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外伝5話 ロシア帝国の悪役令嬢

ロシア帝国ですが革命前のロシアがモデルです。今のロシアとは関りありません。

 ヨーロッパもほぼ全域平定したが、ロシア帝国は戦乱の続くヨーロッパの中で趣を異にしていた。

 悪魔の攻撃を受けずにいたロシア帝国は比較的平和に過ごしてきた。


 しかし、その実態は農奴への過酷な搾取で成り立っていた。

 恭平は農奴の解放をロシアに迫った。

 当然、ロシアは貴族が猛反対し、戦争となった。


 恭平のヨーロッパ解放軍は超高速侵攻と補給物資つぶしをやったので、ロシア帝国軍はすぐに戦争できる状態ではなくなる。

 その後、貴族の拠点をつぶし、貴族を処分して農奴を解放する。

 何せ、城に籠っていても門扉は斬られるわ。入るところが無いのに入って来るで、止めようがなかった。


 開戦一か月で重要拠点はすべて潰され、後は皇帝の宮殿のみとなった。

 ロシア帝国は冬を待たずに降伏した。

 ロシアは帝政の廃止、農奴の廃止を飲み、皇帝一家の命のみの保障だけだった。


 それから3カ月後のパリ 工房正門

 ジュレイはドーテと一緒に買い物に街に出て、歩いて工房に帰って来た。

「あの、ジュレイさんじゃありませんか?」

 正門の前で若い女性に声を掛けられた。

「はい、あなたは・・エカテリーナさん?」


 ロシア皇帝の第一皇女エカテリーナだった。ああ元か。

 彼女とは、西域に行く前だから12歳の時だったか、天都に遊びに来ていたので会ったことがある。

「少し、お話がしたいのでお時間よろしいかしら?」

「はい、大丈夫です。ドーテごめん。一人で帰ってくれる」

「解ったよ。じゃあね」

 ドーテは門番に挨拶して寮に帰って行った。


 私達は近くにある喫茶店に入った。

「お久しぶりね。4年ぶりになるかしら」

 彼女もパリに住んでいるはずだ。だって3カ月前に私達が護送して来た。

「そうですね。どのような御用でしょうか?」

 彼女とは天都で2日程、行動を共にしただけだ。


「あなた、ヨーロッパ解放軍の恭平将軍を知っているかしら?」

「それは有名ですから知っていますよ」

「いえ、そういうのではなく面識はあるのかしら?」

 一緒に住んでますとは言えないし、どうしよう。

「なぜ、そのようなことをお聞きになるのですか?」


「私の国が無くなったことはご存じかしら?」

「はい知ってます」

 城を幾つ落とせるか競ってたとは言えないな。

「私は庶民になることが我慢できません」

 危ない事、考えてないだろうな?

