第3話 化けて氷玉ゲット
私は咄嗟に人気のない路地裏に入った。なにかできそうだと思ったのだ。
う〜ん、思いついたのはいいけど、どうやって化ければいいんだ?マリンちゃんの記憶にはやり方が入ってないみたいだし。
私は悩んだ末に、無謀だと思うが、とりあえず適当にやってみることにした。
(それっぽいポーズ)
「にゃお〜ん」(人間に化けたい〜)
「うにゃ〜お」(人間に変身〜!)
私はひとりで馬鹿みたいなことをやってると、やっとその存在に気づいた。
実は、ずっと肩掛けショルダーバッグを持っていたみたい。どうして気づかなかったんだ?
私は不意にそのバッグを開けた。猫が背負えるような小さいサイズだから、そんなにものは入らないと思う。だけど、なにかが入っているような気がしたんだ。
「にゃ〜?」(なにこれ?)
銀でできた…鍵?のようなものが入っていた。私は小さな猫の手でそれを掴んだ。すると…
「にゃおん?」(なにこれ…?)
しゅるしゅると音を立てるように、私の頭に化ける方法がインプットされていく。どんどん、全ての記憶を思い出していく感じ。
私は化ける方法を完璧に覚えた。この鍵、luminous key ルミナスキーを握った瞬間、化け方を思い出したの…これは、マリンちゃんの力?
やり方は至ってシンプル。ルミナスキーを胸に刺しながら、化けたいものを想像する。そうしたら、あっという間に姿が変わるみたいだ。
私はさっそく実践してみた。ちょっと怖かったが、思い切ってルミナスキーを胸に刺した。…あれ、全然痛くないじゃん。じゃなくて、人間!人間になりたい!
私はぎゅっと目を瞑り、胸に力を込めた。
その時、身体が光に包まれているような感覚になった。私は驚いて咄嗟に目を開けてしまった。が、それで良かったらしい。私は見事、人間の姿に変わっていたのだ。
「わぁ…!すごい、ほんとに化けれた!」
薄い水色のセミロングヘアに、マリンブルーの瞳。毛先だけ白い。身長は130cmほど。歳は、10歳と言ったところか。マリンちゃんをそのまま人間にしたような見た目の、かわいい女の子に化けた。(自分で言うのもアレだが)
前世の時よりもかなり若返ったけど…まぁ、とりあえず人間にはなれたし、いいや。これで、あの雑貨屋に入れるぞ!
私はルミナスキーをサイズアップしたバッグに戻し、慣れない子供の身体を動かして街の方に戻って行った。
「よし、今度こそ!」
私は雑貨屋の中に入った。すると、さっき私を追い返した店の人があいさつしてくれた。
「いらっしゃい。あら、お嬢さんあまり見ない顔だね。旅行で来たの?」
「えっと、最近引っ越してきたんです。よろしくお願いします」
「そうなんだ。ヘンテコなものしか置いてないけど、ゆっくりしていってね」
店の人は特に怪しむこともせず、温かく私を迎えてくれた。ふぅ、良かった。
私はさっき妙に惹かれた理由を探すため、店をウロウロし始めた。不思議な置き物やネックレス、ちょっとした装備まで置いていた。そして、私が探していたものは店の奥の方にあった。
それは、水晶玉のような形で、透き通っていてとても綺麗だった。多分、私が惹かれた理由はこれだ。少しだけ輝いて見える。
「あの、これ何ですか?」
私は店の人に聞いてみた。
「あぁ、それは氷玉だね。全然買う人がいなくて、私も忘れてたよ」
「氷玉?」
「簡単に言うと、氷属性の魔法の威力を何倍も強めるアイテムかな。ほら、魔法には属性ってものがあるでしょ?」
「ほう…」
「これだけじゃなくて、他にも水玉や風玉、闇玉や炎玉とかもあるんだよ」
「それって、めちゃくちゃいいアイテムじゃないですか!なんで売れないんですか?」
「昔はみんなこれを使ってたんだけど…今はバフとかあるじゃない。お金を出して買うよりも、無料で使えるバフ魔法の方が手っ取り早いって思ったんだろうね」
「なるほど…」
「あまりにも売れないから、銀貨2枚から銅貨2枚にガクッと値下げしちゃったよ」
「銅貨2枚…」
「お嬢さん、氷玉がほしいなら無料であげるよ?もう玉の力も弱いし。お部屋にでも飾っておきな」
「…いいんですか?」
「いいよ。在庫処分だ、在庫処分」
「ありがとうございます…!」
こんなに綺麗な氷玉を無料で貰っちゃった。ラッキー!だけど、なんか申し訳ないな。せっかく銀貨2枚の価値はあったのに…
「あの、私…必ず、銀貨2枚返しに来ます!」
「いいよいいよ、いらないよ。無料で貰っちゃって」
「必ず…!」
私はそう言い残して、店を出た。
うわ〜、言っちゃった〜!銀貨2枚なんて返せるわけないのに〜!
あ〜!どうにかしてお金手に入らないかな〜?
私は透き通る氷玉を握って、街をトボトボと歩き続けるのだった。
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