表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/83

第六十八話 キキョウの悩み

キキョウの悩みが解決します。

 転移262日目

 8時 正門前

 今日はモンゴルに移民45人と研修生30名を迎えに出発する日である。

 朝から運転手2人とリシュ、ミノンがワゴン車に乗り込んだ。

「では、行ってきます」

「気を付けろよ」

「ミノン、第一皇子の事はしゃべるな」

「もちろんです。いってきます」

 第一皇子は思いのほか評判が悪く、倒したのがミノンと知れると皇帝に嫉妬されるかも知れない。


 寮に戻ろうとするドーテに声を掛けた。

「そろそろ、爺さん達も収穫が終わった頃だと思うがどうだ」

「そうですね、空間制御の異能を貸してください。見てきます」

「あれ、覚えているな」

「はい」

 空間制御を渡すと早速、転移した。


 ・・・・・・

 9時 ドーテの村

 ドーテは久しぶりに村に帰って来た。

 この寂れた村に恭平様を婿に迎えようとしてたと思うと、今でもすさまじく恥ずかしい。

 村の広場には誰も居なかった。お爺さんの家に行ってみよう。

 お爺さんの家の戸は開いていたので覗き込んでみた。

「お爺さん居ますかあ」

「オウ、誰かと思えばドーテか」

「ご無沙汰です」

「本当にのう」

「今日は何の用じゃ?用が無ければこんな所へは来んじゃろ」

「はい、実はお願いがあってきました」

「まあ上がれ、何もないがお茶位は出せる。ばあさん、ドーテにお茶を」


 座敷に上がるとおばあさんがお茶を持ってきてくれた。

「実はお爺さん達にも天都に来ていただきたいのです」

「その話はもう終わっておるじゃろ」

「いえ、実は恥ずかしい話なのですが、新しい村を貰いました」

「それで」

「その村にはここ以上の農作地が付いておりまして、今年は前にその村に住んでいた人に手伝って頂いて、何とか収穫までこぎつけたのですが」

 お茶を飲んで落ち着けて。

「来年はどうしようもないのではないかと思われまして。このままでは恭平様の顔をつぶしてしまいます。お願いします。どうか天都に来て私達を手伝ってください」

 土下座してお願いした。


「村人で出来ないのか」

「村人は殆ど工場で働いており、休みの日にしか農業が出来ないのです」

「仕方のない奴らじゃ。行ってやるか。のう、皆の衆」

 いつの間にかお爺さんの家の前には老人が全員集合していた。

「族長に土下座されてはのう」

「まあ仕方あるまいて」

 反対意見は無かった。

「ありがとうございます。早速、移住の準備をしても宜しいですか」

「構わんよ、今は収穫が終わって一休みしている所じゃ」

「では明後日、迎えに来ます」

「オウ頼むぞ」


 転移するため、村の外に出ようとするとお爺さんが付いて来た。

「ドーテよ、お前の口上はあの男に教えて貰ったな」

「な、何を言っているのですか」

「わしらを連れて行くより、天都で人を雇った方が安い。そうじゃろ」

「心配するな。騙されてやる。おかげで皆が気持ちよく行けるからな。礼を言っておいてくれ」

 そう言うと村に戻って行った。


 11時 寮 執務室

 ドーテが帰って来て報告に来た。

「ただいま戻りました」

「ご苦労様、どうだった?」

「明後日、迎えに行くことにしました。それと騙されてやると」

「そうか、あの爺さんなら分かってくれると思ってた。ご飯の手配とか村の準備を頼んで置けよ」

「頼むのですか?私がするのではなくて」

「お前には特訓をして貰う」

「はい?」

「明後日となると運転手を手配できない。よってお前に運転して貰う」


 寮の外に出ると恭平は収納からマイクロバスを出した。

「ドーテには30人乗りバスの運転を習得して貰う」

「でもこの大きさだと村には」

「堰止湖までは広い道があったよね。荷物を全部収納に入れれば歩けるだろ」

「足の悪い人は軽にでも乗せてやれ」

「分かりました」

 それから軽しか運転したことのなかったドーテの特訓が始まった。


 転移263日目

 真白は休みを取った。仕事は茜に引きついでおいた。気になることがあるのだ。

 それはキキョウの事。恭平が何度か相談に乗ったが解決しない。こんなことは今まで無かった。

 もしかして女性の悩みかも知れない。それならこの寮で最年長の真白が相談に乗るべきではないか。


 恭平に言って執務室を空けて貰った。

 朝食後、キキョウを呼ぶ。

 対面に座らせて聞いてみる。

「あなたが来て、もうひと月になるの。あなたの思いを聞きたいよ」

