど、基盤やチップが見えるわけじゃない。
けど、裏の凹みがそれっぽい。
何が言いたいかというと、これ、セーブとか出来るんじゃない?
そもそも、クリア階層を記録してるんだし、これ絶対記録メディアだよ。
ソフトがあるならどこかにハードがあるでしょ。
エレベーターだけじゃないでしょ。
「ナナー」
「どしたのー?」
「早く早くー」
「ごめーん。今行く」
手に入れたばかりのセーブクリスタルを転送陣のコンソールに差す。
これでセーブされたのよね?
ではでは、第6階層へGO!
6階はキレイなフロアだった。
先に行ってしまった10階と同じ雰囲気。
やっぱり、5フロア毎に雰囲気が変わるんだな。
さっきまでと違って廃墟じゃない。
つまりエネルギーが正常に通っていて、システムが全部生きているってコトだ。
手近かな部屋に入ると、実験室みたいだった。
異形の何かを培養している巨大なタンクが並んでいる。
やだなぁ、タンクの中の怪物って、近づいたら襲ってくるんじゃない?
ちょっとドキドキしながらゲームなどでは研究室に必ずあると思われるわけわかんないパソコンみたいなデカい操作盤の前に立つ。
あ、電源マーク見っけ。
ポチると操作盤のモニターが光った。
文字はもちろん日本語ではない。
でも、スキルのおかげで読める。
なになに~?
この施設の説明とか、実験記録とか、誰かの日記とか……
システムを呼び出して他のセクションのデータにアクセス。
ああ、やっぱりあるよね、フロアマップデータ。
第25階層までだけど、いただいておきましょう。
羊皮紙に自動マッピングするのもいいけど、羊皮紙を100枚買うのもどうかと思ってたのよね…
カードスロットもあるし、やっぱりこのクリスタル使える…
よし、ダウンロード完了っと。
まあ、歩きながら見られないし意味ないんだけどね。
とりあえず、第6階層のマップを大写しにする。
「あれー?」
「ここにー」
「ショップってあるよー?」
「売店かな?」
まあ、行くよね。
部屋を出ようとすると、タンクをぶち破って培養生物が襲ってきた。
お約束だけど、ドキッとした。
シロクマちゃん達もビックリしたらしく、八つ当たり気味に倒してた。
売店に到着すると、隠し部屋だった。
扉のロック解除のギミックは、またイラストのスライドパズルだった。
ちゃちゃっと解く。
「いらっしゃい。かわいらしい妖精さん達。ようこそ『幻想亭』へ」
「なんでやねん!」
なんでエルフさん、いやリンスがいるの!?
マップで表示されてたの、リンスの事だったの!?
まさかそんなワケはなく、色んな自動販売機がずらりと並んでいた。
「行商に来ました」
「やっぱり生活に困って…」
「違います」
「今日こそはちゃんと買うよ」
「いつもちゃんと買ってもらってますよ?」
早速シロクマちゃんをホールドするリンス。
本日はイチゴちゃんをご所望のようだ。
「んじゃ、ラインナップ見せてちょ」
ポーション類や武器・防具、水や携帯食はいらないかな。
「で、やっぱりあるのね迷宮遺物」
「はい。新作もありますよ」
リンスが見せてきた商品の中に目を引く物があった。
「これ、スイッチだよね…」
「そちらにしますか?」
電源を入れてみる。
これもバッテリーの代わりに魔石なのか?
魔力が吸われてる感覚がする。
「これ、使えると思うんだ」
セーブクリスタルをスロットに差し込む。
メニューに項目が増えた。
開いてみるとさっきダウンロードしたフロアマップだった。
「なるほど、この迷宮のマップですか」
「マップ自体は自分でダウンロードしないとダメだけどね」
「だうんろーど?」
あ、そういう言葉はわかんないのか。
「これ、本当に売るの?」
「もちろん」
「何かと便利だと思うよ?」
「私には必要ありませんねぇ」
にっこにこのリンス。
いつもこっちが欲しい物をタイミングよく用意しているのって偶然なの?
幸運先生がお仕事した様な気もするけど、リンスの怪しさも拭えないのよねぇ。
「………おいくら?」
「銀貨1枚です」
言うと思った!
「はい却下」
「え?お買い上げにならないのですか?」
「違う。金額が却下」
「えー、割引はしませんよ?」
「今までの流れでなんでそっち?安過ぎるって言ってんの!」
「趣味です」
金額が!?それとも揶揄うのが!?
「最低でも大銀貨5枚だと思うの」
「迷宮遺物に希望小売価格は存在しません」
安いんだし、いい買い物をした、と思えばいいのか?
買い物って、ストレス解消になるんじゃないの?
逆にストレスなんだけど!?
「仕方ないですねぇ。今日は特別に半額…」
「銀貨1枚ね!」
私は速攻で銀貨を1枚押し付けた。
んもうっ!考える暇を与えてくれないんだから!
ぷうっとほっぺが膨らんでしまう。
対して、満足顔のリンス。
やっぱ、私の反応を見て楽しんでるんじゃないの!?
「あ、そうだ。これあげる」
素直に両手を差し出したリンス。
ちょこんと乗せたのはハムスターのスクイーズ。
たぶんガチャガチャのやつ。
本日の宝箱に6コ入っていたので2つあげた。
かわいいし、ふわふわぷにぷにの触り心地が止められない至高の逸品だ。
モフらーのリンスはクワっと目を見開き、無心でぷにぷにし倒した。
リンスってば、ほんっといい反応するなぁ…