「どうしようというのですか?」


「まだ、ご結婚なされていないと伺ってます。私を妻にして頂けないかと思っています」

 はあ、こっち方面かよ。面倒臭いなあ。

「あのそのようなご要望にはお答えできないかと」

「もちろんです。恭平様はあの工房に住んでおられると聞いています。私を会わせてください。

 あなたの御身分なら恐らく側近であられると思います。何卒良しなに」

 嫁候補がラフな服装で街中闊歩してるとは思わないよなあ。


「申し訳ありませんが、あなたは恭平様に会わせるには条件が折り合いません。お諦めを」

 恐らく彼女が農奴解放に尽力して居れば、恭平様も興味を持ったと思う。

 今は恭平様の嫁になる条件は駄々上がりだ。彼女に機会は無い。

「どのような条件でしょうか」

「例えば、あなたが御父上に逆らって農奴を解放するとかされて居れば、恭平様も興味を持たれたのではないかと考えます」


 彼女は俯き唇を噛んでる。

「それはあなたの勝手な解釈ではないのですか?」

「違います。恭平様は日頃から言っておいでです」

「私のような美しい女を見れば、お考えも変わるのではありませんか?」

「はあ、恭平様は見た目の美醜にとらわれない方ですが」

 最近、マールの美しさが半端ない。あれでしゃべらなければなあ。


「ふふふ、あなたは殿方を知らなさすぎます。私のような美女が迫ればどのような男でも落ちますわ」

 確かに整った顔立ちですが、美女と言われるとそれほどでもと言う感じです。

「左様ですか。あなたのような女性を恭平様に紹介すれば私が叱責されます。お諦めを」


「私は諦めませんわ。あなたのようなチンチクリンならいざ知らず、私が庶民になるなど天が許しませんわ」

 わーチンチクリンって言われた。恭平様に可愛いって言われてるのに、一週間に一回は可愛がってもらっているのに。憤慨です。


「明日もこの時間にこの店に来てください。作戦を考えましょう」

「困ります。私とてさほど暇では御座いません」

「とにかく明日です。お願いしましたよ」

 あー、お金払わずに出てった。さっき服を買ったから今月ピンチなのよ。お願いするならおごってよね。


 その夜 剣姫寮 居間

 食後、エカテリーナさんの事を真白さん、茜さんに相談してたら全員集まって来た。

「うわー、面倒臭い女、そんな女が仲間になるなんて嫌だぜ」

 マール、その顔でそんなこと言わないで。ギャップが大きすぎて慣れないよ。

「今後、女性を形に自分たちの待遇を改善しようとする輩が、増えてくると思います」

「今回は本人だけどね」

 真白さんと茜さんはこんなことも考えていたようだ。


「俺の親父みたいなやつだな」

 彼女は蛇亀王国の王族の娘だ。

 代替わりで王族を外されそうになっていた父親が、娘を有力貴族の妾に出してまで、その地位にしがみ付こうとしていた。

 そこでマールは、恭平様に剣姫にしてくれと頼み込んだ。

 元々、弓に非凡な才能を持ち、正義感の強い性格であったため剣姫に採用された。

 そのおかげで蛇亀王に認められ、父親も王族に残れたという話だ。


「中近東や中央アジア、東南アジアは国が多いからありそうよね」

 リシュさんも不安そうだ。

 リシュさんは元モンゴル帝国の皇女だ。

 彼女は暴君となりそうな自分の兄と戦い、名君となりそうな次兄に皇帝を譲った。

 同じ元皇女だが内容が違い過ぎる。


「そうなるとこの人は良いけど、この人は駄目って言うのが通用しなくなる」(真白)

「今までみたいに従者を選べないの?」

 最近めっきり女性らしくなってきたヒイちゃんだ。

「そういう事ね。恭平が自分の尺度で従者を選んでいい時期は過ぎたわ。今後は結果が世界に公表されると見なければならないわ」(茜)

「つまり、断られた人は何らかの欠陥がある人って見られるの」(真白)


 重い沈黙が続いた。

「ではどうしたら良いんですか?」(私)

「今回の事はともかく、大っぴらに求婚された場合、後宮を作ってそこに入れるわ」(茜)

「もちろん、前時代的な後宮じゃないよ。この寮的な感じで、セキュリティーはあるけど自由にしてもらうよ」(真白)

「子供の欲しい人には、私達の合間に恭平に通って貰らうわ」(茜)

「気に入った人がいれば従者にすればいいのよ」(真白)

「まあ出ないでしょうけど。」(茜)


「それで、今回はどうすれば?」(私)

「もちろん、断るわ」(茜)


 次の日 工房 正門近くの喫茶店

 私は約束の時間に喫茶店に行った。

 エカテリーナさんはすでに来ていた。

「私を待たすなんて。非常識にも程がありませんか?」

「いえ、約束の時間通りですが」

「目上の者を相手にするときには早めに来るものですわ」

「あなた、私と同い年でしょう」


「それで恭平様に会う手段は、考えて来たんでしょうね?」

 無視かよ。

「はい?なぜお断りした私が考えるんですか?」

「獣人風情と会ってやっているのです。それぐらいは当然でしょう」

 こいつ獣人差別もしてるのか。

「恭平様は獣人差別は嫌いですが」

「そんなわけないでしょう。恭平様ともあろうものが獣人と仲良くする訳がありません」

 お気に入りのヒイ二番ミヤが獣人なのだが。


『私には無理です。来てください』

 救援を呼んだ。

「少し待ってください。私の上司が来ますから」

 暫くすると剣姫の礼装に身を包んだ茜さんが来てくれた。


「フェイスマスク越しに失礼する。私は剣姫オレンジだ。素顔を明かすとテロ組織に狙われるのでな」

「ロシア帝国皇女エカテリーナと申します」

「君はまだ皇女を名乗っているのかね。感心しないな」

「しかし、私には他に肩書がありません」

「君の国は農奴への搾取、獣人への差別など目に余るものがあった。それで恭平様が滅ぼした。解るね」


「それで、何の用事があるのかな?」

「恭平様の妻になりとうございます」

「無理だな。理由は言うまでもないだろう」

「でも私は美しいので気に言って貰えると思います」

「うーん、申し訳ないが美しいというより狐顔だな」

「何ですって、無礼者が」

 エカテリーナが怒って立ち上がった。


「君は保釈中の身の上だよ。我らに反抗的な態度は良くないな」

 今度は水の入ったコップを持って茜さんに突き出そうとした。

 私は素早くコップを奪い取った。もちろん水を零すような不手際はしません。

 彼女はコップの無くなった手を不思議そうに見ていた。


「話はそれだけかな」

「私はどうすれば良いのですか?」

「君はまず、これまで行ってきた罪を認識しなければならない。

 そのうえでどう生きるのかを決めると良い。

 これからは前の身分にこだわらない方が良い。

 その調子でロシアに行けば民衆につるされるよ」


「私が何をしたというのです。何も悪いことなどしていません」

「君に虐げられた農奴や、獣人がそう思うかな」

「それは父が悪いので、私は悪くない」

「4、5歳の子供ならそう言っても仕方が無いが、君はもう大人だろ」

「でも、分からなかったのです」


「君より年下で暴君の兄と命がけで戦った皇女を知っている。父の圧政に逆らって民衆を率いて戦った貴族令嬢を知っている。君がいかに甘えたことを言っているか、恥に思うが良い」

 貴族令嬢ってヒイちゃんのお母さんだね。

 彼女は打ちのめされたみたいだ。

 そのまましおらしく帰って行った。


 次の日、私は門番さんに呼び出された。

「ねえねえ、他に有力者の息子とか知らない。紹介してよ」

 エカテリーナさん!!。

ウクライナ問題で本文を随分割愛しました。戦闘シーンや民衆が虐げられる部分を削って外伝で再利用を図りました。

ウクライナが平和になりますように。

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