01
目が覚めた。
森だった。
ふむ。異世界転生ね、把握。
…って、マジかぁ。
いや、でもそう考えないと、現実世界で誰かに誘拐されて森に置き去りにされたって方が怖いわぁ。
………ホントに異世界よね?
見渡してみると、すぐ隣で子供のシロクマが3匹丸まって寝ていた。
ん?シロクマって森の中にいるものだっけ?
でも、かぁいぃ。
ついついモフろうと手を伸ばしてしまった。
「わっ!?私の手ちっちゃ!」
そっか、異世界転生のお約束で若返ったのか。
前世20うん歳だった私。
今は幼女…
動いたことで視界に落ちてきた髪の毛はツヤッツヤのミルクティー色だった。
これは期待できるのでは?
顔を確認してみたいけど、鏡なんてないよねぇ。
っと、気づけばシロクマちゃん達が目を覚ました。
あれ?これ、野生のシロクマだったら私食べられちゃったり!?
「あ、起きたー?」
「わたし達も一緒に寝ちゃってたねー」
「おはよー」
ちょ、しゃべったーっ!?
3匹とも女の子の声!
「お、はよ…?」
「んじゃ、説明するねー」
「あなたは異世界転生クジに当選しましたー」
「よって次から特典を選んでくださいー」
あ、神様とご対面~!ではないんだ…
天使でもなく、シロクマちゃんって…
「ん?私クジなんて引いてないよ?」
「生まれる前に引いてたよー」
「死んだら実行される約束でねー」
「てワケで選んでー」
まあ、疑問やツッコミは五万とあるけど、押し問答する気力はないので素直に目の前に現れた画面を覗き込んだ。
質問に答えていけばいいみたい。
【Q1】魔法が使えるようになりたいですか?
ふむふむ。魔法がある世界なのね。
なら、もちろん『Yes』だよ。
【Q2】では、得意な魔法は何がいいですか?
えっと、どんな魔法もチートだぜ!って訳にはいかないのね。
んじゃ『生活魔法』で。
【Q3】ステータスで底上げしたいモノを2つ選んでください。
ステータスって、HPとか攻撃力とかのこと?
でもゲームをプレイするんじゃないから、普通に生活していて有用なのはやっぱ『LUK』と『INT』よね。
【Q4】ギフトスキルが3つ選べます。創作でも構いません。希望をどうぞ。
これがさっき言ってた「特典」ね?
でも、創作って言われても…
定番の便利スキルって『収納』『言語習得』『鑑定』かな?
あ、もう3つ全部埋まっちゃった。
【Q5】今世はどのような人生を望みますか?
そりゃ『スローライフ』一択でしょう!
「できたよ」
「早いねー」
「見せて見せてー」
「どれどれー」
シロクマちゃん達がぺたんこ座りする私の膝と両肩に乗ってきてモフモフ天国になった。
癒されるわぁ。
「これマジー?」
「あちゃー、そうきたかー」
「よわよわだー」
「えー?贅沢なくらい便利なものばかりもらったよ?さすが異世界チート」
「いやいや、攻撃系皆無ー」
「いっそ縛りプレイー」
「本当にこれでいいのー?」
「え、ダメかな?」
「んもう、しょうがないなー」
「すぐ死んじゃわないようにー」
「わたし達がサポートしたげるよー」
「わぁい。よろしく!」
肉球とハイタッチした。
ぷにかわいい。
「じゃ、とりあえずー」
「この世界を楽しむタメにー」
「冒険だー!」
「スローライフ希望なんですけどーっ!?」
「まずは街に行かないとねー」
「身分証作んないとねー」
「冒険者ギルドだねー」
「本人そっちのけでジョブ決まっちゃった…」
まあ、実際問題この歳でお金を稼ぐには他に選択肢なさそうだよね。
幼女+3匹がてちてちと森の中を歩いている。
ちなみにシロクマちゃん達は二足歩行。
こんなスピードでは街へ辿り着くどころか、森を抜けるのもいつになることやら。
「効率よく進もうー」
「経験値集めー」
「薬草集めー」
「それもいいけど、野宿するなら食材集めも必要じゃない?」
「ぉおぅ、失念してたー」
「うっかりしてたー」
「ナナ、頭いー」
サポートしてくれるんじゃなかったのかなぁ…?
