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「で、夜になったら拠点に帰ってくるコースと、普通に野営するコースのどっちにする?」


と聞いたら、アデル達がフリーズした。


「そうか、毎日帰って来られるのか…」


「黙って国境越え放題だな」


あ、一回仕様を合点したら次々と悪用を思いつくタイプだな、サイラスは。


「1日に何回使えるか、1度に何人転送できるのか教えてくれるか?」


「んーとねー、たぶん1日10回、1度に16人までかなー?」


「100人の移動が2日で終わっちまうな」


「距離は大丈夫なのか?」とレスター。


「距離に意味はないよー」


「最早チートだな。うちの奴らにも口止めしておくが、お前らも人に見られないように能力使えよ」


「「「らじゃー」」」


「そういや、クランメンバーにはならないのか?」とアデル。


「ごめんね?でも、アデル達ならいつでも配達してあげるよ」


ね?とイチゴちゃんを見ると、もぐもぐしながら両腕で丸を作った。


「料金は?」


「どうする?イチゴちゃん」


「あむあむ、ごくん。銀貨1枚でいいよー」


「相変わらず破格だな」


【リペア(修復)】も同じ値段だもんね。

あれ?リンスのこと商売下手だって罵ったけど、私達も大概じゃない?

あはは……今度から少し優しくしよう…………



「俺等の旅は野営しながら行くぞ。領内の視察も兼ねてるからな」


ああ、ラノベでよくある領主のお仕事の1つだね。


「アデルって領主だったの?」


「いや、領主は父だ。オレは三男で仕事を手伝ってるだけだ」


「お手伝いだけであんなに忙しそうなの?」


「今は特別だ。ゴースト・ナイトパレードの被害が大きくてな……」


ああ、被害を被った街を見たから少しだけ想像できる。

インフラ整備や家屋の修復などの災害復興支援は時間がかかるよね。


「今回の遠征は前から決まっていた事だからな。復興支援は兄貴が引き継いでくれる事になっている」


「早く終わらせないと留守番だ、と思っていたがいざとなったら夜に戻ってきて仕事できるな」


サイラスって、ブラック企業の上司みたいだな。


「そうだ、お前、迷宮都市での滞在先はどうするんだ?」とアデル。


「最初は宿で、お金が溜まったら一軒家かなぁ?」


「なんだ、別に出ていかなくていいぞ?お試し期間はまだ1ヶ月も残ってるんだ」


「え?いいの?流石に甘えるのは向こうに着くまでかと思ってたんだけど」


「近くにいてくれた方が頼み事しやすいし……あとお前、狙われてんだろ?」


「あー、なんかそうみたい」


「えらく軽いな」


「だって、1度だけだったしね」


「クロフォード男爵家が後ろ盾になってやろう」


「え………そこまでしてくれる理由がわからないんだけど?」


と首をかしげる私。

シロクマちゃん達もつられて同じ方向に首を傾けた。


「迷宮攻略できそうな奴を支援するのはよくある話なんだが?」


アデルも鏡みたいに首をかしげる。


「私達が踏破できるワケないじゃん」


「今すぐは無理だろうが、素質は充分だぞ」


「アデル達が自分で踏破するんだと思ってた」


「巨大迷宮に関しては、他の奴に奪われる前にダンジョン・コアを手に入れたいからな」


ただ、アデル達の冒険者ランクはB。

クランメンバーにA級がいるとはいえ、S級でなければラスボスを倒すのは無理ではなかろうか?

