第六十六話 魔法少女
ナータが魔法を開発します。
13時 寮 執務室
「じゃあね、今度来るときには、あなたの横に並べる女になってくるよ」
「ああ、頑張れよ」
ナータは魔王国に帰った。父親との交渉如何では、またここに来るかもしれないが。
ミヤとヒイとジュリアンを呼んだ。
「まずジュリアンを制限付きの従者にする」
『念話とマップが解放されました』
「頭の中で声が聞こえます」
ジュリアンが不思議そうな顔をする。
「ミヤの空間制御をジュリアンに移す」
「ヒイも行くだろ」
「行くよ」
「え、何処に行くんですか?」
『ナビさんお願い』
「頭の中に地図が出て来た。これって私の家?」
「将軍は居るかな」
『今日はお休みのようですね。庭に見えます』
「近くの死角になるところへポインタを」
「その光ってるところに行くって念じて はい」
ジュリアンが消えた。続いて俺とヒイが跳ぶ。
「これ私の家だ。わ、恭平さん、ヒイちゃんも」
声が聞こえたのか将軍がこちらを向いた。
「誰かいるのか。おかしいなここらには誰もいないはず」
「父上、ただいま」
まだ、思考が追いついていない様だ。
「ジュリアン、それに恭平、ヒルダ」
「お邪魔します」
「こんにちわ」
「どうしたのかねって、着いてすぐ帰ったとしても早すぎるが」
「あの手紙はちょっとひどいんじゃないかと思いまして」
「父上、ひどい」
「うほん、ここではなんだ執務室に行こう」
執務室に入って座る。
「私、恭平さんの所で剣姫になるわ」
「しかし、剣姫と言うのは素質が」
「大丈夫ですよ。一か月もかからずにカクタスより強くなります」
「わしとしては女の普通の幸せをだな。その」
「あなた、行かせてやってください」
奥様が乱入して来た。ドアのところで盗み聞きしてたのは知ってたけど。
「どういうことだ。お前も心配していただろう」
「私はあなたと言う恵まれた夫に巡り合い、幸せに暮らしております」
「それならば」
「いいえ、そんなことは珍しいのです。多くは奥の部屋に飼い殺しになる運命、ミリアはどうですか私達が行っても会わせても貰えないではないですか」
ミリアさんはカクタスのすぐ上のお姉さん、すでに結婚していたので会ったことはない。
結婚するとその家の所有物みたいな扱いになることが多いと聞いた。
「恭平君、ジュリアンはそれで幸せになれるのかね」
「なるかならないかは本人の努力次第です」
「少なくとも自分で幸せになれるのです。あなた」
「ヒイを見てください。彼女は幸せになれるように頑張っています」
「ヒイちゃん幸せそうね。まだ半年だけど大きくなって」
「うん、ヒイ幸せだよ。ミヤちゃんっていうお姉ちゃんが出来たんだよ。奥様には伝えたかったんだ」
「ヒイちゃん、ありがとう。娘には出来なかったけど、お前はうちの子なんだよ」
奥様涙腺崩壊です。相変わらず優しい家族だ。俺は好きだなあ。
「分ったジュリアン、お前はお前の道を行きなさい。孫が出来たら一度は見せに来なさい」
「あら、今生の別れみたいに。4、5年経てば、天都なんて日帰りできるわ」
「何を言っている。そのようなことが」
「恭平さんがやってるのはそういう事よ」
ジュリアンはその日は家に居ることになった。
理解してもらって良かった。
俺達は先に戻った。
18時 寮 居間
「なんでお前が居るナータ?」
帰ったらナータが女子会をしていた。
「おかえりぃ」
ナータがニコッと笑って手を振った。
「それがさ、帰って父上に恭平の所へ行きますって言ったら、良かったあって」
「なにそれ、どういうこと」
「どうも、僕のような奴は貰い手が無いんじゃないかって、心配してあっち、こっち、に当たってたんだって」
「それでお前にも貰ってくれる人が居たんだなあ。って泣き出して。是非連れて来てくれってことで」
何言ってんだこいつ。
「俺はお前と結婚するなんて言ってねえ」
「いいのいいの、ジュリアンとこには説得に行ったんでしょ。ならうちだって」
「絶対、行きたくねえ」
「もう仕方ないなあ、でも正式な従者にしてね。やりたいことは魔力研究、蒼伊さんの助手で良いよ」
「どういうのを研究したいんだ?」
「魔力って銅パイプだと殆どロスなしで伝わるじゃない。あれがどういう理屈か分ったら、空気中の魔力を効率よく集められるんじゃないかって、思ってたのよね」
「ふむ、面白い着眼だ。こちらに来い。もっと詳しく聞かせろ」