あと、名前は前世からの引継ぎなのね。
「やっぱり野宿なんだね?道具何にも持ってないけど、大丈夫かな?」
「初期装備あるよー」
「渡すの忘れてたー」
「じゃじゃーん」
「どっから出した?」
「スキル【収納】だよー」
「ナナも使えるよー」
「念じるだけでできるよー」
渡されたそれはかわいらしい黒ウサギのぬいぐるみリュックだった。
そこはシロクマじゃないんかい。
とりあえず、背中のファスナーを開いてみた。
何気にマジックバッグだった。
中身はナイフと、駄菓子と、水筒と、お金が少々…
ちょっとおかしいのが入ってない?
遠足なの?『おやつは300円まで』のノリなの?
「じゃ、狩りしよー」
「素材もゲットしてー」
「ぼろもうけー」
何を狩ったらボロ儲けできるんだろうね…?
そんなに簡単にお金が稼げるなら、冒険者って皆お金持ちになっちゃうよ。
更にてくてく歩く幼女+3匹。
やっと余裕が出てきたから、この世界について色々聞いた。
ここは剣と魔法と魔物の世界。
あ、魔物が支配しているという意味ではない、念のため。
文明レベルや世界観などはよくある中世ヨーロッパ風。
ただし流行の「ゲームの世界」や「悪役令嬢」ではないので、シナリオ改変とかは気にしないでいいとのこと。
あ、それと、さっきシロクマちゃん達が経験値がどうのって言ってたけど、そういったシステム的なものは存在しないらしい。
経験値稼いで、レベルを上げて、ポイント貯めて、スキルを開放するなんて流れはなく、ノリで言っていただけだった。
だから『ステータスオープン』はできない。
ちょっと残念。
…しかし、一向に魔物に遭遇しないなぁ。
「この世界は魔物がいるのよね?この森は初心者向けなの?」
異世界転生の始まりの場所だから、勇者の旅立ちの村周辺的な場所?
「そだよー」
「ココは街道にほど近いー」
「普通の森だもんねー」
「初心者に優しい」
しばらくして、少し開けた場所に出た。
「今日はここで野宿しようか?」
体力は幼女そのもの。
疲れた…眠い…
それに陽が落ちる前に準備しないとね。
「火ー」
「水ー」
「ご・は・んー」
道中、シロクマちゃん達がうろちょろして枯れ枝を拾ってはアイテムボックスに放り込んでいたので薪は充分。
火は魔法で呆気なく付いた。
カップもポンっと出てきて【水】で満たされる。
火魔法を使ったのかな?既にお湯だ。
紅茶は前世でよく見たメーカーのTバッグだった。
異世界なんだよね???
座ってて、とマグカップを渡された。
お料理までしてくれるのか、と眺めていると、「ごはん」と叫んで飛んで行ったシロクマちゃんが何か引きずって帰ってきた。
「イノシシだよー」
「おかえりー」
「丸焼きー」
すぱぱぱーっと捌かれ、焚火の上で回される猪。
『上手に焼けましたー』と叫びたい。
待っている間、折角だから魔法を試したい。
私は生活魔法を使えるのよね?
使い方を教えて欲し…
う~ん、シロクマちゃん達は忙しそうだなぁ。
1匹は火の番をし、あとの2匹がかりで肉を回している。
えっと…とりあえずアイテムボックスを試してみよう。
念じるだけでできるって言ってたし。
リュックを【収納】っと。
ふぉぉぉぉぉぉっ!できた!
じゃあ、じゃあ、お次は……【鑑定】だ!
これも念じればいいのかな?
