第七十話 決戦 十剣鬼対ミヤ
十剣鬼が攻めてきました。恭平たちの対応は?
転移276日目
10時30分 寮 執務室
「よーし設計できたぞ。20人乗り飛行艇」
『ジュラルミン2.5tとアルミ1.5tが必要です』
「電力もダム工事で余力が出てくるから大丈夫だろう」
『ボーキサイトなどの原料はすでに用意してあります』
「速度に拘ったから離着水の波の高さが1.5m以下と不満です」
『このサイズの飛行艇なら仕方ないかと』
ナビさんと雑談をしていると念話が入った。
『獣王国の王城が襲撃を受けました』
『ジュレイか、どういうことだ?』
『私の孫従者から連絡があって、父上が捕えられたようです』
『敵は何者だ?』
『悪魔らしいです。人数は十人、30分で城を守っていた兵はすべて殺されました』
あそこに百人位の兵が居たはずだ。それを30分、俺達ならできるが。
『ジュレイは今、警らだな。すぐに戻ってくれ』
『ナビさん、従者全員ここに集合だ』
流石に今回の相手は3人で転移して勝てるレベルではなさそうだ。
11時 寮 居間
従者全員がここに集まった。
「良く集まってくれた。ジュレイ状況の説明を」
「はい、本日10時獣王国王城に十人の真なる悪魔の襲撃を受けました。王城の守備兵約100名は全滅、獣王閣下以下十数名が捕えられています。その中には私の孫従者が居ます」
「サイゾウ、他の場所には異常は無いか?」
「はい、我々が常駐する街に異変は見られません」
「ジュリアン、竜王都は」
「異変、ありません」
「獣王都のみの事案とみてよさそうだな。人質を取ったということは何らかの要求があるのだろう」
「蛇亀王国みたいにですか?」
「そうだ、多分目的は俺達」
流石に静まり返る。蛇亀王国、西域、そして獣王国、悪魔は執拗に俺達を狙ってくる。
俺は天帝様に連絡を取る。狙われる原因を作ったのは天帝様なのだから。
その最中にジュレイが叫んだ。
「真なる悪魔にブリジットが念話を使うことがばれて、恭平様に話をしたいと言っています」
「ナビさん、繋げてくれ」
『恭平、朕にも聞かせろ』
「皆に聞こえるように」
『繋がりました』
『聞こえるか?』
『お前が恭平か?』
『そうだ』
『俺は真なる悪魔のセゴドゥーと言う。獣王は預かった。取り返しに来い。王城の近くの場所だ。この娘を連れて行けば分かるな』
『何が目的だ?』
『一応、お前の異能と言っておくか』
『条件はあるのか?」
『俺達10人とお前達との1対1の殺し合いをして貰う。最後に残った者の勝ちだ』
『もし、断ったら?』
『獣王都から東に向いて、出会った人間をすべて殺す』
『そんなことをして何の得があるというのだ』
『言うべきことは言った。いつ来れる?』
『明日朝出発するとして4日後だ』
『遅刻をすれば死ななくて良い人間が死ぬぞ』
『行くから、誰も殺すな』
『良いだろう。では待っているぞ』
『すまぬ、恭平、朕が浅はかであった』
『あの時はあれしか方法が無かったのです』
恭平が悪魔に狙われるのは、悪魔が欲していた竜王国のシンシア王女の持っていた異能、”異能を他の人に移す異能”を受け取ったからだ。
シンシア王女が狙われていたため身代わりとなったのだが、受け取る指示をしたのは天帝様だ。
しかし、受け取れたのは俺しかいなかったし、活用できる人間も俺しかいなかった。
あの時点での決断としては間違っていなかったと思う。
だからと言って悪魔の執拗な攻撃は腹が立つ。
しかし、ジュレイの家族が人質になってる以上、行くしかない。
今回は殺し合いと言ってる。出来れば従者たちは連れて行きたくない。
「今回は1対1の殺し合いだと言ってる。負けたら死ぬ。勝つための策略を練ることも出来ない」
連れて行きたくはないが、一人で行けば犬死となる。
「それでも戦ってくれるものは前に出てくれ」
サイゾウとライヤ以外全員前に出た。
「真白、リシュ、お前たちまで」
「あなた達の負担を減らすように運転と雑用をします。戦いのときは再生を!!」(真白)
「あなたが死んだら生きてても仕方が無いもの。真白さんと同じよ」(リシュ)
「私は不器用で怖がりですから一緒に行っても役に立ちません。でも忍猫族を使ってあなた達のフォローをします」(ライヤ)
「済まねえな。俺は一族を守らなきゃなんねえ」(サイゾウ)
「良いんだサイゾウ、もしもの時には天帝様に頼んである」
「旦那ア、本当に済まねえ」
サイゾウ、忍者が泣いちゃ駄目だろ。