なんか蒼伊と始めちゃったよ。
「あ、これまでの謝礼、ナビさんに頼んで収納へ入れといた、確認しておいて」
ジュリアンとナータの制限を取っ払った。これで正式な従者だ。
ご飯が来た。夕食にしよう。
夕食後、ライヤが俺を執務室に連れて行った。
「あの、今キキョウさんが私と一緒に居るじゃないですか」
「うん、いるね」
「それで、夜ここに来るのにキキョウさんを起こしちゃうので、何とかして貰えないかと」
「抜かせば良いんじゃない」
泣きそうなすごい顔になった。
「そんなア、駄目ですよ。何があっても来ますから」
「マールちょっと」
「なに、何の用だ」
お前、仕事じゃないと素に戻るんだな。
「ライヤが夜、仕事をしたいのでキキョウを預かってほしいそうだ」
4人程、ピクってしたやつがいた。
「良いけどよ。キキョウさん、俺の部屋でもいいか」
キキョウがうんうん頷いている。
「これぐらい自分で何とかしろ」
「罰ですか。お尻ペンペンでもいいですよ」
ああ、こいつ段々、地が出て来たな。どうしてやろう。
「あんたの順番、明日だよ」
ライヤとすれ違いざまに蒼伊が言い放った。
転移249日目
8時 寮 居間
ドーテとキキョウが出発した。サイゾウが煙台に着いたら俺も行くことになってる。
10時 寮 居間
ジュリアンが帰ってきた。
「ただいま帰りました。・・・なんでナータさんが居るんですか?」
「おかえり。いろいろあったんだよ」
「今度会う時には、あなたの横に並べる女になってくるよ、とかいってませんでした?」
「いらない事、覚えてる奴だね」
「はいはい、掛け合いは良いから」
「これから面白く成るんですよ」
「漫才の才は求めてません」
「二人に従者の説明をするよ」
「まず、異能
インストール 技術の習得が数十倍の速さでできる。
念話とマップは分かるね。
身体強化 身体能力が約3倍、病気に掛かりにくくなる。
ナビさん 収納内に計算装置を持った疑似人格で異能の管理をしてくれる」
「異能の事はナビさんに念話で聞けばいいよ」
「次は従者について、規律を守っている限り自由です。恋愛・結婚も自由です。
仕事は誰かの邪魔にならない限り、やりたいことをやってもらって結構です。
俺達は基本、依頼を受けて達成して報酬を貰う冒険者と言う稼業です。
依頼の中には魔獣の駆除や重要人物の護衛、危険な場所の探索などがあります。
今は信帝国から文化、文明を進める依頼を受けています」
「はいはい、質問、依頼の多くが剣姫向きだと思うんだけど。剣姫に成らない人は?」(ナータ)
「危険な依頼には参加しません」
「それって不公平じゃないですか?」(ジュリアン)
「信帝国の依頼は後一年かからないでしょう。その後ですが信帝国のような依頼を出せる国は無いでしょう。そうなると未知の大陸への冒険とかやってみたいと思います」
「私達は要らなくなるって事?」(ナータ)
「違います、信帝国があくまでもホームベースと言うことです。必ず帰ってきます」
「置き座りになる覚悟はしとけって事だね」(ナータ)
「そういうこともあるということです」
僕は気に入らなかった。置き去りにされたくなかった。
真白に聞いてみた。
「剣姫をやめた時からそれは解って居たよ。私は仕事に生きるつもりよ」
ライヤに聞いてみた。
「それは寂しいけど仕方がありません。子供を作って貰ってその子を育てながら待ちたいかな」
リシュに聞いてみた。
「もちろんついて行くわよ。車、船、飛行機の運転を極めるのよ。そうしたら剣姫でなくてもついて行けるでしょ」
ナビさんに聞いてみた。
『あなたの持つ異能を武器として戦うのはどうですか?』
『そんな事出来るの』
『ちょっと調べてみますね。・・・重力レンズと言うものがありますね』
『重力レンズって何?』
『重力で空間を歪ませて光を曲げて集中させるのです。本来は遠くを見る技術ですが、直径1mもあれば瞬間的に人を殺せます』
『虫眼鏡で紙を焼くやつね』
イメージ出来ればやり易い。一時間ほどで石を蒸発させられるようになった。
「これじゃダメだ」
自分の目の前でしか出来ないのだ。離れると光を集められない。
『空間制御で座標を確定させればどうでしょうか』
50m先にある石に座標を固定してレンズを展開。石が蒸発した。
「やったー、これで安泰だね」
次回、新たな敵が現れます。




