再び地に戻るまで
嵐が去って、水溜りと折れた枯れ枝が無人の山野を賑わわせている。それらはそのうち風が片付けてくれるのだろう。
とうの昔に倒れた廃屋たちや打ち捨てられた道具たちが、かつての歌を歌っている。それらもそのうち黙り込んでしまう。
広がりの片隅に駅舎がある。人は誰も乗り降りしない。今や列車も来ない。止まった時計だけが何かを歌っている。
夏の間、その駅舎辺りを我が物にする夏草。嵐の季節になってもまだ勢いを残す。その傍で、ヒルガオがその控えめな店をたたみ始めている。
座る場所がない。逃れ来た一人が朽ちかけた屋根の下で横になる。上を向くと、隙間から星と月。夜中になれば虫の音と銀の光が忍び込んでくる。その光が目をとらえ、引き込む。やがて光は彼女の身を屋根の隙間から天空へと羽ばたかせる。
銀の光は、下からも右からも左からも。共鳴の場の中に閉じ込められた局在光。周囲は暗黒のまま。彼女はその中で身じろぎをした。
彼女はこうして星の世界の人となった。その星の煌めきは彼女の身じろぎ。生まれたばかりの彼女はしばらくこの天空で。再び地上へと戻る時はいつだろうか。