第二章・中盤 「焔 vs 蓮 学園最強決戦ッ!」
学園裏の廃体育館。
いつしか、放課後の喧嘩の“聖地”と呼ばれた場所。
その中央に、焔と蓮が向かい合って立っていた。
観客はいない。
ただ、静かに見守るルナの姿が屋根の上にあるだけ。
「これが、“喧界力”……」
蓮の拳が、淡く光を帯びる。
彼の右拳は、衝撃波を纏う特殊な力――“空打ちの拳”。
一撃ですら当たれば、内臓がバク転するレベルの破壊力。
焔は、逆に喧界力の使い方がまだ未熟だった。
だが――その拳には、“理由”がある。
「来いよ、白王子。いつものように上から目線で来な」
「……その目。昔のお前じゃねえ。今なら――拳で話せるかもな」
次の瞬間、バトルが始まった!
蓮が前に出た。
瞬歩のような踏み込みからの右拳の波動打ち!
「“真空烈突”!」
空気が裂ける音とともに、透明な衝撃波が焔を吹き飛ばす!
だが焔はギリギリで身を捻り、受け流す!
「おらァァァア!!」
地を蹴り、低い姿勢からのカウンター――裏喧爆!
拳がぶつかる。
破裂音。空間がゆがむ。
両者、吹き飛ばされる――!
「ははっ……やべぇな、お前。拳で会話できるとか、マジで燃えるわ」
「お前こそ、変わった。昔はただのアホだったのにな」
蓮は一瞬、目を伏せた。
「……なあ、焔。お前、異界の力に手ェ出したのか?」
焔は答えない。
代わりに、拳を上げる。
「拳は、言葉より重てぇ。だったら俺は――この拳で、全部答える!」
蓮の目が燃えた。
「よし、なら次で終わらせる」
「おうよ、最後まで殴り合おうぜ、“親友”」
そして――ぶつかる、最大の拳。
「喧爆烈神拳!!」
「天衝裂覇撃!!」
交差する二つの拳――
校舎が揺れるほどの轟音。吹き飛ぶ窓ガラス。
そして。
――ドゴォォン!!!
煙の中から、焔がよろけながら立ち上がった。
「……勝った……のか?」
蓮は、倒れていた。
が、顔には満足そうな笑みが浮かんでいた。
「ははっ……やっぱ、お前はバカで最強だわ……」
焔は拳を下ろし、空を見上げた。
「……まだだ。これからもっとバカになって、もっと最強になる」
屋根の上から、ルナが小さくつぶやく。
「これが“喧界力の共振”……人間の感情が、ここまで力に変わるとは……」
だが、その瞳には微かに、不安が浮かんでいた。
(――この力は、やがて制御不能になる。そうなる前に、焔を止める手段を……)
そして、その夜。
蓮の意識が戻ったとき、
彼の右腕に、異界の紋章が浮かび上がっていた。
「これ……は……? まさか、俺も――」