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2日目、雨が降った。

バリアで保護しようとしたが、ワイパーがないので前が見えなかった……

試行錯誤してバリアの形をシェード型にしてみたら風に煽られて危なかったので断念……

素直に元々アデル達が用意していたレインコートを御者と馬に着せた。

今は12月、とても寒そうだったから、時々【ドライ(乾燥)】をかけてやり過ごした。



雨が上がった頃、最初の街に着いた。

城門でギルドカードを提示する。


「冒険者?」


じっとり見られてキモイ…

疑われてるのかな?

これはアレをやるしかないか?

シロクマちゃん達と頷き合った。


「ガーネット レッドー」

「ラピスラズリ ブルー」

「こはく イエロー」

「アメジスト パープルー」

「「「「シロクマ戦隊モフるんジャー!」」」」


し――――――――――――――――――――ん。


くそう、この人とは仲良くなれそうにないわ。


「テイマーか」


しゃがんでシロクマちゃんの頭をモフモフする門番。


「通って良し」


モフモフは正義だ。



しかし、そんなに大きな街ではないのに、城門ではしっかり検査されて腑に落ちなかった。


「まあ、兵士など純粋な帝国の人間にとってはノア王国の人間の入領は警戒するだろうさ」とアデル。


なんと既にオーランド帝国に入っていたという事実!

先程の山を越えた辺りが国境だったらしい。

そういえば、ワンダーウォールは辺境と呼ばれてたね。

視察って国内とは限らないよねぇ…


「え、関所通ったっけ?」


「ん?ああ、国境っつても明確に線が引いてあるワケでも壁があるワケでもねぇぞ?」


「関所があるのは道路や橋、城塞都市みたいに整備された場所で、徴収した税で補修をするって感じだな」とサイラス。


「それは納得。でも、国境付近で鉱山とか発見されたら?」


「地元の人間はどの辺までが自分とこの領地だってわかってるから問題無いぞ」


お、おぅ……ハッキリと県境が描き込まれた地図に慣れ親しんだ現代日本人だった私にはスッキリしないなぁ。



街ではただ通過するだけではなく、少し買い物をして様子を見る。

犯罪組織などが隠れ蓑にしていないか、など探りを入れつつ観光をする。

まあ、幼女+3匹は純粋に遊んでいたが。


「少し高くないか?」


サイラスがリンゴを手に取り、店のおばちゃんに問う。


「赤い月の日に生産地が少しやられたんだとよ」


「そうか…」


アンデッドは人間の食糧など眼中にない。

なのに、やられたのだとしたら人間がやったのだ。

戦闘で破壊したか、どさくさに紛れて盗んだか…

ここはもともとノア王国だった土地と民達だ。

ワンダーウォールの人々とは違い、随分荒んでいるな。

統治する者が変わるだけでこうも違いが出るのか…

ダンジョン・コアを取り返した場合、もっと荒れるだろう。

土地ごと取り戻したいが、そうなるとまた戦争になる。

それではもっと荒れてしまう…

宮廷の政治力に頼るしかないが、オーランド帝国が大国だということも知っている。

150年も動かなかった事柄を今更どう動かせってんだ……


サイラスの景気の悪い顔を眺めるおばちゃん。


「買わないのかい?」


「ああ、いや、7つ貰おうか」


「おや、まいど!」




そしていくつかの村や街を通過した。

アデル達が選んだルートは、以前護衛依頼で通った村などとは雰囲気が違った。

あちらは行商が来ないとやっていけない程寂れていた。

こちらはすれ違う馬車も多く幹線道路であり、宿場町といった感じだ。

馬車を止めるスペースがしっかり確保されており、道も広い。

宿屋だけでなく倉庫も多い。

人と物流と情報が行き交っている。

冒険者達にはここがメインルートなのだろう。



順調に旅は進み5日目、大きな城塞都市の宿に宿泊する。

この世界にも、なんと高級ホテルが存在する。

大都市にのみ、だが。


地球で言えば、中世ヨーロッパにはホテルは存在しなかった。

もともと個人で旅ができる世の中ではない。

貴族は通常長距離移動する時は親戚や知人の屋敷で持て成される。

徴税人も様々な街や村を回るが、彼らも街の有力者が用意した家に滞在する。

巡回騎士は専用の宿泊施設を持っている。

巡礼者は教会や修道院に泊まる。

あとは商人くらいだが、彼らは『INN』と呼ばれる居酒屋の2階にベッドがあるだけの部屋を借りる程度だった。


この世界でも似たような感じだが、冒険者や探索者が世界中を旅するので宿はもっと需要がある。

普通の冒険者や商人は宿泊は『INN』を利用するが、金銭的に余裕のある上級冒険者、探索者向けにホテルが出来上がった。

グレードはほぼ高級のみで、大商人や貴族まで利用している。

ちなみにエレベーターがないので上層階ほど人気がなく安い。


『INN』もグレードはピンキリである。

私達が泊まるのは中でも最高級だった。

アデルが貴族だからなのだが、それは防犯を第一に考えたからだ。

いくらB級冒険者といえど、そこは貴族なので譲れない。


ツインを2部屋とった。

グーとパーで分かれたら、アデル・サイラスと、レスター・幼女+3匹になった。


「くっ…『影』、チビ達もちゃんと護衛しろよ」


悔しそうに呟くアデル。

ここまで1度もナナと同室になれなかったのだ。

ちなみにサイラスとレスターは同室になった時はシロクマちゃんを1匹抱っこして眠った。


「ええ、もちろんですとも」


『影』はスラム育ちが多い。

暗部隊に拾われて感謝しているので忠誠心は厚い。

まあ、上司のいない時の口癖が『こんなブラックな職場辞めてやる!』だが。

仲間も本気じゃない事は知っているけど。

それにナナの育ちにも同情と親近感を抱いているので、最初と比べてかなり過保護になっている。




6日目、快晴。


「山を越えたらとうとう迷宮都市だ。明日の午前中には着きそうだな」


直線で山を登れたら早いだろうと思うが、急勾配を上るのは大変だし、雨水が流れる箇所を限定すると地面が削れてしまったり、流水に弱い地層というのもがあるらしく、そういう個所は避けて道が作られているという。

