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『幸運先生』がお仕事をした結果、またしても棚ぼた的に迷宮遺物をゲットしてしまった。

写真を見て驚いたエルフさんを一通りいじってバイバイしようとして思い出した。


「あのね、ハイエルフとエルフってどう違うの?」


「……………私の変な顔の『しゃしん』をくれたら答えてあげます」


いじけエルフ。

揶揄い過ぎたか……


「お納めください」


写真を裏返してテーブルに乗せた。

瞬間、シュバッと引っ手繰るように写真を懐に隠したエルフさん。


「なんかゴメン…」


「いいですよ」


ケロっとエルフ。

やり返されてしまったな。


「約束通り質問にお答えしましょう。それは『種族が違う』です。ハイエルフの方が先に生まれ、神と共にありました」


え、それってシロクマちゃんの正体知ってるってコト!?

異世界転生クジやってるのも知ってるってコト!?

違った場合、藪蛇になるから聞けないよーっ!

そして、もう1つ…


「人間がサルだった頃から見てきたってコト……?」


だったら、色んな物語でハイエルフが気位が高くて人間を見下すって言われてたのも納得できる。

ハイエルフの時間感覚なら人間はついこないだ迄サルだったワケだし。

……ここって物語の世界なのかな?

いや、最初にシロクマちゃんに『シナリオ改変など気にしなくていい』と言われていたから違うんだった。

なら、なぜ物語でよく見た設定がこの世界でも見られるのだろう?

ファンタジー小説を最初に書いた人達って、色んな異世界から来た人達だったのかな?

もしくは私がいた世界にも大昔は本当に色んな種族がいたとか?


「あはは、そこまで卑下しなくても」


ん?この世界の人間は、サルから進化したワケじゃない?


「人類の誕生も知ってるの?」


「さすがにそれは知りませんねぇ。初めて人間と出会ったのは1万2000年くらい前でしょうか。あの頃の人間も姿は今と変わらず……とても純粋でした。あ、服装はだいぶ変わりましたけどね」


サラっと途方もない年数が出てきたな。


「言葉選んでくれたみたいだけど、知能も文明も科学技術もお粗末だったのね」


「あなたは……本当に人間の子供なのでしょうか?」


心底不思議そうに小首をかしげるエルフさん。


「見ての通り、割と生まれたばかりだよ?」


この世界に転生して約3週間の生まれたてです。

ぴっちぴちです。


これ以上いると、何かボロが出かねないので早々に立ち去った。




「明日は朝早いし、そろそろ夕飯食べて帰ろっか。最後に何に乗る?」


「バイキングー!」

「迷路ー!」

「コーヒーカップー!」


「見事にバラバラだね。じゃぁ、順番に行こうか」


「ナナはー?」

「行きたいトコー」

「ないのー?」


「えっと、じゃあ……ふれあいコーナー」


「モフモフならー」

「わたしたちがいるのにー」

「浮気者ー」


言われると思った!

でも、シロクマちゃん達のリクエストを遂行し、やってきましたよ『ふれあいコーナー』。

日本だとウサギやモルモットだけど、ここは異世界。

いるのは予想通り魔獣の親子だった。

おそらく誰かの従魔だろう。

ここはフリーパスで入れる。

いざ、突撃!


フェンリル、もふもふ~。

カーバンクル、ふわふわ~。

ドラゴンもどきの赤ちゃん、なでなで~。

ケットシー、ぎゅ~。

そしてスライム!