世界中の人間が数百年間も挑戦し続けているんだもんねぇ。



「おっ、噂のシロクマ達。やっと会えたな」


背後から抱え上げられ抱きつかれるシロクマちゃん達、と私………

ほっぺでほっぺをスリスリされる。

ナニコレ……


「迷宮攻略の為に呼び戻されたのに、お前等とはずっとすれ違いだったんだよ」


「どちら様?そろそろ降ろしてちょ」


そう言ったら、後ろの席の長椅子に4人は座った。

で、私達は彼らの膝の上……


「俺等は『エピタフ』所属、A級パーティー『アルゴス』だ」


ヒューバートがリーダーで魔法剣士。

ロイドも魔法剣士。

メイソンが魔術師で。

ノエルがハンマー使いだ。


「魔術師?って、魔法使いとどう違うの?」


ランチの途中だったので、食べたいと言ったら、膝の上に乗せられ『あーん』される幼女+3匹。

椅子がちびっこ用だったので、後ろの席の長椅子と入れ替えてまで。

なんか抵抗するのもめんどいわ、むぐむぐ。


「魔法は詠唱で行使するだろう?魔術は魔法陣や魔石を媒介としてるんだ」


イチゴちゃんに『あーん』しながら魔術師のメイソンが説明してくれた。


「あれ?魔法でも魔法陣が現れるような…」


「確かにね。同じ魔法陣を使ったりもするよ?その場合は詠唱という言霊をもって陣を描くか、手描きした陣を発動させるかの違いしかないけど。でも、魔術師が作ったスクロールは魔力を流せば、習得していない魔法であっても誰でも発動できるんだ」


ほうほう……発動方法が違うってコト?

魔法はイメージで何とでもなるけど、魔術は道具を用意しておかないといけないから自由度は低そうだな。

その代わり、誰にでも使える、と。


「もしかして、魔術の方が魔力のコストが低い?」


「お、目の付け所がいいね。その通り。大魔法でも魔導書に記しておけば、低コストで撃ち放題だ」


「ほえぇぇ。冒険者向きだね」


「違い、分かった?」


「えっと、魔術は魔法と錬金術を足して2で割った感じ?」


「あはは、いい表現だね。たいていは魔法の劣化版って言われるんだ」


「そう言われると、なんか凄いのぶちかましたくなるよね」


「うん!気が合うね、僕ら」


手を伸ばしてきたのでハイタッチする。

途端に不機嫌になるアデル。

サイラスとレスターだけでなく、ヒューバート達もピンときていた。

が、揶揄うのが趣味みたいな年長者達はナナを構う手を緩めない。


「俺がいるのに隣の男とばかりしゃべってて寂しいなぁ」


わはは、何このノリ。

昔のホストみたい?