貰ったナイフを鑑定してみた。
ミスリルナイフ:希少な鉱石でできたナイフ。軽くて丈夫。
【耐久】【修繕】がエンチャントされている。
「これ、ミスリルだったの!?」
「そだよー」
「”ひのきのぼう”から始めるにはー」
「非現実的過ぎるからねー」
優しい。ありがとう。
お肉が焼けた。
しかし焼いただけのお肉は正直美味しくない。
どうするんだろう?と思ってたら、食器と一緒にアイテムボックスから焼肉のタレやらドレッシングやら出してくれたので味変しながら美味しくいただきました。
幼女の胃袋なのでたくさんは食べられなかったけど。
顎疲れた…
シロクマちゃん達も大食いではなかったようで、丸焼きはほとんど原形を保っている。
アイテムボックスに入れておけば腐らない。
非常食ゲット。
「お風呂どうしよっか?」
「やっぱ元日本人だねー」
「お風呂なしじゃー」
「生きていけないんだねー」
「違うとは言えないこの感じ…」
シロクマちゃんが「じゃじゃーん」と口で効果音を奏でて取り出したのはドラム缶。
「何でも出てくるねぇ」
それにしても中世ヨーロッパに似た世界だって聞いていたのに、今度はドラム缶が出てくるとは…
「シロクマちゃん達は日本に詳しいの?」
「う~ん、どうだろうー?」
「ちょこっと覗いただけだしねー」
「ナナの頭の中楽しー」
「プライバシー!!」
んもう!と怒ってはみたものの、別に見られて困るモノもなかった。
シロクマちゃん達に魔法で全身洗ってもらってからドラム缶風呂に皆で浸かる。
幼女と仔熊3匹、余裕余裕。
「ナニコレ~」
「とける~」
「ふえぇぇぇ~」
確かに溶ける~。
疲労がお湯に染み出していく~。
星空を見上げながら、ふやける程浸かっていた。
夜はテントに寝袋だった。
シロクマちゃん達は何でも持ってるねぇ。
おやすみ。
朝までぐっすりだった。
目が覚めた時、シロクマちゃん達が3匹とも私の寝袋に潜り込んでいたけど、見張りとかどうしたんだろう?
人のこと言えないけど。
起き抜けは動きが緩慢なのは転生前と同じみたい。
もたくたしてたらシロクマちゃん達にパジャマを剥ぎ取られてしまった。
そして魔法の水球で顔を洗われ、タオルでふきふき、服を着せられ、髪をブラッシングで綺麗に仕上げられた。
すっきり。
「ねえ、鏡もってない?私、自分の姿見てみたい」
シロクマちゃんは全身が映る姿見を出してくれた。
瞳は紫。
全体的に色素薄い系。
鏡の中の自分はほどほどに美少女だった。
うん、異世界転生っぽい。
服は最初っから着ている物。
ミニワンピにフード付きポンチョ。
フードにはお耳が付いている。
これはもしかしなくてもシロクマね。
「随分かわいくしてくれたんだねぇ」
「7歳ー」
「100センチー」
「10キロー」
「痩せ過ぎ、ヤバい!」
小さくなった名探偵でも18kgって言ってたよ!?
でも、見た目はガリガリじゃないのよねぇ…
もしかして、重力が地球と違うのかな?
ちなみにシロクマちゃん達は60cmらしい。
シロクマちゃん達が腹ペコダンスを踊り出したので朝食となった。
けど、朝から昨日の残りのお肉はちょっと無理かもと思っていたら、既に林檎に似た小さな果実を採ってきてくれていた。
これ、姫りんごだよね?お祭りの出店でまるごとアメになってるアレ。
人のいない森に生っていた物だから、品種改良されていない野性的なお味かと身構えたけど、甘酸っぱくて美味しかった。
至れり尽くせりですまぬ。
今日もてくてく歩く幼女+3匹。
程なくして街道に出た。
木々が途切れ、遠方には城塞都市が見える。
ああ、本当に異世界に来たんだなぁ。
後から二頭立ての幌馬車がやって来たので道の端っこに寄ってやり過ごそうとしたが、傍で止まった。
「お嬢ちゃん達、あの街へ行くのかい?荷台でよかったら乗ってくかい?」
御者台に座る初老のおじいさんが声をかけてきた。
第一村人ならぬ、第一異世界人。
ちょっと感慨深い。
そして歩き詰めだから、乗り物嬉しい。
荷台から少女が顔を出した。
シロクマちゃん達をガン見している。
ははーん、さてはモフモフ好きだな?