もちもちしてて手放せない~。


そして!……いや、予想しなかったワケじゃないけどね、シロクマちゃん達が一番人気になってる……

人懐っこいし愛嬌あるもんね。

わかるけど、3匹にも遊ばせてあげて。

人垣からシロクマちゃん達を救い出そうと近づいたが、杞憂だった。

しっかり楽しんでた3匹は、変身してヒーローショーを演じていた。

そういえば、最近変身を抑制してたからなぁ。


色んな意味で思いっきり堪能した幼女+3匹は帰路に着いた。





翌早朝、遅刻せずに集合場所に行くと、大人達は見るからに二日酔いだった。

馬車に乗ったら、『おろろ』しちゃうんでは……

まあ、そういうコトもありつつ、途中、魔狼やワスプに襲われたが、難なく撃退して城塞都市に帰ってきた。


ピークス商会の代表者と一緒にギルドに向かい、報告して報酬を貰った。

受付嬢には危険な依頼を斡旋したと謝罪されたけど、ゴースト・ナイトパレードはおねぇさんのミスではない。

大丈夫だと言ったのに、幼女+3匹は応接室に案内されてしまった。

お茶とお菓子とギルマス付きで。


「無事だったし、お祭り楽しかったし、別にいいのに」


「あれくらいー」

「わたし達にはー」

「ちょろいのだー」


「そっちもだが、誘拐未遂の方もだ。お前等を壁の外に出すのが躊躇われる」


「それこそギルドの管轄外でしょ」


「ギルドメンバーの身の安全を守るのは義務だ」


それもそうか。

でも、それは依頼に関する事だけなのでは?


「とある情報筋によると、お前等を拉致ろうとしているのは隣国『オーランド帝国』の間者だ」


途中の街で盗賊の事を報告した時にこっちの支部とも情報を共有したのか。

そして、あの時はすぐにはわからなかったが、5日経った今、背後が判明したのだろう。


「お隣さん?何の為に?何で駆け出しの冒険者が目付けられるの?」


「自覚なしか!?お前等そうとう目立ってんぞ!それと、オーランド帝国は常に我が国を警戒している」


ギルマスの話によると、150年前、二国は戦争し勝利したのはオーランド帝国。

戦争賠償として、我がノア王国はクロフォード辺境伯の領地ごと、『巨大迷宮』を譲渡した。

戦争を仕掛けてきたのはオーランド帝国の方だったが、クロフォード辺境伯は強かった。

そのまま武力で押し切れると思ったが、オーランド帝国は隣国を巻き込んだ。

オーランド帝国の周辺には小国しかなく、攻め入られたら一溜まりもない。

各国は言われるままノア王国に対する経済制裁を行った。

周辺の国から貿易を止められ、ノア王国は白旗を上げた。

経済制裁を解いてもらうには戦勝国の要求を飲み、迷宮を手放すしかなかった。


その上、仕返しが怖いオーランド帝国はクロフォード辺境伯家を処刑。

しかし自身の城に迷宮から持ち帰った遺物『防犯のオーブ』を発動させ、城をカラクリ屋敷に変えた。

その事に気づいたのは処刑後。

解き方は誰も知らない。

が、戦争が始まると同時にまだ3歳だったクロフォード家の末っ子は公爵家に養子に出されていた。

彼が迷宮遺物を持っていた事は秘匿されていた。

彼は成人すると公爵家の分家として男爵の爵位を賜り領地を得て新しく街を作った。

それがこの城塞都市『ワンダーウォール』なのは、もはや公然の秘密である。


今更だけど、この街の名前は『ワンダーウォール』なのか。

響きが良くて気に入った。


「つまり、仕返しされるのが怖ぇし、旧クロフォード城の無力化を図りたくてスパイを送り続けてんのさ」


「歴史はわかったけど、それと私達が狙われるのは意味が分かんない」


ギルマスが1つ2つと指を立てながら理由を示してきた。


「…………テイマーは珍しい。シロクマの魔獣も珍しい。しかも城塞都市全域の下水道をたった数日間で浄化し終える程の魔力量を持っている。ゴースト・ナイトパレードの渦中で生き残り、アンデッドの肉体までも塵となる【エリアヒール(範囲回復)】【ピュリフ(浄化・聖)】が使える。広範囲の【バリア(障壁)】が張れる。ログハウスがポンと収容できる程の容量無限のアイテムボックス持ち。そして何より子供だから調教しやすい」


