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第六十四話 予期せぬ訪問者

懐かしい人が訪れます。

 13時 寮 居間

 ナータは寮の雰囲気に慣れたのかジュレイたちと女子会をしている。

 午前中はナータの事件でバタバタしていたので午後から通常運転に戻っていく。

 真白、蒼伊、ライヤ、ミノンは出勤した。


 茜が俺の所に来た。

「今日は後片付けを手伝いに行くけど、これを最後にするつもりよ」

「もういいのか」

「もうこちらの人で出来るから。あまり日本のやり方を押し付けるのも良くないわ」

「それでこれからどうするつもりだ」

「取敢えずは真白ちゃんを手伝うつもり。やりたいことが出来たらそれをやるけどね」

「じゃあ、一旦ご苦労さんだな」

「うん」

 茜はスクーターで出て行った。


 暫くすると茜が戻って来た。後ろに女の子がいる。

「門であんたの知り合いだって言ってたから連れて来たの」

 少女は前に出て挨拶をした。

「恭平さん、お久しぶりです。ジュリアンです」

「ジュリアンちゃんか半年ぶりくらいか。まあ入って」

「この子は竜王国でお世話になってた飛竜将軍の娘さんでジュリアンちゃんだ」

「と言うかカクタスの妹さんだ」

「あー、ジュリアンちゃんだ」

 ヒイが駆けつける。

「ヒルダちゃん、ちょっと大きくなったんじゃない」

 ヒルダはヒイの飛竜将軍に付けて貰った本名です。

「えへへへ」

 少し照れてる。


「ここじゃなんだな、こっちに来て」

 執務室に案内してソファーに座らせる。

 飛竜将軍にはご家族で優しく接して頂いた。

 転移して右も左も分からない時だったからありがたかった。

「それで何の御用かな。カクタスとはもう会ったのかな」

「これを読んで下さい。父が恭平さんに渡してくれって」

 封蝋をした封筒だ。初めて見た。

 ペーパーナイフで開けるととんでもないことが書いてあった。


 執務室のドアを開けてヒイを呼んだ。

「カクタスにジュリアンちゃんが来てるから、なるべく早く来てくれって言って来て」

「はーい」

 ヒイはスクーターで出て行った。

 部屋に戻って彼女に向き合った。

「この手紙に書いてあるのは本気なの?」

「もちろんです」


 手紙の内容を要約すると

「恭平君、元気かね。わしたちは元気にしておるぞ。

 カクタスにたまには手紙を書く様に行ってくれんかね。

 君らの噂は竜王国でも聞いている。

 滅茶苦茶誇張された武勇伝が羅列してある。

 それを聞いたジュリアンがヒルダちゃんに出来るなら私も出来るんじゃないと言い出した。

 いくら言っても聞かないので体育大会のスタッフとしてそちらに行かせることにした。

 何とか諦めて家に帰るように説得して貰えないだろうか。

 では吉報を待つ」


 これって俺に面倒なこと丸投げしただけだよね。

 と言うことで俺もカクタスに丸投げしようと思う所存です。


 とにかく、核心に触れないように話を引き延ばしてカクタスに説得して貰おう。

「ジュリアンちゃん、体育大会のスタッフしてたんだ。大変だったでしょ」

「はい、でも大会をすごく若い人が仕切っていて、すごいなあって思ってたんですよ。ならここの人だったんですね。さっき会ってビックリしました」

 まずい、いきなり核心に迫って来た。話を変えなければ。


「竜王国から来た選手達、どうだった。慣れないことで戸惑いも多かったんじゃないかな」

「それがですね。分かりにくそうなことは、事前にちゃんと説明してくれるし、至れり尽くせりでした。やっぱり、あの人の指導でしょうね。憧れちゃいます」

 カクタス早く来てくれ。俺は討ち死にしそうだよ。


「始めてこんな遠くまで来て疲れたんじゃないか」

「それがですね。ナンバヅを出る時に新しいゴーレム船に乗れて、思ってた半分の時間で中央大陸に着いて、その後もゴーレムバスが走ってて、すごく早く着きすぎて困っちゃった位でした」

「そうなの」

 もうそんなに走ってるのね。

「あのゴーレムってここで造ってるって聞きましたよ」

 もう俺駄目、立ち直れない。


「あのーっ、お願いがあるんですが」

 ついに来た。飛竜将軍申し訳ありません。この子だけ違うことは言えません。許してください。

「何かな」

 その時ノックの音がした。

「ちょっと待ってね」

 良し、カクタスか?