「はいはい。ヒューバートは…剣士?」


「魔法剣士、だな」


「そういえば、アデル達も剣士なのに魔法が使えるって言ってたね?」


「お、おう。護身の為に剣術を習ってはいたが、魔法の方が好きなんだ。で、組み合わせた。ちなみに、こいつらは騎士でもある」


「元、騎士だ。アデル坊ちゃんがクランマスターになる際に、俺等も冒険者になったんだ」とレスター。


レスター達は騎士の地位を捨ててまでついてきたのか。

砕けた感じが騎士っぽくないし、気質的に冒険者みたいな自由な職業があっているのかもね。


「坊ちゃん言うな」


恥ずかしそうに頬を膨らませるアデル。

こっちの世界でも成人は18歳。

となると、15はまだまだ子供だよねぇ。


「あむあむ。ごちそうさまでした。んじゃ、旅の準備しないとね。ログハウス、デカくしたら見張りもいらないよね?」


普通の一軒家なら、魔物が襲ってきても盗賊が襲ってきてもすぐに室内に侵入される事もないだろう。


「設置できる場所が必ずあるとは言えないぞ」とサイラス。


「そっか……片道1週間ってそうとう遠いよね?少人数で行くのに、日中は御者、夜は不寝番ってキツいんじゃない?」


「何度か宿に泊まるぞ?旅人目線で領内を見るのが今回の視察だからな」


ああ、覆面調査ってやつね。

子連れだし、カモフラージュに打って付けじゃん。





そして出発の日。

拠点の門の前に横付けされた馬車にアデル達は絶句した。


「用意してもらったお馬さん、すっごくいいコだよ」


「そうじゃねぇ。なんだこの馬車は!?」


「家馬車って種類らしいよ?ピークス商会の馬車を参考に作ってみました。長旅にピッタリ!」


カリンちゃんのスキル【創造】で作ってもらったのだ。

ふっふっふ、前世でラノベ読んで中世もどきに詳しくなったのよねぇ。

快適な馬車はサスペンションが『板ばね』らしい(結局よくわかってない)。

シロクマちゃん達は、私の頭の中を覗いた時に見たこの中途半端な知識を中世だと思っているのかもしれない……


中はキャンピングカーをお手本にしたから水回りは充実している。

車中泊はしないから、お風呂はいらないがトイレはある。

一旦外に出て、連結した後ろの車体にあるから臭いは気にしないでいい。

キッチンはもちろんリンスから買った『おままごとキッチン』だ。

IHコンロとオーブンの動力源は魔石になっていたので魔力で動く。

冷蔵庫は魔道具だった。

たまに魔力を補充するだけでずっと冷えている。

そして不思議な事に、どこにも繋がってないのに水道も出る。

蛇口をひねると水の魔石が反応しているらしいけど、異世界不思議&便利すぎ。

排水は垂れ流すワケにはいかないから、時々タンクの中身を捨てないといけない。

休憩の時にやれば問題ない。

通路とキッチンを確保したら、残りは全部くつろぎスペースだ。

ゴロゴロできるソファベッドにした。

こうなると御者が可哀想なので、座席は座り心地を追求して『人をダメにするソファ』にしたよ。

素材とか色々突っ込まれたけど、迷宮遺物という事にしといた。

便利な言葉だな、『迷宮遺物』。


護衛依頼の時みたいに、屋根上はバルコニーになっている。

早速上ったシロクマちゃん達。


「「「出発進行ーっ!」」」


ワクワクが止まらないね!




めっさ目立つ馬車は街中を走り、市門を通過して隣国を目指した。


「快適すぎんだろ」


呆れ顔のアデル。

サイラスはすでに順応してリラックスしている。

あ、最初に御者をやっているのはレスターだ。


舗装されていない街道でも、車輪はタイヤを履かせたから小石に乗り上げても鋭い衝撃は体に伝わらない。

いつでも熱いお茶が飲めるし言うことなし。

日頃の疲れが出たのか、男性陣は眠ってしまった。




「お茶どうぞ」


御者台とはすぐに行き来できるドアを付けてある。

上半分は窓になっているのでいつでも意思の疎通が図れる仕組みだ。


「そこのホルダーに置けるようになってるからね」


スタバみたいなタンブラーにしたから零れにくい。


「至れり尽くせりだな。こんな旅はしたことねぇよ」


「私としては、快適さを追求しない方が不思議なんだけど?」


「この椅子はいいな。もう離れたくねぇ」


わはは、別名『人をダメにするソファ』だもんね。


「窓開けっぱなしにしとくから、何かあったらいつでも呼んでね?」


「おう、さんきゅな」




馬車は順調に進んでゆく。

2時間おきに休憩をはさみ、ランチはキッチンで作ってもいいけど、アイテムボックスに保存しておいたお弁当を食べる。

屋根上のバルコニーでピクニック気分だ。


途中、村を通り過ぎ、山に差し掛かった。

街道から少し逸れた場所に旅人が使っていると思われる広場があり、今夜はそこで野営をする。


ログハウスはちょっとだけ大きくした。

1階は男性陣が寝る場所で、屋根裏部屋は幼女+3匹の部屋だ。

トイレとお風呂は別棟だが男女共用にした。

そして今回の新アイテムは『馬房』だ。

お馬さんだけその辺に繋ぐのは可哀想すぎるよ。


「マジで、お前等無しの旅が出来なくなりそう」


サイラスとレスターも頷く。


ご飯は馬車で食べた。

お風呂にも交代で入り、寝る時間までは皆でゆったりとお茶タイム。


焚火は起こしてないし、見張りは馬車のバルコニーでやるそうだ。

バルコニーのベンチは雨にぬれてもいいように木製なのでクッションをいっぱい出した。

寒いだろうから毛布も用意して、石油ストーブも付けておいた。


サイラスがレスターと見張りを交代してしばらくして朝日が昇る。

幼女+3匹にしては珍しく、穏やかな旅の始まりだった。


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