「調教?ぶっとばすわよ、シロクマちゃん達が」


3匹はソファに立ち上がって戦闘態勢をとった。

ギルマスが慌てて手の平をこちらに向け、もう一方の手で頭を抱える。


「俺じゃねぇよ。馬鹿はそう考えるっつー話だ」


タメ息が出る。

ラムネちゃんを膝に乗せ、抱きしめた。


「うちのコ達が魅力的すぎるばっかりに……」


「さっきの俺の説明聞いてたか?」


「…………馬鹿に考えを合わせるのめんどい」


「そう言うな。目立てばどうしてもそういう輩が湧く」


「どうすればいい?」


「簡単だよー」

「わたし達がー」

「駆逐するー」


「バイオレンス前提……でも、それだともう護衛依頼や合同依頼は受けられないよ?」


「なんでー?」

「どしてー?」

「どゆことー?」


「また護衛中に襲われて依頼人や仲間を危険に晒すの?」


「あぅぅ…」

「えぅぅ…」

「おぅぅ…」


解決策は思い浮かばず、しばらくは自重することにした。




『エピタフ』の拠点に帰ると、ロビーにアデルが居た。

ウロウロしてるけど、忙しいのかな?


「アデルー、ただいま」


「たー」

「だいー」

「まー」


こっちに気づいたアデルはつかつかつかっと走り寄ってきて、私を抱っこした。


「無事かっ!?怪我してないかっ!?」


「無傷だよ?」


「わたし達がいてー」

「ナナに怪我なんてー」

「させるワケないでしょー」


シロクマちゃん達がアデルによじ登る。


「おかえり」


「無事で何より」


サイラスとレスターもやって来て、アデルからシロクマちゃんをもぎ取って1匹ずつ抱っこする。

モフモフが恋しかったらしい。


「事情は聴いているよ。とりあえず、食堂?それとも部屋に戻るかい?」とサイラス。


「んー、部屋に戻ると眠っちゃいそうだから、先にご飯食べようか?」


「「「さんせー」」」




今日のメニューはピラフとポトフとマカロニサラダ。

サラダには茹で卵入り。

すき。


そういえば、みんなにお土産買ってない。

うっかりしてた…

まあ、お菓子はいっぱい買ったし、その中から……

アイテムボックスを探っていてピンときた。

野営の時にやった唐揚げパーティー。

さすがに全部は食べきることは出来なかったので、残りはみんなで山分けした。


カウンターに行ってお皿を貰ってくるとテーブルの真ん中に置いた。


「お土産代わりにこれあげる」


アイテムボックスからコロコロとお皿に振ってくるホカホカ唐揚げ。

山盛りになった。


「うめぇ!」


一番に食べたアデル。

お気に召したようだ。

サイラスとレスターもがっつくように食べる。

シロクマちゃん達のお皿にも2コずつ配った。


「そういえば、王都の移動遊園地でセディって名乗る男の人に声かけられたよ。アデル、その人と文通してるんだってね?」


アデルが吹いた。

きちゃない。


「文通って!」


サイラスとレスターが笑いを堪えている。


「お貴族様と文通なんて、アデルもお貴族様だったんだね?」


「あいつ、身分を明かしたのか?」


「なんかね、変身を見抜いちゃったんだよね」


今思えば、私のステッキに【魔法少女】というエンチャントがかかっているけど、それが影響したのかもしれない。


「あいつは上司なんだよ。文通じゃなく報告書だ!…ったく」


気安さは見て取れるので、お友達なのは間違いないな。

それにしても、アデルが15歳なのにクランマスターなのは貴族としてのお仕事だったのか。

役職持ちということは、アデルはこの街の領主である男爵の令息ってこと?

そしてサイラスとレスターは護衛か。

わかったところで態度変えないけどね。


「何か、言われなかったか?」とレスター。


「ボートデートに誘われて、迷宮調査団に勧誘されて、シロクマちゃんを欲しがって、シロクマのぬいぐるみ抱えて帰って行った」


「言葉だけ聞くとヤベー奴だな」とアデル。


「帰ってきたということは、断ったのか?」とサイラス。


「まあね。権力に命令されるのヤなの」


スローライフを目指すんだもんね。


「オレ達は命令なんかしねぇぞ」


「そだね。身分を知ったのに、タメ口のままの私に何も言わないもんね」


「お前等はそのままでいいんだよ」


セディもタメ口のこと何にも言わなかったな。

お貴族様らしくない貴族。

2人とも、気が合いそうだ。


そして、食事に夢中になっていたアデルがソワソワしだした。


「唐揚げ、もっと食べたいの?」


「い、いや、違う……」


何だろう?