「私達は自分の命や自分たちの正義の為に多くの人を殺めてきました。それなのに自分の命が惜しいからとは言えないですよね」(茜)
「ジュレイちゃんの父上は良い人だからね」(蒼伊)
「皆さん、ありがとうございます」(ジュレイ)
「ジュレイちゃんの家族は私の家族と同じだよ」(ドーテ)
「俺に任せろ」(マール)
「ぶっ殺してやるです」(ミノン)
「ここの人達は命の恩人だからね」(ナータ)
「どこまで出来るか、分かりませんが頑張ります」(ジュリアン)
「ついて行きます」(キキョウ)
「どうぞ、私の命使ってください」(ミヤ)
「ヒイ頑張るよ」(ヒイ)
「がんばるぞ」(ハイジ)
「皆の命預かるぞ」
こうなったら俺も本気出すぞ。
防刃ジャケット、防刃ズボン、軽量安全ブーツ、防刃手袋、防刃バイザー付きヘルメット、防刃インナー、これらを寝ている時以外付けて貰って慣れさせる。
今回は人数が多いのでマイクロバスだ。
転移277日目
「ふー、夏でなくて良かったぜ。ぜってー蒸し焼きになる」(マール)
「私、ビキニーアーマーで試合してたんだけど」(ドーテ)
「それってファンタジーの王道だよ。へそ出しミニスカぐらいで良いんじゃないの」(蒼伊)
転移278日目
「これってすごいんだね。槍が通らなかったよ」(ジュリアン)
「衝撃はちょっとくるんですよ」(キキョウ)
「気功の刃なら一発ですけどね」(ミノン)
「あれに斬れない物ってあるのかしら」(ジュレイ)
転移279日目
「随分慣れたよ。鎧ほど動きを阻害しないし良いんじゃない」(茜)
「このバイザー付きヘルメットは慣れないな」(ナータ)
「弓引くのに邪魔、手袋は要らない」(ヒイ)
「相手を見てからどこまで着けるか決めましょう」(ミヤ)
「私無い」(ハイジ)
夜、王城につく。王城と言っても一般の貴族の館をそのまま使ってる。さほど大きくない。
ジュレイの母親と城の従業員は無事だった。
転移280日目
ブリジットの居る場所は王城から北に約15km砂漠の中だな。
近付くと砂漠と言っても平坦な硬い大地だ。マイクロバスのまま行けそうだ。
砂漠の中に白い天幕が見えて来た。あれが敵の居る拠点だろう。
天幕にマイクロバスが近付くとゾロゾロとおっさんたちが出て来た。
俺達はバスを降りバスを収納にしまう。真白とリシュがヒイの家改を建てる準備をする。
俺は刀を履き相手の前に出る。ジュレイが付いてくる。
「人質はどこだ?」
天幕の前に居た男が出入口の幕を捲る。獣王様とメイドの姿が見えた。
「ジュレイどうだ?」
「間違いありませんが、なぜ下半身が裸なのでしょう?」
正面に立った縦も横もでかい男が気まずそうに言う。
「いちいちトイレでロープを解くのが面倒だからな」
やらしい意味でなくて良かった。
「ルールは?」
「10m離れて試合開始だ。飛び道具は無しだ。いいか」
流石に10m離れて相手が弓矢を構えてたら試合にならんか。
「投げナイフもか?」
「そうだ」
「お互い1対1で殺し合い、生き残った者が再度戦う。先に戦えるものが居なくなった方が負けだ」
「わかった。順番を決める」
「早くしろ」
残念ながら、マールとナータは飛び道具専門なので選外だ。
一番は様子を見たいからミヤだ。
ミヤ、茜、蒼伊、ジュレイ、ドーテ、ミノン、ヒイ、キキョウ、ジュリアン、俺の順番だ。
最初は、ミヤ対ドモーニ、脇差対両手剣だ。
10m離れた位置に線が引いてあり、そこに立ったら試合開始だ。
「なんだ俺の相手はガキかよ」
両者位置に着いた。
ドモーニが気功の拳弾を連続で撃ってくる。
「気功は良いのか?」
俺はでかい男に言った
「気功は体の延長、構わん」
ということだ。行けミヤ!!
ミヤは拳弾をすべて避け、相手の足元にまで接近した。
両手剣では攻めようが無い。
ミヤはドモーニの両足を薙いだ。
右足は何とか避けたドモーニだったが左足に深手を負って倒れる。
ミヤは離れる。ドモーニは必死に剣を振り回してミヤを近付けまいとする。
「どうした勝負はついていないぞ」
でかい男は冷ややかに言った。
ドモーニは何とか自陣に帰ろうともがいている。
ミヤは無表情に相手に近付き、右手で振り回していた剣を無造作に弾き、魔石に脇差を突き立てる。ドモーニはやめろと怒鳴っている。
しかし鎧は脇差をはじく。ここだけ鎧を厚くしてる。
ミヤはドモーニの手を取るとひっくり返して俯せにして背中から魔石を貫く。
ドモーニは動かなくなった。
ドモーニはミヤを見くびって油断したので死んだ。
そう思ってるならお前たちの負けだ。
十剣鬼との決着がつきます。