「このコ達も一緒にいいの?」
「もちろん。ああ、でも積み荷を食わないように言ってくれよ」
幼女+3匹は整列してキリっとビシっと敬礼した。
荷台に乗り込むと、少女がキラキラした目で待っていた。
察したシロクマちゃんが「モフりたまえ」と言わんばかりに少女の膝に乗り上げる。
私もモフモフ成分を充分に補充させてもらった。
街に着くと入口に少しだけ列ができていた。
通行証がない人は入市税というものを払わないといけないらしい。
あと、荷物にも課税されるって。
世知辛い。
自分達の番になり、おじいさんが門番に「孫2人と従魔が3匹」と言ってくれて、無料でスムーズに入市できた。
感謝。
城壁の中は中世ヨーロッパと言われて薄ぼんやりと想像していた街並みよりずっと近代的だった。
考えてみれば、世界遺産で見られるように現代でも中世の街並みが残っているのよねぇ。
石造りで3階や4階建ての建築物もザラにある。
窓はガラスだし、道は綺麗に舗装されている。
普通に外国に来たみたいだ。
そしてこの街はそこまで都会とは言えないらしい。
なら、王都はどんだけスゴいのよ。
それにしても、獣人やらエルフやらが少ないけど普通にいる。
うん、異世界なんだなぁ。(2度目)
冒険者ギルドの前まで送ってもらった。
お世話になりました。
お礼にシロクマちゃんが食べ残しの猪の丸焼きを渡していた。
それはあんまりだろうと止めようとしたが、おじいさんが嬉しそうにニコニコしていたのでそのまま手を振って見送った。
冒険者ギルドは大通りにあった。
割と大きな建物。
それなりに儲けているのだろう。
ならば、腕利きの冒険者が多いのだろうなぁ。
扉を開けると、注目されているのが嫌でも分かった。
シロクマちゃん達が珍しいのだろう。
街中でも、他の従魔見なかったしねぇ。
キョロキョロと受付を探す。
ふむ、やはり正面のカウンターがそうかな?
列に並んで再びキョロキョロする。
色んなカウンターがある。
アレは売店ね。
薬とか、武器防具まで置いてある。
あっちは素材買取とかかな?
道中、シロクマちゃん達と一緒に手あたり次第摘んできた物を後で売ろう。
衣食住の確立頑張んなきゃ。
こっちのテーブルは待ち合わせとか打ち合わせ用?
壁には依頼書がわりといっぱい張ってある。
依頼が誰にも受けてもらえてないのかな?
吹き抜けから見える2階は居酒屋みたいな感じ。
シロクマちゃん達も興味津々らしくソワソワしている。
「よう、チビ共。依頼はその列じゃねぇぞ」
ああ、やはり冒険者は粗暴な人が多いのかな…
背後で聞こえた声に眉をしかめた。
「おい、チビ、聞いてんのか?」
後から頭を鷲摑みされてハタとなった。
そういえば私、今はチビだった。
「む~~~~~~っ」
気安く触んなっ、と抗議を込めて頭を掴む手をぺちぺちする。
すると、シロクマちゃんが私の頭に乗っている手を蹴飛ばし、他の2匹は両手を振り上げてキシャーっと威嚇した。
手が離れたので振り返ると、ムダに顔のいい青年が「おおっと」とバックステップで距離をとっていた。
「依頼じゃない。冒険者登録だもん」
「冒険者~?お前がか!?」
「むぅ、大きなお世話!」
シロクマちゃん達も「やんのかコラぁ!」と言わんばかりにファイティングポーズをとる。
「わーった、わーった。からかって悪かったよ」
詫びにとアメちゃんをくれた。
シロクマちゃん達の分もいれて4つ。
持ち歩いてるの…?
