表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/83

外伝2話 ミヤの憂鬱

ミヤとミヤの父の話です。

 パリ 剣姫寮 執務室

 パリに移って9カ月が経った。ミヤは14歳になっていた。

 恭平様は従者全員に結界、再生、空間、重力の4つの異能を持たせました。

 これらの異能は従者にするときに従者が持っていて、恭平様が持っていないと恭平様にコピーされます。

 これを利用してコピーをしまくって、従者全員分を揃えたのです。


「ジュリアンの孫従者から竜王国からの依頼が届いた。リョウカ様、アンナさんを竜王国まで送る仕事だ」

 恭平様が私とジュリアンさんに言った。

「はやぶさ2号を使うんですか?」

「そうだ」

 はやぶさ2号は20人乗りの飛行艇だ。時速600km以上で飛べる。


 次の日の3時くらいに空間移動で天都に着くと時差で10時くらい。

 リョウカ様、アンナさんは工房で待っていてくれたのでそのまま搭乗して貰う。

「巫女の任務、ご苦労様でした」(ジュリアン)

「いや、姉上ほどの仕事はしていないからな。労われるようなことはしていないよ」(リョウカ)

「それでは出発します。距離は2500km位ですので、所要時間4時間位となります」(ミヤ)

「2年前は2週間で新記録だと言っていたのが4時間ですか。早くなったものですね」(アンナ)


 一時間後 黄海上空


 二時間後 朝鮮半島南端


 三時間後 イズモ上空


 四時間後 竜王都上空

 王城の近くの海に飛行艇用の桟橋が作ってあったので、そこから上陸した。

 私は飛行艇を収納に入れるとリョウカ様達と王城に向かう。剣姫印のゴーレム車だった。

 一通りの挨拶と依頼料を手に入れると実家に戻るジュリアンと別れて、オオツへ空間移動した。


 母親が死んだと聞いたからだ。母親とは3年会っていなかった。

 サイゾウさんの孫従者が知らせてくれたのだ。

 孫従者は普段はオオサカで活動しているそうで、私の母を時折見ていてくれたそうだ。

 父親の浮気で苦しんで、何も良い事の無かった人生だったのだろう。


 孫従者のオオツの家に行くと連絡がしてあったこともあって、待っていてくれた。

「ここを登ったところに墓があります」

 墓は直径20cm位の石が置いてあるだけの質素なものだった。


 私は手を合わせると涙がこぼれた。

 母に特に良い思い出はないが、苦しかったろう、その人生に同情したのだ。

 私は幸せを掴みました。心配せずに天国に行って下さい。


「おう、ミヤやないか」

「若いもんがキヌの墓にお前が居る言うて、教えてくれてな」

 こっちに歩いてくる猫人の中年の男が声を掛けて来た。

 キヌはお母さんの名前だ。

 後に何人か若い男を連れている。

 私は孫従者を下がらせて、中年男に言った。

「どちら様ですか?」

「お前、父親の顔忘れた言うんかい」

「私に父親は、居りませんが」

 父親はため息を吐くと開き直った。


「まあ、ええ。お前が綺麗に育ってくれて嬉しいでぇ」

「あなたには関係のない事でしょう」

「関係はある。お前をもう一度売るときに高う買うて貰える」

 呆れかえった。もう一度私を売るつもりだ。

「お母はんの墓前でなんてことを。わてはとうに奴隷や。もう一回は売れへん!!」

「前は名古屋やったか、今度は大阪で売ればええんや」

 腹が立って、お里が出てしもうた。まあええか。

「わてが今どこにおるかも知らんと手え出すか、ほんまに」

 呆れてる事を伝えると父親が言った。

「何を言うとる。連れもどっかへ行てもうたで」

「これで、私に何かあったら、あんたのせいやと解るやろ」

「そんなもん、すっとぼけるわい。おい、お前ら、捕まえろ」


 父親の後ろに居た5人の若い男が私を捕まえようと近付いて来た。

 私は収納から木刀を出すと5人をあっという間に叩き伏せた。

「あんたもかかっておいでや、叩きのめしてあげるよってに」

 ちょっとどすを効かせた関西弁で脅してやるとくるりと回って逃げだした。


 私は追い抜いて、父親の前に出る。

「逃げるなんて薄情やん」

「お、お、お前は、なんやバケモンか?」

「失礼やな。こんな別嬪さんにむこうて」

 ニイと笑ってやると

「堪忍や、堪忍しとくれ」

「堪忍できるわけないやろ、このボケが」

 ぼこぼこにしてやった。これに懲りてまっとうな道を歩いてくれたらいいけど。


 隠れて見ていた孫従者に父親の事を調べておいてくれるようにお願いして帰った。


 パリ 剣姫寮 執務室

 3日後、恭平様に呼ばれた。サイゾウさんが恭平様の隣に居た。

「君のお父さんだけど、犯罪組織の一員だということが分かった」

「えっ」

 言葉が出なかった。

「サイゾウ」

「はい、ミヤさんに頼まれてあなたのお父さんを見張っていたのですが、関西圏を中心に殺人、恐喝、誘拐、売春などを行う組織のオオツ支部長みたいな地位にいることが分かりました」