 マールだった。

「サイゾウさんから六日か七日で煙台に着きそうって連絡が有りました。」

「あっ、ごめんなさい。お客さんでしたか」

 マール、うかつだぞ念話の事は秘密だ。

「ライヤのお兄さんと相談して迎えに行ってね」

「小さいほうのワゴンを借りて良いですか」

「ああ、いいよ」

「失礼しました」

 マールは去って行った。


「あんな小さな子が働いているんですか」

「彼女は13歳、今、竜王国からの移民の担当をさせている」

「移民ですか。何をさせるのですか?」

「紡績、織物、縫製の工場を建てているのでそこで働いてもらおうかと。もうすぐ俺達の着ている服が一般的になる予定だ」

「すごおい」


 マップでカクタスの位置を見る。ヒイを見れば良いか。

 もうここに来ているではないか。カクタスは・・・


 ドアが開いてカクタスが現れた。

「ジュリアンよ。兄に会わずにこちらに来るとは、ちと冷たくは無いか」

「ゲッ、兄上。そうか天都には兄上も居るのだったわ」

「あの、カクタス、ちょっと話が・・」

「ジュリアン、何をしに天都に来たのだ」

 カクタス、おい、人の話を聞け。

「兄上に関係ないでしょ」

 カクタスはジュリアンの横に座る。

「関係ないはずは無かろうが、兄妹なのだから」

「兄上は黙ってて、今、恭平さんと話してるんだから」

「その前に兄に話すべきだと言っておろうが」

「あのね・・カクタス‥俺の」

「私は恭平さんのお仕事を手伝いたいの」

「うん、それは良いぞ。ここは女が大きな仕事が出来る、信帝国では唯一の場所だからな」

「ああ、賛成しちゃったよ。何の為にお前呼んだんだよ。俺の馬鹿」

 俺が小声でブツブツ言っているとカクタスは、

「恭平、ジュリアンの事、頼むぞ」

「お前、ちょっとこっちへ来い」


 居間にカクタスを連れて行き飛竜将軍の手紙を読ませる。

「どうするんだよ。カクタス」

 カクタスは青ざめている。

「父上は温厚に見えて滅茶苦茶怖いんだ。特に妹の事は可愛がっているから」

「だからどうするんだよ」

 俯いていたカクタスがパッと顔を上げ、俺を執務室に押し入れて言った。

「ジュリアンよ、もう少し考えた方が良いと思うぞ。俺は急用を思い出した。失礼する」

 ドアを閉め、走って逃げたようだ。かといって追い掛けるわけにも往かずジュリアンの前に座った。

 あいつめ、今度練習に行ったらボコボコにしてやる。


「恭平さん、なんか怖いです」

 ちょっと怖い顔になってたみたいだ。仕方ないよね。

「あ、ごめんね。カクタス、何をしに来たんだろうね」

「さあ」

「話の続きだけど具体的にやりたいことかあるの?」

「今はまだ無いの。ヒルダちゃんの活躍を聞いてたら、何かしなくっちゃと思って」

「そうか、ここは才能が有って、やる気があって、心根が善良なら受け入れる」

「才能ってどういうのですか」

「夜に皆を紹介するときにね」


「本当はここに入らないと駄目なんだけど、君のお父さんにはお世話になっているから工場を案内するよ。工場内の事は秘密だよ」

「ライヤ、来てくれ」

 ドアを開けて呼んだ。ライヤが帝城から戻って、居間にいることは確認済みだ。

「工房を案内してあげてくれ。簡単な説明で良いからね」


 ライヤとジュリアンが工房に歩いて行った。

 リシュが寄って来て言った。

「あの子も従者にするの?」

「恩人の子供なんだ。諦めさせてくれって言われてる」

「でも、本人重視なんでしょ」

「そう言うこと。悩むよ」


 夕食後に皆をナータとジュリアンに紹介する。

「まず今、御客としてここにいる人たちだ。キキョウ、竜王国からの移民の先触れだ。剣術大会の準優勝者だ」

「ナータ知っての通り魔王の娘で絶賛家出中だ」

「ジュリアン。竜王国の飛竜将軍の娘だ。ただいま天都での仕事を検討中だ」

「次は従者契約を結んだ子達だ」

「一番最初に従者になったヒイ、得意は弓矢、他に合気道・剣術が使える。業務は俺の世話係」

「次はミヤ得意は小太刀、他に合気道・拳法が使える。業務は俺の世話係だ」

「次は真白、武道は駄目、業務は芸術の振興」

「茜、得意は槍術、他に剣術、業務はスポーツの振興だったが一段落した」

「蒼伊、得意は薙刀、他に剣術、業務は魔力の研究」

「ジュレイ、獣王の娘で得意は刀術、業務は服飾のデザイン、剣術指導」

「ライヤ、忍猫族の元族長で武道は駄目、業務は工房の外務、主に帝城に勤務」

「マール、蛇亀王国の王族、得意は弓術、業務は移民の管理と弓術指導」

「ドーテ、勇犬族の族長で得意は剣術、業務は紡績の研究と剣術指導」

「リシュ、モンゴル帝国の元皇女、武道は駄目、業務は服飾関係の統括」

「ミノン、リシュの元メイド、得意は双剣術、業務は機械設備の開発」

「最後にハイジ、オオカミの魔獣でヒイの娘」

「以上がこの寮にいる従者だ、男子の管理棟にまだ従者がいるけどな」

「なんで、王女とか皇女とかが居るんですか」

 ジュリアンが驚いている。


次回、ナータとジュリアンが決心します。

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