手の平に乗せられたアメちゃんを見つめる。
知らない人から貰ったものを口に入れるのはちょっと…
うん。こっそり鑑定した。
何々?
アメ:はちみつ味。ローヤルゼリー入り。高級。
効能:疲労回復。微若返り。
高級なんだ。
なんでこんな物持ってんの、この人…
てか、若返りって…
シロクマちゃんにも配り、包み紙を剥いでアメちゃんを口に放り込むと、青年はニカッと笑ってそのまま列に並んだ。
連れらしき男性が2人いる。
青年より大人でなんだか保護者感がある。
3人パーティーなのだろうか?
シロクマちゃん達をモフり倒している。
私のシロクマちゃん…
アメちゃんを口の中でコロコロさせていると列がはけていき、やっと自分達の番になった。
「こんにちは。冒険者になりたいです」
「こんにちは。えーっと、確かに冒険者に年齢制限はないのだけれど…(どうしようっ!?いくら何でも幼女に冒険者なんて…っ!しかもソロ!?)」
受付嬢は見るからに困っていた。
「一応、戦えるよ?」
私じゃなくシロクマちゃんだけど。
1匹だけでイノシシを狩ってたもんね。
「ええ…既にテイムしているようなので、それなりに戦えるとは思うのだけど…(確かに従魔を連れてはいるのよね?でも…)」
「うん、皆頼りになるんだ」
色んな意味で。
仔熊に養育される幼女ですが、なにか?
「えっと、そのコ達…魔獣ではなく普通の動物に見えるのだけど…?(てか、なんでシロクマが言うこと聞いてるの!?)」
ですよねー。
てっきり、ココは異世界だし、そういう生き物がいるんだと思ってたわぁ。
「このコ達、しゃべれるよ?」
すると、シロクマちゃん達はカウンターに飛び乗ってポーズを決めた。
「ガーネット レッドー」
「ラピスラズリ ブルー」
「こはく イエロー」
「「「シロクマ戦隊モフるんジャー!」」」
「かわいいっ!…じゃなくて、だったら、魔獣なのかしら?それとも精霊?見たことないけど…」
「賑やかだな。トラブルか?」
声をかけてきたのはゴツいおじさん。
身なりは良さそうだけど、左目に黒い眼帯をしていて海賊みたい。
「あ、ギルマス。このコ、登録希望者なのですが、その…」
受付嬢は言葉を濁したが、ギルドマスターは言わんとすることは理解したようだ。
「なら、ちょっくらテストすっか」
連れてこられたのは、建物裏の屋外闘技場だった。
訓練や下位ランクの昇級試験などが行われる場所らしい。
少しだけギャラリーがいた。
さっきちょっかい掛けてきた青年のパーティーもいた。
「んじゃ、このゴーレムと戦ってみてくれ」とギルマス。
石でできたゴーレム。
3メートルくらいある。
………無理っす。
「破壊すればいいー?」
「息の根止めるー?」
「ぶっころー?」
「物騒!」
シロクマちゃん達はヤル気満々だ。
「はっはーっ!あれは強化魔法や防御魔法をかけまくってるからな。中級冒険者でも破壊は苦労する逸品だ。壊せるもんなら壊してみろ!」
ギルマスはできる筈がないと高をくくっていたが、シロクマちゃん達は瞬殺した。
「ぎゃーっ!!ゴーレムが粉々に!?レア物なのにーっ!!」
ギルマスは膝から崩れ落ちた。
いつまでも立ち上がらないので、ギルマスの頭をなでなでする。
なんか、ごめんなさい…
「はっ、宇宙が見えた」
「ねぇねぇギルマス、壊れた物を直す魔法ってないの?」
「あー、そりゃ生活魔法に【リペア(修復)】ってのがあるが…(ここまで大物となるとそんじょそこらの魔法使いにはムリだな)」
「生活魔法!?私にもできる?」
「できるよー」
「魔法はイメージー」
「念じてポンー!」
最初は何か小さいもので試したかったのだが、シロクマちゃん達に「レッツチャレンジー」と囃子立てられ、ゴーレムに手をかざしてみた。
ま、失敗したとしてもいい経験になるだろう。
体の中を何かが巡る感覚。
風の様な、熱の様な…これが魔力…?