先人の知恵、素晴らしい。



山頂を越えた辺りでシロクマちゃん達が騒ぎ出した。

バルコニーに上って来いと言うのだ。


「なあに?」


「あれー」

「見てー」

「すごいー」


気になったアデルも上って来た。


「ねえ、なんか凄い巨大な何かが見えるんだけど?」


「あれが『巨大迷宮』だ」


アデルがなんでもないように言うけど、いや、ビビるよ!?

盆地に金属で出来たピラミッド2個くっ付けた形の双角錐のバカでかい物が見えるもん!

急にSFだよ!?

剣と魔法と魔物の中世ファンタジー世界だと思ってたらSFだよ!?

スカイツリーとどっちが高い?ってくらいデカいよ!

北側は常に日陰だよ!


「何で倒れないんだろう?」


「浮いてるからじゃね?」


浮いてるのか……そっちの方が信じられないんだけど…


「あれを登っていくの?」


「そういうコトだ」


「壁や天井を壊して進んだり………」


「多少歪むが壊れねぇぞ」


「ああ、そうゆうタイプ」


「外側を登って天辺に行こうとするなよ」


「壊れないんなら中に入れないもんね」


「それもあるが、壁に張り付いて一定時間経つと迎撃される」


わぁお。ますますSFじみてる。

『迷宮は悪魔のお城説』を聞いていなかったら、宇宙コロニーが不時着したって思うよ。

SF好きの悪魔か…

意外とおしゃべりが弾みそう。



山を下りたが、デカ過ぎて近づいているのか曖昧になる。


「走り続けても到着した頃は城門が閉まっている時間だし、その辺で野営すっか」


アデルの決断に従う。

野営地に行ってみると、さすがに大都市の傍だけあって通行量は多い所為か人が沢山いた。

家馬車も結構いる。


「ログハウスどころか、お風呂も出せない感じ…」


「風呂は諦めて、馬車で寝るか」とアデル。


がーん!


「お風呂、諦めるの…?」


「そんな絶望する程か?」


「出しただけで人が群がってくるぞ?」とサイラス。


「えうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」


「泣くな泣くな」


「ナナ、【クリーン(清掃)】はー」

「人間にもー」

「使えるんだよー」


ほう………

すちゃっとステッキを掲げる。


「【クリーン(清掃)】」


人も馬も部屋もまとめてキレイキレイしようとしたら、広場全域がカッと光った。

ヤバい、威力ミスった…

あちこちで、なんかキレイになった!と声が聞こえるが、気づかないフリをしてご飯の用意をする。

すまぬ…


シロクマちゃん達にはウケたみたいでキャッキャと騒いでいる。


キレイになった『影』も、木の上で笑いを堪えていた。

面白い生き物だなー、と好感度パラメータがまた上がった。


晴れているので、見張りはまたバルコニーでやるという。

なので馬車の中にある3つのソファベッドでそれぞれ眠れる。

シロクマちゃん達を1匹ずつ抱っこしてお休みなさい。




朝、皆なんとなくぞろぞろと出立する。

大勢だと盗賊や魔物に襲われにくいからだ。


「あのね、街中に100人もいきなり人が増えるのは怪しまれるでしょ?近くの森の中に一旦立ち寄って、転送スペースを確保しておきたいのだけど?」


「ああ、そうだな。最後に出ていくか」


というワケで、のんびりと朝食をとる。


「転移用のマーキングはこの辺にするか」


サイラスが地図を広げて指をさす。

実際に行って、迷宮都市の1km手前の森にウェイポイントを付ける事が出来た。




さあ、とうとうやって来ました迷宮都市『デルタ8』。

迷宮だけでなく、なんと街も未来っぽい。

盆地だから、クレーターの中にある月面都市って感じ!

おそらくこの街も迷宮遺物によって作り出されたのだろう。

王都『ヴィリロス』がそうだったように。

だって、城壁が金属っぽい。

扉も宇宙船にありそうな両開きのヤツだし、建物は高層ビルもある。

街の人達のファッションもこころなしかサイバーパンク寄り。

なのに、馬車!

脳がバグる……



「あれが第8支部の拠点だ」


レスターが指さす先は迷宮にほど近い場所にある高層ビル。


「立地も建物も本部より良くない?」


「そりゃ、元々はここが本部だったからなぁ」とアデル。


そっか、戦争で土地ごと奪われたんだったね。

多少の流入はあっただろうが、住んでいた人々は追い出されずにそのまんま帝国民にされたから、建物を失わずに済んだのか。


玄関は自動ドア、ロビーの奥にはエレベーター。

懐かしい。

慣れ親しんだ空気間に肌が粟立つ。

前世を思い出して泣きそうになった。


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