サイラスとレスターを見ると、しょうがないなぁって顔をしてた。


「この前のブラッドムーンの夜、街の防衛での貢献度が認められてアデルがB級に昇格したんだ」


「わぉ、それはおめでとう!」


「おめでとー」

「やったじゃんー」

「ひゅーひゅー」


照れるアデル。

かわいいとこあるじゃん。


「昇級したのはアデルだけ?2人は?」


「俺等はもともとB級だったからな、A級は特別だからそう簡単にはなれねぇ」とサイラス。


「『エピタフ』にもA級は数人しかいないな」とレスター。


そうなんだぁ。

貴族が集めたメンバーでもA級は特別なのか。

そういえば、この世界の人や魔物の強さはよくわかってないな。

シロクマちゃん達が強そうとは思っていたけど、ゴースト・ナイトパレードでは怪我してたしなぁ。

私は呑気に構え過ぎていたのかもしれない。

異世界チートだと浮かれちゃダメだって分かっていたハズなのに……




その後、外出を控え魔法の勉強の為に拠点にある図書室に籠っていたら、3日目にとうとうシロクマちゃん達が暇だと騒ぎだした。

そうだよねぇ、この世界、暮らしにくいワケじゃないけど娯楽は少ないよねぇ。

今までは生活基盤を整える為にやる事多かったから、長時間手が空くことはなかった。


「仕方ない。街中で出来る依頼を受けに行こうか?」


「「「うえーい!」」」


というワケで冒険者ギルドにやって来ました。


「こんにちは。街中で完結する雑用系の依頼をいくつかくださいな」


「こんにちは。最近顔を見なかったから寂しかったわ」


いつもの受付嬢の列に並んだ。

シロクマちゃん達は慣れたようにカウンターに上る。


「いっぱいー」

「お仕事ー」

「ちょーだいー」


「まあまあまあ、助かるわぁ」


そして受付嬢がくれたのは。


・引越しの手伝い

・買い出し

・猫探し


「上から順に行ってくれる?」


「らじゃー」

「おけー」

「わかたー」



この世界では、便利屋とか探偵とか全部ひっくるめて冒険者の仕事だった。

他に修理の仕事もある。

職人がやればいいじゃないかと思うかもしれないが、一軒一軒回って修理していると職人の数が少ないので生産する暇がなくなるのだ。

なので、雨漏りや建て付けの調整などは低ランク冒険者の仕事になる。


まあ、依頼の方は簡単に終わったよね。

引越しの手伝いはシロクマちゃん達は力持ちだから問題ないし、買い出しもアイテムボックスがあるから多かろうが重かろうが関係ないし、猫探しはラムネちゃんのスキル【千里眼】でアッサリ見つけた。


ギルドに報告に行くと、早いとビックリされた。

また来てね、とご機嫌な受付嬢。

どうやら彼女達にはノルマがあるらしい。

冒険者の依頼達成率と件数はギルドの信用に関わるからけっこう厳しいんだとか。

世界が違っても、会社は変わらないねぇ。




拠点の自室に戻った。


「皆にお話があります」


ベッドの上に正座すると、シロクマちゃん達も並んで正座した。


「このままではダメだと思うんです」


「なにがー?」

「どれがー?」

「だれがー?」


「私、強くならないとダメだと思うのよ。今のままじゃ、迷宮にチャレンジできないんじゃないかな」


「わたし達が守るけどー」

「ナナが強くなるのはー」

「賛成だよねー」


私は冒険者になりたてだし子供だしで、いくらシロクマちゃん達が強かろうと実績を積まなければ昇給できないらしい。

というワケで、まずは冒険者ランクを上げて討伐クエを受けられるようにする事を目標にじゃんじゃん依頼を受けることにした。


受付嬢に相談したら、ノリノリで依頼を選んでくれた。

そうして約1ヶ月後、100の依頼を達成し冒険者ランクがE級になった。


誘拐に関しては音沙汰なしなので、諦めてくれたのだろう。

そうだと思いたい。

そうであってくれ。


「じゃあ、初めての盗伐クエに行こうか」


「よっしゃー」

「がってんー」

「やったるでー」


目指すは西の樹海。

オーランド帝国との国境沿い。

討伐対象は『スライム』だ!


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