イメージか……修復…巻き戻し…逆再生…アレ?ココを繋げばいいのかな?
「【リペア(修復)】」
しゅるしゅるしゅるーっと、時間が巻き戻っているかの如くゴーレムが元通りになった。
「ふおぉぉぉぉっ!?できた!」
スキルじゃない、魔法っぽい魔法が使えたよ!
「やったねー」
「スゴい、スゴいー」
「おめでとー」
どストレートに褒められて、てれてれしているナナの背後でギルマスはすうっと真面目な表情になった。
このゴーレムは魔道具である。
回路が途切れれば当然動かない。
修復する為には理解していなければならないのだ。
錬金術師が使う特殊な言語を。
それを、子供が初見でやってのけたというのか!?
実は、ナナが獲得したスキル『言語習得』が発動し、錬金術師だけが使う秘匿言語を読み解いてしまったのだ。
「実力は充分だ。登録を認めよう」
ギルマスの言葉に、シロクマちゃん達がポーズを決めた。
ギルド1階に戻ると、空いているカウンターに案内された。
なんかちょっかい掛けてきた青年がついて来てるんですけど…?
「お前は何もしてねぇよな」
痛いところを突いてくる。が…
「これから強くなるもん」
最初は皆弱いのよ!
「ばーか。そんなんじゃ採取依頼でも死ぬぞ」
「えっ!?」
そんなに危ないの、この世界!?
「ほーら、怖くなっただろ。止めとけって」
「で、でも…お金稼がなきゃ…」
「なんだ、もしかして孤児か?」
だって、異世界で7歳で森からのスタートで…
「教会に孤児院がある。連れて行ってやろう」
にゅっと伸びてきた手をぺちりと叩き落とす。
「赤の他人が勝手に決めないで」
「ふむ。そういえば名乗ってなかったな。オレはアデルだ」
連れの2人もサイラスとレスターと名乗った。
「いや、自己紹介されても…」
だが、ここで無視するのは失礼な気がする…
「…ナナだよ」
ナナが青年とじゃれていて話ができない受付嬢は困っていた。
なのでシロクマちゃん達がカウンターに飛び乗った。
ナナは背を向けていて、彼女達のやり取りは全く聞こえていなかった。
「アデル達は全員剣士に見えるけど、バランス悪くない?」
前衛しかいない。
パーティーの意味は?
「オレ等は全員魔法使えるから最強だ」
自分で最強とか言う人って、あんま強くなさそうだけど…
「まさか上級冒険者?」
「C級だ」
「ビミョい」
「ハッキリ言うなぁ。ま、オレ等は冒険者歴短けーからな」
「アデル、まだ子供だもんね。サイラスとレスターが子守りに見える」
大人組の2人はプッと吹いた。
「にゃにおう!おれは15だ!」
「子供じゃん」
「くっ…お前はいくつだよ!?」
「7歳」
「ぷーっ!おれの半分もねぇじゃねぇか」
「目クソ鼻クソ」
「女の子がクソなんて言うんじゃありません!」
「急にオカン」
アデルの後ろにいるサイラスとレスターが笑いを堪えているのに気をよくしていたが、背後から声を掛けられて何をしに来たか思い出した。
「ナナー」
「登録終わったよー」
「ほらー」
シロクマちゃんがピラリと登録書を頭上に掲げた。
氏名、年齢、ジョブや特技などが書かれている。
それは別に構わない。
でも、ちょっと待って。
最後のは何!?
アデルをいじり返している間に、パーティー名が『シロクマ戦隊モフるんジャー』になっていた…
――――――――うそん!?




