32話 欠陥ゴーレム
「ここも外れか!あと幾つだ?!」
『可能性のある建築物はあと2つほどです。ですが、この調子ではあるかどうか……』
既に幾つもの建築物や地下に続く入り口などを探索しているが、収穫無し。帝国中を駆けずり回るも、それらしい遺物も文献も全く無い。
その原因は年月か意図か、今となっては分からない。だが、お陰でこれほど探索に苦労している。下手に衝撃を加えれば建物は砂山のように吹き崩れ、まともに探索も調査もできないに等しい。
しかし、儂が見て来た今までの遺跡よりも脆いのはどうなんだ……触れて砂になるのはおかしいだろ。
『到着しました』
「よし、ここには何が……っ?!」
それが見えた瞬間、儂の喉が息を呑んだ。帝国滅亡の原因としては説得力を持つほどのそれが……ここに。
「当たり、だな」
『そのようですね』
ゴーレムのような形の、量産されたように思えるほどの量の、あのゴーレムと同じ形状のそれが無数にそこにあった。もし動いたらと考えると頭が痛くなる。
取り敢えず、その建築物の内部に足を踏み入れてみる。
『ピ、ピピ』
「……」
怒神と目が合った。
『……』
ゴーレムから無数の音が耳に入る中、怒神が儂を持ち上げ凄まじい速度でその場を離れた。が、なぜかあのゴーレム達が動き出し、儂等を追いかけて来ている。意味が分からない。
どうすれば……いやまだあったな。そこを確認してからでも良いだろう…………本当に、色々とあり過ぎて、混乱を飛び越えて冷静になってるな、これは。儂自身の、その分析ができるくらい冷静だ。
「一旦このまま最後の場所を確認しよう!」
『分かりました!はい到着しました!』
「速いな?!」
『はい。これは人型として最高の移動速度を生むために——』
「後にしてくれ」
『分かりました』
危なかった。怒神のことだ、自慢混じり説明をして時間を浪費する可能性が大いにある。こんな緊急事態にそんな暇は無い。
……何も見当たらないな。怒神の方は……
『何も無し!』
「よし!撤退!」
撤退と言う名で怒神に抱えられ空を飛び超速で帝国を駆け抜けているが、撤退と言っても、行く当ても打開策も無い。こんな突発的ゴーレム大暴走に備えられる準備も考えも無い。
この一周回って冷静になった頭もいつまで保つか……
「まだこの遺跡がまともに触れられるほどの強度さえあれば、まだやりようはあったと言うのに」
『不可能なことを考えても仕方ありませんよ。今はまず、背後に迫り来るゴーレムについて考えましょう。今はまだ幸い魔力を全く吸収しておらず、速度は無いようですが、起動したからには止められませんよ』
「そうだな……あの数をどうにか……ん?待て怒神。ゴーレムがいないぞ……っ!?」
儂がそう言った途端、視界が一変し何かに頭から突っ込んだ。頭丸ごと砂に包まれた気分だ。
「ぶはっ!……ぜぇ、ぜぇ、っておい!いきなり急停止するな!思いっきり投げ出されたぞ?!遺跡が脆く砂状のクッションとなり助かったが、普通死ぬぞ?!」
『あーはいはい。少々お待ちを……見つけました。少し来た道を戻りましょうか』
逃走経路を遡ると、そこには動く力を失い人型すら保つのを辞めたゴーレム群の姿があった。
「……ただの土塊だな」
『恐らく魔力が底をついたことによる稼働停止。そして自己崩壊が起きたのでしょう。まさか無敵に思えた自己魔力増幅無限機構が…………いや、元々は机上にしか存在しないただの理想。警戒が過ぎましたね。これは魔力を増幅できるものの、魔力がほとんど無ければそもそも連続稼働できない兵器。ワタシに比べれば欠陥だらけです』
逃げに徹するのが一番の正解なゴーレムか。怒神は欠陥だらけと言っているが、儂にしてみれば十二分に危険だぞ。
『自己増幅よりも攻撃を優先した結果。と、アホですか?このゴーレム達は。本来魔力の増幅に集中すべき所を、増幅よりも攻撃と移動に使う魔力の消費速度が上回り魔力切れ。自己判断能力があまりにも欠陥品過ぎます。ワタシよりも全体的な性能が低いとは……製作者の意図が知りたいですね』
何気に初めて聞く気がするな、ガチトーンの怒神の軽蔑は。欠陥品の子供を軽蔑する貴族のような雰囲気だな。そもそも怒神に性能で勝てるゴーレムなんてごく少数しか無いと思うが。
『……っと言いましたが、エンデさんを追い続けるあれは無理ですね。多分これと同じ性能でしょうが、あちらはエンデさんの豊潤な魔力を延々と吸収している分、正直ワタシではどうもできない次元に達しています。即敗北してもおかしく無いですよ』
怒神が遠い目に……これはもうどうしようも無いな。エンデに張り付くあれは無理か……推察と結果と推測の情報くらいは共有した方が良さそうだな。
「怒神、この情報をエンデに伝えてくれ。魔力を吸収、放出したり消費速度を早めたりする魔法などがあれば、あれをなんとかできるかも知れない。あれば、だが」
『そうですね。正直あまり気は進みませんが』
◆◇◆◇
……どうしよう。
さっき怒神が来てあのゴーレムの欠点と知り得た対処法を教えてくれたけど、殴り損ねた。すぐに逃げたけど、まさか私が考えてることが分かった?まぁいっか。それは後にしよう。
対処法か……一応その魔法があるのが幸いかな。まぁ吸収した魔力を全て自身にのしかかるから、下手したら魔力過多で体吹っ飛ぶけど。でも、迷ってる暇なんか無い。
吸収した魔力は、すぐに放出すれば良い。
念の為、魔力の放出穴は大きめに設定。魔力を吸収する魔法のデメリットは身体が限界に達しようと魔力をお構いなしに吸収してしまうこと。魔力は水、身体はコップと仮定すると、この魔法はコップから水が溢れても止まらない。身体が許容限界で破裂するか、対象の魔力を吸い切るまで止まらない欠陥魔法。
ゴーレムは背後に私と同速で追い続けてる。なら、この角を曲がって。
私を追いかけてゴーレムが角を曲がった瞬間……よし今!この魔法の発動条件は魔力に、対象の身体に触れること。身体に触れなくても、溢れて出る魔力に触れて、そこを起点に魔力を吸い尽くす!
ま、魔力が多過ぎ……!多過ぎて放出が間に合わないっ!
「……っ!……痛っ!」
吸った魔力が私の身体から溢れかけてる!このままだと、私は……!嫌な想像が頭の中でチラつく。どうすれば……
?!……あれ……?なんか違和感……吸収してる魔力が、無くなった?い、いや、吸収してる感覚はある。放出は未だ意味を為して無い。
呆気なく、魔力が枯れたゴーレムが地面に崩れた。不思議な感じ。私の魔力は何とも無いのに、吸収した魔力が全く無い、感じない。何が起きてるの……?
{ようやくだ……再び我は……}
凄く小さく、凄くぼやけて、悪魔の……お父さんの声が聞こえた気がする。
……気のせい。だよね……うん。絶対気のせいだ。
{気のせいでは無いぞ}
「ふぇっ?!」
◆◇◆◇