「私は怖いの。今の幸せが壊れるのが」

 驚いた。現在の状況が幸せなんて。

「今が幸せなの」

「そう、毎日、恭平様が見られる。声を掛けて貰える。それが嬉しい」

 この娘、恭平さんが好きなのね。

「恭平さんが好きなのね」

「駄目なの、好きになっちゃ」

 どういうこと。

「私は、恭平様を好きになる資格が無いの」

 泣き出した。落ち着くまで待った方が良さそうね。

 私も恋多き娘だったし、友達の相談にも乗って来たけどちょっと重そうね。


「どう、落ち着いた?」

「はい」

 ようやく泣き止んだ。

「もし良かったら、その訳を教えてくれるかしら」

 迷ってるみたい。でも苦しいんでしょ。つらいんでしょ。吐き出してしまいなさい。


「私、捧げる物が無いの」

「捧げる物ってなあに?」

「私、処女じゃないの」

 また泣きだした。でもそれ位恭平さんなら。

「大丈夫よ。それ位で恭平さんはあなたを嫌ったりしないよ」

「駄目よ。怖いの。サイゾウさんを迎えに行ったときに何日も恭平様に会えなかった。怖かったの。もう会えないじゃないかって」

 これは重傷だ。


「大丈夫だって」

「もし、嫌われたらどうするの生きていけないよ」

「相手の人って村に居るの?」

「居ない、村を抜けた人、3年前に、行きがけの駄賃だって」

「無理やり!!あの頃、私馬鹿だったから」

 突っ伏して泣いている。私は肩を抱いてやるくらいしかできない。

 なんてことを3年前って、まだ子供じゃない。許せない。こんなに傷ついて。こんなにも苦しんで。

 そうかこの娘、幼児に退行してたんだった。抵抗も出来なかったのね。


 ”私では慰めることしかできない”

『ナビさんこの子、恭平と大丈夫?』

『はい、すでにコントロールしています』


「あなた、恭平さんのお嫁さんになりたい?」

「なりたいけど無理だよ。私は穢れてるんだ」

「あなたの心も体も綺麗だよ」

「嘘だ。恭平様も・・・」

 もう言葉にならなかった。絶望しているのだろう。


『恭平さん 聞こえてた?』

『ああ、ひどい奴が居るんだな』

『そんな奴はどうでもいいんだよ。この娘を抱いてあげて』

『まだ朝だけど』

『この娘を夜まで、このままにしておくつもり』

『わかったよ』


「キキョウちゃん、ちょっと待っててね」

 真白は執務室を出て恭平の元へ。

「それじゃあ、お願いね」

「君が何でここまで、博愛主義になれるのかが分からないよ」

「あなたがくれる幸せが大きいからよ。そう思うなら今度いっぱい可愛がってね」

「うー、はいはい」


 俺が執務室に入るとキキョウはまだ突っ伏しており、気づいてない様だ。

「真白に聞いたよ。キキョウは俺の嫁さんになりたいのか?」

 キキョウは涙でクシャクシャになった顔を上げた。

「は、はい、でも私は汚れてて」

「そんなことは聞いてない。嫁になりたいの?」

「はい、なりたいです。でも」

 ビックリしてるな。ここは間を置かずに攻めるのみ。

「なりたいなら、待ってくれ。ミヤとヒイが成人するまで。それから俺の嫁になるのを待ってる奴はいっぱいいる知ってるな」

「はい、知ってますし、待ちます」

「お前を抱きたい、いいか?」

 あはは、驚いてる驚いてる。可愛いな。

「ええ、その・・」

「まあ、嫌だって言っても抱くんだけどな」

 キスをすると強張った体から力が抜ける。

 受け入れたようだ。そのまま抱き上げベッドに運ぶ。


 ベッドに寝かせるとTシャツとブラジャーを捲り上げる。鍛えた胸筋に支えられたおっぱいは重力に負けず、きれいな形を保っている。腹筋も綺麗に割れてる。

「鍛えてるな」

「暴力に負けないように鍛えました」

「いいか」

「はい」

 また体が強張っている。男が怖いのかも知れない。

 優しく入念に愛撫するしかないか。


 ・・・・・・


「どうだ、痛かったか?」

「いえ、気持ち良かったです」

「いまはどうだ?」

「ほんわかして、ほわほわって感じで、とても幸せです」

 二十台前半に居た俺の彼女は終わった後、いびき掻いて寝てたなあ。あれには引いたけど。彼女も核爆発で死んじゃったんだろうか。

「お前は剣姫になってお前を含めて皆を守るんだ。いいな」

「はい、お任せください。一生ついて行きます」

「ので、たまに可愛がってください」

「お、おう」

 最後は締まらなかったな。残念。


次回、俺へのいろいろな思いと剣鬼の動きです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