「そんな」


「今、組織の全体を調べるため人員を増やして対応中です」

「殺しておけば良かった」

 恭平様に迷惑を掛けることが悔やまれて仕方なかった。

「処置だが、竜王様に頼もうと思う」

「しかし」

「大丈夫だ。君の身元を知る者はここにしかいない。リョウカ様だって分からないよ」

「申し訳ありません」

「君が気にすることは何も無いんだ」


 私は恭平様に抱き着いて泣いた。泣きじゃくった。

「気のすむまで泣いたらいいよ。君の父親のつもりだからね」

 恭平様は私の気のすむまで頭を撫でてくれた。



 一週間後、サイゾウさん達の調査に基づいて、竜王軍による組織の一斉摘発が行われた。


 更に一週間後

 パリ 剣姫寮 執務室

 私は執務室のドアをノックした。サイゾウさんがオオツから戻って来た。

「どうぞ」

 恭平様の声で私はドアを開けた。恭平様とサイゾウさんが居た

「ミヤか、ちょうど呼ぼうと思っていたところだ」


 犯罪組織は壊滅して、組織側の死者が50人以上、逮捕者も50人以上、幹部は殆ど死ぬか逮捕されたが、ミヤの父親は逃げているということだった。


「摘発の夜、ボートでナガハマの北まで行ったことは確認されたのですが、その後の足取りが掴めてません」

 サイゾウさんが申し訳なさそうに言ってくれる。


「恭平様、私を捜索に行かせてください」

「君が行く必要は無いよ」

「いえ、心の決着をつけたいのです」

 私は食い下がった。何としても父親をこの手で・・・。

「君が行けば、君の正体がバレルかもしれないだろ」

「その時はあの男を殺します」

「彼が一人でいるとは限らないよ」


 私が俯いているといきなりドアが開き、蒼伊とナータとが入って来た。

「なんだ、お前達?」

「メカニックの言ってみたい言葉ナンバーワン」(ナータ)

「こんなこともあろうかと用意しておいたぜ」(蒼伊)

 手には顔を全部覆う銀の仮面を持っている。

「これは、顔を隠すだけじゃない。望遠、暗視、変声装置付きの優れもの」(蒼伊)

「それにこれ、剣姫の礼装に合わせた戦闘スーツ、全身を結界で覆うので怪我をしない」(ナータ)

「お前らなあ」


 結局、私ともう一人剣姫を連れて行くということで許可が出た。

 私は、もう一人をヒイにお願いした。

「最後に命の危険がない限り、人は殺すな。分かったな」

 恭平様が付け足した。


 結局戦闘スーツは結界を出すと動けなくなるので、採用は取りやめになり、礼装の姿で行くこととなった。

 オオツに転移して、捜索を担当している竜王軍の担当者に挨拶した。

「元々、この事件は剣姫が捜査していたものなので、この男の捜索をお手伝いしたいということです」

「分かりました。ご協力感謝します。もし、見つかりましたら最寄りの駐屯所にお知らせください」

 私達の持つ、はやぶさ号で信用してくれたようだ。


 ビワコに浮かべたはやぶさ号に乗り込もうとするとヒイが言った。

「ミヤちゃん、背中のリボンが邪魔で乗れない」

「こら、私はブラックでしょう」

 背中のリボンを外した。

「私のも外してくれる」


 はやぶさ号に乗り込んだ。

「行くよゴールド」

「了解、ブラック」

 変声機が付いているので二人とも普段と違うアニメ声である。


 ナガハマから北に向けて飛行する。

 ここらはマップが大雑把なので低空を飛ばないと検索が効かない。要するにナビさん任せだ。

 旋回しながら北に向かう。ビワコとヨゴコの間の山に来た時にナビさんが言った。

『山頂付近に人影があります。障害物が多く断定はできませんが、捜索対象である可能性80%。尚、捜索対象以外にも3人の人影がありました』


「一旦、湖に降りるよ」

「分かった」

 はやぶさ号が止まると重力制御で浮く、はやぶさ号を収納して、目標上空に転移する。

 二人背中合わせになってゆっくり回る。

『西に40m、捜索対象です』

「ゴールド、降りるよ」

「分かった」


 降りると木々の合間から4人の男たちの姿を確認した。

 女子供じゃなくてホッとした。男たちは逃げ出した。

「ゴールド、足を撃って」

 ヒイは弓と矢を出すと次々と足を打ち抜いた。


 収納からロープを出して縛り上げる。あの男もいた。

「ブラック、こいつらどうやって運ぶの」

「私が見張ってるからナガハマの駐屯地から人を呼んできて」

「目印がいるね」

 そう言ってヒイが男たちを縛った木の天辺に礼装のリボンを付けて転移していった。


「お前ら、噂の剣姫か?」

 父親が話しかけて来た。

「おとなしくしていてくれますか。迎えが来たら足の傷も治しますから」

 私は自分が落ち着いていることが不思議だった。パリにいる時はあんなに不安だったのに。

 それから何度か話しかけてきたが一切無視した。


 2時間後、迎えが来たので怪我を治して引き渡した。

 結局、私は世間に私の父の正体がばれて、恭平様に迷惑が掛かるのを恐れていたのだ。


 2人で帰ると恭平様が出迎えてくれた。

「ご苦労さん、よくやったね」

 私達を抱き寄せて頭を撫でてくれた。

「うん、・・・君達リボンが無いが」

「「ああ」」

 二人して山に戻った。


 ナガハマの人達が噂を流し始めた。

 犯罪組織の籠る山を剣姫が攻め、勝利する。人呼んでシズガタケの合戦という。



在庫が無くなりましたので次回いつになるか分かりません。

待っていてくれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